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43歳の閃光三度び日本のリングへ - 両国トリプル世界戦プレビュー 【堤 vs ドネア Part 1】 -

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■12月17日/両国国技館/WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
正規王者 堤聖也(日/角海老宝石) vs 暫定王者 ノニト・ドネア(比)




数多あるプロスポーツの世界には、そのジャンルやレベルを問わず、老いを知らない(拒否し続ける?)トップスターが時折出現する。

選手生命を左右する大きな故障の有無や、予期せぬ病魔との闘い等々はひとまず置くとして、トップシーンでの活躍が期待できる年齢の限界も、概ね30代前半~半ばが明確な分岐点となり、長くても30代後半というのが概ね共通する理解だろう。

80年代に始まった年間にこなす試合数の激減に加えて、旧ソ連・東欧のステート・アマの流入が本格化したは90年代以降、選手の高齢化が急速に拡大浸透したプロボクシングは、現役選手の寿命延長だけでは済まず、70~80年代にピークを迎えて引退したかつてのビッグネームたちまでが実戦のリングに舞い戻り、重量級を中心に”シニア・リーグ”の様相を呈した。

L・ヘビー,クルーザー,ヘビーの最重量3階級は、王国アメリカ(黒人),ロシア(旧ソ連邦),キューバのアマ3強でさえ図抜けた才能が現れなくなり、深刻化する一方の人材不足・枯渇に喘ぎ、高齢選手に頼らざるを得ない状況が尾を引き続けている。


そうした最重量ゾーンでも、40歳を超えて第一線に留まることは容易ではなく、2006年春から2015年の冬まで、9年余りもの長きに渡ってヘビー級を支配し、WBCを除く3団体をまとめたウラディーミル・クリチコは、39歳8ヶ月でタイソン・フューリー(当時27歳)の軍門に下り、節目となる連続V20を阻止された。

1年半の休息を経て41歳で復帰したが、アンソニー・ジョシュアに終盤11回TKO負け。20年に及ぶキャリアに幕を引く。

右膝の重症(前十字靭帯断裂)を理由に、34歳4ヶ月(2005年11月)で王者のまま引退を表明した実兄ヴィタリも、2008年10月、37歳の誕生日を目前にカムバック。復帰戦でいきなりWBC王座を獲得すると、2012年9月まで9度の防衛に成功。

弟ウラディーミルとともに4年間ヘビー級を支配すると、41歳2ヶ月で再び王者のまま引退。本格的な政界進出に乗り出す。


秀逸なパワーとスピード&シャープネスの共存が要求される最激戦区の中量級と、スピード&クィックネスに依存せざるを得ないフェザー以下の軽量級は、豊富な運動量と手数が必須とされるがゆえに、30代半ばを超える超高齢選手の活躍はほとんど不可能と考えられてきた。

21世紀の潮流とも言うべき抱きつき合戦(露骨なクリンチ&ホールドによる安直なインファイト潰し)の蔓延に加えて、バーナード・ホプキンスとフロイド・メイウェザーが流行らせた「省エネ・安全策」の影響等により、20世紀のスタンダードだった本物のファイターとフットワーカーが払底してしまい、昨今は軽量級でも運動量と手数の減少傾向が顕著と言わざるを得ない。

超高齢ボクサーの存在を可能にする条件が相応に整っている(?)とも言えるけれど、40歳を超えて世界に挑み続けた最軽量ゾーンの老雄となると、かつての4冠王レオ・ガメス(ベネズエラ/105~115ポンド,全てWBA)、若きモンスター井上尚弥に介錯された通算V27の2冠王オマール・ナルバエス(亜/WBO112~115ポンド)、ドネアに続いて4冠(105~115ポンド:WBO/フライ級のみIBF)を達成したフィリピンの老練ドニー・ニエテスの3人ぐらいしか思い浮かばない。


153センチのガメスを筆頭に、ナルバエス(159センチ),ニエテス(160センチ)と皆小柄で、階級を3つ4つと上げて戦い、ガメスとナルバエスはバンタム級の奪取に失敗している。

激闘の代償と言ってしまえばそれまでだが、ここ2~3年で急激に衰えた元P4Pランカーのファン・F・エストラーダ(メキシコ/公称163センチ/フライ級とS・フライ級を制覇)が現在35歳。

エストラーダとのライバル争いに惜敗したロマ・ゴン(160センチ/ミニマム~S・フライまでの4冠制覇)は、112ポンドのフライ級で軽量級史上初のP4P1位となったが、29歳で進出した4つ目の115ポンドでフィジカルの限界を露呈し一気に失速墜落した。

エストラーダとのラバーマッチに敗れた後、1年半余りのブランクを経て再起したが、バンタム級への進出は諦めたらしく(?)、昨年と一昨年にS・フライ級を少し超えた調整で1試合づつこなしはしたものの、本格的な実践復帰と評価できる状況にはない。

彼らのようにタフな試合巧者を持ってしても、115ポンドで体格面での限界に達しただけでなく、キャリアメイクにおいて年齢的な限界が露になったと言える。


ロマチェンコと同様、五輪連覇(2008年北京・2012年ロンドン)の栄光を手土産に、33歳でプロに転じた中華の英雄ゾウ・シミンは、試合中のバッティングで負った眼疾が回復せず、左眼の視力をほとんど失い、36歳でリングからの撤退を余儀なくされた。

やはり五輪を連覇したキューバの天才リゴンドウとともに、”タッチゲームの申し子”とも言うべき存在だったゾウは、トップランクと契約してフレディ・ローチの指導を受け、積極果敢に打ち合って攻め崩すファイター化の路線を採ったが、パッシヴ過ぎてHBOから嫌われ、トップランクから契約を打ち切られて試合枯れしたリゴンドウの失敗を反面教師にしたのか、”プロ向きのスタイル”を意識し過ぎたことが災いとなった格好。

ただし、アマ時代の”タッチ&ラン”をそのまま継承して、スタイル・チェンジしていなかったとしても、三十代の半ばを超えてもなお、12ラウンズの長丁場をせわしない先行逃げ切りでやり切れたのかどうかは疑問の余地が残る。


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◎人間誰しも歳を取る-老いには勝てない

階級の問題も含めてにはなるけれど、最軽量ゾーンにおける超高齢ボクサーの成功は事程左様に難しい。

そうした諸事情を鑑みれば、モンスターとアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)に連敗を喫した後、「試合の有無に関わらず、常に練習は欠かさない(ドネア自身の弁)」にしても、半ば引退同然の状態で2年近くを過ごした42歳のレジェンドの暫定王座復帰について、無自覚に肯定しづらいと感じるのは私だけではないだろう。

何となれば、ドネアは30代の半ばを過ぎてからウェイトを落としている。フェザー級に上げてWBAのスーパー王座に就いて5階級を獲ったまでは良かったものの、初防衛戦でニコラス・ウォルタース(ジャマイカ)に壮絶なノックアウト負け(2014年夏/31歳)。

126ポンドを一旦諦め、122ポンドのS・バンタム級に戻して4連勝(3KO)をマーク。リゴンドウがはく奪されたWBO王座に復帰したのも束の間、ジェシー・マグダレーノ(米)に0-3判定で完敗。2018年4月には、フェザーでの夢よもう一度とアウェイのベルファストに乗り込んだが、カール・フランプトン(英/アイルランド)に0-3判定負け。

この時点でドネアは35歳を過ぎており、冴えないパフォーマンスが引き鉄となって引退を取り沙汰されたが、118ポンドのバンタム級で開催されるWBSS(orld Boxing Super Series)への参戦を表明する。


36歳の誕生日を目前に控えた11月3日、の初戦に臨み、我らがモンスターを押さえて優勝候補の筆頭だったライアン・バーネット(英)に奇跡とも言うべき4回TKO勝ち。バーネットが突然腰を押さえて動けなくなり、戦闘不能に陥った。後に重度の腰椎すべり症に苦しんでいたことが判明。バーネットはトップランクと契約して2019年5月に再起したが、期待したほどに回復できず27歳で引退を表明。

圧倒的不利の予想を靴がしてWBAのベルトを奪取。しかし、翌2019年4月にセットされた2回戦の相手は、時のWBO王者ゾラニ・テテ(ガーナ)。それ自体が反則と表してもいい、175センチのタッパに恵まれた痩身の黒人パンチャー。前評判は当然テテ推し。

ところが本番の4日前になって、テテが肩の不調を訴え欠場。代役の黒人中堅選手に必殺の左フックを決めて6回KO勝ち。もはや神風としか思えない僥倖に後押しされ、ファン・C・パジャーノ(ドミニカ),マニー・ロドリゲス(プエルトリコ)を圧巻の即決KOに沈めて、世界中を騒然とさせたモンスターとの決勝を引き当てた。


そして、さいたまスーパーアリーナで実現した印象深い第1戦(2019年11月7日)。11日後の11月18日に37歳を迎えるドネアは、望み得る選択肢の中でも最高最良のスタートを切ったモンスターを第2ラウンドに捉えて、起死回生の左フックを一閃。

モンスターの右眼を破壊し、唯一無二の苦闘を強いることに成功。ポイントでリードされながらも、第9ラウンドには見事な右ストレートを叩き込み、モンスターをダウン寸前まで追い込む。

評価をV字回復させたドネアだが、武漢ウィルス禍により急停止。1年半の休止を余儀なくされ、加齢+ブランクの影響が懸念される中、いきなり世界挑戦を発表。弟拓真に初黒星を与えたナルディーヌ・ウバーリ(仏)を、僅か4ラウンドで撃破してまたもや世界を驚かせる(2021年5月/38歳)。

およそ9年ぶりにWBC王座に返り咲くと、39歳になった年末12月には、同胞の駿馬レイマート・ガバーリョも同じ4回KOに屠り、バンタム級で4団体の完全制覇を目指すモンスターとのリマッチを実力で引き寄せた。


2022年6月、3年前の初戦と同じさいたまスーパーアリーナで、再びモンスターと相まみえたドネアは凄絶な2回KOに散る。ウォルタース戦をも凌駕する完敗。文字通りの蹂躙。惨敗と言い換えても差し支えがないけれど、ドネアに対して「惨」という表現を用いるのは流石に憚られる。

