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175ポンド最強はどっち? /鋼の拳を持つグリズリーに膝への不安 - ベテルビエフ vs ビヴォル プレビュー -

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■10月12日/キングダム・アリーナ,リヤド(サウジアラビア)/4団体統一世界L・ヘビー級タイトルマッチ12回戦
WBC・IBF・WBO王者 アルトゥール・ベテルビエフ(ロシア/ダゲスタン) vs WBA王者 ドミトリー・ビヴォル(ロシア/キルギスタン)


※ファイナル・プレス・カンファレンス(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=CwyGeAEvxmo


いよいよ決戦当日。中東サウジの首都リヤドで、4本あるL・ヘビー級のベルトが1つにまとまる。

本来ならば、6月1日に同じ場所で行われた「クィーンズベリー vs マッチルーム 5 vs 5決戦」のメインとして組まれていたが、周知の通り、3団体統一王者ベテルビエフの予期せぬ大怪我(膝の半月板損傷)で延期された。

そして、微妙なマージンでWBA王者を支持する直前のオッズも、この大怪我が主たる要因と考えて間違いない。カネロを完封したビヴォルの金星と、不惑を目前に控えたベテルビエフの年齢も、当然考慮の対象となるけれど、やはり膝の状態への不安が第一。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
ベテルビエフ:+110(2.1倍)
ビヴォル:-125(1.8倍)

<2>betway
ベテルビエフ:+110(2.1倍)
ビヴォル:-125(1.8倍)

<3>ウィリアム・ヒル
ベテルビエフ:5/4(2.25倍)
ビヴォル:10/11(約1.91倍)
ドロー:20/1(21倍)

<4>Sky Sports
ベテルビエフ:5/4(2.25倍)
ビヴォル:10/11(約1.91倍)
ドロー:20/1(21倍)


◎リング誌恒例の勝敗予想(専門家20名)
※15-5でビヴォルを支持
■リング誌に寄稿する専門記者8名
(1)ビヴォルの判定勝ち:7名
(2)ベテルビエフのKO勝ち:1名
-----------------------------
■ボクシング関係者12名
※4-8でビヴォル
(1)ビヴォルの判定勝ち:8名
(2)ベテルビエフのKO(TKO)勝ち:3名
(3)ベテルビエフの勝ち:1名(KO or 判定 不記載)
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■FIGHT PICKS: ARTUR BETERBIEV VS. DMITRY BIVOL
2024年10月9日
https://www.ringtv.com/713977-fight-picks-artur-beterbiev-vs-dmitry-bivol/


数の上では圧倒的にビヴォル支持が上回るリング誌の予想も、中身はやはり僅少差。「どちらが勝ってもおかしくない」,「どんな結果になっても驚かない」との但し書きも目に付く。

膝が本調子まで戻らなくても、ベテルビエフの1発で試合が終わる。ビヴォルもけっして打たれて強い方ではないだけに、とにかく顎を上げないように注意を怠らず、しっかり堅く守るだろう。それでも、グリズリーの鋼の拳がテンプルをかすめれば、その一瞬で勝負は決着する。

◎参考映像:ビヴォル 判定12R(3-0) ジョー・スミス・Jr.
2019年3月9日/ターニング・ストーン・カジノ(N.Y.州ヴェローナ)
WBA王座V7
オフィシャル・スコア:119-109×2,118-110
iframe width="380" height="214" src="https://www.youtube.com/embed/rUYPo1CSbM8" title="Dmitry Bivol vs Joe Smith KNOCKED OUT on his feet | Highlights | Every Punch" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture; web-share" referrerpolicy="strict-origin-when-cross-origin" allowfullscreen>

それを見越したビヴォルは、素早いステップと切れ味に注力したジャブで距離をキープ。カネロ戦よりもさらにディフェンスに重きを置いて、クリンチワークまで総動員してリスク回避に努める・・・。


高齢ボクサーが膝を壊したケースですぐに思い出すのは、2005年11月のヴィタリ・クリチコだ。レノックス・ルイスとの大一番を落とした後、コリー・サンダースを倒してルイスが放棄(引退)した緑のベルトを巻き、初防衛に成功して気合は十分。

同じWBCの暫定王座を保持していたハシム・ラーマン(ラクマン/米)との団体内統一戦に向け、オフィスを構えるロサンゼルスで最終調整に入っていた。

しかし、12日の本番まであと9日というタイミングで、練習中に右膝の前十字靭帯を断裂。直ちに入院して手術に臨むことになったヴィタリは、アクシデントから6日後の11月9日、ベルトの返上と引退を表明する。


回復に必要な厳しいリハビリ(程度にもよるが順調に行って8~10ヶ月)に耐えて、果たして膝がどこまで戻るのか。2メートルの上背と250ポンド(約113キロ)に近い体重を支えながら、12ラウンズをフルに持ち応える自信が、その時は持てなかった。

しかしヴィタリは、およそ3年後の2008年10月にカムバック。WBCの後継王者となっていたサミュエル・ピーターにいきなりアタックして、8回終了TKO勝ち。2013年12月に政治家への転身を理由に41歳で引退するまで、連続9回の防衛に成功(ラストファイト:2012年9月)。WBA・IBF・WBOの3団体を統一した弟のウラディーミルとともに、ヘビー級を蹂躙する。

半月板の怪我は、靭帯に比べれば回復は早い。治療法によって長さは変わるが、切除なら早くて3ヶ月、縫合手術の場合でも6ヶ月程度で競技への復帰が見込めるという。ベテルビエフ陣営の情報管理は徹底されていて、手術の種別だけでなく、左右どちらの膝なのかも伏せられたままだが、公開練習で披露した圧巻のフィジカルは健在。

◎公開練習:ベテルビエフ
10月10日/TNT Sports

※フル映像(トップランク公式)
https://www.youtube.com/watch?v=TrOGl7wwT5I

◎2週間前に公開されたトレーニング映像
9月27日


◎ミット打ちを含むトレーニング映像
10月9日



ロシア,ジョージア(グルジア),アゼルバイジャンに囲まれ、カスピ海に面する小国ダゲスタンは、今や屈強な格闘家の産地として知られている。

複雑な政治的背景(チェチェンとの親和性が高い)の影響もあって、男の子の7~8割はボクシングかレスリング、もしくはその両方を習うそうだが、主な目的はセルフ・ディフェンスでも、長じて兵士としてリアルな戦闘に身を投じる場合を想定済みとのこと。

20戦全勝全KOのパーフェクト・レコードが物語っているが、ベテルビエフのパンチは異常なほど良く効く。急所かどうかは関係無い。首から上のどこかに当たりさえすればOK。一番いい時のゴロフキンとコヴァレフでも1~2歩譲る。比較対象は、全盛期(1985~86年)のマイク・タイソン。


そんなベテルビエフでも、プロのリングで2度のダウンを喫している。
(1)ジェフ・ペイジ・Jr.戦/2回TKO勝ち
2014年12月19日/ペプシ・スタジアム(ケベック/カナダ)
NABO(WBO)・IBFノースアメリカン・NABA(WBA)タイトルマッチ(プロ7戦目)
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(2)カラム・ジョンソン戦/4回KO勝ち
2018年10月6日/ウィントラスト・アリーナ(イリノイ州シカゴ)
IBF王座V4(プロ13戦目)


北米タイトルを3つ懸けた7戦目のダウンは、頭を低くして突っ込んで来る相手に押されてバランスを崩し、ガードがお留守になったところへ右ストレートを食らったもの。上体が後方へ傾いていた事に加えて、相手のパンチもナックルがしっかり当たっておらず、グローブの掌部分で押し倒したと言った方が正しく、ダメージはほとんどゼロ。

ところが、シカゴでやったIBF王座の防衛戦は、イングランドにあるボストン(リンカンシャー州)から呼ばれた英国&英連邦の2冠王に、左フックの相打ちを決められて腰から崩れ落ちた。

顎の先端を綺麗にヒットされて、この時は相当に効いていたが、恐るべき回復力を発揮。どんなにタフなボクサーでも、人間である以上、急所をまともに打ち抜かれたら持たない。倒れる。それから先は、回復力の有無と優劣がモノを言う。


天山(テンシャン)山脈を境に中国と隣接し、北にはカザフスタンとウズベキスタン、南にはパミール高原(平均標高5000メートル)が拡がり、国土全体の40%が標高3000メートルを超える中央アジアの山岳国家キルギス出身のビヴォルは、黒い髪と東洋系の顔立ちに親近感を覚える。

90年代初頭、ペレストロイカの波に乗って来日したオルズベック・ナザロフ(キルギス初の世界王者)を思い出す。唖然とするほどの強さと完成度の高さを見せ付け、ライト級でWBAのチャンピオンになって5度の防衛に成功した。

単に東洋系の風貌だっただけでなく、パーマを当てたようなチリチリ・ヘアと鼻の下にたくわえた髭が、所属先となった協栄ジムの大先達,具志堅用高を連想させた為、存命だった先代の金平会長は大いに喜び、「グッシー・ナザロフ」のリングネームで売り出した。

エース的な存在だったフライ級のユーリ・アルバチャコフも、シベリアの少数民族に出自を持ち、顔立ちは完全なモンゴル系でナザロフよりも日本人に近い。凄まじい切れ味の右ストレートは、山中慎介のゴッド・レフト以上に手首を捻るコークスクリュー。

デビュー戦でJ・フェザー級の輸入選手を寄せ付けず、「明日世界チャンピオンとやっても勝てる」と、まだまだお元気だったリングサイド・クラブのお歴々を絶句させている。


さて、拙ブログの勝敗予想を。膝が7~8割方回復している前提になるけれど、ベテルビエフの中盤以降KO(TKO)勝ち。しっかり動ける状態なら、べテルビエフのプレッシャーにビヴォルは耐え切れないと思う。

