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復活を遂げた”プエルトリコのマニー”に”和製メイウェザー(?)”がアタック - E・ロドリゲス vs 西田凌佑 プレビュー Part 1 -

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■5月4日/エディオンアリーナ大阪/IBF世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 エマニュエル・ロドリゲス(プエルトリコ) vs IBF1位 西田凌佑(六島)




武漢ウィルス禍による最初の緊急事態宣言(2020年4月~5月)以来、実に4年もの歳月を経て、ようやく到来した行動制限の一切無いゴールデン・ウィーク。その真っ只中に、3名のバンタム級世界チャンピオンが揃い踏みする。

<1>IBF:5月4日大阪

<2>WBA・WBO:5月6日/東京ドーム
(1)WBA:井上拓真(大橋) vs 1位 石田匠(井岡)
(2)WBO:ジェイソン・モロニー(豪) vs 10位 武居由樹(大橋)

その先陣を切って大阪府立のリングに登場するのが、”プエルトリコ版マニー”ことエマニュエル・ロドリゲス。

WBSS(World Boxing Super Series)第2シーズンのバンタム級準決勝に進出を果たし、WBA王座を保持していた井上尚弥(大橋)と英国スコットランドで激突。衝撃的な2回KO負けに退いたのが、2019年5月18日のこと。

あれから早くも5年が経ち、井上はバンタム級に続いてS・バンタム級の4団体統一に成功。一足早く2階級の4団体統一をやってのけたテレンス・クロフォード(S・ライト級&ウェルター級)とリング誌P4Pランキングのトップを争い、2024年度のファイター・オブ・ジ・イヤーを総なめにするなど、止まるところを知らない勢い。


世界が武漢ウィルスの猛威に晒される中、1年半のブランクを挟んで渡米したロドリゲスは、コネチカットのインディアン・カジノでWBCが承認した暫定王座決定戦に挑み、フィリピンの俊英レイマート・ガバーリョ(元WBA暫定王者)によもやの1-2判定負け。

割れた採点を巡って紛糾する事態となり、日本国内でもロドリゲスの勝利を支持するファンが大勢を占めたが、井上戦までの積極果敢なファイト・スタイルがウソのような専守防衛に唖然とした。

「どこか故障しているのではないか?」

我らがリアル・モンスターに瞬殺された精神的な痛手が、勇敢な前進を奪い去ってしまっのかと疑ったが、そんな事ではなさそうだ。

グラスゴーの公開練習において、敵情視察に訪れた真吾トレーナーを小突き、「出て行け!」と大声を張り上げた若いチーフ・トレーナー(ウィリアム・クルス)を更迭し、同胞のベテラン,フレディ・トリニダード(英雄ティトの叔父)を迎えて体制を一新した影響かとも考えたが、トレーニング中の怪我や病気、すなわちフィジカル・コンディションに問題を抱えているようにしか見えない。

余りにもパッシブな試合振りに加えて、とても万全には見えない仕上がり具合。ロドリゲスにいったい何が起きたのかといぶかった。

◎試合映像:ガバーリョ SD12R ロドリゲス


フレディ・トリニダードとの関係はこの1試合だけで清算し、”パンダ”の愛称で知られるジェイコブ・ナハール(IBF J・ウェルター級王者スブリエル・マティアスのコーナーを預かり躍進を支える巨漢コーチ)のチーム入り。

ロサンゼルスにニックネームを冠したジム(Panda Boxing Academy)を持つ他、メキシコのクリアカンにあるジム(Aldana Boxing Gym)と行き来しながら教えているらしいが、日本での初防衛戦に備えて、ヒキピルコ(メキシコシティ近郊)という標高3千メートルの高地で、4ヶ月もの長期キャンプを張ったという。

23日に関空に降り立つと、24日に行われた会見にリモートで参加。2月にWBCのベルトを奪取した中谷潤人(M.T.)に、抜け目無く熱いプロモーザルを贈る。4月20日付けで更新されたリング誌P4Pランキングで、悪質極まるウェイト・オーバーのライアン・ガルシアに完敗を喫したデヴィン・ヘイニー(7位)がトップ10圏外へと去っていた。

