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Naoya The Great - Chapter 1 夢のまた夢・・・リング誌ファイター・オブ・ジ・イヤーに選出 Part 3 -

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■2023 Fighter of the year - リング誌が井上尚弥を選出


Naoya-Pac2

井上の受賞に一言いいたいと思うのは、クロフォード本人や在米マニアだけに止まらず、ボクシングに愛情を注ぎ続けてきた、それこそ一家言を持つ者たちの中に、国と地域に関わらず一定の割合居るに違いない。

主にSNSを通じて展開される異論・反論もまた、井上自身には何の責任もないことではあるが、反骨心にも並々ならぬものを持つモンスターだけに、心に期すものが既に溢れているのではないか。

それは、2年連続での受賞。いや、3年連続で受賞し、アジアNo.1のパッキャオに並ぶこと。100年近いリング誌の表彰歴を振り返っても、3年連続での受賞は過去に例がない。パックマンを超える4度の受賞ですら、今現在の井上なら不可能ではないとさえ思えるが、30代に突入した年齢を考えると流石に厳しい。

また、階級も大きなハンディキャップになる。何だかんだ言っても、王国アメリカのボクシング・マーケットを支える揺ぎ無い看板は、ウェルター級から上の中~重量級になる。軽量級のトップ・ファイターが伍していくには、誰もが納得するしかない結果、頭3つも4つも飛び抜けた実績が不可欠。


4つあるフェザー級のどれか1つを獲って5階級制覇を達成しても、それだけではアンチの口を完全に黙らせることはできない。「中量級とは競争の激しさが違う。同列には論じられない」との主張が繰り返される。

これまでと変わらない圧倒的なパフォーマンスを維持したまま、126ポンドでも4本のベルトを集めて、史上唯一となる「3階級+4団体統一」をやってのければ、2度目の年間MVPは確実だ。外す理由がない。

だが、相対的なパワーダウン&体格差をスピード&テクニックで補い切れず、悪戦苦闘が続く中でのギリギリ薄氷の載冠であったり、メイウェザーよろしくタッチ&アウェイの安全策に閉じこもるしかなくなったら、突出した力を発揮する若い才能に道を譲らざるを得ない(それが米国籍の黒人やメキシコ系ならなおさら)。


あくまで試合内容と勝ち方次第にはなるが、フェザーを完全制覇した後、さらにS・フェザーの2団体をまとめて(4つすべては無理にしても)、6階級制覇+王座統一(3つ・4つである必要はない)の離れ業まで行けば、パッキャオに並ぶことも夢ではなくなる。


◎パッキャオの受賞歴:3回

第1回目:2006年:S・フェザー級
一度惜敗したエリック・モラレスと2度対戦して連勝。特に3回KOで圧勝した第3戦は、出世試合となったフェザー級時代のマルコ・A・バレラ第1戦に勝るとも劣らない、大きな衝撃を全世界に与えた。

■ vs モラレス第3戦:3回KO勝ち
<1>2006年11月18日/トーマス&マックセンター,ラスベガス
WBCインターナショナルS・フェザー級タイトルマッチ12回戦


<2> vs モラレス第2戦:10回TKO勝ち
2006年1月21日/トーマス&マックセンター,ラスベガス
WBCインターナショナルS・フェザー級タイトルマッチ12回戦
https://www.youtube.com/watch?v=W8RDO7VaJ34

<3> vs モラレス第1戦:12回0-3判定負け
2005年3月19日/MGMグランド,ラスベガス
WBCインターナショナルS・フェザー級タイトルマッチ12回戦
https://www.youtube.com/watch?v=Sl4V0e2Odqw

<4> vs マルコ・アントニオ・バレラ第1戦:11回TKO勝ち
2003年11月15日/アラモドーム,テキサス州サンアントニオ
※リング誌フェザー級王座認定(WBCフライ,IBF J・フェザーに続く3階級制覇)
https://www.youtube.com/watch?v=I0rhQX6WFpw

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第2回目:2008年
<1>3月15日:ファン・M・マルケスに2-1判定勝ち
マンダレイ・ベイ・リゾート&カジノ,ラスベガス
WBC S・フェザー級王座獲得(4階級制覇=リング誌フェザー級王座を含む)
https://www.youtube.com/watch?v=31WoU-BJMdw

<2>6月28日:デヴィッド・ディアスに9回TKO勝ち
マンダレイ・ベイ・ホテル&カジノ,ラスベガス
WBCライト級王座獲得(5階級制覇=リング誌フェザー級王座を含む)
※個人的にはパッキャオのベスト・パフォーマンスだと確信する
https://www.youtube.com/watch?v=WgsHmnnMC34

<3>12月6日:オスカー・デラ・ホーヤに8回終了TKO勝ち
MGMグランド,ラスベガス/ウェルター級契約12回戦


ボクシング界のセオリーを難なく乗り越え、「階級の壁」を根底から覆したパッキャオが、メイウェザーと並ぶスーパースターへと飛翔した歴史的な勝利。

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第3回目:2009年
<1>5月2日:リッキー・ハットンに衝撃的な2回KO勝ち
MGMグランド,ラスベガス
リング誌J・ウェルター級王座認定(6階級制覇=リング誌フェザー級王座を含む)
※世界中のファンが支持するに違いないパッキャオのベストKO


<2>11月14日:ミゲル・コットに12回TKO勝ち
MGMグランド,ラスベガス
WBOウェルター級王座獲得(7階級制覇=リング誌J・ウェルター,フェザー級王座を含む)
https://www.youtube.com/watch?v=kUruG4y9mak


マルケス(2008年3月)とディアス(2008年6月)を連破して、3ヶ月のスパンでS・フェザーとライトの2階級を獲り、暮れにデラ・ホーヤを引退に追い込んだ後、さらにハットン,コットと三立ての快進撃。2008年から2009年にかけてのパッキャオは、紛れも無い”東洋の奇跡”だった。

「正気か?。カネに眼が眩むのも程がある。本気でパッキャオを殺す気か?」

デラ・ホーヤの引退試合に担ぎ出され、ウェルター級契約の12回戦と公表されるや否や、、存命だったドン・ホセ・スレイマンWBC会長を皮切りに、世界中の関係者から轟々たる非難が集中。

加齢と歴戦の疲労に、古傷(左肩の腱筋断裂)の再発まで重なり、その上無理なウェイト調整を自らに科したゴールデン・ボーイ。ラスト・ファイトのコーナーを預かったメヒコの名匠ナチョ・べリスタインによると、本番1ヶ月前に147ポンドの契約リミットまで絞っていたらしい。


154ポンドのS・ウェルター級に主戦場を移して7年が経ち、仕上がりに不安があったのだと思う。147でどの程度動けるのか、確かめたかったに違いない。しかしナチョは、「性急に落とし過ぎだ。キャンプのメニュー消化にも悪影響を及ぼす。すぐに150まで体重を戻すべきだ。」と進言。

