175ポンド最強はどっち? /鋼の拳を持つグリズリーに膝への不安 - ベテルビエフ vs ビヴォル プレビュー -
- カテゴリ:
- Preview
■10月12日/キングダム・アリーナ,リヤド(サウジアラビア)/4団体統一世界L・ヘビー級タイトルマッチ12回戦
WBC・IBF・WBO王者 アルトゥール・ベテルビエフ(ロシア/ダゲスタン) vs WBA王者 ドミトリー・ビヴォル(ロシア/キルギスタン)
WBC・IBF・WBO王者 アルトゥール・ベテルビエフ(ロシア/ダゲスタン) vs WBA王者 ドミトリー・ビヴォル(ロシア/キルギスタン)
※ファイナル・プレス・カンファレンス(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=CwyGeAEvxmo
いよいよ決戦当日。中東サウジの首都リヤドで、4本あるL・ヘビー級のベルトが1つにまとまる。
本来ならば、6月1日に同じ場所で行われた「クィーンズベリー vs マッチルーム 5 vs 5決戦」のメインとして組まれていたが、周知の通り、3団体統一王者ベテルビエフの予期せぬ大怪我(膝の半月板損傷)で延期された。
そして、微妙なマージンでWBA王者を支持する直前のオッズも、この大怪我が主たる要因と考えて間違いない。カネロを完封したビヴォルの金星と、不惑を目前に控えたベテルビエフの年齢も、当然考慮の対象となるけれど、やはり膝の状態への不安が第一。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
ベテルビエフ:+110(2.1倍)
ビヴォル:-125(1.8倍)
<2>betway
ベテルビエフ:+110(2.1倍)
ビヴォル:-125(1.8倍)
<3>ウィリアム・ヒル
ベテルビエフ:5/4(2.25倍)
ビヴォル:10/11(約1.91倍)
ドロー:20/1(21倍)
<4>Sky Sports
ベテルビエフ:5/4(2.25倍)
ビヴォル:10/11(約1.91倍)
ドロー:20/1(21倍)
◎リング誌恒例の勝敗予想(専門家20名)
※15-5でビヴォルを支持
■リング誌に寄稿する専門記者8名
(1)ビヴォルの判定勝ち:7名
(2)ベテルビエフのKO勝ち:1名
-----------------------------
■ボクシング関係者12名
※4-8でビヴォル
(1)ビヴォルの判定勝ち:8名
(2)ベテルビエフのKO(TKO)勝ち:3名
(3)ベテルビエフの勝ち:1名(KO or 判定 不記載)
-----------------------------
■FIGHT PICKS: ARTUR BETERBIEV VS. DMITRY BIVOL
2024年10月9日
https://www.ringtv.com/713977-fight-picks-artur-beterbiev-vs-dmitry-bivol/
数の上では圧倒的にビヴォル支持が上回るリング誌の予想も、中身はやはり僅少差。「どちらが勝ってもおかしくない」,「どんな結果になっても驚かない」との但し書きも目に付く。
膝が本調子まで戻らなくても、ベテルビエフの1発で試合が終わる。ビヴォルもけっして打たれて強い方ではないだけに、とにかく顎を上げないように注意を怠らず、しっかり堅く守るだろう。それでも、グリズリーの鋼の拳がテンプルをかすめれば、その一瞬で勝負は決着する。
◎参考映像:ビヴォル 判定12R(3-0) ジョー・スミス・Jr.
