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充実期を迎えた三冠王に鋼(はがね)の男が挑戦 /両国3大世界戦 1 - 中谷潤人 vs V・アストラビオ ショートプレビュー -

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■7月20日/両国国技館/WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 中谷潤人(M.T) vs WBC1位 ヴィンセント・アストロラビオ(比)



想定を上回る一方的な展開で、ドネアに完勝したメヒコの新たな雄,アレハンドロ・サンティアゴを破壊してから早や5ヶ月。迎えた初防衛戦は、ランク1位との指名戦になった。

4月20日更新(23日発表)のリング誌P4Pランキングで10位に入り、5月と6月に行われた2回づつの更新でも圏外に落ちることなく現状を維持。主要4団体の王座を日本が独占するバンタム級で、こちらも評価を爆上げ中のWBA王者,井上拓真(大橋)を抑えて、クラス最強の呼び声は高まる一方。

敢えて不安要素を探すなら、唯一ウェイト・コントロールしか有り得ない。今回も無事計量をクリアはしたものの、血圧(109/78=前回:106/70)と体温(35.7℃=前回:36.3℃)の数値の低さは、精気を欠いた土気色の顔色ともども、118ポンドに上げてもなお、減量の過酷さがさほど改善されていないことを示唆している。

脈拍(76/分=前回:81/分)については、もともとスポーツ心臓ではないというだけで、余計な心配をする必要はないと思うけれども。


左の決定力に翳り無し。圧巻の破壊力を誇る豪砲は、3つ目の階級でも変わらぬ威力を発揮。西岡利晃のモンスター・レフト、山中慎介のゴッド・レフトに優るとも劣らない。メヒコの小型ラッシャーをし止めた返しの右も切れ味を増して、勢いと安定感もいや増すばかり。

◎試合映像:中谷 TKO6R サンティアゴ(ハイライト/Top Rank公式)
2024年2月24日/両国国技館
WBC世界バンタム級王座決定12回戦


だとしても、直前のオッズは流石に開き過ぎてやしないか。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
中谷:-2500(1.04倍)
アストロラビオ:+1000(11倍)

<2>betway
中谷:-2500(1.04倍)
アストロラビオ:+900(10倍)

<3>ウィリアム・ヒル
中谷:1/25(1.04倍)
アストロラビオ:9/1(10倍)
ドロー:25/1(26倍)

<4>Sky Sports
中谷:1/20(105倍)
アストロラビオ:14/1(15倍)
ドロー:33/1(34倍)

ファイナル・プレッサーでは記者の質問に対して井上拓真の名前を挙げ、統一戦への抱負を述べていた。P4Pランク入りを果たしたことで、さらなる階級アップ+モンスターとのマッチアップへの期待に拍車がかかる。

◎ファイナル・プレス・カンファレンス(抜粋)

※ファイナル・プレス・カンファレンス(アマプラ公式:フル)
https://www.youtube.com/watch?v=V6L9QXkR_nQ

今月10日行われた公開練習は、あくまで見せる為の動きに止めていた為、本当のところはわからないけれど、まずまず上首尾の仕上がりではないか。

◎中谷公開練習(デイリースポーツ)



「アセロ(Asero:スペイン語で鋼鉄)」の異名を取るアストロラビオは、ジャブ,ワンツーからセットアップする右構えの正攻法。意表を突くフェイントやムーヴは少なく、同じリズムとテンポで波状攻撃を続ける上、ディフェンスにも相応に穴がある。

ニックネームに違わず、軽量級としては高いKO率(73%超)を誇るが、パワーはともかく、一撃で倒し切れるほど精度は高くない。中谷にとって組し易い相手だと、多少見くびられても致し方のない面はある。

バンタム級としては平均的なサイズに収まり、タイの大ベテラン,ナワポンとのエリミネーターでは、ワンパターンな正面突破の繰り返しが目立ち、大柄でタフなナワポンに力負けして持て余し、ロープに押し込まれて防戦に回らざるを得ず、想定外(?)の苦境に追い込まれている。

モロニー戦から3ヶ月のスパンに無理があったのか、正直イマイチの感が拭えなかったけれど、首都バンコクに乗り込んだ完全アウェイを考慮すれば、拮抗した厳しい戦況の中で何とかスタミナを温存して、11ラウンドに右の相打ちで決定的なダウンを奪い、レフェリーストップを呼び込んだ集中力は賞賛されていい。

ナワポンは昨年大晦日の興行に呼ばれて、比嘉大吾に4回でフィニッシュされたが、アストロラビオ戦に続く連続KO負けは、14年に及ぶ歴戦の疲労が顕在化したとの印象。


中谷が労せずして制空権を握り、早々と左の一撃を効かせて終わらせる。あるいは積極的に距離を潰して、得意のショートアッパーでアストロラビオのガードを割り、たたらを踏ませて止めの左を叩き込む。

楽観的かつ安直に過ぎる見立てではあるが、そんな展開をついつい想像してしまいがち。それほど両者の力の差は大きいと、多くのファンが考えたとしても無理からぬ話ではある。

ただし、好調時のスピード&シャープネスはかなりの高水準。前戦のサンティアゴを易々と凌駕する。老いたりとは言え、あのリゴンドウからダウンを奪って1ポイント差の3-0判定をもぎ取り(出世試合)、ジェイソン・モロニー(豪)とのWBO王座決定戦でも、五分の勝負を繰り広げた。

気合を入れてしっかり準備した時のアストロラビオは侮れない。甘く見ると痛い目に遭う。まさしくリゴンドウがその典型だと、頭から決め付けるつもりは毛頭ないが、ちょっといい線いってるフィリピン人アンダードッグ程度の認識だったと思う。

◎アストロラビオ公開練習(デイリースポーツ)



フィリピン国内のローカル・ファイトを取り仕切り、アストロラビオを鍛え上げてきたマネージャー兼トレーナーのノノイ・ネリは、元々パッキャオのチームで働いていた人物で、フレディ・ローチの隣で名物的存在感を発揮したブボイ・フェルナンデスとともに、8階級制覇の英雄を支えた重要なスタッフの1人。

リゴンドウ戦のアップセットを認められ、パッキャオが興したMPプロモーションズと正式契約を結び、PBC(Premier Boxing Champions)参戦への道が開けた。

海千山千のノノイのことゆえ、中谷の左への警戒は抜け目なくやってくるだろうが、ブロック&カバーとヘッドムーヴの強化に止まるのか、それともステップにさらなる磨きをかけて、距離のコントロール(細かく丁寧な出入り)で対抗して来るのか。

前者だけなら、それほど苦労はしない筈。だが、後者を混ぜて鋭いジャブ,ワンツーを主体に動かれると、思いのほか厄介な状況になるかもしれない。


◎試合映像
<1>アストロラビオ TKO11R ナワポン
2023年8月26日/ スアンルム・ナイトバザール,バンコク(タイ)
WBC世界バンタム級挑戦者決定12回戦
https://www.youtube.com/watch?v=FA4FkhHVpF0

<2>J・モロニー 判定12R(2-0) アストロラビオ
2023年5月13日/アドヴェンティスト・ヘルス・アリーナ,カリフォルニア州ストックトン
※Top Rank公式ハイライト
https://www.youtube.com/watch?v=mX2PWMTX4d4

※フルファイト
https://www.dailymotion.com/video/x8l6hh5

<3>アストロラビオ 判定10R(3-0) リゴンドウ
2022年2月26日/ドバイ・マリーナ,ドバイ(UAE)
WBCインターナショナルバンタム級王座決定10回戦