お付きの栄養士に、ナチョ自身が直接食事の改善を申し入れしたというが、実際にどうなったのかは不明。公式計量と再計量の結果は次の通りだが、体格差に関する辛らつな批判が余程堪えていたかもしれない。

◎デラ・ホーヤ:前日145ポンド⇒当日147ポンド
◎パックマン:前日142ポンド⇒当日148ポンド1/2


わざわざ契約体重を2ポンドアンダーして、空腹のまま眠れる一夜(?)を耐えて、当日午前中の再計量で147のリミット丁度に合わせたのは、「ウェイトのハンディは無い。フェアな勝負だ」との、デラ・ホーヤなりの無言のアピールではなかったか。

内容と結果を振り返って見れば、ナチョの心配がそのまま現実になってしまった。足取りも反応も鈍く重く、満足に動けないまま為す術がない落日のスーパースターを、小柄なパッキャオがスピードと手数で翻弄。思うがままに打ち据え、最後はコーナーに詰めて滅多打ち。

8回終了後のインターバル中、顔面を酷く腫らしたゴールデン・ボーイは、すっくと椅子から立ち上がると、対角線上を真っ直ぐ歩みを進めて、パックマンとローチにギブアップの意思を伝えてジ・エンド。

Naoya-Pac1

フルトンを完封した井上のボクシングも圧巻ではあったが、年間MVPを連続受賞したパックマンと3名のビッグネームが繰り広げた熱いドラマ、現在の井上と同じ30歳前後のパッキャオが発揮したアビリティとパフォーマンスは言語を絶する。

デラ・ホーヤ,ハットン,コットに比肩し得る名前が、現在のS・バンタム~S・フェザーには見あたらない。バレラ&モラレス,イスラエル・バスケスとラファエル・マルケス、以上ベスト4より1~2枚格は落ちるが、レオ・サンタクルス,アブネル・マレス,ジョニー・ゴンサレス,オスカー・ラリオス・・・。

90年代半ば~2000年代の最初の10年の軽量級を、強力に牽引したメキシカン・レジェンドに匹敵するヒスパニック系の後継者がいてくれたら、122~126ポンドの景色はまるで違ったものになっていただろうに・・・。

モンスターと言えども、この男たち(全盛期のバレラ,モラレス,R・マルケス=4強)と戦ったらどうなるかわからない。誰もがそう思える真のライバル不在こそ、リアル・モンスター,井上尚弥にとっての最大の悲劇ではないのか。

ルイス・ネリーごときは、リアルなメキシカン・レジェンド4強の足元にも及ばない。はっきり申し上げて「顔じゃない」のである。


◎Part 4 へ


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■複数回の受賞者一覧/最多はアリの6回(!)

<1>6回:モハメッド・アリ(米)
<2>4回:ジョー・ルイス(米)
<3>3回:
(1)ロッキー・マルシアノ(米)
(2)ジョー・フレイジャー(米)
(3)イヴェンダー・ホリフィールド(米)
(4)マニー・パッキャオ(比)
<4>2回:
(1)トミー・ローラン(米)
(2)バーニー・ロス(米)
(3)エザード・チャールズ(米)
(4)シュガー・レイ・ロビンソン(米)
(5)インゲマール・ヨハンソン(スウェーデン)
(4)フロイド・パターソン(米)
(7)ディック・タイガー(ナイジェリア)
(8)ジョージ・フォアマン(米)
(9)シュガー・レイ・レナード(米)
(10)トーマス・ハーンズ(米)
(11)マーヴィン・ハグラー(米)
(12)マイク・タイソン(米)
(13)ジェームズ・トニー(米)
(14)フロイド・メイウェザー(米)
(15)タイソン・フューリー(米)
(16)カネロ・アルバレス(メキシコ)


Naoya The Great - Chapter 1 夢のまた夢・・・リング誌ファイター・オブ・ジ・イヤーに選出 Part 2 -

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■2023 Fighter of the year - リング誌が井上尚弥を選出



クロフォードは昨年1試合しか戦っておらず、それがスペンスとの4団体統一戦だった。両選手ともP4Pのトップ10入りを果たしており、対戦時はクロフォードが3位(井上:2位)で、スペンスは4位。

すなわちウェルター級の4団体統一戦は、P4Pトップ5以内に入る者同士の激突であり、戦前の予想も50-50の互角との見方が大勢を占めていた。米国の識者や関係者から高い評価を得ているスペンスをクロフォードはまったく問題にせず、一方的になぶり続けて後半のストップに追い込んでいる。

◎PBCオフィシャル・ハイライト



井上も過去最大の難敵と見られたフルトンをワンサイドの8回TKOに下しているが、2団体を統一したとは言え、世界王者としての実績が浅いフルトンはP4Pランク外で、アフマダリエフを超特大の番狂わせで破ったタパレスも同様。しかも、タパレスの勝利を予想する者は誰もいなかった。

制圧したウェイトを比較すると、クロフォードの3階級に対して井上は4階級。ただし、これにも当然異論はある。王国アメリカでは「正統8階級(Original 8)」への信奉が未だに厚く、ジュニア・クラスを認めたがらない人たちが何時の時代にもそれなりにいる。
※正統8階級:ヘビー,L・ヘビー,ミドル,ウェルター,ライト,フェザー,バンタム,フライの8つ

歴史が長いJ・ウェルター(S・ライト)とJ・ライト(S・フェザー)2階級と、1960年代初頭に創設されたS・ウェルター(J・ミドル)級は別にしても、1970年代半ば以降に増えたジュニア・クラスを軽視する傾向は根強く残っていて、とりわけ3階級⇒7階級に倍増したフェザー級以下の軽量級は、強い風当たりを受ける場面が少なくない。


1975年にWBCがJ・フライ(L・フライ)級を作った時、「フライ級で通用しない小柄な男たちの集まり」だと、辛らつかつあからさまな批判、否定的な言葉が聞かれた。

事実WBCの初代王者フランコ・ウデラ(伊)は、ミラノで行われたバレンティン・マルティネス(メキシコ)との決定戦で、反則勝ちを拾いに行った行為が疑問視されたことも相まって、母国のファンにも歓迎されず強いショックを受けたと公言。即座にベルトの返上とフライ級への出戻りを表明。翌月には欧州王座(EBU)に挑戦している(2回NC)。


ウデラは五輪2大会連続出場(1968年メキシコ:L・フライ/1972年ミュンヘン:フライ)の戦果を引っさげ、大きな期待を受けてプロに転じたエリート選手だったが、公称152センチの小兵で体格差に苦しんだ。

転向してから2年半後に実現した初挑戦(WBCフライ級)でも、大場政夫(王者のまま23歳の若さで交通事故死/2015年に殿堂入り)と五分の勝負を繰り広げ、小熊正二と4度も戦ったベネズエラの実力者ベツリオ・ゴンサレスに10回TKO負け。ゴンサレス戦までに18戦をこなしているが、3度の敗北を喫している。