誰もが引退を納得せざるを得い、決定的かつ致命的な敗北だったにも関わらず、ドネアはリングからの撤退を拒絶。1年近い休息を得て準備を整える間、WBOを吸収して4団体をまとめたモンスターがS・バンタムへと去り、4本のベルトが空席になると、WBCが決定戦を承認(2023年7月/40歳)。

大抜擢された4位のメキシカン,アレハンドロ・サンティアゴが、国際的な認知を持たないというだけでなく、公称159センチの小兵だったことから、試合前の予想はドネア有利に傾くも、サンティアゴのスピーディな出はいりと連打の回転に対応し切れず、大差ではないが明白な0-3の判定(112-116×2,113-115)を失いキャリア初の連敗となった。


体格差を活かそうとしたのか、モンスターとの2試合やウバーリ戦に比べても、この日のドネアはリバウンドのヴォリュームが大きかったように思う。動きと反応が鈍く見えたのは、サンティアゴのスピード&キレ(手足及び身体全体)が想像を超えて良かった為でもあるが、加齢の影響と言うよりは、リバウンドの計算を読み間違えた可能性が高いとの印象が強い。

ドネアの間合いと距離を見切ったサンティアゴは、さほどの時間を要さず勝利への自信と確信を掴み、歴戦の雄に対して臆することなく堂々と渡り合い、文句無しの下克上を成し遂げ、中谷潤人との防衛戦に駒を進めた。


◎公開練習


◎敵情視察に訪れた石原雄太トレーナー(ワタナベ→角海老)のインタビュー(囲み)を含む映像
2025年12月12日/マイナビニュース
https://www.youtube.com/watch?v=-Wbchg105D8

◎ドネアに試合直前独占インタビュー
2025年12月14日/A-SIGN.BOXING.COM
※良好円満かつ深い縁を結んだ石井会長(横浜光ジム)の単独スクープ(?)


サンティアゴにいいところなく敗れたドネアは、2023年の後半に続いて2024年を丸々1年休み、本年6月14日にブエノスアアイレスで開催されたWBAのKOドラッグ興行に参戦。WBA8位にランクされるチリの元フライ級コンテンダー,アンドレス・カンポスに対峙。

2023年6月に渡英し、ウェンブリー・アリーナでサニー・エドワーズ(英)のIBFフライ級王座に挑み、大差の0-3判定に退いたカンポス(公称161センチ)は、同年9月の再起戦をフライ級で調整。フィリピンから招聘した中堅クラスを8回でKOしたが、2024年5月の再起2戦目でコロンビアの中堅選手と10ラウンズを引分け。

10月にはメキシコのカンクンまで遠征。リオ五輪代表からプロ入りしたホセリート・ベラスケス(32歳/19勝1敗1分け)に6回TKO負け。今年4月の復帰戦も115ポンドのS・フライ級で仕上げると、ベネズエラの無名選手に3回TKO勝ち。

118ポンドでの実績は皆無。加えて小柄なカンポスをバンタム級の8位に押し込み、オールドタイマーと化した(?)ドネアの生贄に差し出した。中南米限定で長く肝いりのイベントを盛り上げ、ドネアの顔と名前でもう一稼ぎ(割のいい承認料をゲット)したい・・・口さがなく明け透けに申し上げればそういう構図。


サンティアゴ戦の失敗を教訓(?)に、ドネアはリバウンドを抑えて軽めに仕上げていたが、反応の遅れと鈍さに改善は見られず、これまでには余り感じなかった膝と足首(下肢)の硬さが気になった。

ボクサーの老朽化を示す典型的な兆候であり、不惑を超えるまで顕著な衰えを顕在化させなかった鍛錬と節制は率直に凄いと思うし頭も下がるが、久々にサウスポーでスタートする奇策(頭が衝突してすぐに右構えに戻した)も、どちらかと言えば余裕の無さと映ったのはこちらの考え過ぎか。

良く言えば一進一退。悪し様に言えば、リスクテイクを避ける駆け引きの応酬。遥か格下の小さなカンポスが、大怪我せずにリングを降りたいと願うのは当然。しかし調子の上がらないドネアにも、いつもの積極果敢な切り崩しが見られない。

無難なやり取りに終始する見せ場の少ない8ラウンズを終えると、第9ラウンドにまた頭がぶつかり、ドネアが右の繭尻から出血。深さはともかく、横に長いカットでストップも止む無しとは思うけれど、中断しようとしない主審にドクターチェックを自らアピールしたドネアに、継続の意思はほとんど感じられなかった。


オッズも正直だ。ここ一番のドネアは怖い。老いと衰えは隠しようもないが、13歳年少の荒ぶる日本人ファイターを沈める”序盤の一撃”は充分に有り得る。そんな目論見は、当たらずとも遠からじ。なかなかに良い見立てだと感心させられる。

<1>BetMGM
堤:-275(1.36倍)
ドネア:+230(3.3倍)

<2>シーザース
堤:-380(1.26倍)
ドネア:+260(3.6倍)

<3>ウィリアム・ヒル
堤:2/7(1.29倍)
ドネア:11/4(3.75倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
堤:4/11(1.36倍)
ドネア:3/1(4倍)
ドロー:18/1(19倍)

公開練習で披露したドネアの肉体はしっかりシェイプされており、前日計量時も過度にやつれた印象は無く、ウェイト・コントロールもまずまず順調に行ったのではないかと思われる。

試合直前のオープン・ワークアウトだけに、持てる力を全開という訳にはいかず、動きと迫力は割り引いて見なければいけないと承知はしつつ、モンスターとのリマッチに向けて公開された3年前の映像(アップを兼ねたシャドウとヘビーバッグ)に比べて、下半身を中心にした柔軟性の後退を実感せざるを得ない。

◎Nonito Donaire Nag Super Saiyan! Boxing Training for Inoue
2022年06月4日/Powcast Sports
https://www.youtube.com/watch?v=3tgnYn9y8XQ

そしてさらに遡ること6年前。WBSSのファイナルを争う第1戦当時のワークアウトを見ると、近い将来の殿堂入りを控えた”フィリピンの閃光”にも、ロートル化の波が容赦なく押し寄せている現実を再認識させられる。

ここまで仕上げて来ただけでも、本当に大したものなのだが・・・。

◎EXPLOSIVE PADS FROM NONITO DONAIRE, A WEEK BEFORE FACING NAOYA INOUE
2019年11月1日/UncleTboxing TV
https://www.youtube.com/watch?v=UkApv5EJyWM


※Part 2 へ


◎堤(29歳)/前日計量:ポンド(キロ)
WBAバンタム級王者(V1),元日本バンタム級王者(V2/返上)
戦績:15戦12勝(8KO)3分け
世界戦:2戦1勝1分け
アマ通算:101戦84勝(40RSC・KO)17敗
九州学院高校→平成国際大学
2013年(平成25年度)高校選抜L・フライ級優勝
※高校選抜:JOCジュニアオリンピックを兼ねる
身長:166センチ,リーチ:164センチ
好戦的な右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)


◎ドネア(43歳)/前日計量:ポンド(キロ)
現WBAバンタム級暫定王者(V0)
戦績:51戦43勝(28KO)8敗
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世界戦通算:27戦20勝(12KO)7敗
■5階級制覇
(1)IBFフライ級:2007年7月~2009年7月(V3/返上)
(2)WBA S・フライ級暫定:2009年8月~2010年10月(V1/返上)
(3)WBC・WBO統一バンタム級:2011年2月~2012年2月(V1/返上)
(4)WBO J・フェザー級:2012年2月~2013年4月(V2)
(5)IBF J・フェザー級:2012年7月~10月(V0/返上)
(6)WBAフェザー級スーパー:2014年5月~10月(V0)
(7)WBO J・フェザー級:2015年12月~2016年11月(V1)
(8)WBAバンタム級:2018年11月~2019年11月(V1)
(9)WBCバンタム級:2021年5月~2022年6月(V1)
(10)WBAバンタム級暫定:2025年6月~(V0/在位中)
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アマ通算:68勝8敗(2000年シドニー五輪代表候補)
2000年全米選手権優勝
1999年インターナショナル・ジュニア・オリンピック(メキシコシティ)金メダル
1999年ナショナル・ゴールデン・グローブス ベスト8
※階級:L・フライ級
身長:170.2センチ,リーチ:174センチ
※井上尚弥第1戦の予備検診データ
右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)

◎前日計量


◎前日計量:U-NEXT公式
https://www.youtube.com/watch?v=YSMvH0Olk7s


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主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)

副審:
レシェック・ヤンコヴィアク(ポーランド)
ピニット・プラヤッサブ(タイ)
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)

立会人(スーパーバイザー):安河内剛(日/JBC)

テーマはフルトン戦への回帰 /モンスターの快勝に期待 - 井上尚弥 vs M・アフマダリエフ 直前プレビュー -

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■9月14日/IG(愛知国際)アリーナ,名古屋市/4団体統一世界S・バンタム級タイトルマッチ12回戦
統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs WBA暫定王者 ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)



※ファイナル・プレス・カンファレンス(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=l6_7RqfIk4E

「衰え」か、はたまた「増量の限界」か。

ノーマークの代理チャレンジャー,ラモン・カルデナスの左フックをまともに浴びて、腰からストンと落ちた我らがモンスター。昨年5月、4万5千人の大観衆で埋め尽くされた東京ドームを揺るがし、配信された映像を視聴する世界中のファンと関係者を騒然とさせた、ルイス・ネリー戦の第1ラウンドに続く生涯2度目のノックダウン。

なおかつ、倒されても鋭い眼光にいささかの影響も感じさせなかったネリー戦とは違い、明らかに効いている。残り時間が尽きていた為、再開即第2ラウンド終了となったが、楽勝の予想を一変させる急展開に息を呑む。


4年ぶりの王国アメリカ、武漢ウィルス禍による厳しい行動制限から解き放たれたメッカ,ラスベガスのリング。

オレクサンドル・ウシク(1位),テレンス・クロフォード(3位)との三つ巴が続く、リング誌パウンド・フォー・パウンド(P4P)ランキングのトップ争い、推定30億円の超大型契約が国際的な注目を集めて、リヤド・シーズン初登場(本年末)への期待もいや増し、来年5月の東京ドーム開催が決定した(?)中谷潤人との激突を視野に捉える・・・