※フルファイト(現地撮影映像)
https://www.youtube.com/watch?v=gTVx9EX_32k


勝利が揺らぐようなことはないと信じるが、何しろ油断は禁物。もしもステップをふんだんに使って出入りしてきたら、闇雲に距離を詰めに行かず、スピードを意識したジャブで刺し負けないことが大事になる。

果敢に前に出て強打を振るい、左へのスイッチも込みで奮闘するフランシスコ・ロドリゲス・Jr.とのS・フライ級初戦(ノンタイトルのテストマッチ)では、メキシカン・ファイターの出足を止めるジャブが無く、揉み合い上等の密着を許して苦しんだ。

バッティングによる出血に見舞われたアンドリュー・モロニー(豪)とのタイトルマッチ、ジャブが上手くて煩いモロニー対策の必要性から、目に見えて修正・改善された右リードは、最終ラウンドのドラマティックな幕切れを演出する重要な役割を果たし、タフでしぶといアルヒ・コルテスとの防衛戦でも、距離とペースの掌握に大きな力を発揮した。

身長160センチに満たないサンティアゴには、ロング・ディスタンスのワンツーはとりわけ有効だったが、”効かせるジャブ”ではなく、いわゆるストッピング・ジャブ(そんなもの存在しないとの主張も最近はあるらしいが)、左を決める為の”水先案内”の域を出ないのが惜しまれてならない。


ロドリゲス,コルテスのメキシカン2人(とサンティアゴも)が露にした、中谷最大のウィークネス。強引にくっつかれて強打を振り回されると、必要以上にバタついてしまう。強振に強振で対応してしまい、オフ・バランスを招いて被弾のリスクが増大する。

アストロラビオの本領はラフ&タフにはなく、注意すべきは丁寧な出入りとの認識ではあるが、断崖絶壁まで追い詰められた拍子に、大きな山猫を噛む荒ぶる窮鼠に変身する恐れがゼロとまでは言えない。

”ハードジャブの開眼”に叶わぬ期待を寄せつつ、中盤~後半にかけての綺麗なフィニッシュで怪我無く終えて、是非とも年末にもうひと勝負を。


◎中谷(26歳)/前日計量:117.3ポンド(53.2キロ)
現WBCバンタム級王者(V0),前WBO J・バンタム級(V1/返上),前WBOフライ級(V2/返上),元日本フライ級(V0/返上),元日本フライ級ユース(V0/返上)王者
2016年度全日本新人王(フライ級/東日本新人王・MVP)
戦績:27戦全勝(20KO)
世界戦:6戦全勝(5KO)
アマ戦績:14勝2敗
身長:172センチ,リーチ:170センチ
※以下計量時の測定
脈拍:76/分
血圧:109/78
体温:35.7℃
左ボクサーパンチャー


◎アストロラビオ(27歳)/前日計量:117.5ポンド(53.3キロ)
戦績:23戦19勝(14KO)4敗
身長:165センチ,リーチ:166センチ
※以下計量時の測定
脈拍:83/分
血圧:128/84
体温:36.4℃
右ボクサーファイター

◎前日計量(Top Rank公式)


◎前日計量(アマプラ公式:フル)
https://www.youtube.com/watch?v=hWuuj-UUNvc


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■オフィシャル

主審:トーマス・テーラー(米/カリフォルニア州)

副審:
マイケル・テイト(米/フロリダ州)
クリス・ミリオーレ(米/ネバダ州)
ホセ・マンスール(メキシコ)

立会人(スーパーバイザー):マウリシオ・スレイマン(メキシコ/WBC会長)

※スレイマン会長が直々に来日。先代のドン・ホセは、辰吉の試合に何度か臨席(日米両方)して華を添えてくれたが、”ポスト・モンスター”の最右翼と目されるまでになった中谷を、WBCもはっきり次期スターとして認知した。


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■アマゾン・プライムで無料配信(午後6時~)

2024 那須川天心ボクシング第4戦、中谷潤人・加納陸 世界戦

◎【無料全編公開】 LIVE BOXING 9 『独占密着 那須川天心第4戦、中谷潤人、田中恒成、加納陸出場トリプル世界戦直前SP』|プライムビデオ
2024年7月6日/アマプラ公式


混迷の147ポンドを再統一へ /ポスト・クロフォードの大本命出撃 - J・エニス vs D・アヴァニシアン プレビュー 2 -

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■7月13日/ウェルス・ファーゴ・センター,フィラデルフィア/IBF世界ウェルター「級タイトルマッチ12回戦
王者 ジャロン・エニス(米) vs IBF13位 ダヴィド・アヴァニシアン(アルメニア)



勝って当然と言うより、倒して当然の状況でV2に臨むエニスは、開催地フィリー出身の黒人スラッガー。サイズ,スピード,パワーの三拍子揃った逸材として、早くから大成を期待されてきた。

重さとキレを併せ持つパンチがとにかく凄い。自在に左右のスタンスを切り替えるスイッチを操る器用さも含めて、我らが井上尚弥をそのままスケールアップして、より豪快に荒っぽくした感じと言えば分かり易いだろうか。破壊力&決定力は、現状の147~154ポンドにおいて頭1つ抜けている。

ボクシング・センスとスキル,カウンターの妙技に関する限り、難病に倒れる以前のヴァージル・オルティズ・Jr.が飛び抜けているとの確信は揺るがないけれど、クロフォードが支配するウェルター級から、よりチャンスの多いS・ウェルター級へと主戦場を移す決断には、日々存在感を増すエニスの影響が皆無とは言い切れない。


自身もプロボクサーだった実父デレク("Bozy:ボジー"の愛称で呼ばれる)の指導を受け、男三人の兄弟全員がプロになったボクシング一家。長男のデレク・ジュニア(17歳年長)は、父と区別する意味もあって、幼い頃から“Pooh(プー)”と呼ばれ、24勝(13KO)5敗1分けの立派な戦績を残して2014年に引退。

次男のファラー(14歳年上)も、長兄デレク・ジュニアとほぼ同じ時期に活動して、1年後の2015年にリングを降りた。戦績は22勝(12KO)2敗。父と兄はペンシルベニアのボクシング殿堂入り(アメリカは主要な州ごとにホール・オブ・フェイムがある)に浴している。ファラーを押す地元の記者と識者も1人ではないとのことだが、未だ選出は叶わず。

そして、2人の兄が果たせなかった世界王者の夢を実現した三男ジャロンは、母が付けた"Boops(ブープス)"というニックネームを、通っていたジムのコーチや仲間たちが聞き間違えて“Boots(ブーツ)”と呼ぶようになり、それがそのまま定着して今日に至る。
Jaron_Boxy_Ennis
※以下左から:次男ファラー,ジャロン・エニス,父でトレーナーのデレク・”ボジー”,長兄のデレク・”プー”
Ennis_family

2016年のリオ五輪出場とメダル獲得を目指していたが、米国最終予選でゲイリー・アントワン・ラッセルに連敗。あと1歩のところで代表の座を逃し、2016年4月に4回戦からスタート。当たるを幸い倒しまくり、プロ11戦目~30戦目まで、バッティングによるノーコンテスト(2020年12月:クリス・ヴァン・ヒーデン戦)を1つ挟み、19連続KO勝ちを記録。