メキシコ五輪で初めて採用された108ポンド(アマの呼称:L・フライ級)の新設は、ウデラに限らず160センチ未満の選手にとって大きな福音となった。決定戦に推挙されたウデラは、「自分の為の階級だ」と喜び勇んで参戦。しかし、「プロの108ポンドは、同胞のファンでさえ世界チャンピオンと認めてくれない」と失望を露にした。


続く1976年、多くの批判や忠告を意に介すことなく、またもやWBCがJ・フェザー(S・バンタム)級を立ち上げると、J・フライ級と同じ状況に陥る。曰く、「Original 8」のフェザーでトップになれない連中のお助け場・・・。

そしてこの否定的な意見は、1920年代に王者の承認が始まったJ・ライト級とJ・ウェルター級も同様で、世界タイトルとしての権威をまったく認められず、1950年代後半に再始動するまで、四半世紀に渡る長い休止が続いた。

共に殿堂入りを果たし、ライバルでもあったバーニー・ロス(ライト,J・ウェルター,ウェルター)とトニー・カンゾネリ(フェザー,ライト,J・ウェルター)の2王者は、現役時代はもとより、1930年代末に引退してから20世紀を終えるまでの60余年、王国アメリカのヒストリアンたちに「2階級制覇王者」として扱われ続け、「3階級制覇」を認められるようになったのは、21世紀を迎えて以降、ここ十数年のことである。


フィリピンの英雄フラッシュ・エロルデがJ・ライト級の王座に就き、ライト級の東洋王座と同時並行で連続10度の防衛を果たし、N.Y.の殿堂MSGを満杯にしたプエルトリコの人気者,カルロス・オルティスがJ・ウェルター級のベルトを巻いたお陰で、両階級は2度目の休止を免れた。

それでもなお、1962年に新設されたJ・ミドル(S・ウェルター)級を含めて、「ジュニア・クラス」と一括りにされ、「正統8階級」より一段も二段も低く見られた上、「稼げない不人気クラス」に甘んじ続ける。


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1960~70年代にかけて、人気と実力を兼ね備えた中量級のボクサーと、それらの人気選手を預かるプロモーターとマネージャーが「ジュニア・クラス」を敬遠してくれていたから、東洋圏のトップレベルが割って入ることができた。逆説的ではあるが、これもまた事実。

ライト級,ウェルター級,ミドル級でトップに君臨する東洋のボクサーは、いざ世界を狙う段になると、それぞれJ・ライト級,J・ウェルター級,J・ミドル級へと階級を下げるのが常だった。

状況が変わり始めたのは、70年代後半~80年代初頭にかけてのこと。

史上最年少王者(17歳6ヶ月)として国際的な注目を集めた早熟の天才,ウィルフレド・ベニテス(プエルトリコ/J・ウェルター,ウェルター,J・ミドル獲得/ミドル級挑戦は失敗)と、アレクシス・アルゲリョ(ニカラグァ/フェザー,J・ライト,ライト級を獲得/J・ウェルター級奪取は成らず)が、「ジュニア・クラス」であるにも関わらず米本土で人気を博し、相次いで3階級制覇を達成(1981年5月~6月)。

正統8階級しか認められていなかった時代に、8つしかないベルトのうち3つを同時に獲ったヘンリー・アームストロングの快挙(1937年10月~1938年8月にかけて達成)以来、半世紀近く途絶えていた大記録が、3つ同時ではないけれども1ヶ月の短い間隔で達成され、「ジュニア・クラス」への蔑視・軽視が徐々に解消し出す。

とりわけアルゲリョの果たした役割は大きく、今やベスト・ウェイトの評価も高いJ・ライト級で連続8回の防衛に成功(7KO)。地味で目立たなかった130ポンドに在米ファンと関係者の熱視線を集め、当時誰も考えすらしなかった4階級制覇を目指し、J・ウェルター級最強のアーロン・プライアー(米)と2度戦い、力及ばず敗れはしたものの、200万ドル超のビッグマネーファイトを実現(PPVはスタートしたばかりのヨチヨチ歩き)した。

N.Y.の殿堂MSGで高評価を得たベニテスとアルゲリョの偉業と人気に触発されたボブ・アラムが、シュガー・レイ・レナード,トーマス・ハーンズ,ロベルト・デュランの3王者を参入させたことで、特別に地味だったJ・ミドル級も一気に活性化。


さらにアラムは、ミドル級の覇王マーヴィン・ハグラーを巻き込み、レナードを軸にした「中量級ウォーズ」を大いに喧伝。稀代のスーパースター,モハメッド・アリという巨大な太陽を失った(1981年に引退)ボクシング界を停滞から救い出し、マイク・タイソンの出現までつなぐ。

”石の拳”デュランの4階級制覇、レナードとハーンズによる(不毛な)「5階級制覇合戦」が、1つの階級で長くベルトを守り、安定政権を築いて無敵の存在を自他共に認められることから、矢継ぎ早に体重を上げて、より多くの階級を獲る「複数(多)階級制覇」へと、スーパースターの評価基準を一変させる。


80年代前半から後半にかけて、J・ライト(V9)とライト(A・C統一/V1)を獲った後、90年代に入ってすぐJ・ウェルターも獲得。連続12回の防衛に成功(通算V16)した3つ目の140ポンドでキャリアのピークを築き、押しも押されもしない不動の地位を確立したフリオ・セサール・チャベスは、脅威の100連勝を目指して驀進。

そして変幻自在のアクロバティックなディフェンスを操り、ライト級~J・ミドル級の4階級を制覇したパーネル・ウィテカーは、ウェルター級王者として挑戦を受けたチャベスに事実上の初黒星を与えた他(1-0のマジョリティ・ドロー)、147ポンドのWBC王座を譲ったオスカー・デラ・ホーヤ戦でも、ゴールデン・ボーイを支持した判定を巡り、ハグラー vs レナード戦(1987年)と並んで未だにマニアの議論を呼ぶ。

デラ・ホーヤの6階級制覇(プロ入りに際して7階級制覇を目標に掲げる)と、メイウェザーの5階級制覇は勿論、まさかのウェルター級進出を成功させ、8階級制覇(リング誌王座を含む/主要4団体:6階級)と同時に、未曾有のアメリカン・ドリームを手にしたパッキャオの奇跡も、80年代を沸かせた「中量級BIG4」の延長線上に成し得たものに違いない。


大場と一緒に殿堂入りの栄誉に浴した具志堅用高(3代目WBA王者/V13=未だに更新されない国内最多防衛記録)と、17連続KO防衛(ゴロフキンに並ばれたがこれも容易に破られない大記録)の離れ業をやってのけたウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ/WBC王者)の大活躍があったればこそ、J・フライ級とJ・フェザー級は一度も消滅や休止することなく今日まで歩みを続けられた。