満を持しての米本土登場に、入場時から常ならぬ高ぶりを隠せなかったネリー戦以上に気合が入り、和製モンスターは気負っているように見えた。

サム・グッドマン(豪/IBF指名挑戦者)の予期せぬ負傷に振り回された2024年、延期と対戦相手の変更が繰り返され、昨年末から今年1月24日にリスケされたキム・イェジェン戦を4回KOで終えた直後の会見で、珍しく「疲れました。(練習の再開は)暫く休んでから」と疲労を滲ませる。


ただ勝つだけでは済まされない。どのような挑戦者を迎えても、開始から終了まで圧倒的なパフォーマンスを要求され、少しでも相手に粘られると「階級の壁」「増量の限界」が囁かれてしまう。

「いやいや、減量が進捗している最中の1ヶ月延期はキツい。落とし始めた体重を一旦戻す時間的な余裕がない。リヤド初見参を含む年間4試合(2025年)を、当初の計画通り進める為に仕方が無いとは言え、流石にモンスターのコンディショニングが心配。」

「しかも9月のドヘニー戦に続く対戦相手の変更で、ピンチヒッターはまったく無名の若い韓国人選手。肉体的な負担以上に、モチベーションの維持がしんどい。そりゃあいくらモンスターでもまいるよ・・・」

そして4年ぶりのラスベガスは、シンコ・デ・マヨに合わせたWBC1位の人気者アラン・ピカソ(メキシコ)とのマッチアップ。だが何としたことか、ピカソ陣営が突然の出場辞退。ピカソ本人はやる気満々の体なのに、マネージャーを始めとするチームが挑戦を回避した。

3戦連続の挑戦者変更。「勝って(倒して)当たり前」ではなく、望まれているのは「有無を言わさぬワンサイドのノックアウト」のみ。代理挑戦のメキシカン,カルデナスは、フェザー級進出を意識してか、ドヘニー戦以降顕著なリバウンドの拡大路線を継続中のモンスターより一回り以上大きい。

「硬くなるな」と言う方が土台無理なシチュエーション。要らぬお節介、無駄な老婆心と承知しつつ、せんない一人語りがつい口を突いて出てしまう。「リラックスして。強振は要らない。軽めの左ジャブ中心でいい。上体を柔らかく、脚を良く動かして・・・」

おかしな不安が脳裏を過ぎる中、立ち上がりのモンスターは上々の滑り出し。重量感に満ちたジャブ&ワンツーをヒットして、カルデナスを下がらせる。ところが、ここでまた嫌な予感がムクムクと鎌首をもたげた。

「ドヘニー、タパレス戦と同じ流れ(ディフェンス第一の待機戦術)か。前がかりになり過ぎなきゃいいけど・・・」

第2ラウンドに入ると、カルデナスが守勢一辺倒になりそうな気配を感じたモンスターが、案の定積極性を増す。力量の差は誰の目にもはっきりしているが、カルデナスは単純に大きいだけでなく、メキシカンらしい心身のタフネスだけはパンテラ・ネリーを上回る。

そして終了間際に起きたショッキングなダウン。残り10秒を知らせる拍子木の音は聞こえていた筈なのに、モンスターはロープ際まで後退するカルデナスを追って、いささか雑に、らしくない左フックを振るう。

あくまで威嚇目的だったと思うが、狭い空間をスッと右へ横移動しながら、カルデナスがショートの左フックを一閃。下から突き上げるように、モンスターの顔面を捉えた。

第3ラウンド以降、平常運転に戻ったモンスターは、危ない被弾を許すことなくペースを握り、ほぼ問題のない展開に引き戻してダメージを与え続け、第7ラウンドに右の4連打でダウンを奪い返すと、第8ラウンドにレフェリーストップを呼び込み終了。


終わってみれば完勝。間違いなく圧倒はしたけれど、カルデナスも非常に良く仕上がっていて、頑健なフィジカル以上にメンタルも強靭だった。序盤のダウンで自信を持ったのも確かだったが、モンスターの強打を浴び続けて後退を余儀なくされ、一瞬怯むことはあっても、すぐに気持ちと身体を立て直して反撃する。クリンチもほとんどない。

ポストファイト・カンファレンスで、先に席に着いていたカルデナスがステージに登場してきたモンスターを見て立ち上がると、満面に笑みを浮かべて自ら握手を求めるモンスターの姿が印象的だった。

「心からカルデナスを認めている。」

ダウンを奪われたからではない。苦境に陥っても挫けないカルデナスの闘志、闘い続けようとする意思の強さ、ダーティファイトを良しとしない心意気,志の高さに、モンスターはごく自然に敬意を表したのだ。


S・ウェルター級に上げたクロフォードが、懸念されていた通りWBA王者イスラエル(イズライル)・マドリモフ(ウズベキスタン)との体格差に苦しみ、厳しい12ラウンズを何とか乗り切って4階級制覇を達成はしたものの、パフォーマンスの低下は否めない。

P4Pランクの逆転は無いだろうと思い、実際トップ3の入れ替えはなかった。けれども、生涯2度目のダウンに加えて、アフマダリエフとカルデナスのトレーナーが同じ(南カリフォルニアを代表するコーチ,ジョエル・ディアス)ということも相まって、アフマダリエフ戦に向けたファン及び関係者の興味と関心は否が応にもアップする。

そこで直前のオッズ。意外にも(?)大差が着いている。身銭を切って賭ける人たちは、問題なくモンスターの勝利を支持。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井上尚弥:-1100(1.09倍)
アフマダリエフ:+650(7.5倍)

<2>betway
井上尚弥:-1000(1.1倍)
アフマダリエフ:+600(7倍)

<3>ウィリアム・ヒル
井上尚弥:1/10(1.1倍)
アフマダリエフ:6/1(7倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
井上尚弥:1/8(1.13倍)
アフマダリエフ:7/1(8倍)
ドロー:33/1(34倍)


率直に申し上げて、私の感覚もほぼオッズ通り。仮にモンスターが本当に衰え出していたとしても、攻め急いで攻防のキメが粗雑にならない限り、アフマダリエフに名をなさしめる心配は無い。

「階級の壁」にガツンとぶち当たった訳でもない。フェザー級を見据えたフィジカルの強化が、マイナスに響いている可能性=身体を大きくし過ぎて(リバウンド込み)運動量を落とさざるを得ない=を完全に否定することは現時点では憚られる。その点だけは、今夜のリング上を見てみないとわからない。

ただ、衰えているとすれば、それはむしろアフマダリエフではないのか。五輪(銅)と世界選手権(銀)でメダルを獲った実績、豊富なアマキャリアに裏打ちされた技術と経験、モンスター本人が認めたフィジカル&パンチング・パワーは紛れも無い本物。

しかし、アフマダリエフの試合映像を見返す都度感じるのは、接戦をしのいで2-1判定を握り、2団体統一王座に就いたダニエル・ローマン戦から、日本を代表するS・バンタムの1人で、暫定を含めてIBFの王座を2度獲得した岩佐亮佑(セレス/引退)を下した2020年から2021年が、この人のピークだったのではないかということ。

◎公開練習
<1>アフマダリエフ


※ノーカット版
https://www.youtube.com/watch?v=05pnKIBrAHs

<2>モンスター


<3>真吾トレーナーの反応



スピードはけっして世界の最高水準ではないが、素早く強いワンツーと強烈な左フックで圧力をかけ、相手を下がらせ続けるのがアフマダリエフ本来のボクシング。ディフェンスは前後のステップを軸に足で外すのが基本型。タフで気の強い相手に粘られたり、プレスが効き切らずに思わぬ反撃を食らうと、一転して距離のキープに務めて深追いを避ける。

防衛戦で唯一の判定勝ちとなったホセ・ベラスケス戦(2021年11月)が、その典型例。公称159センチの小柄なチリ人は、武漢ウィルスの感染症を発症したロニー・リオスに代わり、急遽用意された下位ランカー。かなり格下のベラスケスを、MJは開始と同時に猛然と攻め立てた。

けっしてナメてはいなかった筈だし、実力差が明白な代理挑戦者をさっさと片付けようと、短期決戦を仕掛けること自体は間違っていない。だがしかし、小さなベラスケスが強引に大振りする右フックは想像以上に重く、大ベテランのチーフ,ジョエル・ディアスは速やかに作戦を変更。

窮鼠猫を噛んだベラスケスの1発に気を付けながら、慎重に出はいりを繰り返しつつセーフティ・リードを保ち、三者一致の大差判定勝ち(119-109)を収めはしたが、アンダードッグをフィニッシュし切れなかった恨みは残る。


2022年6月に仕切り直したリオスとの指名戦では、長身の勇敢なパンチャーを強烈なボディ1発で弱らせ、早い決着かと思いきや、必死に持ち直して食い下がるリオスを警戒。ベラスケス戦に続いてラウンドが長引き、「今回も判定か」と思われた最終12回、ボディアタックを受け続けたダメージによる決壊でリオスが沈没。

世界ランクの常連だったリオスは、ベラスケスとは一味も二味も違う本物の実力者で、判定に持ち込まれても何ら不思議はなく、最終的にKO(TKO)したのは流石と評すべき。

15戦のプロキャリアで経験した世界戦は7回(直近の暫定王座決定戦を含む)。結果は6勝(4KO)1敗で、王座に就いたローマン戦と、番狂わせに泣いたタパレス戦はいずれも2-1のスプリット。


相手に対する警戒のシフトチェンジ、必要に応じて深追いを避けるアフマダリエフについて、とにもかくにも、一方的かつ何もさせずに倒し切ることにまい進するしかなかったドヘニー戦以降のモンスターと比較して、「イノウエは後退(戦術転換)できないんだ」と述べたジョエル・ディアス。

それが本心から出た言葉、正真正銘の本音だとすれば、大きな誤りと指摘せねばならない。2023年12月のケヴィン・ゴンサレス戦以降、連勝を重ねて復調しているとは言いつつ、ローマン戦や岩佐戦当時のキレと冴えは無くなったまま。もともと守りは鉄壁と言える水準ではないが、ケアレス・ミス(うっかり被弾)も増えていた。