そして、8位以下の3名(エロール・スペンス,ジャーボンティ・ディヴィス,ジェシー・ロドリゲス)が順送りで1つづつ上がり、空席となった10位に中谷の名前と顔が並ぶ。ロドリゲスのような熟練の試合巧者と言えども、中谷は充分過ぎるほど危険な相手になるが、日本でハイリスクを取る旨味をロドリゲスと彼の陣営はしっかり理解しており、視線は早くも秋以降の再来日(?)を睨む。

◎リング誌最新P4Pランキング(4月20日更新)
https://www.ringtv.com/ratings/

とんでもない高地に4ヶ月も篭り、仮想チャンレンジャーとして選ばれた4~5名のサウスポーと、180ラウンズに及ぶスパーリングを消化したと言う。にわかには信じ難いハードワークである。

この話が本当か否かは別にして、オーバーワークを心配したくなるほどのいれこみ様も、中谷との統一戦が交渉のテーブルに乗っているなら、「なるほど」と合点が行く。

◎参考映像:”パンダ”ことジェイ・ナハールとのキャンプ(A・ラッセル戦)を取材した短い映像
<1>2021年7月17日アップロード/Part 2


<2>2021年7月17日アップロード/Part 1
https://www.youtube.com/watch?v=OwOyl9KCG3I


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■井上戦後の道程

上述した通り、心機一転の船出は2021年8月。捲土重来を期して臨んだゲイリー・アントニオ・ラッセル(元WBCフェザー級王者ゲイリー・ラッセル・Jr.の実弟)との再起戦では、以前の積極性が回復。スタートから前に出て手数を惜しまず攻めるも、ラッセルの頭が衝突して初回ノーコンテスト。不運が続く。

◎試合映像:ロドリゲス NC1R アントニオ・ラッセル第1戦


7ヶ月後の2022年3月、パンダ・ナハールが通うジムがあるクリアカンで、ソノラ州から呼んだ無名の中堅選手を初回2分半足らずで圧殺。KOして当然の相手とは言え、IBF王座を獲得したポール・バトラー戦(2018年5月/敵地ロンドンで大差の3-0判定勝ち)以来の快勝にチームは破顔一笑。

さらに7ヶ月を置いて実現したアントニオ・ラッセルとの再戦(2022年10月/バークレイズ・センター,ブルックリン/N.Y.)でも、ワンサイドの展開を作って10回負傷判定勝ち。

◎試合映像:ロドリゲス UD12R アントニオ・ラッセル第2戦
https://www.youtube.com/watch?v=dBdQQHNwK6o

第9ラウンドにまたもやバッティングが発生し、ドクターストップであと2ラウンズを残して終了となったが、8回にダウンを奪ってオフィシャル・スコアは100-90,99-91,99-93。結末こそすっきりしないものの、内容と結果には文句の付けようがない。

こうして昨年8月、メリーランド州オクソン・ヒルにあるカジノ・ホテル(MGMグループ)に登場。井上尚弥が返上した4本のベルト(バンタム級)のうち、愛着のあるIBF王座決定戦に挑み、ニカラグァの新鋭サウスポー,メルヴィン・ロペス(対戦時:25歳/29勝19KO1敗)にフルマークの判定勝ち。

ロマ・ゴン二世を自認する(?)ロペスは、なかなかの手際でジャブを操りロドリゲスの右眼を腫らしたが、試合運びに長けた熟練のプエルトリカンもさる者で、適時距離を調整しつつプレスをかけ続け、伸び盛りの若芽をロープやコーナーに追い詰め優勢をキープ。

最終12回に強烈な左ボディでダウンを奪うと、立て続けに2度倒してストップかと思われたが、地元選出の主審デイヴ・ブラスロウはロペスが立ちが上がるのを待って継続支持。”ロマ・ゴンの再来”は、どうにかフル・ラウンズを生き延びる。