その後も、WBCが独断専行してWBAが後追いする構図の中、クルーザー級(1979年/スタート時の呼称はJ・ヘビー級)、J・バンタム(S・フライ)級(1980年)、S・ミドル級(1984年/新興マイナー団体だったIBFが強行/WBAとWBCは1987~88年に遅れて追随)、ミニマム(ストロー)級(1987年)と続く階級大増設の礎となる。

WBCがストロー(ミニマム)級の新設に踏み切った時も、露骨に否定的だった米英を初めとして、「リアルな水増し。存在意義を一切見出せない」と酷い言われようだったが、そもそもフェザー級以下の軽量級は、1940年代以降、主要な選手層をメキシコを中心とした中南米諸国と東洋圏(日・比・タイ・韓)に頼る状況が常態化していたこともあり、中~重量級中心の欧米(特にアメリカ)では、文字通り”軽く”見られ続けた。


1990年~99年までの9年間、恐ろしいまでの強さと巧さで無人の野を突き進んだ”ミスター・パーフェクト”ことリカルド・ロペス(メキシコ/V22)が現れなかったら、105ポンドは本当に消滅の危機に瀕していたかもしれない。

誰もが驚嘆・賞賛するしかなかったあのロペスでさえ、米本土の興行に呼ばれる時は前座扱いで、客もまばらなラスベガスの大会場で早い時間帯にリングに上げられ、安い報酬を強いられている。

具志堅用高の栄えある殿堂入りも、軽量級で史上初の「100万ドルファイト」を実現したマイケル・カルバハル(米)とチキータ・ゴンサレス(メキシコ)のライバル・ストーリー(1993年~1994年/2戦1勝1敗)が、全米のファンを熱狂させたからこそに他ならない。

チキータとカルバハルが一緒に顔を揃え、キャナストゥータに招かれたのは2006年。80年代に隆盛を誇った韓国を代表するJ・フライ級の2大スターの1人,張正九(WBC/V15)が2010年、もう1人の柳明佑(WBA/連続V17・通算V18)も2013年に殿堂入りを果たし、昭和~平成(+令和)を生きた日本のオールド・ファンは、「具志堅が先だろう!」と悔し涙に暮れた(?)ことをまざまざと思い出す。


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スーパースターたちが何の違和感も躊躇もなく参入するようになり、J・ウェルター(S・ライト)とJ・ミドル(S・ウェルター)の2階級は、東洋圏のボクサーがおいそれと近づけない高嶺の花になってしまったけれど、「ジュニア・クラスへの偏見」は確実に減少した。

クロフォードが制覇した3階級は、ライト,J・ウェルター(S・ライト),ウェルター。全階級を通じて最も選手層が厚く、最激戦区として認知されている。その上で、140ポンドと147ポンドの4団体をまとめた。

なおかつJ・ライト(S・フェザー)級からミドル級までの6階級は、認定団体が増えたこと以外、1960年代前半から半世紀以上変更されていない。複数階級制覇の難易度が高いのは勿論、4団体に増えてもなお、東洋圏のボクサーにはタイトルへの挑戦機会を得ること自体が難しい。

井上が獲った4階級は、L・フライ(J・フライ),S・フライ(J・バンタム),バンタム,S・バンタム(J・フェザー)。「正統8階級」に含まれているのは、バンタム級の1つのみ。「Original 8」の118ポンドで4団体を統一したのは大きいけれど、フライ級を飛ばしたのは残念。


フェザー級より下にバンタム級とフライ級しか存在しなかった1974年以前なら、井上はバンタム級しか獲っていないことになる。世界タイトルもWBAとWBCの2団体のみ。世界ランキングも10位までしか認められていなかった。とは言え、ボクサーを取り巻く環境は、ボクサー個人の責任ではない。

井上が生を受けた1993年当時、階級は既に17あって、世界タイトル認定団体も4つに増えていた。こればかりはどうしようもない。同じ階級に複数の世界一が、当たり前のように並立する。

根本的な矛盾を指摘されたら返す言葉のない、欺瞞に満ちたこの現実にどう向き合うのか。承認料ビジネスの旨味にはまって抜け出せなくなった老舗のWBAとWBCを筆頭に、主要4団体は有力プロモーターとズブズブで、もはやかけるべき言葉もない。土台から腐り切っている。

繰り返しになるが、こうした惨状もボクサー個人には何の責任もない。ただし、ベルトを保持するすべてのチャンピオン一人一人が、己の誇りと矜持を懸けて、それぞれの答えを明確にしなければ示しがつかない。

その姿勢は容赦なく問われ続けなければならないし、この点に関する井上の立ち居振る舞いはまったく素晴らしいもので、文字通り一点の曇りもない。


その上で、クロフォードと井上の同時受賞は考えられなかったのかとも思う。「Saturday Night Boxing」というサイトを運営するアダム・アブラモヴィッチ(ランキングサイトTBRBの選考委員)が、大晦日に2023年度の年間表彰(独自)を発表しているが、まさしくクロフォードと井上を2人揃って選んでいる。

◎関連記事・サイト
<1>The 2023 Saturday Night Boxing Awards
”Fighter of the Year: (tie) Terence Crawford and Naoya Inoue”
2023年12月31日
http://www.saturdaynightboxing.com/2023/12/the-2023-saturday-night-boxing-awards.html

<2>Members:Transnational Boxing Rankings Board(TBRB)
https://tbrb.org/members


実は、リング誌にも2名同時選出の事例はあり、なんと5回にも及ぶ。直近は2020年。僅か3年前のことだ。

<5>2020年:タイソン・フューリー&テオフィモ・ロペス
<4>1985年:マーヴィン・ハグラー&ドン・カリー
<3>1981年:シュガー・レイ・レナード&サルバドル・サンチェス
<2>1972年:モハメッド・アリ&カルロス・モンソン
<1>1934年:トニー・カンゾネリ&バーニー・ロス

並んだ名前をあらためて見返すと、フューリー&テオフィモを除く4例は「ああ、なるほど・・・」と得心がいく。

リング誌の当該記事に付いたコメントにも、W受賞で良いのではないかとの投稿があり、同じ考えの持ち主がアメリカにもいるのかと、少し嬉しくなった。

また、スペンスの現在の実力に言及するコメントもあり、在米のマニアは良く見ているとも思う。


Part 3 へ



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■5 or 6月/日本国内(?)/WBC・WBO世界S・バンタム(122ポンド)級タイトルマッチ12回戦
2団体統一王者 スティーブン・フルトン(米) vs 前4団体統一バンタム級王者/WBO1位 井上尚弥(日/大橋)

リアル・モンスターが進出する122ポンドの現状について、簡単におさらいしてみよう。まずは最新の世界ランキングから。

主要4団体の世界ランキング(122ポンド/11位以下は割愛・省略)