そして僅かに公開される練習映像から確認できるモンスターは、以前(今のところキャリアのベストとすべきバンタム級以降)と変わらぬスピード&反応を維持している。


「今回は勝ちに徹する。無理をしてまで倒しには行かない。どういう展開になっても、競った判定になっても勝てばいい。」

ディアスの分析(ブラフ?自らに言い聞かせている?)を見透かすかのように、会見で基本方針を明らかにしたモンスター。その言葉とは裏腹に、「でも、きっと倒しに行くんだろうな」と、日本のファンの大半がそう確信している。無論、私も同じ。


タパレスとの指名戦を延期せざるを得なかったアフマダリエフの左拳と手首は、ベラスケス戦とリオス戦で傷めたと言うより、アマチュアを含めた長いキャリアによる勤続疲労と考えるべきだろう。

タパレス戦でどこまでその影響が残っていたのか、あるいは今もまだ全力で打ち込めないのか。真実はアフマダリエフ本人にしかわからない。しかし拳の負傷と言えば、我らがモンスターも過去に右拳を複数回骨折している。

115ポンドの初陣で、熟練の古強者オマール・ナルバエスを瞬殺。文字通り世界に名乗りを上げた快勝の代償として右拳を骨折。丸々1年休んで復帰した初防衛戦でまたもや負傷。無理を押して強行したV2戦(2016年5月/デヴィッド・カルモナに大差3-0判定勝ち)とV3戦(2016年9月)でさらに悪化させた。

過酷さを増す減量苦も加わり、腰痛まで背負ってしまった若きモンスターに、4度左拳を骨折して7度もの手術を受け、左肩の脱臼癖にも悩まされた”カミソリ・パンチ”こと海老原博幸の苦悩と苦難が重なる。

満身創痍の海老原は、世界王者としては大きな実績を残せずに、溢れんばかりの天才を完遂することなくキャリアを終えたが、モンスターには窮地を救う救世主が登場。バンテージ職人として名高い永末貴之氏(“ニック”の愛称で知られる)氏の助けを借りて、モンスターは最大の危機を乗り越えた。無論モンスターの右拳も、いつまた壊れても不思議はない。

クラウチングに上体を一瞬沈めて、頭ごと下からぶつかるようにクリンチに行くアフマダリエフを真正面から受け止めたり、右の打ち下ろしを合わせに行くのは危険過ぎる。頭がぶつかってカットしたり、右拳の故障という最悪の事態を招きかねない。


グッドマンがもたらした暗雲(とんだ災難)を完全に振り払う為に、今こそ課されるべきモンスターのテーマは、「フルトン戦への回帰」一択あるのみ。

異常なまでに高い集中力と研ぎ澄まされた反応、歩幅を自在に調整しながら、これもまた尋常ならざる速さで移動を繰り返すステップワークと、身長&リーチの差をいとも容易く潰してしまい、フルトンの生命線とも言うべきジャブの刺し合いをも制した正確無比な左リード(&ボディストレートのコンビネーション)。

122ポンドのラスボスを完黙させた、水も漏らさぬ最上級のテクニック&スキルを発揮すれば、まったく危なげのない攻防を創出した上で、中盤~後半にかけてのフィニッシュに期待が高まる。

反面アフマダリエフに活路があるとすれば、クロスレンジでのパンチの交換・応酬に持ち込み、左フックの一撃を決め切るか、その左を囮に使った返しの右フックでモンスターを撃沈させるぐらいしか思い浮かばない。

フリッカー気味に放つタパレスの右リードに反応できず、試合の流れを引き寄せ切れなかったアフマダリエフ。モンスターの左ジャブは、タパレス以上に速くて正確で強烈。足を止めず全補佐雄に動きながら、とにかくジャブを絶やさないこと。

ドヘニー戦~カルデナス戦までの、正面に立ち付けて強打を振るうファイタースタイルは、自ら語った言葉通り完全に封印して欲しい。


◎井上(32歳)/前日計量:121.7ポンド(55.2キロ)
WBA(V4)・WBC(V5)・IBF(V4)・WBO(V5)4団体統一王者
前4団体=WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
戦績:30戦全勝(27KO)
世界戦通算:25戦全勝(23KO)
※4団体統一S・バンタム級王座連続V4(2020年10月31日~継続中)
※世界戦11連続KO勝ち(20)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
※計量時の測定
血圧:122/81
脈拍:65/分
体温:35.9℃
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎アフマダリエフ(30歳)/前日計量:121.3ポンド(55.0キロ)
現WBA S・バンタム級暫定王者(V0),元WBA・IBF統一S・バンタム級王者(V3)
戦績:15戦14勝(11KO)1敗
世界戦通算:7戦6勝(4KO)1敗
アマ通算:300勝20敗
2016年リオ五輪バンタム級銅メダル
※準決勝でロベイシー・ラミレスに0-3負け
2017年世界選手権(ハンブルク/独)バンタム級2回(緒)戦敗退
2015年世界選手権(ドーハ/カタール)バンタム級銀メダル
※決勝でマイケル・コンランに0-3負け
2017年アジア選手権(タシケント/ウズベキスタン)金メダル
2015年アジア選手権(バンコク/タイ)銀メダル
2014年アジア大会(仁川/韓国)バンタム級初戦敗退
※ロベイシー・ラミレスやデューク・レーガンと対戦した中国のジャン・ジャウェイ(Zhang Jiawei)に0-3でポイント負け
2012年ユース世界選手権(イェレヴァン/アルメニア)L・フライ級銀メダル
2013~14年ウズベキスタン国内選手権優勝(階級不明)
身長:166センチ,リーチ:173センチ
血圧:137/70
脈拍:75/分
体温:36.1℃
左ボクサーファイター

◎前日計量


プロデビュー戦と2戦目を128ポンド超のS・フェザーで戦い、3戦目でフェザー級まで絞り、4戦目からベストと想定されるS・バンタム(アマのバンタム級は56キロ上限)に落ち着いたMJは、以降の11戦をすべてS・バンタムリミット契約でこなしてきた。

計画的な増量でフェザー級を目指すモンスターも、122ポンドの維持がいよいよ困難になりつつあると思われるが、アフマダリエフも相当に厳しいのではないか。体重の維持が限界を超えているのは、実はウズベクのヒーローという気がしてならない。

「(計量前に)水を飲んできた。ウェイト調整にまったく問題はない。」

どこまでも余裕を見せるアフマダリエフ。3週間前に来日については、時差の解消も含めた対応との説明にウソはないと思うが、タパレス戦以降のパフォーマンスがイマイチなのも、左拳(と手首)の故障ではなく減量の影響と考えれば合点が行く。

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■オフィシャル

主審:ベンス・コヴァックス(ハンガリー)

副審:
ヘラルド・マルティネス(プエルトリコ)
マイク・フィッツジェラルド(米/州)
ファン・カルロス・ペラヨ(メキシコ)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:ホセ・ゴメス(パナマWBAランキング委員)
WBC:マイケル・ジョージ(米/ロードライアンド州/WBC国際事務局員)
IBF:マッシミリアーノ・ビアンコ(伊/IBF理事)
WBO:レオン・パノンチーリョ(米/ハワイ州/WBO副会長/タイ在住)


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■クロフォードとのP4Pトップ争いの行方やいかに・・・

まったく同じ日になるとは思わなかったが、147ポンドからさらに3階級を上げてカネロに挑むクロフォード。154ポンドでの苦闘を思うと、168(+14)ポンドの調整が成功する確率は極めて低い。そう考えるのが妥当だ。

しかも、安全運転に閉じこもることにかけては、現在のカネロもまた当代随一と言ってよく、S・ウェルター級で明確に退化したクロフォードのスピード&反応が、168ポンドにある程度フィットできたとしても、ステロイドを使って(?)実現したカネロのフィジカルに弾き返される公算が大。

注目の前日計量は、双方ともに167.5ポンド。卓越したクロフォードの技とセンスなら、年齢的な限界も見え始めたカネロを何とかしてしまうのでは?との希望が皆無ではないけれど、おそらく無理はしないであろうカネロをどうやって崩すのか。

万が一にも(?)クロフォードが勝利を収めて、「3階級+4団体統一(+5階級制覇)」に成功すれば、ウシクとモンスターを抜いて再びP4Pのトップに立つのは疑う余地無し。


2023年7月25日、フルトンを寄せ付けずに8回KOに沈めたモンスターは、文句無しでP4P1位を回復する筈だったのだが、僅か4日後の7月29日、エロール・スペンスとの4団体統一戦を圧勝で制して、一足早く男子初の「2階級+4団体統一」を果たしたクロフォードに逆転を許している。

今回もまた、リング誌P4Pの頂点をクロフォードにさらわれてしまのかどうか。モンスター自身の結果と内容が問われるのは言うまでないが、クロフォードの場合おそらく内容は問われない。それぐらいのミラクルと認識すべきだ。

スポーツブックの描け率は思いのほか競っている。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
カネロ:-185(1.54倍)
クロフォード:+155(2.55倍)

<2>betway
カネロ:-163(1.61倍)
クロフォード:+140(2.4倍)

<3>ウィリアム・ヒル
カネロ:8/13(1.62倍)
クロフォード:13/10(2.3倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
カネロ:7/11(1.64倍)
クロフォード:8/5(2.6倍)
ドロー:18/1(19倍)

◎前日計量




”見えざる意思”は動いたのか - P・タドゥラン vs 銀次郎 2 レビュー Part 5 -

カテゴリ:
■5月24日/インテックス大阪5号館,大阪市住之江区/IBF世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 ペドロ・タドゥラン(比) 判定12R(2-1) 前王者/IBF4位 重岡銀次郎(日/ワタナベ)

勝者タドゥランが告げられた瞬間、国家演奏の時のように左胸に手を当てて天を仰ぐ銀次郎

◎【検証】ホールディング状態での加撃:第1戦と第2戦の共通点及び相違点
■第1戦■
□試合映像:タドゥラン 9回TKO 銀次郎
2024年7月28日/滋賀ダイハツアリーナ(滋賀県大津市)
オフィシャル・スコア(8回まで): 78-74×2,77-75
IBF世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
ttps://www.youtube.com/watch?v=SiWHjh13J88