◎試合映像:ロドリゲス UD12R ロペス
<1>観客が撮影した現地映像
https://www.youtube.com/watch?v=o4g0Dw1_v6s

<2>オフィシャル・ハイライト(PBC)
https://www.youtube.com/watch?v=Famiwm8OMXk

5年ぶりに赤いベルトを巻き、モンスターが去った後の118ポンドで確固たる存在感を示し、意気揚々と帰国。いよいよ本格的な巻き返しかと思いきや、2ヶ月後の10月に公式フェイスブックで唐突な引退宣言。

三十路に突入した年齢、アマ時代を含めた20年近いキャリアに起因する勤続疲労が、王座奪還の達成感と相まって引き起こしたバーンアウト・・・誰もがそんな想像を張り巡らす。

◎IBF bantamweight champion Emmanuel Rodriguez announces retirement
2023年10月17日/Bad Left Hook
https://www.badlefthook.com/2023/10/17/23921605/ibf-bantamweight-champion-emmanuel-rodriguez-announces-retirement-boxing-news-2023

だがしかし、海外のトップボクサーが発する進退に関わるコメントを真に受けてはいけない。それがチャンピオン・クラスなら尚更だ。フロイド・メイウェザーとタイソン・フューリーの近い例を持ち出すまでもなく、「辞める」と言った舌の根も乾かないうちに、「あれは本心じゃない」とのたまい、「すべては条件次第だ」と豪語する。

専属契約を結ぶプロモーター(不当な搾取の代名詞)は言うに及ばず、リアルなビジネス・パートナーである筈のマネージャーでさえ、自らの引退と引き換えに条件闘争を繰り広げる光景は、欧米のボクシング界では日常茶飯。

メイウェザーやフューリーほど下品丸出しではないが、ロドリゲスもやはり金銭が直接的な原因だった模様。前言を翻して、IBFの指名戦指示に従う意図を明らかにするとともに、履行に際する条件に言及する。

「あれ(引退宣言)は、ロペス戦の条件が到底満足の行くものではなかったからだ。日本に行く為には、それに相応しい報酬の用意が欠かせない。25~30万ドル。それが最低条件だ。」

「(井上,ガバーリョの2連敗で)ボクシングに対する情熱を失った訳ではない。今がピークにあるという自信と手応えがある。コンディションも良好で、戦うことについて何の問題もない。」

事を進めたいなら、条件についてしっかり確認して、合意形成を図るべし。そして、約束は必ず守る。

IBFの決定戦は、当初ビンセント・アストロラビオ(比)を相手に行われる予定だったが、フィリピン陣営がWBOを選択。カリフォルニア州ストックトン(サンフランシスコ近郊)でジェイソン・モロニー(豪)と決定戦を行い、0-2のマジョリティ・ディシジョンに退く(2023年5月13日)。

老いらくのギジェルモ・リゴンドウを破って名を上げたアストラビオに比して、国際的な認知=バリューで大きく劣るロペスに代わったことを理由に、報酬も20万ドルから7万5千ドルへと大きく減額。「まずはベルト」だと割り切ったものの、不満が鬱積して我慢の限界に達していたのだろう。

初来日が首尾よく整ったということは、ライヴ配信を担うABEMA(一時流れていたTravel TVへの鞍替えは無し)が、ロドリゲスの主張に応じたという次第で、今年の年明け早々、1月24日に行われた入札で日本陣営(ABEMA&3150FIGHT)が興行権を獲得した(Zoomによるオンライン実施)。

ロドリゲスを直接ハンドルするプエルトリコのフレッシュ・プロダクションズ(Fresh Productions Boxing/スブリエル・マティアスを手掛けて急成長)が提示した25万ドルを、30万ドルで一蹴したと報じられている。
※Emmanuel Rodriguez-Ryosuke Nishida: Kameda Promotions Wins Purse Bid For IBF Title Fight
2024年1月30日/Boxing Scene
https://www.boxingscene.com/emmanuel-rodriguez-ryosuke-nishida-kameda-promotions-wins-purse-bid-ibf-title-fight--181081