2019年3月9日/ターニング・ストーン・カジノ(N.Y.州ヴェローナ)
WBA王座V7
オフィシャル・スコア:119-109×2,118-110
iframe width="380" height="214" src="https://www.youtube.com/embed/rUYPo1CSbM8" title="Dmitry Bivol vs Joe Smith KNOCKED OUT on his feet | Highlights | Every Punch" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture; web-share" referrerpolicy="strict-origin-when-cross-origin" allowfullscreen>
それを見越したビヴォルは、素早いステップと切れ味に注力したジャブで距離をキープ。カネロ戦よりもさらにディフェンスに重きを置いて、クリンチワークまで総動員してリスク回避に努める・・・。
高齢ボクサーが膝を壊したケースですぐに思い出すのは、2005年11月のヴィタリ・クリチコだ。レノックス・ルイスとの大一番を落とした後、コリー・サンダースを倒してルイスが放棄(引退)した緑のベルトを巻き、初防衛に成功して気合は十分。
同じWBCの暫定王座を保持していたハシム・ラーマン(ラクマン/米)との団体内統一戦に向け、オフィスを構えるロサンゼルスで最終調整に入っていた。
しかし、12日の本番まであと9日というタイミングで、練習中に右膝の前十字靭帯を断裂。直ちに入院して手術に臨むことになったヴィタリは、アクシデントから6日後の11月9日、ベルトの返上と引退を表明する。
回復に必要な厳しいリハビリ(程度にもよるが順調に行って8~10ヶ月)に耐えて、果たして膝がどこまで戻るのか。2メートルの上背と250ポンド(約113キロ)に近い体重を支えながら、12ラウンズをフルに持ち応える自信が、その時は持てなかった。
しかしヴィタリは、およそ3年後の2008年10月にカムバック。WBCの後継王者となっていたサミュエル・ピーターにいきなりアタックして、8回終了TKO勝ち。2013年12月に政治家への転身を理由に41歳で引退するまで、連続9回の防衛に成功(ラストファイト:2012年9月)。WBA・IBF・WBOの3団体を統一した弟のウラディーミルとともに、ヘビー級を蹂躙する。
半月板の怪我は、靭帯に比べれば回復は早い。治療法によって長さは変わるが、切除なら早くて3ヶ月、縫合手術の場合でも6ヶ月程度で競技への復帰が見込めるという。ベテルビエフ陣営の情報管理は徹底されていて、手術の種別だけでなく、左右どちらの膝なのかも伏せられたままだが、公開練習で披露した圧巻のフィジカルは健在。
◎公開練習:ベテルビエフ
10月10日/TNT Sports
※フル映像(トップランク公式)
https://www.youtube.com/watch?v=TrOGl7wwT5I
◎2週間前に公開されたトレーニング映像
9月27日
◎ミット打ちを含むトレーニング映像
10月9日
ロシア,ジョージア(グルジア),アゼルバイジャンに囲まれ、カスピ海に面する小国ダゲスタンは、今や屈強な格闘家の産地として知られている。
複雑な政治的背景(チェチェンとの親和性が高い)の影響もあって、男の子の7~8割はボクシングかレスリング、もしくはその両方を習うそうだが、主な目的はセルフ・ディフェンスでも、長じて兵士としてリアルな戦闘に身を投じる場合を想定済みとのこと。
20戦全勝全KOのパーフェクト・レコードが物語っているが、ベテルビエフのパンチは異常なほど良く効く。急所かどうかは関係無い。首から上のどこかに当たりさえすればOK。一番いい時のゴロフキンとコヴァレフでも1~2歩譲る。比較対象は、全盛期(1985~86年)のマイク・タイソン。
そんなベテルビエフでも、プロのリングで2度のダウンを喫している。
(1)ジェフ・ペイジ・Jr.戦/2回TKO勝ち
2014年12月19日/ペプシ・スタジアム(ケベック/カナダ)
NABO(WBO)・IBFノースアメリカン・NABA(WBA)タイトルマッチ(プロ7戦目)
-----------------------------
(2)カラム・ジョンソン戦/4回KO勝ち
2018年10月6日/ウィントラスト・アリーナ(イリノイ州シカゴ)
IBF王座V4(プロ13戦目)
北米タイトルを3つ懸けた7戦目のダウンは、頭を低くして突っ込んで来る相手に押されてバランスを崩し、ガードがお留守になったところへ右ストレートを食らったもの。上体が後方へ傾いていた事に加えて、相手のパンチもナックルがしっかり当たっておらず、グローブの掌部分で押し倒したと言った方が正しく、ダメージはほとんどゼロ。
ところが、シカゴでやったIBF王座の防衛戦は、イングランドにあるボストン(リンカンシャー州)から呼ばれた英国&英連邦の2冠王に、左フックの相打ちを決められて腰から崩れ落ちた。