主要4団体の世界ランキング(122ポンド)
  WBA
(2023年1月31日更新)
呼称:S・バンタム級
WBC
(2023年2月16日更新)
呼称:S・バンタム級
IBF
(2023年2月11日更新)
呼称:J・フェザー級
WBO
(2023年2月14日更新)
呼称:J・フェザー級
C ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
1位 空位 井上尚弥
(日/大橋)
マーロン・タパレス
(比)
井上尚弥
(日/大橋)
2位 亀田和毅
(日/TMK)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
空位 ライース・アリーム
(米)
3位 ケヴィン・ゴンサレス
(メキシコ)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
4位 シャバス・マスゥド
(Shabaz Masoud/英)
アラン・デヴィッド・ピカソ
(メキシコ)

ライース・アリーム
(米)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
5位 エフゲニー・パヴロフ
(カザフスタン)
ライース・アリーム
(米)
井上拓真
(日/大橋)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
6位 ヘクター・バルデス
(米)
チャイノイ・ウォラウット
(Chainoi Worawut/タイ)
カール・J・マルティン
(比)
サム・グッドマン
(豪)
7位 ラファエル・ペドロサ
(パナマ)
カルロス・カストロ
(米)
サム・グッドマン
(豪)
ムハンマド・シェホフ
(ウズベキスタン)
8位 マックス・オルネラス
(米)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
赤穂亮
(日/横浜光)
※引退を表明
9位 オーレ・ドゥフン
(Oleh Dovhun/ウクライナ)
リアム・デイヴィス
(英)
ルドゥモ・ラマティ
(南ア)
カール・J・マルティン
(比)
10位 イスラエル・ロドリゲス
(メキシコ)
武居由樹
(日/大橋)
亀田和毅
(日/TMK)
亀田和毅
(日/TMK)

主要専門サイトのランキング(122ポンド/承認は10位まで)

主要専門サイトのランキング(122ポンド)
  リング誌
(2023年2月18日更新)
呼称:J・フェザー級
TBRB
(2023年1月9日更新)
呼称:J・フェザー級
ESPN
(2023年2月21日更新)
呼称:J・フェザー級
Boxrec
(随時更新)
呼称:S・バンタム級
C 空位 空位
(※)

(※)
1位 スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
2位 ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
3位 ルイス・ネリー
(メキシコ)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
4位 ライース・アリーム
(米)
ライース・アリーム
(米)
ライース・アリーム
(米)
ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
5位 アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
井上拓真
(日/大橋)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
マーロン・タパレス
(比)
6位 マーロン・タパレス
(比)
マーロン・タパレス
(比)
井上拓真
(日/大橋)
カルロス・カストロ
(米)
7位 ロニー・リオス
(米)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
ゾラニ・テテ
(南ア)
ライース・アリーム
(米)
8位 ゾラニ・テテ
(南ア)
ゾラニ・テテ
(南ア)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
井上拓真
(日/大橋)
9位 マイク・プラニア
(比)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
マーロン・タパレス
(比)
ロニー・リオス
(米)
10位 井上拓真
(日/大橋)
ケヴィン・ゴンサレス
(メキシコ)
ロニー・リオス
(米)
リアム・デイヴィス
(英)

主要専門サイトのランキングについて(補足)

  1. 「TBRB(Transnational Boxing Rankings Board)」は、リング誌元編集長のナイジェル・コリンズ,クリフ・ロールド(Boxing Sceneの主任記者)らが中心となって、2012年に立ち上げランキング制定機関。
  2. オスカー・デラ・ホーヤ率いるゴールデン・ボーイ・プロモーションズ(が傘下に収める出版社)によるリング誌の買収を巡り、編集長を辞任(事実上の解任とされる)したコリンズが、ランキングの策定も含めた編集方針に対するプロモーターの圧力は不可避だとして、「真に中立的な立場を担保されたランキング」の必要性を訴えた。
  3. 最大の問題は、ランキングの更新が不定期なこと。月次のアップデートができていない。ランキングの透明性と信頼性を高めることを目的として、ボードを構成するメンバーが各国に多数いることも、定期更新を難しくしているのかもしれない。
  4. Boxrecは、登録されたボクサーのレコード(勝敗)を細かく分類し、自動的にポイントに変換・集計を行い、順位を付ける仕組みを作り上げた。
  5. 対戦時点での持ち点(リアルタイムでの総得点)を基準にして、独自の係数でポイントに反映させているらしい(持ち点の多寡により勝敗と連動する獲得ポイントが変動)。
  6. 世界戦を筆頭に、タイトルマッチの構成比が高いほどポイントも上がり易くなっている模様。
  7. 最大の問題点は、そもそもの基準となるポイント計算に、対戦相手の実力が正当に反映されていると言いづらいこと。世界タイトルの乱立に加えて、大量に発生した水増しランカー等の問題は一切考慮されない為、弱い相手を選んで数多く試合を組みKO勝ちを続け、認定団体が承認するいい加減な地域タイトルの獲得・返上を繰り返すことで、相応にポイントは上昇する。


Part 4 へ続く

フルトン VS 井上尚弥が合意へ Part 2 - 手ぐすねを引いて待つ(?)S・バンタム級トップ -

カテゴリ:
■5 or 6月/日本国内(?)/WBC・WBO世界S・バンタム(122ポンド)級タイトルマッチ12回戦
2団体統一王者 スティーブン・フルトン(米) VS 前4団体統一バンタム級王者/WBO1位 井上尚弥(日/大橋)

”ナオヤ・イノウエ争奪戦”。

118ポンドの覇者が雄々しく高らかに宣言した階級アップの一報を受け、年明け早々の122ポンドが色めき立つ。

「こっ酷く打たれるのだけはご勘弁・・・」

専守防衛に閉じこもるのが精一杯のポール・バトラーを11ラウンドで完全に粉砕し、4つ目となるWBOのベルトを巻いた井上を、WBOはスーパー王者に認定(昨年12月20日付け)しただけでなく、1月14日に公表した最新の月例ランキングで、J・フェザー級(IBFとWBOは旧来の呼称を継承)の1位に据えた。

「えっ?。また正規王者決定戦をやるの?」

暫定もレギュラーも休養もいない、正真正銘の完全制覇を果たしたばかりなのに、「この期に及んで、WBOはまたぞろ正規王者をデッチ上げるつもりなのか?。余計なことを・・・」とお嘆きになる方がおられるやもしれない。

だがご安心を。WBOのスーパーチャンピオンは名誉の称号であり、新たにレギュラーチャンピオンを作る愚は冒さない(今のところは)。乱造乱発で正規との並立が常態化していた暫定王座とともに、何かと悪名が高いWBAのそれとは違う。

ちなみに、WBOのみでM・フライ(ミニマム)~フライ級までの3階級を獲った田中恒成も、同じ栄誉に浴している。

Murodjon_Inoue1


そして「井上転級」の一報に素早く反応したのは、WBAとIBFの2冠を保持するもう1人の主役,ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)も同じ。

ご本人直接のコメントではなく、エディ・ハーン(プロモーター)の発言ではあるものの、リアル・モンスターの参戦に歓迎の意向を示しているとのこと。

◎エディ・ハーンの発言に関する記事
<1>Hearn: Akhmadaliev Would Have Absolutely No Problem Fighting Inoue For Undisputed
2023年2月8日