ヒーデン戦から4ヶ月後の2021年4月、カザフ出身の元IBF J・ウェルター級王者セルゲイ・リビネッツを6回KOに屠ると、同年10月、プエルトリコの元プロスペクト,トーマス・デュロルメを初回2分足らずで撃破。

2022年5月には、カナダのオリンピアン(2012年ロンドン五輪ウェルター級ベスト8),カスティオ・クレイトンに2回KO勝ち。エロール・スペンスとクロフォード挑戦への狼煙を上げる。

◎試合映像:エニス 6回KO S・リピネッツ(出世試合)
2021年4月10日/モヒガンサン・カジノ(コネチカット州アンキャンスビル)


◎試合映像:エニス 1回KO T・デュロルメ
2021年10月30日/マンダレイ・ベイ・リゾート&カジノ(ラスベガス)



長らく対戦が待たれていたスペンス vs クロフォードの4団体統一戦が、いよいよ実現に向かって動き出したことから、IBFは指名挑戦権を得ていたウクライナのテクニシャン、カレン・チュハジアン(アマ200戦超)とエニスに暫定王座決定戦を指示承認。

鋭く素早い反応を最大の武器にしつつ、止まらないフットワークを駆使するチュハジアンに対して、いつもの筋力に頼った強振・豪打をセーブ。チュハジアンに負けないスピード&機動力で対抗するエニス。

デイフェンス重視の技巧派をし止めることはできず、6年半ぶりの判定勝ち(フルマーク)で暫定王座に就くと、7月8日にベネズエラの強打者ロイマン・ビリャ(26勝24KO1敗)を10回KOに下して初防衛に成功。同じ月の29日、スペンスを一方的に打ちまくって147ポンドを統一したクロフォードとの一騎打ちを迫っている。


暫定王座を懸けた直近の2試合、荒ぶるハードヒットを抑制しながら、スピード&クィックネスに注力する姿を披露したエニス。ビリャ戦では、時にヒヤリとする被弾も見受けられたが、堅実なブロック&カバーだけでなく、程よく肩の力を抜いたボディワークも併用して、五輪代表候補のアマキャリアが伊達ではないことを証明した。

反面上半身の筋力をセーブすると、これまでのように一撃で致命傷を負わせることができず、決定力も目減りすることが判明。来るべきクロフォード戦に向けて、長短両面が露になったとも言える。

◎試合映像:エニス 12回3-0判定 K・チュハジアン
2023年1月7日/キャピタル・ワン・アリーナ(ワシントンD.C.)
IBF暫定王座決定戦

※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=-rkOp8ub2R8

◎試合映像:エニス 10回KO R・ビリャ
2023年7月8日/ボードウォーク・ホール(アトランティックシティ)

※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=wBHTtQJEuVM


昨年11月上旬、正規 vs 暫定のIBF内統一戦ではなく、スペンスとのリマッチ(再戦条項有り)を優先する意向を示したクロフォードがベルトをはく奪され、戦わずしてエニスが自動昇格。

ところが今年1月、スペンスが白内障の手術(右眼)を受けたことを公表。2021年8月に左眼の網膜裂孔が発覚して、3週間後に決まっていたパッキャオ戦をフイにした経緯があるだけに、交通事故(2019年10月)の後遺症と併せて引退を取り沙汰される事態になった。

リマッチの速やかな履行が不可能となり、クロフォードはS・ウェルター級への進出を決断。来月3日にロサンゼルスで、WBA王者イスラエル・マドリモフ(ウズベキスタン)にアタックする。

スペンスもS・ウェルター級での再起を希望しており、クロフォードの4階級制覇達成を見越したかのように、「154ポンドでもう一度やろう」と、半ば自らに言い聞かせるように声明を出した。


IBFより8ヶ月遅れ(昨年9月)になったが、ヨルデニス・ウガス(キューバ)を破ったマリオ・バリオスを暫定王者に承認済みのWBCも、5月末にクロフォードを休養王者に横滑りさせると、先月20日、バリオスの正規王者格上げを正式にリリース。

WBAとWBOはクロフォードの王座を認め続けてはいるが、WBAには2年前からレギュラー王者エイマンタス・スタニオニス(リトアニア)がいて、WBOも5月18日に行われた決定戦で、1位ジョバニ・サンティリャン(米)に10回KO勝ちした10位ブライアン・ノーマン・Jr.(米)を暫定王者にしたばかり。

マドリモフ vs クロフォードの結果によっては、さらに混迷の度合いを深めそうな147ポンドだが、今や最も稼げる階級になった激戦区をリードするのは間違いなくエニス。

クロフォードより1ラウンドでも早く倒したいのはヤマヤマだが、立ち上がりから上から目線で強引に振り回すと、アヴァニシアンのカウンターを食らって慌てる恐れも十分。無論、そのまま圧殺する確率も高いけれど、アルメニアの猛者にもそれだけの勇気と技術がある。


◎エニス(27歳)/前日計量:146.4ポンド
IBFウェルター級王者(V1/暫定→正規)
戦績:32戦31勝(28KO)1NC
アマ通算:58勝3敗
■2015年リオ五輪米国最終予選(オリンピック・トライアル)
<1>トライアル・クォリファイ(最終選考予選/メリーランド州ボルティモア)優勝
<2>トライアル・パーティシパント(最終選考/ネバダ州リノ)次点
※決勝でゲイリー・アントワン・ラッセルに2敗(いずれも0-3)
■ナショナル・ゴールデン・グローブス
2015年優勝
2014年準優勝
■2015年ユース全米選手権優勝
※階級:L・ウェルター級(64キロ)
身長:178センチ,リーチ:188センチ
右パンチャー(スイッチヒッター)


◎アヴァニシアン(35歳)/前日計量:147ポンド
元WBAレギュラー王者(V1/暫定→正規),元欧州(EBU)王者(V5)
戦績:35戦30勝(18KO)4敗1分け
アマ戦績:不明
身長:173センチ,リーチ:174センチ
右ボクサーファイター(スイッチヒッター)

◎前日計量


◎前日計量(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=928HvJvVtYI


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■リング・オフィシャル:未発表

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◎ファイナル・プレス・カンファレンス(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=U8nMHoC4nfo

混迷の147ポンドを再統一へ /ポスト・クロフォードの大本命出撃 - J・エニス vs D・アヴァニシアン プレビュー 1 -

カテゴリ:
■7月13日/ウェルス・ファーゴ・センター,フィラデルフィア/IBF世界ウェルター「級タイトルマッチ12回戦
王者 ジャロン・エニス(米) vs IBF13位 ダヴィド・アヴァニシアン(アルメニア)



本来ならば、3位(1・2位不在)のコーディ・クローリー(カナダ)が指名挑戦する筈だった2度目の防衛戦。22連勝中(9KO)のカナダ期待の王者候補が、眼疾による撤退を表明(6月上旬)。

2020年9月から4戦連続でPBCのリングに登り、ウズベクの実力者クァドラティロ・アブドゥカハロフ(2021年12月/10回3-0判定勝ち)、大ベテランの元コンテンダー,ホセシト・ロペス(2022年4月/10回3-0判定勝ち)、同じく世界挑戦経験を持つアベル・ラモス(2023年3月/12回2-0判定勝ち)と、武漢ウィルスが猛威を振るう真っ只中で、長いブランクを挟みながらタフな3戦をこなした。

異変が起きたのは挑戦権を得たラモス戦後で、両眼の手術を受けたという。幸いにも術後の経過は良好で、難航した指名戦の交渉は入札に持ち込まれ、エニスを擁するマッチルームUSAが390万ドルで興行権を落札(今年4月/PBC側のTGBプロモーションズは200万ドル)。