第1R-無し

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第2R-1回
1回目
残り33秒~27秒

ホールド状態での加撃-第1戦-第2ラウンド hspace=

-------------
第3R-無し
1分19秒~1分15秒(経過時間:1分41秒~1分54秒/以下同様)
銀次郎の劣勢が明確になったラウンド。タドゥランの両腕を銀次郎が抱え込む状態となり、両者ともパンチが出ない状況。タドゥランは左腕を抜いてパンチを打とうとするが、銀次郎がこれを阻む。2秒を経過(1分17秒)したところで、膠着状態と判断した主審ウィリスが「ノー・ホールド!」の声を掛ける。

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第4R-無し

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第5R-1回
2回目
1分29秒~1分23秒(1分31秒~1分37秒)
右腕を抱え込まれる格好となったタドゥランが、しっかりディフェンスできない銀次郎のボディから顔面に7連打。銀次郎が右を1発振り返してタドゥランの加撃が一旦止まるも、さらに2発を追撃。主審ウィリスは「ノー・ホールド!」の声を掛けてはいるものの、止めに入ろうとせず、理解に苦しむレフェリング。実況の高柳アナが、「ちょっと今の反則だよね。3発ぐらい」と発言。

ラウンド終了後のインターバル中、リプレイで問題の場面が流される。高柳アナがあらためて「これはダメですよね?」と指摘。エキサイトマッチでの経験は伊達ではないと感心したが、解説の大毅はルールに関する理解と認識が皆無なのか、あるいは流し見してしまっていたのか、いずれにしろまともに呼応できない。止む無く高柳アナが「重岡選手も手をかけていましたからね」とフォローする始末。

ホールド状態での加撃-第1戦-第5ラウンド

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第6R-無し

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第7R-無し

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第8R-無し
1分19秒~1分14秒(1分41秒~1分46秒)
※銀次郎がタドゥランの右腕を抱え込む状態で密着。「また打たれる・・・」と肝を冷やしたが、ここはクリンチしたままタドゥランも手を出さず、5秒ほどで離れて事無きを得た。

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第9R-2回
2分4秒~1分51秒(56秒~1分09秒)
※被弾した銀次郎が腰を折ってタドゥランに抱きつき、上からタドゥランが圧し掛かり、そのまま上から潰される状態で銀次郎が膝を着く。主審ウィリスが下に下げた両腕を交差して、ノックダウンではないことを明示。しかし、ダメージが深い銀次郎はすぐに起き上がれない。何とか立ち上がった銀次郎に、主審ウィリスが「OK?」と2回確認。再開となったが、ここで止めて良かった・・・と今だから言える結果論・・・。

【3回目:最も危険な問題のシーン】
1分34秒~1分27秒(1分26秒~1分33秒)
※タドゥランが抱え込まれた右腕を強く押し込み、銀次郎をロープに釘付けにして6連打。第5ラウンド、高柳アナの問いかけに反応できなかった解説の大毅が「これはダメ」「これはダメです」と声を上げる。「これは反則を取ってもいいんじゃないですか」と高柳アナ。6連打を黙認したウィリスが分けて再開後、高柳アナが「押さえつけて殴ってはいけないということです。」と視聴者向けに説明。

ホールド状態での加撃-第1戦-第9ラウンド

4回目
1分21秒~1分18秒(1分39秒~1分42秒)
同じ態勢になり、タドゥランが軽めの左アッパーを1発。すぐに離れてくれたので、ホっと胸を撫で下ろす。

残り12秒、またもやロープに押し込まれる銀次郎を見て、主審ウィリスが割って入りストップ。タドゥランのTKO勝ちとなった。


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■第2戦(合計35回)■
□試合映像:タドゥラン 12回判定 銀次郎
2025年5月24日/インテックス大阪
オフィシャル・スコア: 78-74×2,77-75
IBF世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
ttps://www.youtube.com/watch?v=po1fZ-erYJ0

第1R-無し

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第2R-無し

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第3R-1回

1分16秒~1分8秒(経過時間:1分44秒~1分52秒)
予兆:タドゥランが頭から密着→ボディ→さらなる密着→クリンチ
※主審フィッチはタドゥランに対してバッティング(ヘッドバット)の注意のみ

1回目
残り6秒付近~
※密着している時間が短く、殴打もさほど強くなかったこともあり、主審フィッチは無言で観察するのみ。

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第4R-3回
2回目
1分58秒(1分02秒)

3回目
0分50秒~0分42秒(2分10秒~2分18秒)
※銀次郎が右腕を抱え込む格好でロックされ、タドゥランが左を5連打。一旦離れかけるもさらにもう1発。主審フィッチはここでも無言。ウィリスのように「ノー・ホールド」と声を掛けることもなく、ただ観察(傍観)するのみ。

4回目
0分31秒~0分27秒(2分29秒~2分23秒)

-------------
第5R-2回
5回目
1分57秒~1分55秒(1分3秒~1分5秒)

【6回目:最も危険な問題のシーン】
残り10秒~
第2戦・第5ラウンド終了間際

第2戦・第5ラウンド終了間際/主審フィッチの黙認は変わらず

※ロープに押し込んで打つ、第1戦と同じ危険なパターンが再現。タドゥランは左を7発も連射。主審フィッチの黙認は相変わらず。
※インターバル中に当該場面のスロー・リプレイが流れ、解説の高柳アナが「これ、重岡選手もあのー、ちょっと雑な押さえ方をすると打ち込まれますよね?」と発言。解説の内山高志が「そうなんですよ」と呼応。すると大毅が「ストップって言われないとずっと打てるんですよ」と続く。

第1戦の第9ラウンドでは、「反則を取ってもいいんじゃないですか?」と言っていた高柳アナ、「これはダメ」と言葉を言した大毅も大きく後退。新たに解説に加わった内山には、非常に言いづらそうなニュアンスが感じられた。ひょっとしたら、「タドゥランのこの行為は反則に当たらない」という主旨の事前確認か、それに近い申し合わせがあったのかもしれない。

ABEMAの単なる自主規制でも大きな問題になると考えるが、JBCとIBFの見解に基づいていたか、そこまでではないにしても、JBCが何かしら関わった上での対応だったとしたら、これは由々しき事態ではないのか。

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第6R-5回
7回目
1分02秒~0分56秒(1分58秒~2分04秒)
第2戦・第6ラウンド

8回目
0分49秒(2分12秒)

9回目
0分33秒~0分30秒(2分27秒~2分30秒)

10回目
残り6秒付近~
※左拳で銀次郎の首を軽く押さえた直後、押さえる拳を右に変えて左で打つ
一旦右拳を離したタドゥランだが、一瞬右拳でもう一度押さえようとする

※終了ゴングが鳴ってコーナーに戻る銀次郎がアップになり、椅子に座る前にトップロープを両手で掴み、首を2回上下に動かしている。銀次郎の瞳は第4Rの2回目時点ほど空ろではない

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第7R-2回
1分32秒~1分27秒(1分28秒~1分33秒)
※銀次郎の上半身が折れ曲がり、頭がベルトラインまで下がると、タドゥランが上から押さえ込んでいる(プッシング)と判断され、レフェリーも止めに入る。
レフェリーが分ける際、下がるタドゥランに引きずられる格好で銀次郎が片膝を着く。

11回目
0分57秒(2分03秒)
※銀次郎が上体を起こして両腕をタドゥランの脇に刺し込み難を逃れる。意識してやったというより、半ば無意識の習慣的反応、反射的な動作ではないかとも思われる。

0分48秒~0分46秒(2分12秒~2分14秒)
※銀次郎の左をタドゥランがダックしてかわし、銀次郎が上から押さえ込む格好になったが、銀次郎はパンチを打つことなくすぐに離れている。クリーン or ダーティという話ではなく、これが日本の選手の一般的なやり方(慣習・スタンダード)になる。おそらく、日本の指導者(プロ)も、プッシングやホールドした状態での可撃を意図的に教えたり、指示することは無い筈。善悪の話ではなく勝負観の違い(日本人に特有の)。


12回目
残り3秒付近~

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第8R-8回
13回目
2分39秒~2分35秒(21秒~25秒)

14回目
1分58秒~1分55秒(1分02秒~1分05秒)
※左アッパーを察知した銀次郎が一瞬早くステップアウト。ここは反応良くかわすことができた。

15回目
1分53秒~1分49秒(1分7秒~1分11秒)
※1分42秒(経過:1分18秒)高柳アナが「片手だけのクリンチっていうのは危ないですよね」と指摘

第2戦・第8R

16回目
1分42秒~1分41秒(1分18秒~1分19秒)
※同じ態勢で左を1発打たれた銀次郎が、直ちにステップアウトして離れる。これに@プラス、両腕でタドゥランにしっかり組み付きブレイクを促す(待つ)。この両方を、戦術・対策として徹底して欲しかった。

17回目
1分37秒~1分35秒(1分23秒~1分25秒)
※ここも1発下から打たれた銀次郎が素早くステップアウト。タドゥランは逃げる銀次郎目掛けて2発目のフックをダブルで放ったが上手くかわした。

18回目
0分48秒~0分45秒(2分12秒~2分15秒)
※1発右のわき腹を打たれた銀次郎がスムーズにステップバック。

19回目
残り20秒~18秒
※タドゥランが左を打ちに行こうとしたが、銀次郎が回りこんでクリンチの態勢になりブレイク。これも意識的に回避したというより、練習と経験で身に付いた自然な対応との印象。

20回目
残り4秒~
※4発打たれていてかなり危ない場面。

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第9R-5回
21回目
2分28秒~2分23秒(32秒~37秒)
※後半~終盤に入りタドゥランのしつこさが増す。7発連打した。

※また同じ態勢になりかけたが、銀次郎の頭がベルトラインまで下がり、プッシング(上から押さえ込む)と判断されレフェリーが割って入る。この状態になるとタドゥランも反則のチェックを避ける為にパンチは出さない。
2分10秒~2分05秒
50秒~55秒

22回目
2分01秒~1分56秒(59秒~1分4秒)
※再開直後にタドゥランが同じ態勢に持ち込む。左6発+右1発の計7発を連打。
さらに、回り込む銀次郎に合わせて身体を回転させ、離れ際を狙って左を追撃するタドゥラン。当たらなかったが、この態勢が自分にとって有益なことを充分理解した動き。