空前絶後の活躍で無人の野を突き進むリアル・モンスターのお陰で、雨後のタケノコのごときネット配信の相次ぐ参入で活気付く日本のボクシング界だが、ご本尊の引退と同時にあっという間にしぼむ”モンスター・バブル”でもある。

ボクシング・マーケットは確実かつ着実に衰退を続けていて、我が国においては、凋落傾向が顕著な王国アメリカ以上に実態は深刻。自前で世界戦を誘致できるジムは限られ、首都圏ではワタナベや三迫、角海老のような老舗・古株ですら、勢いのあるプロモーターが主催する興行に頼らざるを得ない。

名城信男をWBA S・フライ級王座に導いた六島(むとう)ジムも例外では有り得ず、重岡,矢吹兄弟に続いてABEMAの資金力に望みをつないだ。何を血迷ったのか、日本進出に乗り出してしまったマッチルーム(十中八九失敗に終わる)と同様、手を組む相手を決定的に間違えていると言わざるを得ないが、ABEMAのバックアップをみすみす捨てる選択肢は無く、痛し痒しといったところか。

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◎ロドリゲス(31歳)/前日計量:117.75ポンド(53.4キロ)
当日計量:126.5ポンド(57.4キロ)
※IBFルール:前日+10ポンドのリバウンド制限をクリア
戦績:25戦22勝(13KO)2敗1NC
アマ通算:171勝11敗(2012年ロンドン五輪代表候補)
2010年世界ユース選手権(バクー/アゼルバイジャン)銀メダル
2010年ユース・オリンピック(シンガポール)金メダル
※階級:フライ級
身長:168センチ,リーチ:169センチ
※以下は計量時の検診
血圧:99/72
脈拍:45/分
体温:36.1℃
右ボクサーファイター


◎西田(27)/前日計量:118ポンド(53.5キロ)
当日計量:127.9ポンド(58キロ)
※IBFルール:前日+10ポンドのリバウンド制限をクリア
戦績:8戦全勝(1KO)
アマ通算:37勝16敗
2014(平成)年度第69回長崎国体フライ級優勝(少年の部)
王寺工高→近畿大
身長:170センチ,リーチ:173センチ
※以下は計量時の検診
血圧:127/81
脈拍:63/分
体温:36.1℃
左ボクサー


ロドリゲスの血圧にびっくりした。上が100を切っていて、眩暈や立ちくらみを起こしても不思議がないレベル。まさか心臓とか肝臓の疾患や、その他の内分泌系臓器に障害を抱えているとは思えないし、元々低血圧なだけかもしれない。計量とフェイス・オフの間、幸いにも危うさを感じさせる兆候は見られなかった。

ウェイト調整の最終段階で、一時的に極端な低血糖状態になっていたのかもしれず、そうであれば、計量を終えた直後にピザを食べていたのも頷ける。

当日の仕上がりにどう影響するのかしないのか。「コンディション?。そんなのリングに上がってみないとわからない」と言う選手も少なくない。この後宿泊先のホテルでゆっくり横になり、+10ポンド(IBF独自のリバウンド制限)の限界ギリギリまで水分を補給してさらに食べ、一晩ぐっすり寝て回復を図る訳だが・・・。


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■オフィシャル

主審:ダンレックス・タプダサン(比)

副審:
カール・ザッピア(豪)
ジル・ゴー(比)
サノング・アウムイム(タイ)

立会人(スーパーバイザー):安河内剛(日/JBC事務局長)


◎前日計量&計量後の



◎LIVE配信:【西田世界戦】LUSHBOMU vol.3 feat.3150FIGHT
ABEMA ボクシング 【公式】
https://www.youtube.com/watch?v=vzJyxCtRjhU