しかし、本格的な追い込みに入ろうかという段になり、右眼に異常が発生する。視界の歪みを訴えて眼の主治医を訪れると、「網膜に水が溜まっている」との診断が下り、キャリア10年の節目に実現した世界戦を諦めざるを得なくなった。

自然治癒の可能性もあるらしく、医療チームは様子を見ながら治療方法を決定するとの方針で、クローリー本人は引退を否定。現役の継続を目指している。


代役として白羽の矢が立ったアヴァニシアンは、名前から分かる通りアルメニアにルーツを持つ。生まれたのはカザフスタンの国境に近いタビンスコエ(ロシア領内/バシコルトスタン共和国)という小さな街だが、英国に移り住んだ今も国籍はアルメニアのままらしい。

テレンス・クロフォードとの対戦経験(2022年暮れに6回KO負け)があり、オレクサンドル・ウシク,井上尚弥との三つ巴でリング誌P4Pのトップを争うクロフォードとの比較を狙った、なかなかに計算高いマッチメイク。本番まで1ヶ月を残していたことが幸いした。

アヴァニシアンは2021年10月以降、フランク・ウォーレン率いるクィーンズベリー・プロモーションズの支配下にあるが、ウォーレンとエディ・ハーンが先月リヤドで共催した「クィーンズベリー vs マッチルーム対抗戦」の副次効果と見るべきか。
Ennis_Avanesyan1s
デビューした2009年6月~2014年の秋まで、5年余りをロシア国内で戦った後、イングランド北部のニューアーク(ノッティンガムシャー州)に移住。地元プロモーターの仕切りで2試合やった後、WBAの暫定王座決定戦(2015年11月/モンテカルロ)に抜擢される。相手は9位のベテラン,チャーリー・ナヴァロ(ベネズエラ)で、アヴァニシアンも10位の下位ランクだった。

当時のWBAウェルター級は、スーパー王者フロイド・メイウェザーと正規王者キース・サーマンの2人王者体制だったが、5月にパッキャオとの大一番を終えたPPVセールスキングは、9月にアンドレ・ベルトを完封。試合前からラストファイトを公言してていたご本尊様は、そのまま2度目の引退を表明する。

7月にルイス・コラーゾを7回終了TKOに退け、5度目の防衛に成功したサーマンも、人気者の元IBF王者ショーン・ポーターとの交渉に入り、日程は早くとも年明けの見込み。承認料収入をコンスタントに確保したいWBAは、同年暮れに会長職を世襲するメンドサ親子のお膝元べネスエラのナヴァーロにベルトを与えるべく、暫定王座の承認に動いた。

対戦当時既に30代後半だったナヴァーロに対して、アヴァニシアンは28歳。打ちつ打たれつの攻防を僅かづつ、しかし着実に抑えたアヴァニシアンが、懸命に食い下がるナヴァーロの執念を第9ラウンドに打ち砕き、レフェリーストップを呼び込む

◎試合映像:アヴァニシアン 9回TKO C・ナヴァーロ
2015年11月7日/サレ・デ・エトワール(モンテカルロ/モナコ)


初防衛戦は、半年後の2016年5月。アルメニア移民のコミュニティがあるアリゾナ州グレンデールで、44歳のシェーン・モズリーを僅少差の3-0判定で引退に追い込み、キャリア最大の勝利で米国デビューを飾る。

◎試合映像:アヴァニシアン 12回3-0判定 S・モズリー
2016年5月28日/ヒラ・リヴァー・アリーナ(アリゾナ州グレンデール)
https://www.youtube.com/watch?v=YuC-MORMuqw

メイウェザーの引退でサーマンがスーパー王者に格上げされ、玉突き(タナボタ)で正規に昇格。さらにサーマンが交通事故に遭い、2016年3月に予定していたショーン・ポーター戦を流してしまい、WBAはアヴァニシアンの1人王者体制となったが、翌2017年2月のV2戦でラモント・ピーターソンに0-3判定負け。

同年12月にカメルーンの無名選手(英国在住)を8回判定に破り再起するも、3度目のアメリカでリトアニアの強豪エギディウス・カヴァリアスカスに6回TKO負け(2018年2月)。序盤からリードを許し、痛烈なワンツーのカウンターを浴びてグラつき、ロープに押し込まれて連打をまとめられた。

◎試合映像:L・ピーターソン 12回3-0判定 アヴァニシアン
2017年2月18日/シンタス・センター(オハイオ州シンシナティ)
https://www.youtube.com/watch?v=DleF6txJfRY

◎試合映像:E・カヴァリアスカス 6回TKO アヴァニシアン
2018年2月16日/グランド・シエラ・リゾート & カジノ(ネバダ州リノ)


世界戦線からの後退を余儀なくされたアヴァニシアンは、2019年3月スペインで再起。復帰戦で欧州(EBU)王座に就くと、この年は9月と12月にもスペインで戦い、欧州王座を2度防衛。本格的な巻き返しを・・・というところでパンデミックに見舞われ、1年3ヶ月のレイ・オフ。

2021年2月、ナジーム・ハメドに良く似たスタイルで注目を集めるジョシュ・ケリーに6回TKO勝ち。一回り大きなケリーにプロ初黒星を与えて、トップ戦線にカムバック。10月2日には、ランカシャーのホープ,リアム・テーラーを2回TKOに屠り、フランク・ウォーレンとの契約もまとまって、奇跡的とも居えるV字回復に成功。

そして2022年3月、無敗のフィンランド人オスカリ・メッツを初回2分ジャストで粉砕。欧州王座の防衛を5回に伸ばし、タイソン・フューリーをウォーレンと共同プロモートするボブ・アラムを通じて、クロフォードへの挑戦が決まる。

◎試合映像:アヴァニシアン vs J・ケリー
2021年2月20日/ウェンブリー・アリーナ(ロンドン)


アヴァニシアンの勢いは凄かったが、ジェフ・ホーン,ホセ・ベナビデス,アミル・カーン,カヴァリアスカス,ケル・ブルック,ポーターを立て続けにストップして、S・ライト級時代から続く世界戦9連続KOをマークするクロフォードは巧くて強い。1枚も2枚も上手だった。

いつものようにコンパクトにガードを固めて前進を繰り返し、何とかプレスをかけようとするものの、クロフォードは細かく後退のステップを刻みながら、正確な右リードに続くショートブローで早々とペースを握る。

けっして無理をしない為派手さは無いが、どんな距離でも相手の攻撃を綺麗にかわしつつ、インサイドから放つストレート系のパンチを的確に当てて行く。それらはすべて前後左右のステップと連動して、スムーズかつ抜群のタイミングで着弾する。

「打つパンチが全部カウンターになっている」

夭折した”逆転の貴公子”大場政夫が思わず息を呑み感嘆した、全盛のマンテキーヤ・ホセ・ナポレスもかくやと想起させずにおかない卓越した技巧が冴え渡る。徐々に手数が出なくなり、逆に押され出すアヴァニシアンに、フックとアッパーを組み合わせた上下のコンビネーションを思うがままにヒット。

最後は右フックのクロス・カウンターを一閃。仰向けに倒れたアヴァニシアンは、ピクリとも動かなかった。

◎試合映像:クロフォード 6回KO アヴァニシアン
2022年12月10日/CHIヘルス・センター(ネブラスカ州オマハ)