<2>Eddie Hearn Won’t Block Naoya Inoue Vs. Murodjon Akhmadaliev For Undisputed At 122 This Year
2023年1月29日/Boxing News24

<3>Hearn: “Inoue Against Akhmadaliev Is An Unbelievable Fight!”
Eddie Hearn Says Team Akhmadaliev Wants To Fight Naoya Inoue!
2023年1月19日/3KING BOXING WORLDWIDER
https://3kingsboxing.com/eddie-hearn-akhmadaliev-wants-inoue-fight/


2019年4月以来、同胞のシャフラム・ギヤソフ(リオ五輪ウェルター級銀メダル/プロ13連勝9KO)と一緒に”MJ”を獲得(ロシアの主要なファイターを傘下に置くプロモーター,アンドレイ・リャビンスキー,同じくロシアの若き敏腕マネージャー,ヴァディム・コルニリョフとの共同プロモート)したエディ・ハーンが、「2人のマッチアップに障害は無い。マーロン・タパレスとの指名戦(IBF/4~5月中の開催を予定)を終えれば、何時でも交渉をスタートできる。」と断言。

フルトンのケースと完全に共通するが、常に争点の中心となる放映権(ESPN VS DAZN)の問題は、「然るべき額での金銭譲渡で解決できる」との判断を示している。

「フルトンと井上の交渉が不調に終るようなら、我々はすぐに動くことが可能だ。タパレス戦の後にはなるが、そう遅くない時期にやれるだろう。」


また、S・バンタムに上げる前から井上との対戦に積極的だったルイス・ネリーが、性懲りも無く名乗りを挙げている。

「イノウエは過大評価され過ぎだ。実際はそこまでのボクサーじゃない。オレとやればわかる。あっという間にメッキが剥がれるからな。」

2017年~2019年にかけて、事あるごとに挑発的なコメントを振りまいていた。短期間だったがフレディ・ローチと組んだ時期(ネリーのウェイトオーバーで幻に終ったエマニュエル・ロドリゲス戦に備えた体制一新/2019年11月)もあり、ローチと一緒に「井上恐るるに足らず」とぶち上げる映像もあった筈だ。


ステロイド使用と確信犯の体重超過で我らが山中慎介のキャリア最終盤にとんでもない泥を塗り付け、JBCから事実上の追放処分(日本国内開催の興行からの締め出し)を受けた後、WBCバンタム級の指名挑戦権を懸けたマニー・ロドリゲス戦でも同じ真似を繰り返し、懲りた様子もほとんど感じられない。

日本側の顔を立てる為に一定期間ランキングから除外していたWBCも、ネリーがS・バンタムへの増量を正式に表明(2020年2月)すると、すぐに1位に復帰させてアーロン・アラメダ(メキシコ/対戦当時WBC6位)との王座決定戦を用意している。

この時期正規王者のレイ・バルガスは、前戦の挑戦者フランクリン・マンサニージャに負けず劣らず、バッティング上等の押し合い&揉み合いを仕掛け続ける亀田和毅に手を焼きながらも、誰の目にも明らかな3-0判定に下してV5を達成(2019年7月/和毅の暫定王座も吸収統一)。


長身故に付いて回る体重維持の困難を訴えて、フェザー級進出に色気を出し始めていたところへ、2試合連続のラフ&ダーティ(大の苦手にする乱戦)で負った傷の治療、同年11月に発覚したドーピング違反、長らく世話になったゴールデン・ボーイ・プロモーションズ(DAZN)からPBC(Showtime)への乗り換えに足の負傷がかさなり、WBCは休養王者への横滑りを決定した(2020年8月/直後に空位:はく奪 or 返上)。

126ポンドの指定席(S・バンタムを放棄した場合即座に1位に据える)を横目で睨みつつ、好条件での復帰戦を模索するバルガスは、パンデミックの追い討ちを受ける格好で戦線離脱が続き、結果的にブランクは2年4ヶ月に及ぶ。

いずれにしても、WBCは余裕でネリーに決定戦を融通できる状況にあったということ。そして1年2ヶ月ぶりの実戦復帰となったアラメダ戦(2020年9月)では、バンタム級時代に発揮していた圧巻のパワーは影を潜めてしまい、大苦戦の末にポイント差が大きく割れた3-0の判定勝ち(118-110,116-112,115-113)を拾う。

こうしてWBA王者フィゲロアとの2団体統一戦が整い、周知の通りまったくいいところを見せることなく、テキサスのニューアイドルに押し捲られて7回TKO負け。サイズの不利も無関係ではなかったけれど、フィゲロアの左フックでレバーを抉られ悶絶するネリーの姿に、日本のファンは拍手喝采で大いに溜飲を下げた(2021年5月)。


昨年2月にセットされた再起戦は、アリゾナ期待の無敗のホープ,カルロス・カストロとのマッチアップ。170センチの長身痩躯を目一杯活かすボクサーに近いボクサーファイターだが、2021年8月の前戦では、ベテランのオスカル・エスカンドンを相手に頭をくっつけたプロのインファイトで応戦。不得手の白兵戦を敢えて選び、見事に勝ち残っている。

乱戦を嫌がる点はレイ・バルガスと良く似ていて、V字回復を目論むネリーには持って来いとも思われたが、エスカンドンを押し切ったフィジカルは想像以上に強く、そうは簡単に問屋は卸さないだろうと考えいたら案の定。

微妙なスプリット・ディシジョン(96-93,95-94,94-95)の後押しで、どうにかこうにかWBCシルバー王座を獲得したが、どうしようもないパフォーマンスの低下は明らか。


山中慎介の”ゴッドレフト”を潰す為にステロイドに手を出し、それが見つかると再戦では意図的な体重超過。118ポンドで見せた強さの源泉が、「PED+計量後の大幅なリバウンド」だったことを自ら証明してしまったに等しい。

流石にマズイと慌てた(?)チームは、昨年10月の再起第2戦で同胞のデヴィッド・カルモナを引っ張り出す。115ポンド時代の井上尚弥に有明で挑戦して、判定まで粘った勇敢なファイターを覚えておいでの方も多いだろう(2016年5月)。

モンスターとの奮戦を終えた後、カルロス・クァドラスにも善戦したが判定負け。その後階級をアップして、2017年以降バンタムとS・バンタムを行き来しながらキャリアを継続するが、ネリー戦を迎えた時点で7戦して2勝5敗。


負けた相手にはカル・ヤファイ(ロマ・ゴンに王座を追われた後バンタムへ上げた)も含まれるが、無名の中堅クラスに思うように勝てない。年齢は31歳で老け込むようなトシではないが、163センチ弱(162.3=井上戦の予備検診データ)のサイズも苦闘の要因。