”King Ry”ならぬ”King Lie”? /語る言葉も付ける薬も無し・・・瓶ビールを煽って秤へ - D・ヘイニー vs R・ガルシア 直前プレビュー -

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■4月20日/バークレイズ・センター,ブルックリン N.Y./WBC世界S・ライト級タイトルマッチ12回戦
王者 デヴィン・ヘイニー(米) vs WBC7位 ライアン・ガルシア(米)



DEVIN HANEY VS. RYAN GARCIA PRESS CONFERENCE HIGHLIGHTS
2024/04/19 DAZN Boxing


両選手の懐に入る金額はともかく、「話題のカード」ではあっても、「リアルなビッグ・ファイト」と呼べるのかどうか、その点は率直に言って疑問・・・などと愚にもつかないあれこれについて「考えては止め」を繰り返していた。

がしかし、公開計量におけるガルシアの愚行により、試合内容に関する考察や結果に対する公正・公平性を含めて、すべてはぶち壊し。

米国内では、ボクシング専門誌(サイト)から3大ネットワークのスポーツ関連サイトを含め、この問題を「ガルシアのミス(調整)」として大きく報じられているが、果たしてこれは正しい捉え方と言えるのか。


ガルシアを擁するゴールデン・ボーイ・プロモーションズは、「ファイナル・プレス・カンファレンス(現地19日)での合意に従った」と居直り、会見でメインの仕切り役よろしく振舞っていた総帥オスカー・デラ・ホーヤも、いささかバツの悪そうな表情とは裏腹に強弁に打って出た。

これは会見の席上、論争がウェイトオーバーの発生に及んだ際、ガルシア自から「1ポンド超過したら50万ドルだ!」と言い放ち、立ち上がって上着をめくり、引き締まった腹部を見せ付けた一件を指す。

Ryan Garcia & Devin Haney 500k BET agreed at press conference for weight!
2024/04/19 Fight Hub


Devin Haney reacts to Ryan Garcia FIERY press conference! Says all the BS ANTICS WILL SHOW!
2024/04/19 Fight Hub
https://www.youtube.com/watch?v=FxpuhqaQTPw


あらためてお断りするまでもないと思うが、ガルシアはしっかり調整に取り組み、「ウェイトに問題は無い」と主張したのだと、おそらく大多数はそう認識したのではないか。

ところが、現実の計量では秤に乗る前に瓶入りの水分を煽り、3.2ポンド(約1.45キロ)もの超過が分かり会場は騒然となった。

ガルシアは一切悪びれることなく、開場に集まった取材記者とファンに向かって「クソくらえ!」と捨て台詞を浴びせる始末。


150万ドルと引き換えに、平然と3.2ポンドをオーバーする。そこには1ミリの正義も存在しない。

「(会見で)ヘイニーと交わした約束に従ったまでだ。ヤツら(実父ビルとヘイニー自身)が条件に不満気だったから、お望み通り増額してやったんだ!」

両陣営が受け取る報酬について、現時点で金額は明らかにされていない。興収の配分について、「55-45(パーセント)」と伝えられているだけである。

PPVのインセンティブはさらに王者側に不利で、申し込み件数が契約で定められた基準値に達した場合、2パーセントが支払われるとのことだが、これが本当ならマネージャー兼チーフとしてチームをまとめる実父ビルが、「フザけんな!」と文句を言いたくなる気持ちもわからんではない。


プロのメイン・イベンターが受け取る報酬の額は、集客力(ゲート)に比例する。本場アメリカのボクシング興行における不文律であり、チケットが売れないボクサーは、どれほど実力があったとしても、栄えある「PPVファイター」の列に並ぶことは許されない。

4月13日に更新されたリング誌のP4Pランクで、ヘイニーはジャーボンティ・ディヴィスとエロール・スペンスを抜き、7位にポジショニングされている。ディヴィスに完敗したガルシアは当然ランク外であり、おそらくトップ10入りの候補にも挙がっていない筈。

それでもいざ両者が戦うとなれば、報酬を巡る条件闘争の主導権はガルシアとGBPが握る。ガルシアもヘイニーもカリフォルニアの出身なのに、何故か東海岸の中心地ニューヨーク開催になったのは、交渉を任されたデラ・ホーヤの譲歩とも取れる。