膝が万全には程遠く、ビヴォルのステップを追い切れずに、ジャブと長い右(ワンツー)に反応が遅れるようだと、中差程度の3-0判定でビヴォル。加齢による衰えが顕在化してたら、後半~終盤にかけてのストップも有り。

両雄ともに、チームが安定している点も予想をわかりづらくする。カナダに移って以降、ずっとコーナーを預かってきたマーク・ラムジー(マルク・ラムゼイ/カットマンとしても高名)との関係は今も良好円満。


ビヴォルもまた、メンターの呼称がより相応しいヘッド,ゲンナジー・マシァノフに寄せる信頼は厚い。ボクシングのコーチと言うより、古武術の達人を思わせる風貌が、東洋系のビヴォルとのコンビに独特の味わいを醸し出す。

◎公開練習:ビヴォル
10月10日/TNT Sports

※フル映像(トップランク公式)
https://www.youtube.com/watch?v=TrOGl7wwT5I


◎ベテルビエフ(39歳)/前日計量:174.9ポンド
3団体統一L・ヘビー級王者:IBF(V8),WBC(V5),WBO(V2)
戦績:20戦全勝(20KO)
世界戦通算:9戦全勝(9KO)
アマ通算:295勝5敗(推定)
2012年ロンドン五輪ヘビー級代表(2回戦敗退=ベスト8)
※オレクサンドル・ウシクに13-17で敗北
2008年北京五輪L・ヘビー級代表(2回戦敗退)
2011年世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)ヘビー級代表(ベスト8)
※オレクサンドル・ウシクに13-17で敗北
2009年世界選手権(ミラノ)金メダル(L・ヘビー級)
2007年世界選手権(シカゴ)銀メダル(L・ヘビー級)
2008年ワールドカップ(モスクワ)金メダル(L・ヘビー級)
2006年ワールドカップ(バクー/アゼルバイジャン)銀メダル(L・ヘビー級)
2010年欧州選手権(モスクワ)金メダル(L・ヘビー級)
2006年欧州選手権(プロブディフ/ブルガリア)金メダル
身長:182センチ,リーチ:185センチ
右ボクサーファイター


◎ビヴォル(33歳)/前日計量:174.12ポンド
WBA L・ヘビー級スーパー王者(V14/スーパー:V7,正規:V6.暫定:V1)
戦績:23戦全勝(12KO)
世界戦通算:15戦全勝(5KO)
アマ通算:268勝15敗
2013年ワールド・コンバット・ゲームズ(ペテルスブルグ/ロシア)金メダル(L・ヘビー級)
2008年ユース世界選手権(グァダラハラ/メキシコ)銅メダル(ミドル級)
2007年カデット世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)金メダル(L・ヘビー級)
2006年カデット世界選手権(イスタンブール/トルコ)金メダル(ミドル級))
ロシア国内選手権
2014年,2012年優勝(L・ヘビー級)
2011年準優勝,2010年3位(ミドル級)
身長,リーチとも183センチ
右ボクサーファイター

◎前日計量


◎フル映像(トップランク公式)
https://www.youtube.com/watch?v=F5UIzh3Rbns


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■オフィシャル

主審:トーマス・テーラー(米/カリフォルニア州)

副審:
グレン・フェルドマン(米/コネチカット州)
マヌエル・オリヴィエ・パロモ(スペイン)
パウル・カルディーニ(ポーランド)

立会人(スーパーバイザー):未発表


”スペシャル・ワン”に挑む不屈の闘志 /世界タイトル7連戦の幕開けを飾れるか - S・ノンシンガ vs 矢吹正道 プレビュー -

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■10月12日/愛知県国際展示場,愛知県常滑市/IBF世界J・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 シヴェナティ・ノンシンガ(南ア) vs IBF2位 矢吹正道(日/LUSH緑)



「接近(ファイター)」 or 「待機・後退(ボクサー)」

勝敗のカギを握るのは、”スペシャル・ワン(Special One)”の異名を取る王者ノンシンガ(ノンチンガ)の戦術選択。

最軽量ゾーンにおいて、頭1つ2つ抜ける高いKO率を誇る強打者同士とは言え、遠来のチャンプは、退いて守る待機型を得意にする。10回を数えるKO勝ち(13勝)のうち、序盤の決着は4回。

デビュー戦(3回TKO/6回戦)から3戦目(3回KO/4回戦)までの3つと、その後は初回1分30秒足らずでし止めた7戦目になる(2戦目:2回TKO/4回戦)。

IBFのローカル・タイトルを足掛かりにして世界ランクに入り、クリスティアン・アラネタ(比)とのエリミネーター(IBF)以降、王座を獲得したエクトル・フローレス(メキシコ)との決定戦、V1のレジー・スガノブ(比)戦まで判定決着が3試合続いた。

そして、あのショッキングな王座転落。ランク11位の中堅メキシカンが放った”ボラード(右スウィング:オーバーハンド)”を直撃され、僅か2回で撃沈。

大方の前評判は、ノンシンガのKO防衛。想定を超えるタフネ&ラフで粘られ、判定まで行ったとしても中差以上の3-0は間違いないとの評価がもっぱら。舐めていた訳ではないと思うが、余裕を持ち過ぎた感は否めない。


今年2月にアウェイのメキシコで組まれたダイレクト・リマッチで、ノンシンガは自ら前に出て密着。頭をくっつけてインサイドの強打を応酬し合う、プロのインファイトを披露する。

地力の差が明らかだった為、中途半端に距離とタイミングを与えるよりは、この方が安全だと、チームを率いるコリン・ネイサンが考えたのかもしれない。南アフリカの黒人トップクラスは、例外なくディフェンスがしっかりしているが、打たれ強さに不安を抱えるケースが案外多く、「大丈夫なのか?」と心配したが、ノンシンガのフィジカルは思っていた以上に頑丈だった。

ノンシンガは実の父親から教えを受けた親子鷹だが、15歳でネイサンのジムに入門して以来、足掛け10年に渡ってコンビを組み戦ってきた。アマチュアでもそれなりにやっている筈だが、戦績と戦果は公表していない。

108~112ポンドでは大きい部類に入るが、率直に言ってパワーはアベレージ。スピードも驚くほどの水準ではないし、ボクシングは良くまとまっているが、絵に描いたような右構えの正攻法で、1発で持っていかれる怖さや、意表を突く即興的な変化などは心配無用。


矢吹自身が認めている打たれ脆さ、拳四朗との再戦とユーリ阿久井戦の瞬殺敗退を、チーフのネイサンがどう評価するのか。

「シヴェ(ノンシンガの愛称)が108ポンドのNo.1。挑戦者がいなくなったら、112ポンドに上げてケンシローとやるのもいい。」

王者の周囲からは、景気のいい呷り文句が聞こえて来る。

個人的にはくっついてくれた方が無難との印象で、いくらアベレージの決定力でも、長めの中間距離で右ストレートを打たせたくない。矢吹が自分から良く動いて、慎重に出はいりしつつも、シャープなジャブ&ワンツーを主体に先手で手数を出してペースメイクできれば、余り強そうには見えないボディを抉るタイミングも掴んで、「案ずるより産むが易し」になりそうな気もする。

直前の掛け率は、ややノンシンガ。もっと離れると思ったが、身銭を賭ける人たちの眼と嗅覚に、キレっキレのパンチと動きを見せた矢吹の公開スパーが、どの程度影響をしたのかしていないのか・・・。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
ノンシンガ:-160(1.625倍)
矢吹:+138(2.38倍)

<2>betway
ノンシンガ:-163(約1.61倍)
矢吹:+138(2.38倍)

<3>ウィリアム・ヒル
ノンシンガ:4/7(約1.57倍)
矢吹:11/8(2.375倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
ノンシンガ:8/11(約1.73倍)
矢吹:6/4(2.5倍)
ドロー:18/1(19倍)


もう1つ気になるのは、敵陣を率いるネイサンの日本慣れ。

南アフリカを代表する名トレーナー,ニック・デュラントがバイク事故で突然この世を去った後、モルティ・ムザラネやヘッキー・バドラーなど、デュラントが見ていたチャンピオンクラスを引き受けたネイサンは、バドラー,ムザラネと2回づつ、田中恒成のS・フライ級3戦目の相手に選ばれたヤンガ・シッキポと、計5回の来日経験を持つ。

シッキポの時は、マス・スパーのパートナーとしてノンシンガも一緒だったらしい。近い将来の載冠を見越して、売り込みも兼ねての帯同だと思うが、ノンシンガに関する限り、ここまでは狙い通りの流れといったところか。

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※追加補筆
田中恒成(畑中)に挑戦するプメレレ・カフ もネイサンの選手で、亀田和毅と2度対戦したレラト・ドラミニ、日本国内ではないが、ニューヨークの殿堂MSG(5千人収容のシアター)で、尾川堅一(帝拳)とIBFの決定戦をやったアジンガ・フジレもネイサンが見ていた。
※亀田一家は原則追跡の対象外(昔に戻らない限り)にしている為、ドラミニは完全に頭の中から消えていた。失礼しました。
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<1>2018年5月20日/バドラー 12回判定(3-0) 田口良一(ワタナベ)
大田区総合体育館
WBA・IBF統一 L・フライ級タイトルマッチ(王座獲得)
オフィシャル・スコア:116-112×2,117-111
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<2>2019年5月19日/ムザラネ 12回判定(3-0) 黒田雅之(川崎新田)
後楽園ホール
IBFフライ級タイトルマッチ(V2)
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<3>2019年12月23日/ムザラネ 9回TKO 八重樫東(大橋)
横浜アリーナ
IBFフライ級タイトルマッチ(V3)
オフィシャル・スコア:77-75,78-74,76-76(2-0でムザラネ)
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<4>2022年12月11日/田中恒成(畑中) 10回判定(3-0) Y・シッキボ
武田テバ・オーシャン・アリーナ(名古屋市)
S・フライ級10回戦
オフィシャル・スコア:97-93×2,98-92
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<5>2023年9月18日/拳四朗 9回TKO バドラー
有明アリーナ
WBC L・フライ級タイトルマッチ(挑戦)
オフィシャル・スコア:79-73×2,80-72