丸々1年休んだアヴァニシアンは、昨年12月20日、いつぞやのカメルーン人を相手にバーミンガムで実戦復帰。慎重の上にも慎重を期して、ミドル~S・ミドル級の6回戦契約で行われ、4ラウンド終了後の棄権TKOで無事に帰還を果たした。

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英国に移って以来、変わらぬ信頼を寄せるトレーナー,カール・グリーブスとのコンビは今もなお健在。圧倒的な不利を示すオッズにも臆することなく、勇躍王者の地元フィラデルフィアへと乗り込む。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
エニス:-2500(104倍)
アヴァニシアン:+1000(11倍)

<2>betway
エニス:-2500(1.04倍)
アヴァニシアン:+1000(11倍)

<3>ウィリアム・ヒル
エニス:1/20(105倍)
アヴァニシアン:9/1(10倍)
ドロー:20/1(21倍)

<4>Sky Sports
エニス:1/16(10625倍)
アヴァニシアン:14/1(15倍)
ドロー:33/1(34倍)


Part 2 へ


◎エニス(27歳)/前日計量:146.4ポンド
IBFウェルター級王者(V1/暫定→正規)
戦績:32戦31勝(28KO)1NC
アマ通算:58勝3敗
■2015年リオ五輪米国最終予選(オリンピック・トライアル)
<1>トライアル・クォリファイ(最終選考予選/メリーランド州ボルティモア)優勝
<2>トライアル・パーティシパント(最終選考/ネバダ州リノ)次点
※決勝でゲイリー・アントワン・ラッセルに2敗(いずれも0-3)
■ナショナル・ゴールデン・グローブス
2015年優勝
2014年準優勝
■2015年ユース全米選手権優勝
※階級:L・ウェルター級(64キロ)
身長:178センチ,リーチ:188センチ
右パンチャー(スイッチヒッター)


◎アヴァニシアン(35歳)/前日計量:147ポンド
元WBAレギュラー王者(V1/暫定→正規),元欧州(EBU)王者(V5)
戦績:35戦30勝(18KO)4敗1分け
アマ戦績:不明
身長:173センチ,リーチ:174センチ
右ボクサーファイター(スイッチヒッター)

◎前日計量


◎前日計量(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=928HvJvVtYI


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■リング・オフィシャル:未発表

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◎ファイナル・プレス・カンファレンス(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=U8nMHoC4nfo


2団体統一 or 引退 /相性は過去最悪(?) - 井岡 vs F・マルティネス プレビュー II -

カテゴリ:
■7月7日/両国国技館/WBA S・フライ級,IBF J・バンタム級世界王座統一12回戦
WBA王者 井岡一翔(志成) vs IBF王者 フェルナンド・マルティネス(亜)
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「満員のボンボネーラでビッグマッチをやりたい。」

ボカ・ジュニアーズで有名な、首都ブエノスアイレスのボカ地区で生まれ育ったマルティネスは、念願の世界タイトルを獲った直後のインタビューで「将来の夢は?」と問われて、少年のように瞳をキラキラに輝かせてそう言い放った。

「ボンボネーラ(La Bombonera)」とは、5万7千人を収容可能なサッカー・スタジアム。お断りするまでもなく、ボカ・ジュニアーズの本拠地である。

ボカ地区の主要な住民はブルーカラーで、マルティネスの一家もけっして裕福ではなかったらしく、おまけに12人の子だくさん。7番目に生を受けたフェルナンド少年は、大のボクシング・ファンだった父に連れられ、6歳の時に初めて近隣のジムへ行く。

「父親だけじゃなく、家族全員がボクシングに熱中していた」とのことで、「マイク・タイソンの試合を見てすぐに夢中になった。」

当然サッカーも大好きだったが、11歳で初めて実戦のリングに立ち、それ以来2つの拳で戦い続けることに。自己申告によるアマチュア・レコードは、なんと148勝2敗。大変な記録である。

これが事実だとすると、アマ時代の敗北は以下の2つだけ。
<1>2016年リオ五輪1回戦
<2>2010年サウス・アメリカン・ゲームズ準決勝(南米大会/銅メダル)
※階級:フライ級

がしかし、不完全極まりないBoxrecのアマ・レコードは16勝17敗。WSB(World Series of Boxing)の契約選手でもあり、こちらの戦果は8勝(2KO)6敗。幾ら何でも、国内負け知らずの148勝2敗は盛り過ぎだろうと、ここはもうツッコむしかない。

オリンピックのメダルを目指していた為、アマチュアでの活動が長くなったのは致し方がない。愛する息子をボクシングに導いた父は、リオの晴れ舞台を見ることなくこの世を去り、1回戦(R32)で敗退したマルティネスは帰国後荒れたらしい。

一時は酒浸りになって家に引きこもり、「今から思えば、完全に欝の状態だった。」という。AIBAからの誘いを引き受けてしまった以上、対抗戦で各地を転戦するチームに戻らなければならなかった。

「ボクシングが無かったら、今頃どうなっていたか・・・」


貧困から抜け出す為にプロに進み、世界チャンピオンとなった多くの先達と同じく、人生最大の危機になっていたかもしれない苦境を乗り越えたマルティネスは、リオから1年後の2017年8月に26歳でプロ・デビュー。

120ポンド超のS・バンタム級でスタートして、2~3戦目をバンタム級でやった後、4戦目でS・フライ級まで絞り、以降主戦場にしてキャリアを継続(バンタムで何試合かはやっている)。

コーナーを率いるヘッドコーチ、ロドリゴ・カラブレーセ(カラブレッセ)とは、アマチュアの選手になった頃に知り合った。「ロドリゴは始めから僕を凄く気に入ってくれて、すぐに家族同然の関係になった」とのこと。

「ロドリゴとは長い付き合いだ。今は父親のような存在だよ。彼が居てくれたから、ここまでやり続けることができた。」

family
一女をもうけたパートナーのミカエラも元ボクサーで、地域のトーナメントで優勝するほどの有望株だったが、妊娠を機に現役を退き、今は子育てとマルティネスのサポートに専念。アルゼンチンの女子ボクシングはメキシコに匹敵するほど盛んで、強いチャンピオンとランカーを輩出し続けている。


今月3日の公開練習では、結構なボリュームを披露。ウェイトの調整を含めた健康上のアクシデントさえ無ければ、良い仕上がりでリングインできそう。

◎公開練習(7月3日):マルティネス

※終了後の囲み会見


◎マルティネスの試合映像
<1>J・アンカハス第2戦
2022年10月8日/ディグニティ・ヘルス・スポーツパーク(米/カリフォルニア州)
※12回3-0判定勝ち(ダイレクト・リマッチ/V1)
https://www.youtube.com/watch?v=rKbw4N2hOsg

<2>J・アンカハス第1戦
2022年2月26日/コスモポリタン・ラスベガス(米/ネバダ州)
※12回3-0判定勝ち(IBF王座獲得)
https://www.youtube.com/watch?v=A7dY3rp0uHI

<3>アテンコシ・デュメズゥウェニ(南ア)
2019年12月16日/インターナショナル・コンヴェンション・センター(イースト・ロンドン/南ア)
※11回TKO勝ち(WBCシルバー王座獲得/出世試合)
https://www.dailymotion.com/video/x7t70im


とにかく明るく陽気で、良く喋り良く笑う。会見では帯同したチームの仲間から大きな歓声が上がり、賑やかなことといったらない。



「マルティネスの得意な距離で戦う」と語った井岡について、チーフのロドリゴは「ブラフかもしれない」とやり返し、マルティネスも「リングに上がってからでないと(本当のところはわからない)」と、油断や緩みが無いことを強調。