1分51秒~1分49秒(1分09秒~1分11秒)
※同じ態勢を狙うタドゥラン。すかさずステップバックしてかわす銀次郎。

1分05秒(1分55秒)
※消耗が顕著な銀次郎。反応が鈍り、眼が虚ろになる。正面の同じ位置に留まる。ワンツーをかわし切れなくなる。

23回目
0分54秒~0分46秒(2分06秒~2分14秒)
※1発打って離れた後、すぐにくっついて3連打するタドゥラン。当たらなかったが、離れ際にも1発追加。

第2戦・第9R

24回目
0分40秒~0分31秒(2分20秒~2分29秒)
※強烈な左のカウンターを浴びて動きが止まり、同じ態勢に持ち込まれて2発打たれる銀次郎。ここは流石に右を打ち返す。さらに自分からクリンチに持ち込み、離そうとしないタドゥランの腹にも軽く左を1発打ち返した。

25回目
0分24秒~0分22秒(2分36秒~2分38秒)
※2発打たれた銀次郎が大きくステップアウトして離れる。

※ラウンド終了後コーナーへ戻る銀次郎のアップ。大きく口を開けて、苦しそうに肩で息をする。スタミナも限界を迎えつつある。
※インターバル中のスローVTRで、ホールド状態から加撃する場面のスローリプレイが流れ、高柳アナが「こういう形で打ってもポイントになるんですか?」と問うも、焦点のズレた話に終始する2名の解説者。

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第10R-5回
26回目
2分50秒~2分48秒(10秒~12秒)
※軽めの左を2発打たれて、すぐにステップバックする銀次郎。

27回目
2分48秒~2分45秒(12秒~15秒)
※4発打たれた銀次郎が離れ際に右を打ち返す。惜しくも空振りに終わる。これを前半3~4R中にやっておきたかった。

28回目
2分17秒~2分12秒(43秒~48秒)
※3発打たれた銀次郎がダック。頭がベルトラインまで下がり、プッシング状態でブレイク。離れ際に銀次郎が右を軽く返した。

29回目
1分57秒~1分53秒(1分03秒~1分07秒)
※クリンチの離れ際、完全に無防備な状態で右アッパーを貰う銀次郎。ショートでもタドゥランのパンチは鋭さを失っておらず、ダウンしてもおかしくない危ない状況。疲労と消耗で集中が途切れがちになっている為、止むを得ない面はある。

1分10秒~1分08秒(1分50秒~1分52秒)

30回目
残り10秒~
左ストレートをダックでかわした銀次郎を、右腕で上から抑えながら左を2発打つタドゥラン。銀次郎が右アッパーを返してすぐにステップバック。深追いの回避を徹底する。疲労困憊しても戦術的ディシプリンを維持し続ける銀次郎の姿に、胸が締め付けられるのは私だけではない筈。時間をかけて練り上げたプランを、身体が覚え込むまで反復練習を繰り返し、追い込みのキャンプでしっかり仕上げたからに他ならない。

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第11R-3回
31回目
1分59秒~1分55秒(1分01秒~1分05秒)
第2戦・第11R

32回目
1分34秒~1分32秒(1分26秒~1分28秒)

33回目
0分33秒~0分30秒(2分27秒~2分30秒)

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第12R-2回
34回目
2分33秒~2分24秒(27秒~33秒)
※勝利を確実にする為、猛然と前に出て大きめのパンチを振るうタドゥラン。開始直後のこの場面、タドゥランは矢継ぎ早に9発銀次郎に打ち込んだ。銀次郎の方からくっついてブレイクとなったが、正直この時は生きた心地がしなかった。
レフェリーは2人を分ける際、タドゥラン→銀次郎の順番に「相手の後頭部を腕で押さえるな」と両雄に注意を与えているが、「いや、そこじゃないだろ!」と思わず画面に向かって叫びそうになった。

35回目
2分14秒~2分11秒(46秒~49秒)
※さらに肝を冷やしたシーン。銀次郎がロープを背負う状態で同じ態勢になり、タドゥランが2発左を見舞うと、3発目のテイクバックでタドゥランの右腕の抑えが甘くなった一瞬を逃さず、銀次郎がロープに背中をぶつけるようにスウェイしながら右ショートフックでカウンターを合わせに行く。残念ながらタドゥランを下がらせるまでには至らなかったが、クリンチに持ち込んで事無きを得る。おそらく咄嗟に出た反応だと確信するが、銀次郎のセンスに思わず唸ってしまった。

※2分06秒(1分54秒)
クリンチからまた同じ態勢になりかけたが、銀次郎が瞬間的に絡んだ右腕を振り解きながらステップバック。これも序盤にやって貰いたかった。

※1分45秒(1分15秒)
クロスレンジでの打ち合いを嫌った銀次郎が、低くした頭をタドゥランの開いた右脇の下に突っ込むようにクリンチに行き、そのまま身体を起こしながら背後に回りこむ。タドゥランも身体を翻しながら左を打とうと弱冠距離を開けたところへ銀次郎が右ボディを放つ。これもまた、「ホールド状態での左パンチ」に対する有効な対策になり得たのではないか。


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◎タドゥラン(28歳)/前日計量:104.5ポンド(47.4キロ)
※当日計量:114.9ポンド(52.1キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
(4回目でパス/1回目:52.4キロ,30分後2回目:52.3キロ,+100分後3回目:52.25キロ)
元IBF M・フライ級王者(V2)
戦績:23戦18勝(13KO)4敗1分け
世界戦:7戦3勝(2KO)3敗1分け
アマ通算:約100戦(勝敗を含む詳細不明)
身長:163センチ,リーチ:164センチ
血圧:137/102
脈拍:56/分
体温:36.1℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター


◎銀次郎(25歳)/前日計量:104.9ポンド(47.6キロ)
※当日計量:114.2ポンド(51.8キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
現在の世界ランク:IBF4位/WBO10位
戦績:14戦11勝(9KO)2敗1NC
世界戦:6戦3勝(3KO)2敗1NC
アマ通算:57戦56勝(17RSC)1敗
2017年インターハイ優勝
2016年インターハイ優勝
2017年第71回国体優勝
2016年第27回高校選抜優勝
2015年第26回高校選抜優勝
※階級:ピン級
U15全国大会5年連続優勝(小学5年~中学3年)
熊本開新高校
身長:153センチ,リーチ:156センチ
血圧:125/70
脈拍:62/分
体温:36.6℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター


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■オフィシャル

主審:チャーリー・フィッチ(米/ニューヨーク州)

副審:2-1で王者タドゥランを支持
ジル・コー(比):115-113
デイヴ・ブラスロウ(米/メリーランド州):113-115
中村勝彦(日/JBC):118-110

立会人(スーパーバイザー):ジョージ・マルティネス(カナダ/チャンピオンシップ・コミッティ委員長)


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”見えざる意思”は動いたのか - P・タドゥラン vs 銀次郎 2 レビュー Part 4 -

カテゴリ:
■5月24日/インテックス大阪5号館,大阪市住之江区/IBF世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 ペドロ・タドゥラン(比) 判定12R(2-1) 前王者/IBF4位 重岡銀次郎(日/ワタナベ)

勝者タドゥランが告げられた瞬間、国家演奏の時のように左胸に手を当てて天を仰ぐ銀次郎

◎ホールディング状態での加撃:第1戦と第2戦の共通点及び相違点

最初のパートであらかじめお断りした通り、今回の記事を書く目的は、重岡銀次郎が見舞われた悲劇の原因を発見・断定することではなく、いわんや特定の誰かに罪を着せたり負わせたりすることではありません。

第1戦と第2戦の主審を務めたスティーブ・ウィリスとチャーリー・フィッチ(いずれも米/ニューヨーク州)両審判、ペドロ・タドゥラン本人、両軍のコーナーを束ねたカルロス・ペニャロサ(王者陣営),町田主計(まちだ・ちから)両チーフ・トレーナー等々、誰か特定の個人(と両陣営を支えるスタッフの面々)に、重大事故の責任をなすりつける意図も意思もまったくない。

また、タイトルマッチを承認したIBF、試合を公式戦として認定した上で運営全般を所管したJBC、2名の主審を派遣したニューヨーク州アスレチック・コミッション(NYSAC)等々、今回の興行に関わった特定の組織に対して、「あなた方が定めた試合ルールが間違っていた。だからこの深刻な事故を招いたのだ」と、明確な医学的根拠を示すことができないにも関わらず、一方的に非難・批判を浴びせるものでもない。


IBFとニューヨーク州(NYSAC)のルールがどうであれ、開催地を所管するJBCルールが反則と規定している「相手を押さえつけて反撃も防御も出来ない状態にして加撃する」危険な行為を放置し、結果的に容認してしまうレフェリングの是非を問うのみ。

また、今後タドゥランに挑戦するかもしれない、兄優大を始めとする日本人ランカーと、ランカーたちを擁する所属ジム、日和見主義を貫くJBCへの提言の意味も含んではいる。まったく無名かつ在野の一ファンの戯言(ざれごと)だと、一笑に付されるだけと百も承知の上で・・・。


そして、話の中心となる第1戦と第2戦の共通点と相違点。まずは共通点だが、これは銀次郎をロープに押し込んで強打を連射する最も危険な場面で、2試合とも1回づつ。第1戦・第9ラウンドの1分30秒付近と、第2戦・第5ラウンド残り10秒付近の2回あった。

「たった1回づつ?」

そんな疑問を持つ方もおられるだろうが、これはけっして見逃してはならないハイリスクな反則と捉えるのがあるべき認識。レフェリーは直ちに止めに入るべき事態であり、逡巡や放置は有り得ないというのが、JBC及びWBCルールの正しい解釈になる。重大事故はいついかなる場合に起こるかわからない。起きても不思議はない。

◎最も危険な状況(左:第1戦・第9ラウンド/右:第2戦・第5ラウンド)
ホールド状態でロープに抑えつた状態での加撃/左:第1戦・第9ラウンド/右:第2戦・第5ラウンド

さらに拙ブログ管理人が強く問いたいのは、ロープに押し込まない状態での加撃,すなわち通常の展開の中で発生する同様の状況である。第1戦では3回しかなかったこの状況が、第2戦では34回に爆増しているのだ。