アキレス腱断裂(昨年5月)の重症から立ち上がり、今年3月の復帰戦でWBOの元ランカー,ケヴィン・ヴィヴァス(ニカラグァ)に4回TKO勝ち。1年2ヶ月ぶりの実戦+111ポンドのフライ級契約ということもあり、仕上がりは今2つといった感じで、ちょっと重そうに見える。

右への体重を乗せ方も不充分で、攻守のいずれも(パンチ&動き)キメが粗く大きかったが、このレベルでボクシングが出来ていることにまずは一安心。ホっとした。

取材に訪れた畑山隆則が、目を丸くして驚くほどのキレ味と破壊力を惜しげもなく発揮した公開スパーの矢吹は、ヴィヴァス戦とはまったくの別人。拳四朗を崩した時と比べても遜色がない。

良過ぎる仕上がりが裏目に出るのもありがちなパターンだけに、立ち上がりの不用意な被弾によくよく注意をして欲しい。早い時間帯で潰してしまえと、クリエル第2戦のように密着してきたら、ストッピング・ジャブで間合いを外しながら、ススっと前後左右にステップを踏み、死角からショートのワンツーとアッパーをお見舞いする。

間違いなくノンシンガは退く筈なので、すかさず矢吹の方からくっついて左ボディと左右のアッパーをカチ上げ、速やかに安全圏に戻ってノンシンガを引き出す。そしてまた動いてコンビネーション。

この繰り返しの中で、右の脇腹が開いたら速攻で左ボディ。レバー目掛けてグサリとやる。大きな右は必要無し。拳四朗を攻略した時のような、顔面への左フックを見せておいての右,から下への左も当たるんじゃないかと、獲らぬタヌキの何とやら・・・。

好漢矢吹の復活を願う。



◎公開練習
<1>ノンシンガ


<2>矢吹



◎ノンシンガ(25歳)/前日計量:107.4ポンド(48.7キロ)
※当日計量:116.2ポンド(52.7キロ)/+8.8ポンド(+4キロ)
(IBF独自ルール:リミット+10ポンドのリバウンド制限をクリア)
IBF J・フライ級王者(第2期:V0/第1期:V1)
戦績:14戦13勝(10KO)1敗
アマ戦績;不明
身長:165センチ,リーチ:170センチ
血圧:129/61
脈拍:54/分
体温:36.2℃
※前日計量時の計測値
右ボクサーファイター


◎矢吹(32歳)/前日計量:107.4ポンド(48.7キロ)
※当日計量:117.3ポンド(53.2キロ)/+9.9ポンド(+4.5キロ)
(IBF独自ルール:リミット+10ポンドのリバウンド制限をクリア)
元WBC L・フライ級王者(V0),元日本L・フライ級王者(V1/返上)
2016年度西日本新人王(フライ級)
戦績:20戦16勝(15KO)4敗
アマ戦績:21戦16勝(9RSC・KO)5敗
三重県立四日市四郷高校→
身長:166.4センチ/リーチ:166センチ
血圧:130/53
脈拍:102/分
体温:35.8℃
※前日計量時の計測値
右ボクサーファイター

◎前日計量



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■オフィシャル

主審:マーク・カロイ(米/州)

副審:
アダム・ハイト(豪)
フィリップ・ホリデー(豪)
村瀬正一(日/JBC)

立会人(スーパーバイザー):ベン・ケイティ(豪/IBF Asia担当役員)


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■試合映像
◎ノンシンガ
<1>シヴェ 10回TKO A・クリエル 第2戦
2024年2月16日/オアハカ州(メキシコ)
IBF王座奪還(ダイレクト・リマッチ)
オフィシャル・スコア:

※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=Ml6MO1NvUIM

<2> A・クリエル 2回KO シヴェ 第2戦
2023年11月4日/カジノ・ド・モンテカルロ(モナコ)
IBF王座防衛失敗


<3>シヴェ 判定12R(3-0) R・スガノブ
2023年7月2日/イースト・ロンドンICC(国際会議場/南ア)
IBF王座V1
オフィシャル・スコア:116-111×2,117-110
https://www.youtube.com/watch?v=41S5e3-bHkY

<4>シヴェ 判定12R(2-1) H・フローレス
2022年9月3日/
IBF J・フライ級王座決定戦/獲得
オフィシャル・スコア:116-111,114-113,112-115
https://www.youtube.com/watch?v=5wdF5IqkUWQ


<5>シヴェ 判定12R(3-0) C・アラネタ
2021年4月24日/ボードウォーク・カジノ・ポートエリザベス(南ア)
IBF挑戦者決定戦
オフィシャル・スコア:114-113×2,115-112
https://www.youtube.com/watch?v=Ou5to8yw04w

<6>シヴェ 5回KO イヴァン・ソリアーノ
2020年3月8日/オリエント・シアター(イースト・ロンドン/南ア)
IBFインターナショナル王座V2
オフィシャル・スコア:39-36×2,38-37
https://www.youtube.com/watch?v=x2Cn04jOL9k
I

◎矢吹
<1>矢吹 4回TKO ケヴィン・ヴィヴァス(ニカラグァ)
2024年3月16日/ポート・メッセ名古屋
111ポンド(50.3キロ)契約10回戦
https://www.youtube.com/watch?v=hUu5O7_KvbM

<2>拳四朗 3回KO 矢吹 第2戦
2022年3月19日/京都市体育館
WBC王座初防衛失敗


<3>矢吹 10回TKO 拳四朗 第1戦
2021年9月22日/京都市体育館
WBC L・フライ級王座獲得
オフィシャル・スコア:88-83,86-85,87-84(3-0で矢吹)


<4>矢吹 1回KO 佐藤剛(角海老)
2020年7月26日/あいおいホール(愛知県刈谷市)
日本L・フライ級王座決定戦/獲得(現地映像)
https://www.youtube.com/watch?v=_ZVD9zBla1Q

<5>ユーリ阿久井政悟(倉敷守安) 1回TKO 矢吹
2018年4月6日/サントピア岡山総社(岡山県総社市)
フライ級8回戦(現地映像)


”選ばれし者(The Chosen One)=噛み付き男” が ”王様カネロ(ステロイド男)” に竹槍で突撃? - カネロ vs バーランガ プレビュー -

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■9月14日/T-モバイル・アリーナ,ラスベガス/WBA・WBC・WBO3団体統一世界S・ミドル級タイトルマッチ12回戦
統一王者 カネロ・アルバレス(メキシコ) vs WBA1位 エドガー・バーランガ(米)



「ああ、やっぱりそうなのか・・・」

昨年1月~2月にかけて、バーランガとマッチルームの契約が報じられた時、妙に腑に落ちた方も多くいらっしゃったのではないか。トップランクからの離反は規定の路線と見られていたので、落ち着く先が取り沙汰される状況だった。

バーランガ本人も「オスカー(デラ・ホーヤ)から直接連絡がきて驚いた」とか、「メイウェザー(プロモーションの代理人)がアプローチしてきた」など、SNSやインタビューに対して可能な範囲のリップサービスに余念がない。

実際に複数の打診があったのは確からしいが、階級(S・ミドル)を考えれば、現在進行形でカネロと良好な関係を保つエディ・ハーンが最右翼になるのは、半ば当然の結果と言える。

カネロと3試合の契約を結んだPBC(Premier Boxing Champions)は、懸案のデヴィッド・ベナビデス戦を巡って対立が表面化。ジャーメル・チャーロ(昨年9月/Showtime)とハイメ・ムンギア(今年5月/Amazon Prime)の2試合を持って提携を終了するとの風説も流れた。


もともとPBCとの3試合にベナビデスは含まれていなかったらしいが、カネロをリングに上げる為に必要な資金は巨額で、ファンの感心が最も高い”メキシカン・モンスター(El Monstro:ベナビデスのニックネーム)”との激突を、PBCとAmazonが熱心に打診するのもまた自然な流れ。

ドミトリー・ビヴォルに散々な目に遭い、2度目のL・ヘビー級挑戦に失敗したカネロは、三十代の半ばを迎えて衰えを実感し出したのか、マッチメイクは慎重無難の一途を辿るばかり。安全確実に稼げる相手にしか興味がない。

開花を待つムンギアのポテンシャルに疑いを差し挟む者は少ないだろうが、2020年にミドルに上げて以降、中堅どころとの5試合で満足の行くパフォーマンスを見せられず、何1つ結果を出さないままS・ミドルに上げて、デレヴィヤンチェンコとジョン・ライダーの2人とやったのは良い判断だったにしても、打倒カネロに期待を抱かせるには程遠かった。

”メイウェザー化”が止まるところをしらないカネロにとって、ムンギア以上に安全パイ(?)のバーランガは他の誰よりも打ってつけ。PBCとのラスト・ファイトに持って来いという訳で、円満に話が出来るハーンを通じて交渉は無事に妥結。王様カネロは、モンストゥルオの顔だけは見たくない。とにかくその一心なのだ。


という訳で、まずは直前のオッズ。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
カネロ:-1600(約1.06倍)
バーランガ:+600(7倍)