「どんな戦術にもアジャストできる。それだけの準備をやって来た。心配はない。」

チーフのロドリゴだけでなく、マルティネスをハンドリングするマルコス・マイダナ(プロモーターとして初来日!)も、王座統一への自信と確信を隠さない。

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※左から:ロドリゴ・カラブレーセ(トレーナー)/マルティネス/マルコス・マイダナ(プロモーター/元王者)

1発のパワーと回転のスピードで遅れを取る井岡は、ディフェンスが粗くなりがちなマルティネスが出て来るところへ、インサイドから右ショートのカウンターをドンピシャで合わせたい。これができないと簡単に懐に入られて、休む間もない打撃戦に巻き込まれる恐れが大。

下手に至近距離で強打の応酬に付き合うと、得意の左ボディをねじ込もうにも、ガードが開いたところを右フックで襲われるのは必定。揉み合いでの消耗を承知の上で、クリンチ&ホールドでIBF王者の攻勢を分断し、時間を稼ぐのが最善の策になるか。

マルティネスに好きに打たせないことが第一になるが、井岡にはハードジャブが無く、ステップで捌き切るだけの脚も無い。三十代の半ばに差し掛かり、スピードが落ちてきている分、打ち合いのリスクは増す。

直前の掛け率は僅かに井岡を後押ししているが、早い時間帯に右ストレートか左ボディをヒットして、マルティネスの出足を止められないと苦しい展開になりそう。


前半~中盤にかけてかなり押し込まれると思うが、クリンチを厭わずここをしのいで、スタミナと集中力を保って後半~終盤を迎えることができたら、逆に井岡がし止めるチャンスが訪れる。

その為にも、最初からボディをコツコツ打っておきたい。井岡は上手に誤魔化したいけれど、少しでもガードが開いたり下がったりすると、鋭く重い左右フックの連射で致命傷を負う場合も有り。

バム・ロドリゲスとの3団体統一に歩みを進めるのは・・・。

5.5 vs 4.5でプミータ。


◎井岡(35歳)/前日計量:114.6ポンド(52キロ)
現WBA S・フライ級(V1),前WBO J・バンタム級(V6/返上),元WBAフライ級(V5),元WBA L・フライ級(V3).元WBA/WBC統一ミニマム級(V3)王者
戦績:34戦31勝(16KO)2敗1分け
世界戦通算:25戦22勝(11KO)2敗1分け
アマ通算:105戦95勝 (64RSC・KO) 10敗
興国高→東農大(中退)
2008年第78回,及び2007年第77回全日本選手権準優勝
2007年第62回(秋田),及び2008年第63回(大分)国体優勝
2005年第60回(岡山),及び2006年第61回(兵庫)国体優勝
2005年第59回,及び2006年第60回インターハイ優勝
2005年第16回,及び2006年第17回高校選抜優勝
※高校6冠/階級:L・フライ級
身長:164.6センチ,リーチ:166センチ
※ドニー・ニエテス第2戦の予備検診データ
右ボクサーファイター


◎マルティネス(32歳)/前日計量:115ポンド(52.1キロ)
戦績:16戦全勝(9KO)
アマ通算:148勝2敗
2016年リオ五輪フライ級代表(1回戦:R32敗退)
2010年サウス・アメリカン・ゲームズ(南米大会/メデジン・コロンビア)銅メダル
※階級:フライ級
身長:157センチ,リーチ:163センチ
好戦的な右ボクサーファイター(スイッチもこなす)

◎前日計量/ABEMA公式


※前日計量・会見(フル映像)
ABEMA公式
https://www.youtube.com/watch?v=vKBzFEj6r6E


【発表会見】井岡一翔 vs フェルナンド・マルティネス WBA ・IBF 世界スーパーフライ級王座統一戦決定
2024年4月21日/ABEMA公式
https://abema.tv/video/episode/608-2_s100_p210


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■オフィシャル

主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)

副審:
スタンリー・クリストドロー(南ア)
エドワード・ヘルナンデス・Sr.(米/カリフォルニア州)
ジャン・ピエール・ヴァン・イムシュート(ベルギー)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:マリアナ・ボリソヴァ(ベラルーシ/WBAインターナショナル・コーディネイター)
IBF:ベン・ケィルティ(豪/IBF Asia担当役員)


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■ABEMAで無料中継(ユーザー登録必須/2週間無料視聴)
https://abema.tv/channels/boxing/slots/CKcjHB2QJVVwBd


2団体統一 or 引退 /相性は過去最悪(?) - 井岡 vs F・マルティネス プレビュー I -

カテゴリ:
■7月7日/両国国技館/WBA S・フライ級,IBF J・バンタム級世界王座統一12回戦
WBA王者 井岡一翔(志成) vs IBF王者 フェルナンド・マルティネス(亜)



「最後になるかもしれない。」

”もしかしたら”の前置きはあるものの、昨日行われた調印式(及びグローブチェック)の席上、前評判では僅かながらも有利と出ている井岡が、敗北の可能性について言及した。

いつぞや、「いつまで続けられるかわからないが・・・」と、敗北=引退と隣り合わせの現実に自ら踏み込んで話していたことを思い出したが、年齢的(35歳)に難しい時期に差し掛かっていることにも、併せて触れている。

Kazuto Ioka vs Fernando Daniel Martinez
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井岡:-140(約1.71倍)
マルティネス:+125(2.25倍)

<2>betway
井岡:-163(約1.61倍)
マルティネス:+183(2.83倍)

<3>ウィリアム・ヒル
井岡:4/6(約167倍)
マルティネス:6/5(2.2倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
井岡:8/11(約1.73倍)
マルティネス:11/8(2.375倍)
ドロー:16/1(17倍)

もっとも公式計量後の会見では、「圧倒的な強さを見せて統一する。それだけです。」と力のこもった声で勝利宣言も行っているし、「豊富な経験」が最大の強味だとした上で、これまでの実績が過去のものであり、「次(明日=近い将来)へ向かって進むことが何より大事」だとの主旨も語っている。

あらためて申し上げるまでもなく、「次」とはさらなる統一戦を指す。公開練習時(7月1日)の会見で述べていた、新WBC王者ジェシー・ロドリゲスとの115ポンド頂上決戦。敗戦を想定せざるを得ない状況を自覚しつつ、チャンピオンとして前を見続ける。



◎J・ロドリゲス戦とエストラーダへの思いを語る
井岡一翔、エストラーダを破り王座についた“バム”ロドリゲスとの3団体統一戦へ意欲『LIFETIME BOXING FIGHTS 22』公開練習
7月1日/マイナビニュース
https://www.youtube.com/watch?v=GComsckO2xI


獲らぬタヌキの何とやら・・・はともかく、井岡は「マルティネスの得意な距離で戦う」とも発言していて、「ラスベガスでその為の実戦練習を積んできた」と自信を覗かせているが、果たして「プミータ(※)対策)」は本当に万全なのか。
※Pumita:小さなプーマ(クーガ)/マルティネスのニックネーム

7月1日に練習を公開したが、例によって報道陣に見せる為の動き。状態は良さそうだが、それ以外はまあ何もわからない。

◎公開練習(7月1日);井岡


◎公開練習前会見/ABEMA公式


マルティネスは公称157センチの極端な小兵で、サイズだけなら最軽量のミニマム級である。直近の記事で、ニック・ボールやイサック・クルスなどについて書い通り、常に自分より大きな相手と対峙しなければならない小さなボクサーは、内懐に飛び込んで接近戦に持ち込まないと勝負にならない。