◎通常展開におけるホールド状態からの加撃
ホールド状態での加撃-第1戦・第5ラウンド

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第2戦でここまで極端に増えた理由は明白。
<1>戦術として意図的に用いた
第1戦で反則のチェックを一度も受けなかったことで、戦術としての有効性を確認していたタドゥラン陣営は、減点も反則負けも無いとの確信を持って用いることができた。

<2>主審による容認
主審チャーリー・フィッチは、度重なるタドゥランの行為を不問に処した。第1戦を担当したスティーブ・ウィリスは、一応「ノー・ホールド」と声を発してタドゥランと銀次郎に注意を喚起してくれたが、フィッチは唯々黙って見ているだけ。タドゥランは安心して「押さえつけて打ち続ける」ことができた。

フィッチがウィリスと同様「ホールドするな!」と注意してくれていたら、具体的な程度は無論わからないが、一定程度の抑制効果はあったのではないか。

既に言及済みだが、2人の審判はいずれもニューヨーク州のライセンスを有しており、同州を活動の拠点にしている。

<3>銀次郎が脚を使った為
正面から打ち合った第1戦とは打って変わって、第2戦の銀次郎はヒット&アウェイ(敢えて申せば”アウェイ&ヒット”)に集中。懸命に動き続けようとする銀次郎を捕まえる必要性が生じた。そしてこの点でも、「押さえつけての殴打」は明らかに奏功した。

<4>ワタナベ陣営からの抗議が無かった
第1戦では、9ラウンズ中に4回(ロープに押し込む状態1回+通常展開×3回)の発生だった。けっして許容してはならないと個人的には思うけれど、頻繁に繰り返していたとの印象は薄く、銀次郎のチームから抗議の声が上がらなかったのは止むを得ない面があり、残念ではあるが理解はできる。

しかし、第2戦では第3ラウンドから最終ラウンドまで、10ラウンズの間タドゥランはずっとやり続けていた。ロープに押さえつけて殴打した直後の第6ラウンド、フィニッシュを意識していたであろう8ラウンドと、続く9,10の4ラウンズは回数が多く目に余ったが、銀次郎のチームからの抗議は無し。タドゥランの反則について、特段問題視していなかったと判断するしかない。

<5>「注意・制止すべき反則」と「流してもいい反則」の見極め問題
クリンチ&ホールド状態での軽いパンチの応酬そのものは、プロ・アマ問わず日常茶飯的に発生する。しつこくクリンチしてくる相手の脇腹やキドニーを軽く打ったり、警告の意味を込めて頭部を軽く叩く場面を、一度ならずご覧になったことがきっとある筈だ。

プロの試合ではごく当たり前の光景で、これもまた個人差はあるが、後頭部を叩いた場合を除いて、いちいち注意しない主審も多い。いわゆる「流す」という対応。ただし、「両選手とも自分の身を守ることができる」という前提を外すことはできない。


第1戦における発生回数(ロープに押し込んだ1回を含めて4回)、「ノー・ホールド!」の警告を発した主審ウィリスのレフェリングをあらためて思い返すと、リマッチに向けた準備の段階で、町田トレーナーを中心としたチーム銀次郎が、タドゥランの反則について重要視しなかった、できなかった事情はよくわかる。

ただし、回数が激増した第2戦の試合中、臨席していた安河内JBC事務局長とIBFの立会人ジョージ・マルティネスに対して、抗議を含む何らかのアクションがあっても良かったのではないか。

マルティネスから主審フィッチにチェックの指示が出ていたらと、せんない繰言と承知の上で、ついつい言いたくなってしまう。


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◎事故原因の特定は困難
世紀が変わって以降、リング禍が起きる都度、必ずと言っていいほど引き合いに出されるジェラルド・マクラレン(米/元WBC・WBOミドル級王者)の悲劇でも明らかだが、重大事故の原因を特定するのは難しい。不可能に近いと表するべきだろう。

1995年2月25日、英国の首都ロンドンにあるO2アリーナ(当時の名称:ロンドン・アリーナ)で行われたWBC S・ミドル級タイトルマッチで、10回TKOに退いた挑戦者マクラレンが意識を失い、近隣の病院に緊急搬送されて開頭手術を受ける。

2週間に及ぶ昏睡の後、マクラレンは幸いにも意識を回復したものの、両眼の視力を完全に失い、記憶と聴覚に加えて、運動機能に深刻な障害を残した。

◎Brain-damaged & blind: Gerald 'G-Man' McClellan, boxing's hardest hitter - 30 years after Benn fight
2025年2月24日/デイリー・メール公式チャンネル
※取り返しのつかない悲劇から30年目となる前日にアップされた映像


難敵を倒し王座を防衛した地元の人気者ナイジェル・ベンが、序盤から執拗に繰り返した反則=ホールドしながらのパンチ(ラビット・キドニー・腹部)が問題視され、特にラビットパンチに対する非難が集中する。

開頭手術を行った医師とそのチームが会見を開き、ラビットパンチとの因果関係について問われると、「影響したと断定することはできないが、可能性を排除することもできない」と答えたことから、ベンの立場は極めて厳しいものとなった

そして半ば当然の結果として、主審を務めたチュニジア生まれのフランス人,アルフレド・アサロにも批判の矛先は容赦無く向く。「ベンのラビットパンチを早い段階で制止しなかった。ヤツのレフェリングにこそ直接的な責任がある」という次第。


マクラレンのコーナーを率いたスタン・”セーラー”・ジョンソンも、主審アサロと同様無傷ではいられなかった。「傑出した才能を見殺しにした」「無能」「ボクシング界から追放すべし」・・・。

最初のベルト(WBOミドル級)を獲った後、プロのイロハを叩き込まれたエマニュエル・スチュワートとの関係を清算した稀代のパンチャーは、ミルウォーキーを拠点に活動するマネージャー兼トレーナーと組む。

将来有望な駿馬を見つけたコーチが、手ずからプロの技と流儀を仕込んで育て上げ、マネージャーとマッチメイクを取り仕切ってカネと名声を手にする・・・ボクシングの盛んな国なら、洋の東西と今昔を問わないセオリー中のセオリー(米本土ではプロモーターとの兼業は法律で規制されている)。

ただし、どちらの仕事に重きを置くのかは人によって異なる。マニー・スチュワートも王国アメリカのトップ・トレーナーに相応しい高給をコーチ業から得ていたが、同時に多額のマネージメント・フフィーも稼いでいた。それでもなお、スチュワートの仕事は「教えること」が主で、マネージメントは副だったと言える。

スタン・ジョンソンの場合、順番は明らかに逆だった。マネージメント業が主でコーチ業は副。だからと言って「能無し」呼ばわりは言葉が過ぎるし、許されざる暴言,誹謗中傷に違いなく、いわんや戦犯扱いなどもっての他。

ナイジェル・ベン vs ジェラルド・マクラレン(1995年2月25日/ロンドン)

左:スタン・”セーラー”・ジョンソン/右:アルフレド・アサロ

執刀を担当した医師とそのチームは、冷静に真っ当な回答を行っただけに過ぎないが、90年代の中量級の歴史を変えたかもしれない才能を失ったショック、喪失感の大きさがファンの反応をより加熱させた。

誰かのせいに、何かのせいにしなければ収まりがつかなかったと言うべきか。今回の大事故について、SNSの暴走が見られなかったことは大きな救いと表していい。

またまた繰り返しになって恐縮だが、拙ブログ管理人が記事をアップする目的は、ルールをより明確化した上で、レフェリングとの整合性をしっかり見極めるべきではないのかという提言であり、無名かつ在野の一ファンが呟くせんない繰言である。

◎試合映像:ベン vs マクラレン
1995年2月25日/ロンドン(O2)・アリーナ



※ Part 5 へ(拙ブログ管理人による第1戦と第2戦の検証)


◎タドゥラン(28歳)/前日計量:104.5ポンド(47.4キロ)
※当日計量:114.9ポンド(52.1キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
(4回目でパス/1回目:52.4キロ,30分後2回目:52.3キロ,+100分後3回目:52.25キロ)
元IBF M・フライ級王者(V2)
戦績:23戦18勝(13KO)4敗1分け
世界戦:7戦3勝(2KO)3敗1分け
アマ通算:約100戦(勝敗を含む詳細不明)
身長:163センチ,リーチ:164センチ
血圧:137/102
脈拍:56/分
体温:36.1℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター


◎銀次郎(25歳)/前日計量:104.9ポンド(47.6キロ)
※当日計量:114.2ポンド(51.8キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
現在の世界ランク:IBF4位/WBO10位
戦績:14戦11勝(9KO)2敗1NC
世界戦:6戦3勝(3KO)2敗1NC
アマ通算:57戦56勝(17RSC)1敗
2017年インターハイ優勝
2016年インターハイ優勝
2017年第71回国体優勝
2016年第27回高校選抜優勝
2015年第26回高校選抜優勝
※階級:ピン級
U15全国大会5年連続優勝(小学5年~中学3年)
熊本開新高校
身長:153センチ,リーチ:156センチ
血圧:125/70
脈拍:62/分
体温:36.6℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター


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■オフィシャル

主審:チャーリー・フィッチ(米/ニューヨーク州)

副審:2-1で王者タドゥランを支持
ジル・コー(比):115-113
デイヴ・ブラスロウ(米/メリーランド州):113-115
中村勝彦(日/JBC):118-110

立会人(スーパーバイザー):ジョージ・マルティネス(カナダ/チャンピオンシップ・コミッティ委員長)


※ Part 5 へ(拙ブログ管理人による第1戦と第2戦の検証)


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◎タドゥラン挑戦の可能性がある日本人ランカー
<1>重岡優大(ワタナベ)/前WBCストロー級王者
銀次郎の実兄。
IBF:J・フライ級12位
WBA:ミニマム級10位
WBC:L・フライ級4位
WBO:M・フライ級12位

<2>谷口将孝(ワタナベ)/元WBO M・フライ級王者
2023年8月以降、L・フライ級に主戦場を移している。一度引退を示唆するも撤回。
IBF:J・フライ級8位
WBA:ミニマム級13位
WBC:L・フライ級15位
WBO:M・フライ級7位