<2>betway
カネロ:-2000(1.05倍)
バーランガ:+900(10倍)

<3>ウィリアム・ヒル
カネロ:1/16(約1.06倍)
バーランガ:15/2(8.5倍)
ドロー:20/1(21倍)

<4>Sky Sports
カネロ:1/12(約1.08倍)
バーランガ:11/1(12倍)
ドロー:33/1(34倍)

ほとんど万馬券の扱いである。ムンギアでも概ね4~5倍(1.2 vs 4.5~5.5)だったから、身銭を切って賭ける人たちの見立てはやはり厳しい。バーランガに勝機があると考える者は、皆無に近いのが現実。

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※マッチルームとの契約書にサインをする様子(2023年1月23日)/左から:エドガー・シニア(実父/アシスタントとしてコーナーにも入る有名なステージ・パパ)/バーランガ/キース・コノリー(ビジネスの舵を取るチーム・マネージャー)


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バーランガの登場は鮮烈だった。2016年4月のデビュー以来、16試合続いた初回KO勝ちのインパクトは絶大で、対戦相手のレベルはともかく、豪快かつ気持ちのいい倒しっぷりに、黙っていてもファンの注目が集まる。

ニューヨークのブルックリンで生を受けたバーランガは、名前が示す通りのヒスパニック系でプエルトリコに出自を持つ。

1930年代にバンタム級で一家を成したシクスト・エスコバル(プエルトリコ初の世界王者)に始まり、50~60年代のホセ・トーレスとカルロス・オルティス(カーロス・オーティズ)らの活躍によって、ニューヨークのボクシング興行におけるプエルトリコ移民の重要性は、西海岸と西部の確固とした集客基盤に成長したメキシコ系移民のコミュニティに優るとも劣らない。

とりわけ大切なのが、近代ボクシングの歴史そのものと言っても過言ではない、ニューヨークの殿堂マディソン・スクウェア・ガーデンをソールド・アウトにするスターボクサーの存在。

磐石のライト級王者としてMSGに君臨したカルロス・オルティスから、2人のウィルフレド(ゴメス&ベニテス/70年代)を経て、ヘクター・カマチョ,ティト・トリニダード(80~90年代)へと受け継がれたバトンは、ミゲル・コットの鉄拳を最後に継承者不在が続く。

ニューヨークとフロリダの大きなコミュニティだけでなく、全米各地で暮らすプエルトリカンの熱い視線は、否が応でもバーランガのハードヒットに注がれる。


そして大き過ぎる期待は、時により大きな失望を招く。2020年12月の17戦目で、メリーランド在住の大型黒人中堅選手に食い下がられ、快記録が途絶えてしまう(8回3-0判定勝ち)。続く18戦目は、念願の10ラウンズ。

気合を入れ直して臨んだが、第9ラウンドに初のノックダウンを奪われ、スコア自体に問題は無かったもののまもや判定勝ち。どんなに凄い強打者でも、対戦相手のレベルが上がるに連れて倒せなくなって行くものではあるが、それにしてもちょっと早過ぎやしないか。

◎試合映像:バーランガ 判定10R(3-0) マルセロ・コセレス(亜)
2021年10月9日/T-モバイル・アリーナ(ラスベガス)
オフィシャル・スコア:96-93×3
NABO S・ミドル級王座決定10回戦
※ダウンシーンを含むハイライト

※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=u7IDcw59J-s

映像を見ればすぐにわかる通り、ノックアウトに執着するバーランガは、完全に効いていないコセレスに反撃する力が十分残っているにもかかわらず、ノーガードになって真正面から、思い切り大きな右を振るっている。逆襲のカウンターを誘っているようなものだ。

コセレス(対戦時:30勝16KO3敗1分け)にパンチが無さ過ぎたのか、バーランガのフィジカルが異常に頑丈過ぎるのか、あるいはその両方なのか。フィニッシュされずに済んで本当に良かったと思う。


名も無いローカル・ランカーと言えども、相応にプロの修羅場をくぐり抜けてきた中位~上位になると、馬力と勢いだけではし止め切れない猛者が、一定の割合で出張って来る。

ひと癖もふた癖もあるプロを相手に、何が何でも1ラウンドで決着する必要はさらさら無いが、世界のトップ戦線に出ても倒しまくろうと野望を燃やす若きプロスペクトなら、多少苦労をすることはあっても、中堅の負け役と対峙した時は、後半に行く手前辺りで終わらせないとまずい。

そしてこれもまた当たり前というか良くある話なのだが、当たるを幸い景気良く倒しまくるニューフェイスが、ラウンドが長引いた途端に攻防のキメの粗さを露呈して、何も出来なくなってしまう。バーランガはまさしくこの典型と表して良く、前々から指摘されていた身体の硬さも際立つ。

ハンド&パンチに目や肩その他使えるところは総動員して駆け引きを続け、捨てパンチも含めたジャブと細かいコンビネーション、抜け目無くボディも叩く上下の打ち分け等々、しっかりボクシングをしないと思わぬところで足下をすくわれる。


バーランガをハンドルしてきたトップランクは、一旦相手のレベルを落として再修業させるのかと思いきや、ハードルを上げてきた。ひょっとしたら、挽回を急ぐ(焦る)バーランガの側から出た要望の可能性もあるけれど、いずれにしても、本当に世界に打って出て輝けるタマなのかどうか、地金を見極める機会になった。

選ばれた試験台(踏み台)は、カナダの元ランカー,スティーブ・ロールス。2019年6月、やっと陽の目を見たカネロとの再戦に敗れて、無冠になったゴロフキンの復帰戦に抜擢され、4ラウンドで撃沈した38歳の黒人ボクサー(対戦当時)。

GGGとは164ポンドの契約だったが、今度はS・ミドル級リミットの168ポンド。トシは取ったが顕著な錆付きは見られず、世界選手権(2009年ミラノ/ミドル級)に出場して3回戦まで勝ち残ったアマ・エリート組み。83勝14敗の立派な戦績も残している。

7歳からボクシングを始めたバーランガも、162勝17敗(推定:自己申告)の戦果を誇るアマチュア経験者ではあるが、実績は米国内に止まり、なおかつジュニア・ユース限定。シニアの国内選手権を連覇した上、世界選手権に派遣されたロールスには及ばない。

バーランガに比べれば小さいけれど、サイズ的に大きな不満は無く(身長178センチ)、GGGに屈した後も、パンデミックが猛威を振るう中、2020年と2021年に1試合すつ消化。ブラジルとフィラデルフィアから調達した無名の白星配給役だったけれど、それぞれ4回と9回にストップして気を吐く。

Berlanga_SteveRolls

不惑を前にした11年選手に手を焼いたとしても、それ自体は止むを得ない。要は冷汗三斗の危ない姿を晒すことなく、最終的に圧倒できるのかできないのか。試されるのはそこになる。

パワーではっきり見劣りするロールスが、深刻なダメージ回避を第一に考えて、ひたすら専守防衛に閉じこもる可能性も低くない。そうなった場合に備えて、具体的な打開策となるプランBを用意できるのか。

実際にロールスは、ディフェンシブなスタイルを選択した。逃げ腰と言うほど露骨ではないが、まあ攻めづらく崩し難い。残念なことに、バーランガと彼のチームにプランBは存在せず、非常に言葉が悪くて申し訳ないが、”木偶の坊”の印象を強く残す。

リスクを冒そうとしないロールスに、みすみす3~4ラウンズを持って行かれてしまったのは、まったく工夫の無かったバーランガ本人もさることながら、ヘッド・トレーナーを筆頭にしたチームの責任(能力不足とまでは言わない)と指摘せざるを得ない。

◎試合映像:バーランガ 判定10R(3-0) スティーブ・ロールス(カナダ)
2022年3月19日/MSGシアター(N.Y.)
オフィシャル・スコア:97-93×2,96-94×1
NABO S・ミドル級タイトルマッチ12回戦(V1)
※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=jsmH5QZjIAQ


さらに3ヶ月後の2022年6月、S・ミドル級時代のヒルベルト・ラミレスに挑戦して、判定まで持ち込んだコロンビアの大型選手,アレクシス・アングロと仕切り直しのテストマッチ第二弾。

ハッサン・エンダム・ヌジカム(仏)とともに、我らが村田諒太と2度相まみえたペドロ・ディアス(ナショナル・チームを率いたキューバ人コーチ)がチーフを勤めるアングロは、ロールスと同い年の十分過ぎる高齢ボクサーだが、ロールスのような柔軟性と機動力は無く距離も近い。

Berlanga_Angulo

ガードを高く保持して、ジャブを増やしたことそのものは悪くない。がしかし、直立したアップライトスタイルが後傾バランスを生じさせ、パンチに体重が乗っていかない。アングロが自分から前に出て来てくれるのに、バーランガはあっさり下がってしまう。相打ちを嫌う姿勢があからさまで、たまに強く振ってもおっかなびっくり。この有様では、プエルトリカンでなくてもガッカリである。

自らロープやコーナーを背負って守勢に回り、クリンチでパンチの交換を回避するシーンが目に付く。ちゃんとサイドに回り込んで中央に戻ることもあるが、打たれることを極端に怖がっているように見えてしまう。どこか故障でもしているんじゃないかと、余計な心配までする始末。


見せ場の少ないい10ラウンズを終えた直後に睨み合う一瞬があり、フェイス・オフ状態になってカっとなったバーランガが頭をぶつけに行く。「臆病者」とか「意気地無し」とか「それでもプロか」とか、アングロに何か言われたのかもしれないが、7ラウンドのひと悶着が原因なのは明らかで、むべなるかなというのが正直な感想。