サイズに見合った階級よりずっと上の階級で戦う場合、一定程度のパンチ力は勿論、並外れたフィジカルの強さ,身体的なパワーが求められる。

イヴァン・カルデロンや高山勝成のように、独楽鼠のごとく動き回って相手を翻弄するやり方もあるけれど、このスタイルはスピード&クィックネスの維持が生命線だけに、加齢と増量による破綻を避け難い。

ブラジルと並ぶサッカー大国であり、かつボクシング強国としての長い伝統も有するアルゼンチンには、フィジカル・タフネスを武器に接近戦を挑むファイターと、流麗なアウトボクシングに本領を発揮するテクニシャン両派の長い歴史を持つ。

”プミータ”・マルティネスは明らかに前者であり、類まれなフィジカルの強度と重く鋭い強打で活路を切り開く、勇敢で好戦的なファイター(左右両刀使い)。少々打たれても怯まず前に出続け、圧力を掛け続ける。


受けて立つ井岡一翔だが、一見するとどこが凄いのかわかりづらい。一撃必倒のパワーに恵まれず、流麗なフットワークがある訳でもなく、目を見張るような柔軟性やボディムーヴを操る訳でもない。

本人の言う通り、国内最多となる25回の世界戦をくぐり抜けてきた経験は、ベルトの数とランカーが水増しされた現在においても大変な記録と言わざるを得ず、得難いものではある。

デビュー当時の井岡は、粟生隆寛に続く高校6冠に加えて、ミニマムとL・フライの2階級を制した井岡弘樹を叔父に持つ出自が大きな話題となり、ボクシング界のサラブレッドとして大いに期待されたが、インドネシアのアンダードッグにダウンを奪われるなど、試合の出来映えはパっとしなかった。

がに股のすり足ステップに直立した上半身。不用意な被弾が目立ち、危なっかしいことこの上ない。「これで本当にやっていけるのか・・・」と多くのファンが不安を感じたが、6戦目に迎えた日本タイトルマッチでボクシングが激変する。


がに股だった下肢がスタンダードなスタンスに修正され、真正面を向いていた上体をハスに構えで懐がグっと深くなり、無駄に下がって開くガードも高い位置に修正された。顎をしっかり引いて、ガードの中に頭を埋めて肘を内側に絞る。隙がない綺麗な構え。

160センチ未満の小柄な選手が多いミニマム~L・フライ級において、165センチのタッパは十分な長身。サイズのアドバンテージが活きるようになって、主武器の右ストレートも切れ味が増す。アマ時代から特徴として認識されていた、左ボディのタイミングと破壊力も一段とアップ。すぐにサンデーパンチとして定着した。

それより何より驚かされたのが、危険なクロスレンジでのディフェンス。とにかくパンチを食わないのだ。的確なブロック&カバーを怠らず、スピーディなヘッドムーブでスルリとかわす。細かく刻むステップを連動させて、同じ位置に頭を置き続けない。

素早く正確な反応は、まるで超高性能なレーダーのよう。このまま磨き上げていったら、そう遠くない将来に人間業を超えるのではないか。川島郭志を凌駕する和製ディフェンス・マスターの完成形・・・そんな妄想にふけりたくなるほど、井岡の危険察知&回避能力は飛び抜けて見えた。


驚嘆すべき変貌を実現した影の功労者が、キューバ出身の名コーチ,イスマエル・サラスだった。日本王者瀬川正義 (横浜光)への挑戦が決まり、叔父の弘樹(所属ジムの会長)と実父の一法トレーナー(いずれも当時)は、フロリダに拠点を置くサラス(現在はラスベガスに自分のジムを持つ)の下へ一翔を送り出す。

フライ~S・フライ級で3階級制覇を狙い続けた叔父の弘樹は、飯田覚士のWBA王座挑戦に備えてサラスを臨時コーチに招いた経緯があり、その厚い信頼に最高の結果で応えた格好。
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7戦目でタイのベテラン王者オーレイドンを鮮やかな左ボディのカウンターで倒し、WBC王座に就いた井岡は、デビュー前から標榜していた国内最速奪取記録(当時)を達成すると、2度の防衛に成功。


減量苦を理由にL・フライ級への転級を表明済みだったが、完全アウェイを丸呑みした大橋会長の英断(大阪開催+TBSでの中継)により、WBA王者八重樫東との2団体統一戦が陽の目を見た。

日本ボクシング史上初の世界王座統一戦。しかも日本人対決。この大一番で、井岡は超高性能レーダーの威力を如何なく発揮する。

和製カルデロンと呼びたいほどのフットワーカーだった八重樫は、王座を獲得したポンサワン戦で壮絶な打撃戦を繰り広げ、ファイトスタイルを180度転換。井岡戦でも果敢にインファイトを挑み続け、パンパンに顔面を腫らして判定負け(僅差3-0)。以来「平成の激闘王」の呼称が、ボコボコに腫れ上がった顔とともに代名詞となった。

◎井岡のベスト・パフォーマンス
井岡一翔 判定12R(3-0) 八重樫東
2012年6月20日/大阪府立体育会館(エディオン・アリーナ大阪)
https://www.youtube.com/watch?v=LDfgt-QZn4Q


ミニマム級のV2戦と統一戦のコーナーにサラスの姿はなく、L・フライ級に上げて以降、師弟関係は途絶えてしまう。そして、WBAスーパー王者ローマン・ゴンサレスのおこぼれで正規王座を獲得すると、世界ランカーとは名ばかりの二線級(実質ローカル・クラス)との防衛戦が続く。

倒して当然の相手をちゃんとし止めた点以外、ほとんど評価に値しない。世界ランキングの肩書きに恥じない挑戦者は、108ポンドのラスト・マッチとなったフェリックス・アルバラード(後のIBF王者)のみ。

一法トレーナーとのコンビで楽な防衛戦(失礼)を消化する。緊張感と集中力を失い、がに股ステップと前を向いた直立気味の上半身、無駄にバラけるガードに戻ってしまい、超高性能レーダーの精度を徐々に鈍らせ、無駄に錆付かせて行った。

◎L・フライ級レギュラー王座の防衛戦
<1>ウィサヌ・ゴーキャットジム(タイ)
2013年5月8日/大阪府立体育会館(ボディメーカーコロシアム)
※9回TKO勝ち(V1)
https://www.youtube.com/watch?v=G-KRQ2Q3D3I

<2>フェリックス・アルバラード(ニカラグァ)
2013年12月31日//大阪府立体育会館(ボディメーカーコロシアム)
※12回3-0判定勝ち(V3)
https://www.youtube.com/watch?v=EEMCIdjnoX8


最終的に、チョコラティートとのWBA内統一戦を回避したままフライ級に進出。これが熱心なファンの反感を買う。さらに「問題なく3階級制覇する」と豪語した初陣で、IBF王者アムナットに完(惨)敗。「階級の壁」にぶつかった井岡は、テストマッチを2試合こなしてWBAレギュラー王座を奪取する。

L・フライ級時代に比べれば、挑戦者の質は幾らかマシになったとは言え、クラス最強と目されるスーパー王者ファン・F・エストラーダを存在しないものとするTBSの尻馬に乗り、冴えないパフォーマンスとは裏腹な「我こそは最強」宣言。108ポンドに続く最強王者無視の姿勢が災いして、井岡はファンの支持を失った。