<3>松本流星(帝拳)/6戦全勝(4KO)/2021年度アマ全日本王者
日本ミニマム級王者(V1/世界戦の決定に伴い返上予定)
9月14日に名古屋で行われる井上尚弥(大橋) vs M・アフマダリエフ(ウズベク)のアンダーで、高田勇仁(ライオンズ)とのWBA王座決定戦が正式発表されている。
IBF:M・フライ級5位
WBA:ミニマム級2位
WBC:ストロー級4位
WBO:M・フライ級10位

<4>高田勇仁(たかだ・ゆに/ライオンズ)/27戦16勝(6KO)8敗3分け
WBOアジア・パシフィックM・フライ級王者
前日本ミニマム級王者(V4/返上)
IBF:M・フライ級6位
WBA:ミニマム級1位
WBC:ストロー級5位
WBO:M・フライ級4位
本年1月24日、有明アリーナでの井上尚弥対金藝俊のアンダーで、世界王者候補の1人,小林豪己(真正)に番狂わせの12回2-1判定勝ち。WBOアジア・パシフィック級王者となり、松本とのWBA王座決定戦に駒を進めた。

<5>小林豪己(こばやし・ごうき/真正)/10戦8勝(5KO)2敗
前WBOアジア・パシフィックM・フライ級王者(V1/通算V2)
IBF:M・フライ級7位
WBC:ストロー級12位
WBA・WBO:ランク外

<6>石井武志(大橋)/11戦10勝(8KO)1敗
OPBFミニマム級王者(V1)
IBF:M・フライ級8位
WBA:ミニマム級4位
WBC:ストロー級10位
WBO:M・フライ級11位
小林に勝ってWBO AP王者(返上)となり、IBF王座にも2度挑戦(タドゥランに判定負け/銀次郎に2回KO負け)したジェイク・アンパロ(比/WBC26位)とのV2戦が決定済み(9月9日/後楽園ホール)

<7>北野武郎(きたの・たけろう/大橋)/8戦7勝(3KO)1分け
日本ミニマム級ユース王者/2023年度東日本新人王
IBF:M・フライ級14位
WBC:ストロー級14位
WBA・WBO:ランク外
8月21日、後楽園ホールでユース王座の初防衛戦を予定。挑戦者は、泉北ジムの松本磨宙(まつもと・まひろ)。

<8>仲島辰郎(なかしま・たつろう/平仲BS)/18戦11勝(7KO)5敗2分
WBC21位/2017年度西部日本新人王
2021年6月、当時の王者,谷口将孝への初挑戦(5回TKO負け)を皮切りに、2023年7月まで日本タイトルに4回連続挑戦して全敗。地元沖縄で銀次郎に挑んだ決定戦(10回判定負け)、銀次郎返上後のベルトを兄の優大と争い3回KO負け、高田勇仁にも10回判定負け。痛恨の4連敗を経て、昨年7月、伊佐春輔(川崎新田)との8回戦を0-1のマジョリティ・ドローで切り抜けた。2019年12月以来、5年半に渡って勝利から遠ざかっているが、選択試合で安全パイを欲しがる王者陣営が、連敗明けの下位ランカーを挑戦者に選ぶケースがままある。

近い将来の載冠を期待されながら、地域王座戦や前哨戦で躓いたプロスペクトや、ランク入りしたばかりの若手ホープにも同じ理由でお呼びがかかる場合もあり、小林,石井,北野の3選手にもその可能性が無いとは言い切れない。


”見えざる意思”は動いたのか / - P・タドゥラン vs 銀次郎 2 レビュー Part 3 -

カテゴリ:
”見えざる意思”は動いたのか / - P・タドゥラン vs 銀次郎 2 レビュー Part 2 -

■5月24日/インテックス大阪5号館,大阪市住之江区/IBF世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 ペドロ・タドゥラン(比) 判定12R(2-1) 前王者/IBF4位 重岡銀次郎(日/ワタナベ)

勝者タドゥランが告げられた瞬間、国家演奏の時のように左胸に手を当てて天を仰ぐ銀次郎

続いて、第1戦と第2戦を任された2人のレフェリー、スティーブ・ウィリスとチャーリー・フィッチにライセンスを許可したニューヨーク州アスレチック・コミッション(NYSAC)のルールも確認してみる。

ひょっとしたら、WBA・IBF・WBOと同じく、個別具体的な反則行為を列挙していないかもしれない・・・と思って見たら案の定、「相手を押さえつける」行為の記述はあるが、その状態からの加撃については明記されていなかった。

Law, Regulations, and Policies for Athletic Commission - Rules and Regulations
□19 NYCRR Parts 206 - 214
PART 206 - Commission Powers and Duties

NYSACルールにおけるファウル規定

「NYSACともあろうものが・・・・」

少々大袈裟になるが、言葉を失った。ニューヨークと言えば、今を去ること100余年前、「マフィアとギャングをボクシング興行の表舞台から一掃する」との大目標を掲げて、1920年にアスレチック・コミッション制度を発足させた州であり、合衆国政府とニューヨーク州の決意と覚悟を象徴する存在でもある。

殿堂と呼ばれるマディソン・スクウェア・ガーデン、旧ヤンキー・スタジアムとポログラウンドを舞台に、綺羅星のごとき大スターたちが頂点を目指して激しく争い、近代ボクシングの歴史そのものとも称すべき、名勝負の数々を繰り広げてきた。

そのNYSACが、この程度の反則しか規定していない。個別具体的な反則行為について、1発減点や失格に直結する「重大な反則(Major fouls)と、直ちに処罰の対象とはならない「軽微な反則(Minor fouls)」に分けて記載されてはいるものの、「軽微な反則(Minor fouls)」の先頭に、「相手を押さえつける」,「故意による執拗なクリンチ」を置いているのみ。

「これでいいのか」と率直にそう思う。せめてWBCと同じ水準であって欲しいと考えるのは、きっと拙ブログ管理人だけではないと信じる。

左:スティーブ・ウィリス/右:チャーリー・フィッチ

ウィリスとフィッチが主に仕事をするニューヨーク州内では、タドゥランと銀次郎のケースが不問に処されても直接的に文句を言いづらい。2名のレフェリーは、ルール上間違っていないことになってしまう。

では、開催地の大阪を所管するJBCルールとの整合性はどうなるのか。試合が行われたのはニューヨークではなく大阪である。しかし前章で触れた通り、肝心要のJBCが日和見の及び腰だから、そもそも話し合いにすらない。

試合直前に行われるルール・ミーティングの席上、銀次郎を擁するワタナベジム側から、ホールディング状態での加撃について、ルールの再確認とチェックの要望が出ない限りにおいては。それがそのまま通るか否かは別問題にしても・・・。


WBA・IBF・WBOの3団体が、どうして反則行為を具体的に規定していないのか。それには一応の理屈がある。

試合中に発生し得る反則について、認定団体に取って第一に必要な規定は、その反則が故意(Intentional foul)か偶発(Accidental foul)を速やかに判別する為の分類定義であり、第二にそれらの反則に対して科すべき罰則の規定、減点と失格(反則負け)に関するペナルティを明確に決めておかなくてはならない。

そしてその次は、故意であれ偶発であれ、反則を受けた側の選手が怪我等で続行できなくなった場合、どのように決着させるのか。故意であるとレフェリーが判断すれば、当然反則負けになる。では、偶発的な反則だったとレフェリーが判断したらどうするのか。

これらをルール上明確にしておくことが先決で、具体的な反則行為についての規定は、大変に遺憾ではあるものの、これらの次かそのまた次,というのが実態。”遺憾砲”ではどうしようもないのは百も承知だが、こればかりは”如何”ともし難い。

認定団体はタイトルマッチを承認こそすれ、試合(興行)を直接管理運営する立場にはなく、試合が行われる中で生じ得る様々なトラブルやアクシデント(故意・偶発に関わらず)、不測の事態に即応・収拾する為、開催地を所管する地元コミッションのルールに委ねるケースも当たり前に発生する。


世界各国で開催される世界,及び地域のタイトルマッチに必ず派遣・臨席する立会人(スーパーバイザー)の役割は、それぞれの認定団体が定めるチャンピオンシップ・ルールが、正しく守られているか否かの確認が第一であり、レフェリーが判断に困るような事象が発生した場合、地元コミッションから派遣される責任者(一般的に世界戦の場合は事務局長)と相談しながら解決に当たらなくてはならない。

そして本番直前に行われるルール・ミーティングの席上、地元コミッション及び両陣営の代表者(事務局長及びインスペクター等)らとともに、認定団体とコミッションルールに関する疑問や質問に関する確認も行う。

個別具体的な反則行為の規定は、地元コミッション・ルールに帰属すべき項目だとの認識と見解を、WBA・IBF・WBOは示しているのではないかと推察できる。


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◎タドゥラン(28歳)/前日計量:104.5ポンド(47.4キロ)
※当日計量:114.9ポンド(52.1キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
(4回目でパス/1回目:52.4キロ,30分後2回目:52.3キロ,+100分後3回目:52.25キロ)
元IBF M・フライ級王者(V2)
戦績:23戦18勝(13KO)4敗1分け
世界戦:7戦3勝(2KO)3敗1分け
アマ通算:約100戦(勝敗を含む詳細不明)
身長:163センチ,リーチ:164センチ
血圧:137/102
脈拍:56/分
体温:36.1℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター


◎銀次郎(25歳)/前日計量:104.9ポンド(47.6キロ)
※当日計量:114.2ポンド(51.8キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
現在の世界ランク:IBF4位/WBO10位
戦績:14戦11勝(9KO)2敗1NC
世界戦:6戦3勝(3KO)2敗1NC
アマ通算:57戦56勝(17RSC)1敗
2017年インターハイ優勝
2016年インターハイ優勝
2017年第71回国体優勝
2016年第27回高校選抜優勝
2015年第26回高校選抜優勝
※階級:ピン級
U15全国大会5年連続優勝(小学5年~中学3年)
熊本開新高校
身長:153センチ,リーチ:156センチ
血圧:125/70
脈拍:62/分
体温:36.6℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター


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■オフィシャル

主審:チャーリー・フィッチ(米/ニューヨーク州)

副審:2-1で王者タドゥランを支持
ジル・コー(比):115-113
デイヴ・ブラスロウ(米/メリーランド州):113-115
中村勝彦(日/JBC):118-110

立会人(スーパーバイザー):ジョージ・マルティネス(カナダ/チャンピオンシップ・コミッティ委員長)


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