そんなだから、フルマークに近い大差のスコアを聞いて腰を抜かしそうになった。幾らニューヨークの開催で、それもMSGのシアター(5千人収容の小ホール)だからと言っても、流石にそれは無い。

◎試合映像:バーランガ 判定10R(3-0) アレクシス・アングロ(コロンビア)
2022年6月11日/MSGシアター(N.Y.)
オフィシャル・スコア:99-91×2,98-92×1
NABO S・ミドル級タイトルマッチ10回戦(V2)
※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=SOGGO-IQp4I


程度の悪い地元判定と割り切るしかないと思っていたところが、試合後事態は大きく動く。第7ラウンドにバーランガが噛み付こうとしていたと、アングロ陣営がニューヨーク州アスレチック・コミッション宛て正式に抗議を行う。

録画映像を確認したNYSACは、アングロの抗議を認めてバーランガに1万ドルの罰金と6ヶ月のサスペンドを命じる。

確かに7ラウンドの30秒を過ぎた頃、クリンチの直後にアングロが何かやられたようなポーズを取りつつ、主審に文句を言う場面があったが、主審は取り合わず、アングロも特にそれ以上怒る様子はなく、バーランガとグローブタッチして再開に応じた。

ラウンド終了後、ESPNが問題の場面をスロー・リプレイしてくれたが、タイソンにやられた時のホリフィールドとは違ってことさら痛がってはいないが、少なくともレフェリーはバーランガに対して減点が警告を与えておくべきだったと思う。

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当然の成り行きとして、犯行の瞬間を捉えた切り抜き映像と画像が出回り、バーランガは謝罪に追い込まれ、トップランクを通じてNYSACの決定を受け入れる声明が出された。

「ヤツがしつこくエルボーをぶつけてきたからだ。」

バーランガは言い訳も忘れなかったけれど、確かに密着した状態でのフックやアッパーは、肘打ちに見えないこともない。現実に悪用する卑怯者も常にいる。この試合でも、それらしい場面があるにはあったが、はっきり肘打ちだと断定するのは・・・。

まあ、どんな理由があったにせよ、「噛み付こう」とすること自体が完全にアウト。


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◎ファイナル・プレス・カンファレンス

※フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=tTSCxPrZ_wo


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■新たな体制でリスタート

こうしてバーランガとトップランクの蜜月は終わりを告げ、マッチルームの下で心機一転の巻き返しという運びになった。そしてこれも常套手段の1つにはなるが、バーランガはチーフ・トレーナーを交代する。

2019年の夏頃(8月の12戦目に合わせて)からチームを率いたアンドレ・ロジアー(ニエル・ジェイコブス,セルゲイ・デレヤンチェンコ,カーティス・スティーブンスらのコーナーを歴任)を更迭し、以前にコンビを組んでいたマーク・フェレイト(Marc Farrait)と復縁。

もっともアングロ戦のコーナーを仕切っていたのは、既にロジアーではない。クルーザー級で一時代を築いたカルロス・デ・レオンを兄に持ち、ジョー・メッシやアルベルト・マチャドのコーナーを歴任した同胞のファン・デ・レオンが立っていた。

だから正確に述べると、ロジアーとファン・デ・レオンの2人を更迭したことになる。

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※写真左:ロジアーとバーランガ/写真右:ファン・デ・レオン

Berlanga_Marc Farrait
※マーク・フェレイトとバーランガ

「今後について時間をかけて話し合ったが、方向性を巡る意見の隔たりが大きく、一致点を見出すのは困難と判断した。」

基本的に情報を発信するのはバーランガ陣営で、「沈黙は金」を貫くトップランク。おそらくだが、このまま世界へ進みたいバーランガとチームが、「いや無理。有り得ないから」と再修業を譲らないトップランクに業を煮やしたのだと推察する。

「出て行きたければお好きにどうぞ」

トップランクの本音を包み隠さず申せば、そういうところに落ち着く。新しいトレーナーの選択についても、トップランクは別の見解を持っていたのかもしれない(ロジアーとデ・レオンの解雇は仕方ないにしても)。


新チームによる初陣は、昨年6月。3戦連続の登場で、常打ち小屋になりつつあるMSGシアターで行われた。

大事な試合に呼ばれたのは、アイルランドのジェイソン・クィッグリー。ジュニア・ユースの時代から代表チームに召集され、国際大会に派遣されたエリート選手で、2016年リオ五輪の有力な代表候補だったが、ゴールデン・ボーイ・プロモーションズと契約してプロ入り。2014年7月のデビュー以来、ずっとアメリカで戦ってきた。

元ホープのグレン・タピアを破り、北米(NABF)王座を獲得した後、バハマ出身のオリンピアン,トゥレアノ・ジョンソンに9回終了TKO負けを喫して、連勝を16でストップされるも、シェーン・モズリー・Jr.に競り勝ち(10回2-0判定)、2021年11月にデメトリアス・アンドラーデが保持するWBOミドル級王座に挑戦。

衝撃的な2回KOに散った後、プロ転向後初めて里帰りして行った昨年4月の再起戦で、正式にS・ミドルに進出。これが新しい階級での2戦目。キャンプで取り組んだ筈の新機軸を試すには、格好の相手と表していい。


不安視されていたバーランガの出来は、思いのほか良かった。コンパクトにまとめたガードは変わらないが、ごく自然に前傾の浅いセミ・クラウチングに構えて、適度な脱力を保ったまま、体重の乗ったパンチをスムーズに振るう。

脚も非常に良く動いて、何もしなくても圧力がかかり、いきなりアイリッシュから先制のダウンを奪うと、終始一貫ペースを掌握。クィッグリーも意地を見せて反撃したが、けっして逃げの態勢に陥ることなく強気で前に出続ける。

結局4度倒して(1回は明らかなスリップ)3-0の判定になったが、これは敢えて深追いを避けた為で、バーランガは本当によく仕上がっていた。

◎試合映像:バーランガ 判定12R(3-0) ジェイソン・クィッグリー(アイルランド)
2023年6月24日/MSGシアター(N.Y.)
オフィシャル・スコア:116-108×2/118-106×1
NABO S・ミドル級タイトルマッチ12回戦(V3)



直近の試合は、今年2月にフロリダ開催となった12回戦。S・ミドル級のリミット契約だが、特にベルトは懸けられていない。好調を維持するバーランガは、大柄なマクローリーをスタートからプレスし続け、無理のない波状攻撃で削り、6ラウンドのチャンスに集中打をまとめると、マクローリーのコーナーからタオルが投入された。
※フロリダ州の公式裁定はTKOではなくKO採択

16度目の初回KO(2020年12月)以来、3年9ヶ月ぶりのノックアウトに思わず相好を崩すバーランガ。ぐいぐい追い詰めていく迫力は、むしろクィッグリー戦に軍配が上がる。自分より大きい相手に対して丁寧に対処したと見るのは、少し褒め過ぎだろうか。

◎直近の試合映像:バーランガ KO6R パトレイグ・マクローリー(英/アイルランド)
2024年2月24日/カリブ・ロイヤル・オーランド(フロリダ州オーランド)
オフィシャル・スコア:49-46×3
S・ミドル級12回戦



アングロ戦までの雑で一本調子のバーランガなら、一切期待はできない。どエラい差がついたオッズ通り、中盤まで持てば御の字である。しかし、気心の知れたマーク・フェレイトとのトレーニングでリフレッシュできた今のバーランガは、ちょっと様子が違う。

最大の武器になる筈の体格差を活かす術を、フェレイトならきちんと授けられる。それをカネロ相手にやり切れるかどうかは、バーランガのハート次第。

負けて失うものは何も無い。当たって砕けても、それが本望といい意味で割り切れれば、安住の地でぬくむ王様に一泡か二泡くらいは、吹かせられるのではないかと想像する。

若いチャレンジャーが前がかりになる分、「カネロのカウンターが火を噴く」,「ボラード(右フック)の餌食」との見方も成り立つけれど、王様のリスクヘッジ第一主義はおそらく不変。サイズの違いとパワーへの警戒を最優先する公算が大・・・としておこう。


◎GLOVES OFF: CANELO vs. BERLANGA
<1>Episode 1
https://www.youtube.com/watch?v=ckmVK4-gEq4


<2>Episode 2
https://www.youtube.com/watch?v=pXt-cmiag5Y



◎カネロ(34歳)/前日計量:166.75ポンド
現WBA(V8),現WBC(V7),現WBO(V5)S・ミドル級王者
前現IBF S・ミドル級(V3/はく奪),前WBO L・ヘビー級(V0/返上),前WBCミドル級(第2期:V1/返上),前IBFミドル級(V1/返上),WBAミドル級スーパー(V1/返上),元WBC S・ウェルター級(V6/WBA王座吸収V0),元WBCミドル級(第1期:V1/返上),元WBO J・ミドル級(V0/返上)王者
戦績:63戦61勝(39KO)2敗2分け
世界戦通算:25戦22勝(11KO)2敗1分け
アマ通算:不明
※20戦,44勝2敗など諸説有り
2005年ジュニア国内選手権優勝
2004年ジュニア国内選手権準優勝
※年齢・階級等詳細不明
身長:171(175)センチ,リーチ:179センチ
※Boxrec記載の身体データ訂正
右ボクサーファイター


◎バーランガ(27歳)/前日計量:167.5ポンド
戦績:22戦全勝(17KO)
アマ戦績:162勝17敗(推定:正確なレコードは不明)
2015年ユース(U-19)全米選手権準優勝
2014年ユース(U-19)全米選手権3位
2013年ジュニア(U-17)全米選手権準優勝
2013年ナショナルPAL準優勝
※階級:ミドル級
身長,リーチとも185センチ
右ボクサーパンチャー