◎フライ級時代の井岡
<1>アムナット・ルエンロン(タイ)
2014年5月7日/大阪府立体育会館(ボディメーカーコロシアム)
※12回1-2判定負け
https://www.dailymotion.com/video/x1tkcyf

<2>ファン・カルロス・レヴェコ(亜)
2015年4月22日/大阪府立体育会館(ボディメーカーコロシアム)
※12回2-0判定勝ち(王座獲得)
https://www.dailymotion.com/video/x2nktf5

<3>キービン・ララ(ニカラグァ)
2016年7月20日/大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)
※11回KO勝ち(V3)
https://www.youtube.com/watch?v=fOCZ5YsLw2M

<4>スタンプ・キャットニワット(タイ)
2016年12月31日/
※7回TKO勝ち(V4)/キャリア2度目のダウンを奪われる
https://www.youtube.com/watch?v=obJS4gGhKO4


5度の防衛に成功した後、アルテム・ダラキアン(ウクライナ)との指名戦に向け、会長に昇格した一法トレーナーとの不仲が伝えられ、唐突な引退発表と単身渡米はまったく想定外だったが、国内ライセンスを返上して退路を断ち、生涯の師と仰ぐサラスと再会を果たしアメリカで再起。

敵地タイで露骨な地元判定に遭い、アムナットからフライ級王座を獲り逃してS・フライ級に上げたマックウィリアムズ・アローヨと対戦。文字通り、負ければ後が無い背水の陣である。

第3ラウンド終了間際、素晴らしい右のカウンターでダウンを奪って流れを引き寄せ、一進一退の攻防を実力で制して「SuperFlyシリーズ」への参戦を勝ち取った復帰戦は、恩師サラスとのトレーニングで回復した鋭さ(緊張感&集中力)と、「何が何でも勝つ」という勝利への執念が実を結んだ畢生のベスト・バウト。

◎井岡のベスト・バウト
井岡 判定12R(3-0) マックウィリアムズ・アローヨ(米)
2018年9月8日/イングルウッド・フォーラム(米/カリフォルニア)
S・フライ級12回戦
https://www.youtube.com/watch?v=z_ZJYuw_LOc


2018年の暮れにマカオに飛び、フィリピンの老練ドニー・ニエテスに敗れて4階級制覇を逃したが、その後帰国してジムを開き、国内ライセンスを再取得。もう少しアメリカでやって欲しかったが、アストン・パリクテ(比)をストップしてニエテスが放棄したWBO王座を奪取。

4階級制覇の大望を果たすと、ジェイビエール・シントロン(プエルトリコ)、田中恒成(畑中)、フランシスコ・ロドリゲス(メキシコ)らの実力者からベルトを守り、ニエテスにも雪辱。

地元判定の批判を余儀なくされたロドリゲス戦に続き、やっと実現に漕ぎ着けたWBA王者ジョシュア・フランコ(米/メキシコ系)との統一戦は、0-1のマジョリティ・ドロー。タフでアグレッシブなメキシカンを苦手にする傾向が露になった。


計量後の大幅なリバウンド(正確な数値は不明だが)を利用して、ある程度の被弾を覚悟して相手を引き出し、カウンター(右ストレート or 左ボディ)を効かせてペースを握り、我慢比べを続けて判定をもぎ取る。

幾多の曲折を経て出来上がった、今現在の井岡のスタイル。勝負強く試合運びの巧さも感じさせるけれど、打たれ(せ)るようになったこともあって、良さが伝わりづらくわかりづらい。

<1>距離をキープする為のハードジャブ(左リード)が無い
<2>フットワークが無い
<3>1発の決定力が無い(強引かつ前がかりに攻めても決め切れない=パワー不足)
<4>加齢とともにスピード(身体全体・ハンド)が鈍化
<5>接近戦でのパンチの回転力も落ちている


丁寧なジャブとコンビネーションを続けて、ハイリスクな接近戦・白兵戦をしぶとくやりくりしながら、徹底的にタイミングをブラッシュアップした入り際のカウンター(田中恒成戦で顔面への左フックが加わった)を狙う。

ミもフタもない言い方をすれば、他にやりようがない(失礼)。だから田中恒成のように、馬鹿正直なまでに無策な正面突破(失礼)を繰り返してくれると、これはもう願ったり叶ったり。

しかしその反面、必要なボディ&フットワークと駆け引き、横への揺さぶりもを駆使しつつ、ハードな消耗戦を耐え抜くタフなメキシカンとは徹底的に相性が悪い。


マルティネスはメキシコ人ではないが、容易に退くことを知らず、しつこくプレッシャーをかけ続けて打ち合いに引きずり込む。フィリピンの長期安定王者ジェルウィン・アンカハスを連破して、一気に国際的な認知と評価を得た。若く見えるが、年齢は既に32歳。

攻撃的であるがゆえにディフェンスに隙が出来易く、自らも打たれて再三ヒヤリとさせるが、生来の打たれ強さと気性の激しさで、今のところはカバーできている。


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◎井岡(35歳)/前日計量:114.6ポンド(52キロ)
現WBA S・フライ級(V1),前WBO J・バンタム級(V6/返上),元WBAフライ級(V5),元WBA L・フライ級(V3).元WBA/WBC統一ミニマム級(V3)王者
戦績:34戦31勝(16KO)2敗1分け
世界戦通算:25戦22勝(11KO)2敗1分け
アマ通算:105戦95勝 (64RSC・KO) 10敗
興国高→東農大(中退)
2008年第78回,及び2007年第77回全日本選手権準優勝
2007年第62回(秋田),及び2008年第63回(大分)国体優勝
2005年第60回(岡山),及び2006年第61回(兵庫)国体優勝
2005年第59回,及び2006年第60回インターハイ優勝
2005年第16回,及び2006年第17回高校選抜優勝
※高校6冠/階級:L・フライ級
身長:164.6センチ,リーチ:166センチ
※ドニー・ニエテス第2戦の予備検診データ
右ボクサーファイター


◎マルティネス(32歳)/前日計量:115ポンド(52.1キロ)
戦績:16戦全勝(9KO)
アマ通算:148勝2敗
2016年リオ五輪フライ級代表(1回戦:R32敗退)
2010年サウス・アメリカン・ゲームズ(南米大会/メデジン・コロンビア)銅メダル
※階級:フライ級
身長:157センチ,リーチ:163センチ
好戦的な右ボクサーファイター(スイッチもこなす)

◎前日計量/ABEMA公式


※前日計量・会見(フル映像)
ABEMA公式
https://www.youtube.com/watch?v=vKBzFEj6r6E


【発表会見】井岡一翔 vs フェルナンド・マルティネス WBA ・IBF 世界スーパーフライ級王座統一戦決定
2024年4月21日/ABEMA公式
https://abema.tv/video/episode/608-2_s100_p210


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■オフィシャル

主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)

副審:
スタンリー・クリストドロー(南ア)
エドワード・ヘルナンデス・Sr.(米/カリフォルニア州)
ジャン・ピエール・ヴァン・イムシュート(ベルギー)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:マリアナ・ボリソヴァ(ベラルーシ/WBAインターナショナル・コーディネイター)
IBF:ベン・ケィルティ(豪/IBF Asia担当役員)


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■ABEMAで無料中継(ユーザー登録必須/2週間無料視聴)
https://abema.tv/channels/boxing/slots/CKcjHB2QJVVwBd



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