顎の先端を綺麗にヒットされて、この時は相当に効いていたが、恐るべき回復力を発揮。どんなにタフなボクサーでも、人間である以上、急所をまともに打ち抜かれたら持たない。倒れる。それから先は、回復力の有無と優劣がモノを言う。
天山(テンシャン)山脈を境に中国と隣接し、北にはカザフスタンとウズベキスタン、南にはパミール高原(平均標高5000メートル)が拡がり、国土全体の40%が標高3000メートルを超える中央アジアの山岳国家キルギス出身のビヴォルは、黒い髪と東洋系の顔立ちに親近感を覚える。
90年代初頭、ペレストロイカの波に乗って来日したオルズベック・ナザロフ(キルギス初の世界王者)を思い出す。唖然とするほどの強さと完成度の高さを見せ付け、ライト級でWBAのチャンピオンになって5度の防衛に成功した。
単に東洋系の風貌だっただけでなく、パーマを当てたようなチリチリ・ヘアと鼻の下にたくわえた髭が、所属先となった協栄ジムの大先達,具志堅用高を連想させた為、存命だった先代の金平会長は大いに喜び、「グッシー・ナザロフ」のリングネームで売り出した。
エース的な存在だったフライ級のユーリ・アルバチャコフも、シベリアの少数民族に出自を持ち、顔立ちは完全なモンゴル系でナザロフよりも日本人に近い。凄まじい切れ味の右ストレートは、山中慎介のゴッド・レフト以上に手首を捻るコークスクリュー。
デビュー戦でJ・フェザー級の輸入選手を寄せ付けず、「明日世界チャンピオンとやっても勝てる」と、まだまだお元気だったリングサイド・クラブのお歴々を絶句させている。
さて、拙ブログの勝敗予想を。膝が7~8割方回復している前提になるけれど、ベテルビエフの中盤以降KO(TKO)勝ち。しっかり動ける状態なら、べテルビエフのプレッシャーにビヴォルは耐え切れないと思う。
膝が万全には程遠く、ビヴォルのステップを追い切れずに、ジャブと長い右(ワンツー)に反応が遅れるようだと、中差程度の3-0判定でビヴォル。加齢による衰えが顕在化してたら、後半~終盤にかけてのストップも有り。
両雄ともに、チームが安定している点も予想をわかりづらくする。カナダに移って以降、ずっとコーナーを預かってきたマーク・ラムジー(マルク・ラムゼイ/カットマンとしても高名)との関係は今も良好円満。
ビヴォルもまた、メンターの呼称がより相応しいヘッド,ゲンナジー・マシァノフに寄せる信頼は厚い。ボクシングのコーチと言うより、古武術の達人を思わせる風貌が、東洋系のビヴォルとのコンビに独特の味わいを醸し出す。
◎公開練習:ビヴォル
10月10日/TNT Sports
※フル映像(トップランク公式)
https://www.youtube.com/watch?v=TrOGl7wwT5I
◎ベテルビエフ(39歳)/前日計量:174.9ポンド
3団体統一L・ヘビー級王者:IBF(V8),WBC(V5),WBO(V2)
戦績:20戦全勝(20KO)
世界戦通算:9戦全勝(9KO)
アマ通算:295勝5敗(推定)
2012年ロンドン五輪ヘビー級代表(2回戦敗退=ベスト8)
※オレクサンドル・ウシクに13-17で敗北
2008年北京五輪L・ヘビー級代表(2回戦敗退)
2011年世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)ヘビー級代表(ベスト8)
※オレクサンドル・ウシクに13-17で敗北
2009年世界選手権(ミラノ)金メダル(L・ヘビー級)
2007年世界選手権(シカゴ)銀メダル(L・ヘビー級)
2008年ワールドカップ(モスクワ)金メダル(L・ヘビー級)
2006年ワールドカップ(バクー/アゼルバイジャン)銀メダル(L・ヘビー級)
2010年欧州選手権(モスクワ)金メダル(L・ヘビー級)
2006年欧州選手権(プロブディフ/ブルガリア)金メダル
身長:182センチ,リーチ:185センチ
右ボクサーファイター
◎ビヴォル(33歳)/前日計量:174.12ポンド
WBA L・ヘビー級スーパー王者(V14/スーパー:V7,正規:V6.暫定:V1)
戦績:23戦全勝(12KO)
世界戦通算:15戦全勝(5KO)
アマ通算:268勝15敗
2013年ワールド・コンバット・ゲームズ(ペテルスブルグ/ロシア)金メダル(L・ヘビー級)
2008年ユース世界選手権(グァダラハラ/メキシコ)銅メダル(ミドル級)
2007年カデット世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)金メダル(L・ヘビー級)
2006年カデット世界選手権(イスタンブール/トルコ)金メダル(ミドル級))
ロシア国内選手権
2014年,2012年優勝(L・ヘビー級)
2011年準優勝,2010年3位(ミドル級)
身長,リーチとも183センチ
右ボクサーファイター
◎前日計量
◎フル映像(トップランク公式)
https://www.youtube.com/watch?v=F5UIzh3Rbns
●●●●●●●●●●●●●●●●●●
■オフィシャル
主審:トーマス・テーラー(米/カリフォルニア州)
副審:
グレン・フェルドマン(米/コネチカット州)
マヌエル・オリヴィエ・パロモ(スペイン)
パウル・カルディーニ(ポーランド)
立会人(スーパーバイザー):未発表