自分より小さく最近は負けが込み、6年も前の話しにはなるが、モンスターの豪打に耐え抜いて12ラウンズをしのぎゴールテープを切っている。ノニト・ドネアとともに、16戦を数える世界タイトルマッチにおいて、モンスターがKOできなかった「たった2人の男」の1人。

かなり高い確率でKO勝ちが見込める上、首尾良くし止めることができれば井上戦のアピールにも何かと都合がいい。良く考えられたマッチメイクであり、陣営が望む通りの即決(3回)KOでネリーは試合を終わらせた。


今週末(明日)、アザト・ホヴァニシアン(アルメニア)とWBCの指名挑戦権を懸けて戦う予定のネリーが、リング誌のインタビューでまたぞろ何事かを喚き散らした(?)模様。

◎リング誌に掲載された記事
LUIS NERY WARNS AZAT HOVHANNISYAN: YOU WILL SEE THE FAST, AGGRESSIVE ‘PANTERA’ LOOKING FOR THE KO
2023年2月15日/Ring Magazine

「過大評価のされ過ぎは、ナオヤじゃなくてお前だろう?」

ついでに教えてやるが、S・フライ級時代のモンスターは試合の度に拳を傷めていた。減量苦による腰痛も抱えて、コンディショニングをやりくしながらの連続防衛だった。

カルモナ戦でも第2ラウンド早々に右の拳をやってしまい、まともに使えるのは左1本の状態で大差の判定勝ちを収めている。


アルメニアからカリフォルニアに移民してきたホヴァニシアンは、昨年9月モンスターがハリウッドのワイルドカードで行ったスパーリング合宿で手合わせ済み。ジャパニーズ・モンスターのパートナーに自ら名乗りを挙げたとのことで、モンスターを追い詰めたらしい(?)アダム・ロペスと並ぶ猛者たちの代表格。

ごく短く編集された映像ではあったが、NHKが4冠達成直後に放送したドキュメンタリーにその様子が収められていた。

Luis Nery_Azat Hovhannisyan
※後方の中央はお馴染みのオスカー・デラ・ホーヤ(興行を主催するプロモーター)


”クレイジーA”の異名を持つアルメニアのファイターは、レイ・バルガスに挑戦(2018年5月)して大差の0-3判定に退いてはいるものの、逃げ足の速い長身痩躯のクリンチワークに絡め取られて攻め手を塞がれ、ペースポイントを献上する現代のファイターたちが頭を悩ます典型的な負けパターン。真正面から打ち合ったら滅法強い。

この際だからホヴァニシアンにネリーを潰して貰い、煩いだけの口を塞いで欲しい。後半~終盤にかけてのストップでアルメニア移民の勝ちと読むが、実は崖っぷちのネリーが、PEDの助けを借りていないことを願うのみ。


◎ネリー VS ホヴァニシアン戦関連記事
<1>Luis Nery vs. Azat Hovhannisyan Finalized For February 18
2023年1月25日/Boxing Scene
https://www.boxingscene.com/luis-nery-vs-azat-hovhannisyan-finalized-february-18--172046

Azat Hovhannisyan: Luis Nery has my respect, but he’s in for a war
Azat Hovhannisyan is gearing up for a war against Luis Nery on Feb. 18.
2023年2月10日/Bad Left Hook



Part 3 へ続く

フルトン VS 井上尚弥が合意へ Part 1 - 転級初戦がいきなり最終ステージ? -

カテゴリ:
■5 or 6月/日本国内(?)/WBC・WBO世界S・バンタム(122ポンド)級タイトルマッチ12回戦
2団体統一王者 スティーブン・フルトン(米) VS 前4団体統一バンタム級王者/WBO1位 井上尚弥(日/大橋)

Fulton_Inoue 1

シャクール VS 吉野戦内定の速報に続いて、ESPNがまたまた特大のリーク。バトラー戦からちょうど1ヶ月を経た先月13日、4本のベルト返上とS・バンタム級への進出を正式に表明した井上尚弥が、その初陣でいきなりフルトンに挑戦・・・?。

来たる2月25日、122ポンドのベルトを保持したまま、126ポンドのWBC暫定王座を懸けたブランドン・フィゲロアとの再戦が内定(前戦に続くミネアポリス開催)と報じられていただけに、急転直下の感が否めないのも確か。

□Naoya Inoue, Stephen Fulton agree to 122-pound title bout
2023年1月19日/ESPN


リング誌が先月12日に掲載した記事では、フルトン VS ダニー・ローマン戦が行われたアーモリー(ミネアポリスにある8,400人収容の屋内競技場)が用意され、フルトン VS フィゲロア2を筆頭に、以下の2試合を含めた”トリプル・ヘッダー”と報じられている。

□STEPHEN FULTON-BRANDON FIGUEROA REMATCH LIKELY FOR FEBRUARY 25 ON SHOWTIME
2023年1月12日/Ring Magazine

◎IBF J・ウェルター級王座決定戦
IBF1位 ヘレミアス・ポンセ(亜) VS IBF2位 スベリアル・マティアス(プエルトリコ)

◎S・ライト級10回戦
エルヴィス・ロドリゲス(ドミニカ) VS ジョセフ・アドルノ(米)
※アンダーカード:未定

30連勝(20KO)のパーフェクト・レコードを更新中のポンセ(26歳)は、テレンス・クロフォードに続いて140ポンドの4団体を制圧したジョシュ・テーラー(英/スコットランド)への指名挑戦権を得ていたが、147ポンドへの階級アップを公表済みの統一王者は、2-1の判定を巡って紛糾したジャック・カテラル(英/イングランド)とのリマッチしか眼中にない。

カテラルとの決着戦が140ポンドのラスト・ファイトという訳で、指名戦の履行を求めるWBA(昨年5月),WBC(同7月),IBF(同8月)のベルトを相次いで返上。決定戦が行われたWBAとWBCは、以下の通り昨年中に新チャンピオンを承認済み。

※WBA:アルベルト・プエリョ(プエジョ/ドミニカ)
昨年8月20日,フロリダ州ハリウッドで2位のバティル・アフメドフ(ウクライナ)に12回2-1判定勝ち

※WBC:レジス・プログレイス(米)
昨年11月26日,カリフォルニア州カーソンで1位ホセ・セペダ(米)を11回KOで撃破。およそ3年ぶりとなる王座奪還に成功した。


残ったIBFの決定戦でポンセに挑むマティアス(30歳/18勝全KO1敗)は、プエルトリコ期待の140パウンダー。

やはり同じ階級の次期王者候補の1人と目されるドミニカのプロスペクト,エルヴィス・ロドリゲス(27歳/13勝12KO1敗)に相対するアドルノ(23歳/17勝14KO1敗2分け)も、ロドリゲスに引けを取らない好レコードの持ち主で、フルトンと同じフィラデルフィアの出身。