◎前日計量(ハイライト)


◎前日計量(中継対象カード/ハイライト)


◎前日計量(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=nYZcl39SxgU


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■オフィシャル

主審:ハーヴィー・ドック(米/ニュージャージー州)

副審:
マックス・デルーカ(米/カリフォルニア州)
スティーブ・ウェイスフィールド(米/ニュージャージー州)
デヴィッド・サザーランド(米/オクラホマ州)

立会人(スーパーバイザー):未発表


懲りずに飽きずに”ファンタジスタ・ナオヤ”の再現を願う - 有明3大決戦 プレビュー -

カテゴリ:
■9月3日/有明アリーナ,京都江東区/4団体統一世界S・バンタム級タイトルマッチ12回戦
統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs WBO2位 T・J・ドヘニー(アイルランド/豪)



流石に間違いは無いだろう。

12キロを超えるリバウンドとパンチング・パワーを武器に、我らがモンスターのスパーリング・パートナーを努めて名を上げたホープ,ジャフェスリー・ラミドを叩き潰した起死回生のKO勝ちで、評価をV字回復させたドヘニーとは言え、褌の紐を締め直した我らがモンスターには歯が立つまい。

ウルトラ・スーパーな天文学的乖離に落ち着いたオッズが示す通り、どこをどう掘り返してみても、37歳のオールド・タイマーに勝機は見当たらず、何ラウンド持つのかという、いつもの話題に戻る堂々巡り。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井上:-5000(1.02倍)
ドヘニー:+1600(17倍)

<2>betway
井上:-5000(1.02倍)
ドヘニー:+1600(17倍)

<3>ウィリアム・ヒル
井上:1/50(1.02倍)
ドヘニー:14/1(15倍)
ドロー:25/1(26倍)

<4>Sky Sports
井上:1/41(約1.02倍)
ドヘニー:20/1(21倍)
ドロー:40/1(41倍)


西岡利晃に次いで、王座防衛に成功した日本ボクシング史上2人目のS・バンタム級王者,岩佐亮佑を番狂わせの3-0判定に下して、IBFのベルトを持ち去ったのが2018年8月。

全米に配信を行ったESPNのアン・オフィシャルジャッジは、116-113の3ポイント差で岩佐を支持していたが、自分の名前が勝者としてコールされた瞬間、誰よりも驚いていたのがドヘニー自身だった。

この時点で、戦績は20戦全勝(14KO)。5ヶ月後の初防衛戦でニューヨークの殿堂MSGに進出すると、横浜光の高橋竜平をまったく問題にせず、一方的に叩きまくって11回TKO勝ち。連勝を21に伸ばして、いよいよこれからという時、メヒコの勇者ダニエル・ローマンの挑戦を受けて0-2の判定負け。プロ初黒星を喫して、虎の子のベルトを失う。


オーストラリアを拠点にするアイリッシュの苦難が、ここからスタートする。ローマンに敗れてから半年後、コロンビアのベテラン中堅を5回終了後にギブアップさせて再起するも、翌2020年3月のドバイ遠征でルーマニアの伏兵イオヌット・バルタに0-3判定負け(8回戦)。

さらに、同じアイルランドでも、北の中心地ベルファストの出身で、ロンドン五輪のフライ級銅メダルとリオ五輪連続出場の戦果を手土産にプロ入りしたマイケル・コンランが、WBAフェザー級の王座決定戦に出場する運びとなり、その相手として白羽の矢が立つ。

コンランのホーム,ベルファストに飛んだドヘニーは、コンランのボディアタックとロングのワンツーを攻略できず0-3判定負け。

階級をS・バンタムに戻して、パンデミックが猛威を振るう最中、メキシコの猛者セサール・ファレスを2回TKOに屠って一息つくも、オーストラリアのホープ,サム・グッドマンに完敗(大差の0-3判定)。


これで命運も尽きたかと思われたが、大橋会長が期待を寄せるサウスポー,中嶋一輝のステップボードに選ばれ、昨年6月に再来日。オボコさの残る中嶋を4ラウンドでストップして、WBOアジア・パシフィック王座を獲得。

そして昨年10月、またもや大橋会長の肝いりで売り出しにかかったラミドの生贄にと、後楽園ホールに連続出場。左1発でラミドを吹っ飛ばして、日本のファンと関係者を唖然とさせる。

大橋ジムと堅い連携を結んだドヘニーは、今年5月の東京ドーム興行にも担ぎ出された。ルイス・ネリーが体重超過した場合に備えて、リザーバー(万が一の時の代役)を仰せつかったのである。

幸いにも(?)、ビッグマネーを逃したくないネリーが真面目に身体を絞り、ドヘニーは当初組まれた通り、8回戦の第1試合に登場。7勝2KOのフィリピン人,ブリル・バヨゴスを3度倒して4回TKO勝ち。

第二の故郷はオーストラリアではなく、日本なのではないかと錯覚しそうになるが、4戦立て続けの首都参上とあいなった。


トシを取って運動量が落ちた為だと推察するが、最近のドヘニーは目一杯のリバウンドを最大限に利用したパワー勝負にすべてを懸ける。左の一撃を効かせたら、回復の間を与えず一気に決着してしまう。

しかし岩佐に勝った6年前は、前後左右に良く動きながら、ジャブとコンビネーションで時間をかけて崩すボクサーファイターだった。格下相手には、崩しのプロセスがそのままKOにつながり、結果的にKO率を押し上げることになってはいたが、判定を前提にした丁寧な組み立てで戦うのが基本。

20代半ば~30代に突入した直後のように、ふんだんに脚は使えない。さらに、サウスポーには滅法強いが、地力と経験のあるオーソドックスにかかると存外に脆い。4度の敗戦のうち、サウスポーはコンラン1人。サイズ&スピード負けが顕著だった。

中嶋に勝った時も、ロープ際に追い込んだところで左フックを1発食らってヨロける場面があり、年齢とは関係なく耐久性に問題を抱えているのではと実感。あれだけ慎重に出入りしていたことも、そう考えると合点が行く。

◎井上尚弥~孤高の王者の行方~【ダイジェスト版】
Lemino公式

※Lemino公式(フル)
https://lemino.docomo.ne.jp/?crid=Y3JpZDovL3BsYWxhLmlwdHZmLmpwL2dyb3VwL2JmMTAwM2U%3D


我らがモンスターの決定力と卓越したスピードに反応があれば、左の餌食になることはまず有り得ない。ネリー戦の失敗を糧に、今回はどんな立ち上がりを見せてくれるのか。

S・フライ級の頃と同じレベルでフットワークを使ってくれとまでは言わないけれど、”パワーハウス・ナオヤ”ではなく、”ファンタジスタ・ナオヤ”の復活を性懲りもなく願う。

動きの遅いパンチャーの正面に正対して圧をかけて行くのではなく、前後左右に自分から動いて、角度とタイミングに変化をつけたジャブとコンビを死角から突く。そうやって、1発頼みの古豪を翻弄する。

バトラーとタパレスをねじ伏せた力のボクシングではなく、ファン・カルロス・パジャーノの息の根を止めた美しいスピード・ボクシング。フルトンを圧倒した駆け引き&プレスに、健脚をプラスできないものか。

来るべき126ポンド対策として、最も効果的で確実な打開策になると信じて疑わない。ネリー戦と同様、「一切触らせない(何もさせない)」と言い切っているが、モンスターなら幾通りかの方法を試せる筈だ。

まったく危なげのないクレバーな進め方で、前半のうちに倒し切って欲しい。


◎ファイナル・プレス・カンファレンス(フル)



◎井上(31歳)/前日計量:122ポンド(55.3キロ)
戦績:27戦全勝(24KO)
現WBA・WBC・IBF・WBO統一S・バンタム級王者(WBC・WBO:V2/WBA・IBF:V1)
前4団体=WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
世界戦通算:22戦全勝(20KO)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
--------------
脈拍:75/分
血圧:107/77
体温:35.6℃
※計量時の計測
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎ドヘニー(37歳)/前日計量:121.5ポンド(55.1キロ)
元IBF J・フェザー級王者(V1)
現在の世界ランク:WBA6位/WBC・IBF7位
戦績:30戦26勝(20KO)4敗
世界戦通算:4戦2勝(1KO)2敗
アマ戦績:不明
北京五輪代表候補
身長:166センチ
リーチ:172.5センチ
※岩佐亮佑戦の予備検診データ
--------------
脈拍:99/分
血圧:115/103
体温:36.7℃
※計量時の計測
左ボクサーファイター


◎前日計量


◎前日計量:Lemino公式
https://lemino.docomo.ne.jp/?crid=Y3JpZDovL3BsYWxhLmlwdHZmLmpwL2dyb3VwL2IxMDI0YTY%3D

◎ファイナル・プレス・カンファレンス:Lemino公式
https://lemino.docomo.ne.jp/?crid=Y3JpZDovL3BsYWxhLmlwdHZmLmpwL2dyb3VwL2IxMDI0YTU%3D

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■心配の種はやはり減量

計量時の血圧と体温を見て、老婆心がムクムクと鎌首をもたげる。ちょっと低過ぎやしないか。計量直前の食事制限の過酷さを、余計なお世話と承知の上で想像せざるを得ない。2~3日ぐらいの間、ほとんど絶食に近い状態だった・・・?。