ライト級の熱気と群雄割拠には今1歩及ばないながらも、途切れることなく新たなタレントが顔を出す(テオフィモ・ロペスも参入)。激戦区の激戦区たる所以だろう。


忙しさに取り紛れて記事をアップできないでいるうちに、御大ボブ・アラム(井上の共同プロモーター)もコメントを出したようだ。

◎Naoya Inoue Vs. Stephen Fulton Possible For April Says Bob Arum
2023年1月30日/Boxingnews24
https://www.boxingnews24.com/2023/01/naoya-inoue-vs-stephen-fulton-possible-for-april-says-bob-arum/

◎JAKE PAUL VS TOMMY FURY WILL DO VERY GOOD BUSINESS ' Bob Arum Fury-Usyk update
2023年1月29日



リング誌に記事が出た1月上旬の時点では、Boxrecのスケジュールにも掲載されていなかったが、本番まで約1ヶ月というタイミングでようやくアップされた。半ば当然の事ながら、井上戦が具体化したフルトンの名前は無い。

また、開催地ミネアポリスの出身で、ロンドン五輪の代表候補からプロ入りした遅咲きのウェルター級,ジャマル・ジェームズ(34歳/27勝12KO2敗/アマ150戦超)が、一昨年10月に喫したプロ2敗目(ラジャブ・ブタエフのWBAレギュラー王座に挑戦して9回TKO負け)からの復帰戦が追加されている。

※Boxrec Fight Schedule
Saturday 25, February 2023
Armory, Minneapolis, Minnesota, USA

同じくフィゲロアも未記載だが、フルトン撤退の穴を埋めるべく、ランク3位の前王者マーク・マグサヨ(比)のスクランブル発進に関する記事が既に出ていた。

※Magsayo eyes return to throne
2023年1月7日/PhilBoxing.com


マグサヨから正規王座を奪取したレイ・バルガスに、フェザー級のベルトを持ったままS・フェザー級の決定戦を承認したことでも分かる通り、WBCはメキシカン(とメキシコ系米国人)の人気選手のプロテクトについて一切躊躇しない。

ドーピング違反が発覚したカネロとバルガス、PED使用+確信犯の体重超過をセットでやからかしたルイス・ネリー&デヴィッド・ベナビデスに対する過剰なまでのバックアップはもとより、かつてのエリック・モラレスやリカルド・ロペス,トラヴィエソ・アルセらへの厚遇を引き合いに出すまでもないと思う。

人気者のフィゲロアに何としても126ポンドの暫定を獲らせて、今週末アラモドーム(テキサス州サンアントニオ)で首尾良くバルガスが勝利したあかつきには、正規王座をバルガスからフィゲロアへと禅譲(バルガスが返上→暫定から繰り上げ)させる腹づもり。

相手が始めからマグサヨだったなら、フィゲロアの暫定王座戦もアラモドームの興行に組み込んでいたに違いない(人気者のフィゲロアはテキサス出身)。

Brandon Figueroa

集客と視聴者数の都合だけを考えれば、「フルトン VS フィゲロア2」もテキサスかカリフォルニアでやった方がいいに決まっている。素人でもわかる理屈で、議論の余地はない。

しかし、米本土で最もメキシコ系移民の人口構成比が高い西海岸のカリフォルニアと第2位テキサスでの開催について、判定決着ありきのフルトン陣営が嫌がり避けるのも当たり前。どちらとも取れる微妙なラウンドを、全部フィゲロアに持って行かれたらそれこそ一大事。

競った展開を覚悟しなければならないフィゲロアと彼の陣営もまた、フィラデルフィア(フルトンのホームタウン)やニューヨーク,アトランティックシティといった東海岸の要所へは行きたくない筈。

S・ミドル級のニュー・センセーション(?),デヴィッド・モレル(キューバ)が、亡命後の生活と活動の拠点を何故かフロリダ(150万人規模に及ぶ亡命キューバ人の大きなコミュニティがある)ではなくミネアポリスに置いていた為、WBAレギュラー王座の防衛戦もすべてアーモリーで行われていた。

大き過ぎず小さ過ぎない小屋のキャパシティ(8千人超)も、モレルだけでなくフルトンの現在地(バリュー=商品価値)には程良いサイズだとの判断なのかもしれない。


2014年秋にデビューしたフルトンは、8年間のプロ生活で21戦をこなしているが、地元のペンシルベニア州内で行われたのは9試合(半数以下)。そのうちホームタウンのフィラデルフィアでは3試合しかやっておらず、なおかつ修行時代(キャリアの前半=2017年まで)に集中している。

場所もカジノが併設された多目的商業施設にリングを設営したり、1,300人しか収容できない2300アリーナ(ウズベクの雄クァドラティロ・アブドゥカハロフと小原佳太のエリミネーターが行われた会場)が使われていて、念願の世界チャンピオンになって以降も、1万人規模のリアコウラス・センター(アルトゥール・ベテルビエフとオレクサンドル・ゴズディクのL・ヘビー級統一戦を開催)には未登場。

後で述べるけれど、フルトンの人気と集客力(視聴者数)は、アル・ヘイモン=PBC(Premier Boxing Champions)の興行を取り仕切る主要プロモーター、そしてPBCの主要な興行を中継するShowtimeの厚く堅い信頼を勝ち得るまでに至っていない。


一昨年11月にラスベガスで行われた第1戦で、判定(0-2のマジョリティ・ディシジョン)に納得できないフィゲロアが、お馴染みのジム・グレイによる勝利者インタビューに割って入り、「ちょっと待て!。勝ったのはオレだ!。観てくれたファンが証人だ!」と詰め寄った。

Fulton_Figueroa 1

「スポーツマンシップに欠ける。悔しいのはわかるが恥ずべき行為だ。」

フィゲロアに対する批判は半ば当然で、致し方のないところではある。但し、どこにもぶつけようのない怒りを抑えることができず、やらずもがなの抗議に及んだフィゲロアの無念にも同情の余地が無い訳ではない。


リング上で火花を散らしたこのやり取りのお陰で、リマッチへの流れは完全に出来上がったと誰もが確信した筈だが、フィゲロアの増量で一旦は胡散無償したかに思われた。

現代のテキサスを代表するアイドルとの再戦は無くなったものの、前WBA・IBF統一王者の強敵ダニー・ローマンとの防衛戦が決定。接(苦)戦は必至との予想を大きく覆し、ほぼフルマークの大差判定で終わらせると、フェザー級でのフィゲロアとの再戦が一気に具体化(失意のローマンはそのまま引退)。

長身のフィゲロアだけでなく、フルトン自身も厳しさを増すウェイト・コントロールについて繰り返し言及していた経緯があり、現状想定し得る対戦相手の中では最も稼ぎのいいフィゲロアを選ぶしかないという見方が大勢を占める。

「126ポンドに完全に移動するのかって?。そりゃあ条件次第だ。」

フルトンにしても、122ポンドのベルトを持ったままでのフェザー級挑戦。フィゲロア戦以上のリターンが見込める井上戦の可能性を残し、126と122の両面待ちを決め込む。


Part 2 へ続く

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