◎今回
脈拍:75/分
血圧:107/77
体温:35.6℃

◎ネリー戦
血圧:124/82mm/Hg
体温:36.6℃
脈拍:82/分

◎タパレス戦
血圧:117/82mm/Hg
脈拍:77/min
体温:36.1℃

◎フルトン戦
血圧:138/81mm/Hg
脈拍:65/min
体温:36.3℃

◎バトラー戦
血圧:129/80mm/Hg
脈拍:61/min
体温:36.5℃

フィジカルを担当する八重樫東が、「折角S・バンタムに慣れてきたのに、今すぐフェザーに上げたら、慣れない階級でまた同じ苦労をすることになる」と、早い時期のさらなる階級アップに否定的な意見を述べていた。

モンスター自身、「あと2年くらいはこの階級で」と展望を示してはいる。でもどうだろう。無理な減量で身体を苛めない方が、むしろプラスに働くのでは。


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■オフィシャル

主審:ベンス・コヴァックス(ハンガリー)

副審:
デヴィッド・サザーランド(米/オクラホマ州)
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)
パヴェル・カルディニ(ポーランド)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:ホセ・ゴメス(パナマ/WBAランキング委員)
WBC:ケヴィン・ヌーン(アイルランド/WBCアジア事務局長他要職を兼任)
IBF:ベン・ケイティ(豪/IBF Asia担当役員)
WBO:レオン・パノンチーリョ(米ハワイ州/WBO副会長/タイ在住)

兄弟揃って無冠 /まずは着実かつ堅実に復帰する姿を - 優大 vs サルヴァ プレビュー -

カテゴリ:
■8月24日/大和アリーナ,大阪府吹田市/48.6キロ(107ポンド)契約10回戦
前WBCストロー級王者/同2位 重岡優大(ワタナベ) vs WBO12位 サミュエル・サルヴァ(比)

yudai-salva

元WBO王者メルヴィン・ジェルサレム(比)の挑戦を受け、2度のダウンを奪われ完敗してから5ヶ月。虎の子のベルトを奪われた重岡優大が、王座奪還を目指して再起戦を迎える。

ジェルサレムと同じフィリピンの招聘されたサルヴァは、肩書きこそWBC12位ながら、上位ランクに匹敵する自力の持ち主で、良くまとまった攻防と精巧なカウンターの技術は侮れない。

戦績=20勝(13KO)1敗=が示す通り、最軽量級としては高いKO率を誇るが、一撃必倒のハードパンチャーではなく、技術(上述したカウンター+堅実な崩し)で倒すタイプ。

唯一の黒星は、先月28日に実弟銀次郎をストップしてIBF王座を奪ったペドロ・タドゥラン(比)に喫したもので、丁度5年前の2019年9月、当時IBF1位だったサルヴァと3位タドゥランが空位の王座を争い、4ラウンド終了後に棄権を申し出たもので、銀次郎と同様、タドゥランの圧倒的なフィジカル&パンチング・パワーに押し捲られた。

銀次郎との大きな違いは、致命的なダメージを負う前に早々と白旗を掲げた点で、専制のノックダウンを奪った後の逆転だったことも含めて、余力を残した状態での試合放棄には、ファン関係者の賛否が当然あったと思われるが、心身の限界を超えて戦い続けた銀次郎とコーナーの判断も、妥当性を巡る議論があって然るべきとは思う。


タドゥランに敗れたサルヴァは、この5年の間に3試合をこなしただけ(2023年10月・2022年4月・2020年1月)。格下のアンダードッグをすべてKOで片付けているが、武漢ウィルス禍による休止を考慮しても少な過ぎる。挑戦権を有する15位以内(WBOのみ)に名前があること自体、むしろ不思議と言ってもいいくらい。

◎サルヴァのカムバックロードを程よくまとめた映像(タガログ語)
https://www.youtube.com/watch?v=XVes6oSJTqY


ジェルウィン・アンカハスを長く支えてきたジョーヴェン・ヒメネスが、マネージャー兼トレーナーとして付いている。体制変更のニュースは見聞きしておらず、おそらく今回も帯同している筈だが、スポーツ各紙のWEB版だけでなく、ボクシングと格闘技の専門サイトにも来日を伝える記事と写真が見当たらず、「取材の対象外なんだな・・・」と落胆・納得あい半ばの感情を覚える。

ジョーヴェン・ヒメネス(トレーナー兼マネージャー),アンカハス,パッキャオ,ギボンズ
※左から:ジョーヴェン・ヒメネス(トレーナー兼マネージャー),アンカハス,パッキャオ,ギボンズ

試合を中継するABEMAがフルの会見映像を出してくれたので、サルヴァの横にヒメネスらしき人物がいることは確認済み。クローズアップが無い為いまいちわかりづらく、確証を持ってヒメネスだと断定し切れないのはどうかご容赦を。

◎ファイナル・プレス・カンファレンス(抜粋)
https://www.youtube.com/watch?v=vJg2KPskyVY


◎前日計量+ファイナル・プレッサー(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=7y1NgPgUiEE


タドゥラン vs サルヴァ戦について、以下の過去記事で触れているのでご興味のある方はご一読を。
◎過去記事:ストップの難しさ? /狂った読みと計算 - 重岡銀次郎 vs P・タドゥラン レビュー 3 -
2024年8月5日
https://keisbox.online/archives/26359637.html?ref=category365357_article_footer2_slider&id=8545867


一応ブックメイカー各社のオッズも出ているが、かなりの差が開いている。PhilBoxing,comやAsian Boxingでさえ、熱心に追ってくれていなかった。サルヴァの不活発な状況は、引退同然と見られても止むを得ない感があっただけに、専門メディアの興味と関心がそれだけ低下していると理解する他ない。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>betway
優大:-599(約1.17倍)
サルヴァ:+400(5倍)

<2>FanDuel
優大:-650(約1.15倍)
サルヴァ:+430(5.3倍)

<3>ウィリアム・ヒル
優大:1/5(1.2倍)
サルヴァ:7/2(4.5倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
優大:1/5(1.2倍)
サルヴァ:9/2(5.5倍)
ドロー:20/1(21倍)

□PhilBoxing,com
<1>公式サイト - News
https://philboxing.com/news/index.php?show=4

<2>公式X
https://x.com/philboxingtv

□Asian Boxing
<1>公式サイト
https://www.asianboxing.info/

<2>公式X
https://x.com/asianboxing


優大が丸腰になった最大の原因は、慢心と油断。これ以外に無い。昨年1月、大阪府立(エディオン・アリーナ)で、同門の先輩王者,谷口将隆(L・フライ級に上げて再起の途上)を2ラウンドで瞬殺してWBO王座を持ち去ったジェルサレムを、とにかく甘く見過ぎていた。

切れ味抜群の右と踏み込みの鋭さをナメ切っていたから、「好きなようにカウンターしろよ」と言わんばかりに、ノーガードで真正面から歩いて前進する愚を冒せたのである。

昨年5月の初防衛戦で渡米し(指名戦の入札で)、GBPとミゲル・コットがバックアップするオスカー・コラーゾ(米/プエルトリコ:小柄なサウスポー)に力負けしてしまい、ボディアタックで疲弊消耗。

8ラウンド開始のゴングに応じることができず、試合放棄によるTKOであっさり王座を失った負け方も、優大とワタナベ陣営に「組みし易し」との誤解を与えてしまったのではないか。実際に拳を交えた谷口がいながら、その経験を活かせなかった。

チーフとしてコーナーをまとめる町田主計(まちだ・ちから)トレーナーを筆頭に、陣営の痛過ぎるボーンヘッドとの指摘は免れない。


ジャブを省略していきなり強振する悪癖と、不要なルーズガードの修正が第一にはなるが、丁寧な出はいりと崩しの手間を惜しまない、セオリーに立ち戻る意識の改善が重要になる。重岡兄弟のポテンシャルに疑いを持つ者はいないとは思うが、同時に彼らは、”リアル・モンスター”井上尚弥では無い。

「油断と粗雑なボクシング」を洗い直したとの言及はあったが、骨身に染みているのかどうかまでは判然とせず、同じ過ちを繰り返す懸念が見え隠れする。銀次郎の惨敗が余計な力みとなって、悪い方向に影響しなければいいが・・・。


◎優大(27歳)/前日計量:106.7ポンド(48.4キロ)
前WBCストロー級王者(V1),前日本ミニマム級(V0),元WBOアジア・パシフィックM・フライ級(V1),元日本ユースミニマム級(V0)王者
戦績:9戦8勝(4KO)1敗
アマ通算:91戦81勝(21RSC・KO)10敗
2018年度全日本選手権優勝(L・フライ級)
2015年度高校選抜優勝
2015年度インターハイ優勝
2015年度第70回回国体少年の部優勝
2014年度インターハイ優勝
階級:ピン級
熊本開新高校→拓殖大学
身長:160.8センチ,リーチ:158.7センチ
※ウィルフレド・メンデス戦の予備検診データ
左ボクサーファイター


◎サルヴァ(27歳)/前日計量:106.3ポンド(48.2キロ)
戦績:21戦20勝(13KO)1敗
アマ戦績:不明
※フィリピン国内限定ながらジュニアとユースの大会で複数回の優勝経験有り
身長:155センチ
右ボクサーファイター

◎前日計量
https://www.youtube.com/watch?v=xbogzM06WKw


◎前日計量+ファイナル・プレッサー(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=7y1NgPgUiEE

L・フライ級リミットの108ポンドからマイナス1ポンドの契約だが、階級を上げるつもりは無いとのこと。ジェルサレムへの雪辱が最優先ということなのだろうが、眼前の敵に集中して欲しい。


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■主なアンダーカード

今年5月10日、アウェイのフィリピンで元WBCバンタム級暫定王者レイマート・ガバーリョと対戦。衝撃的な初回TKO勝ちを収めた36歳の健文トーレス(19戦14勝10KO5敗)が、2016年12月以来7年8ヶ月ぶりとなる日本国内復帰戦。

亀田和毅が実質オーナーを勤めるTMKジムの契約選手となり、115ポンドのWBO1位,KJ(ケヴィン・ジェイク)・カタラハ(比/29歳/17戦全勝13KO)を相手に、バンタム級契約の10回戦を行う。

キャリアの後半を日本で戦い、引退後もグリーンツダやオール,大鵬ジムでトレーナーを勤めた元WBC L・フライ級王者へルマン・トーレス(メキシコ)を父に持ち、アマチュアの社会人選手権を経て、2004年の暮れに国内デビュー(2003年12月にメキシコでいきなり10回戦デビューを行い4回TKO負け)。

将来を嘱望されていたが、タクシー強盗などで2度逮捕収監されてしまう。服役は合計で11年にも及び、昨年6月メキシコで再起するも2回KO負け。ベトナムで2試合を行い、1勝1敗(KO負け)と過酷な復帰ロードとなったが、ガバーリョ戦の大金星で一躍注目を集めた。

カムバック後の戦績は、4戦2勝(1KO)2敗。負けはいずれもKOで、褒められた戦果ではない。相打ちの左フックでガバーリョをグラつかせた後、立て続けに3度倒してフィニッシュ。チャンスに詰め切る集中力と最後の連打はお見事。攻撃に関する限り、父から良いDNAを受け継いでいる。

◎試合映像:健文トーレス vs R・ガバーリョ
2024年5月10日/南コタバト州ポロモロク(ミンダナオ島/比)
契約ウェイト不明(120ポンド?)10回戦


ガバーリョ戦の勝利はけっしてフロックでないけれど、元暫定王者の”上から目線”に助けられたことも事実。1階級下とは言え、カタラハは左右どちらもパンチがあり、スピード&シャープネスでも高齢のトーレスを上回る。怖いのは、一瞬の気の緩み。集中力の瞬断だけ。

老舗のウィリアム・ヒルだけだが、オッズも出ていた。ガバーリョ戦の効果と階級を考慮した冷静な数値だが、これでもまたトーレスに甘い。

トーレス:12/5(3.4倍)
カタラハ:1/3(約1.33倍)
ドロー:14/1(15倍)

ガバーリョのように油断しなければ、中盤までにはし止められると思う。フィリピンのファイターらしく思い切りはいいが、ベースにする手堅いボクシングで順調にラウンドをまとめて行けば、熱望する田中恒成(畑中)への挑戦を一気に引き寄せるだろう。

本来なら負けて当然のトーレスだが、ガバーリョを倒した印象が強過ぎて、逆にリアルな現在地が見えづらい。過大な期待は、この際避けておくのが吉。


フライ級の日本ユース王座を保持する野上翔(のがみ・しょう/24歳/)は、S・フライ級のコンテンダーだった柳光和博が設立したRK蒲田ジム期待のサウスポー。杵島商高から拓殖大へ進み、40勝23敗のアマ・レコードを残している。

昨年7月にデビューしてから、3連勝(2KO)をマーク。今年3月には、リブート(RE:BOOT)ジムのホープ,富岡浩介とのレフティ対決に2-1の判定勝ち。ユース王座に就いたばかり。25歳のフィリピン人ファイターとの8回戦(S・フライ級契約)に臨む。

相手のダンリック・スマボンは、115ポンドのOPBF15位で、右ストレート以外にこれと言って目ぼしい武器は無い。こちらも怖いのは油断ということになるが、プロ18戦(13勝9KO4敗1分け)の経験値にモノを言わせない為にも、早めに左(ストレートだけでなく鋭角的なアッパーがいい)を効かせておきたいところ。

ただし、攻め急いでパンチが粗く大きくなると、合わせ技の右1発で1本の恐れも。くれぐれも気を付けて欲しい。170センチ近いタッパがある為、今回の内容と結果次第で階級アップも有り得るか。

◎試合映像:野上 vs 富岡(ハイライト)
2024年3月18日/後楽園ホール
日本ユースフライ級王座決定8回戦


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うっかりしていた。ドラミニと和毅の再戦にも触れておこう。昨年10月の初戦、和毅は折角の地の利をまったく活かすことができず、前後左右に動きながら先手で仕掛け続けたドラミニが、1-2のスプリット・ディシジョンを”易々”と持ち帰った。

カリフォルニアとウィスコンシンから呼ばれた2人の米国人ジャッジは、112-116の4ポイント差でドラミニ。残った1人、JBCの染谷路明副審が115-113で和毅。実に分かり易いスコアリングだった。

ちなみにレフェリーを努めたのは、JBCの田中浩二審判。和毅が頭突きや体当たり、ローブローを慎み、試合が荒れなかったお陰で、おかしな疑念を持たれずに済んだのは何より。

確か10ラウンドだったと思うが、青コーナーで脚を滑らせたドラミニが前のめりに倒れ込んだ場面、和毅は一応ボディブローを出していて、すかさず右腕を上げてノックダウンをアピールしていたが、主審田中は何の迷いも無くスリップの合図を出していて、一安心したことを思い出す。


有体に言って、第8ラウンドまでは完全なるマス・スパー。ちょこちょこ手を出すだけの、退屈極まりない駆け引きの応酬。第9ラウンド以降、ようやく和毅が距離を詰め始めて本気度はアップしたが、マスからライト・スパーに変わった程度でしかない。

「失点しないボクシング」に撤するドラミニに対して、和毅はほとんど何も出来なかった。理由は簡単。サイズとスピードで優位に立てず、反応でも遅れを取ったからである。

南アフリカでやっていれば、フルマークでドラミニの勝ちになるだろうし、米国内での開催だったとしても、明確に和毅に振っていいラウンドは第9・第12の2つのみ。11ラウンドは、ジャッジの判断が割れる確率が高いと思う。

いずれにしても、昭和のスタンダードで見れば、五十歩百歩のイーブンが延々と続くだけ。一目で分かるダメージを伴うクリーンヒットは、お互い1発も無し。日本人審判がレフェリーをやっていたら、いったい何度「ファイト!」の掛け声が飛んだことか。


今年3月末の再起戦に合わせて、よせばいいのに親父さんがチーフに復活。ぐいぐい前に出るプレッシャースタイルで押し捲り、中堅のフィリピン人を5回終了TKOに下して評価を持ち直したようだが、ここは1つ冷静になろう。

相手のケヴィン・ビリャヌエバは、S・バンタム級を主戦場にするアベレージのローカル・ランカーで、和毅より大分身長が低い上に、パワーもスピードもはっきり下回る。要するに、体格差のアドバンテージが利く時以外、和毅が安心してパワー勝負に出ることは無い。

親父さんのコーナー復帰とともに、(かつての)亀田家の掟,テッパンのマッチメイクも復活した。それだけのことである。自分より小さい格下相手なら、和毅でなくても好きなようにやれる筈だ。


前回の後半~終盤にかけて、クリーンヒットは無くても「押し込めた」という実感、手応えだけはあったと思う。ただし、常に先手で試合を作り、セーフティ・リードを確信したドラミニは、10ラウンド以降完全な逃げ切り態勢に入っていた。

前半から無理と深追いは一切せず、手数と着弾で上回りつつ、被弾の回避に撤していたドラミニは、ステップ&クリンチを多用してひたすらリスクヘッジに腐心。最終12回は逃げ腰が酷過ぎたが、和毅が無策だったことも事実。3月のビリャヌエバ戦と同じことを、体格&スピードで上回ることができないドラミニにやれるのかと言えば、そこは大きな疑問符を付けざるを得ない。

和毅と親父さんに残された道は、巷では大善戦と評判のレイ・バルガス戦の再現あるのみ。すなわち、頭突きと体当たりを主武器にした、やりたい放題時代の「亀田スタイル」一択。

気になる今回のオフィシャルだが、ジャッジ3名は全員外国人(米ネバダ州・独・英)。けれども、レフェリーはJBCの中村勝彦審判が仰せつかった。コーナーには、あの親父さんが鎮座ましましている。

何が何でも負けられない和毅が、反則ありきのゴリゴリのラフに出た場合、主審中村がどんなレフェリングで応えるのか、はたまた一切応えず真面目に仕事に集中するのか。そこだけは、しっかり注目しておいた方がよさそうだ。

◎リング・オフィシャル
オフィシャル

主審:中村勝彦(日/JBC)

副審:
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)
ダイアナ・ドリュース・ミラニ(独)
ボブ・ウィリアムズ(英国)

立会人(スーパーバイザー):ベン・ケイティ(豪//IBF Asia担当役員)

◎主要ブックメイカーのオッズ
<1>betway
ドラミニ:+200(3倍)
和毅:-163(約1.61倍)

<2>FanDuel
ドラミニ:+164(2.64倍)
和毅:-205(約1.49倍)

<3>ウィリアム・ヒル
ドラミニ:8/5(2.6倍)
和毅:1/2(1.5倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
ドラミニ:13/8(2.625倍)
和毅:8/13(約1.62倍)
ドロー:18/1(19倍)

意外にも(?)、和毅が若干優勢。ビリャヌエバ戦の賜物に違いない。やはり、KO勝ちはしておくにこしたことはない。

拙ブログは、ジャッジ3名がまともに仕事をする前提にはなるが、前回同様ドラミニの判定勝ち。和毅がラフ・ファイトに及んだら、当然その時は、中村主審の匙加減次第になる。厳しくチェックするのか、かつてのように盛大に忖度してしまうのか。

それはつまり、亀田家と一蓮托生の安河内剛JBC事務局長はもとより、日本でもお馴染みになったオーストラリアの立会人もグルで、和毅の反則に目をつむる・・・ジャッジの抱き込みもひっくるめて、最大の懸念材料と言わねばならない。

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