観客動員を考慮すれば、カリフォルニア開催(例えばL.A.近郊のカーソンにあるディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク:最大2万7千人収容)が妥当な帰着になるが、米国最大規模のメキシコ系移民コミュニティを有するカリフォルニアでは、レフェリー&ジャッジを含む地の利は、メキシコ系のガルシアに大きく傾く。

そして両者の顔と名前なら、次なる候補は現代ボクシング興行のメッカたるラスベガス。しかし、巨大カジノ&ホテル群が林立するベガスはヘイニーの活動拠点であり、長らくMGMグランドを常打ち小屋にしたメイウェザーに象徴される、スピード&シャープネスに長けた守備的な黒人が、レフェリング&スコアリングで著しく優位に立つ。

「間を取って」という訳ではないだろうが、東部の新たな要所として存在感を増すブルックリンのバークレイズ・センター(19千人収容)に落ち着いたと思われる。


嘆かわしいことに、ガルシアには当日の再計量が義務付けされず、リバウンドの制限も科せられなかった模様。両陣営の合意に基づくとのことだが、試合を所管するニューヨーク州アスレチック・コミッション(以下AC)はそれでいいのか?。

全米各州のAC(もしくはボクシングとMMAを管轄する部局)には、階級別に試合を許可するウェイト制限を設けているところが多く、「どの階級なら何ポンドオーバーまで」という具合に、試合を許可する基準(罰則は別)を定めている。

おそらくN.Y.州にも同様の規定があると思うけれど、もはや調べる気すら失せた。ドーピング違反と違って、体重超過に対する明確な罰則(一定期間のサスペンド)を規定する州は例外的で、契約で定めるのが通例(何ポンドオーバーしたら幾ら=互いに前歴がない場合は敢えて定めない)。


「The Show Must Go On」

クィーンのヒット曲ではないが、大きな儲けが確実な興行は挙行あるのみ。プロボクサー(MMAの選手も)の健康管理に「厳しく煩い」と定評のあるN.Y.であろうと、経済最優先の原理原則には抗えない。


こちらもホヤホヤの騒動になるが、中谷潤人とともに、”ポスト井上尚弥”の本命と目される堤駿斗が、契約体重(フェザー級リミットの57.15キロ=126ポンド)を1.6キロ(約3.5ポンド)超過。規定通り、再計量まで2時間の猶予を与えられたが、50グラムしか減らすことができず、JBCから6ヶ月のサスペンドを申し渡された。

人気のランカーが毎月のようにリングに上がっていた昭和の昔とは違って、プロボクサーが年間にこなす試合数が激減した現在(修行中の4~8回戦でも年間2~3試合が当たり前)、「半年の資格停止」に罰則としての意味はゼロと表すべきだが、公式戦を所管するコミッションの役割は一応果たしている。

本番のリングでは、山中慎介との白熱した2試合とは別人のように老い衰えたアンセルモ・モレノ(38歳になった)を問題にせず、3ラウンドに2度のダウンを奪って楽勝。当然の帰結として、勝利者インタビューで堤は平身低頭の謝罪しか口にできず、後味の悪さだけがクローズアップされてしまう。


2月24日からおよそ1ヶ月に渡り、ラスベガス(イスマエル・サラスが開いたアカデミー/プロデビュー前にも面倒を見て貰った)で強化合宿に汗を流した堤は、最終日に高熱を出して寝込んだらしい。帰国してすぐに診療を受けると、武漢ウィルス感染が判明。

1週間の自主隔離(5類に移行後は非義務化)を経て練習を再開したものの、肺の痛みなどの後遺症が続き、予定のメニューをこなせず調整が大幅に遅れたという。

これが事実なら、志成ジムのマネージメントに重大な瑕疵があったと言わざるを得ない。今月の早い段階で中止(延期)にすべきだった。

モレノ陣営への保障に始まり、チケットの払い戻しやABEMAでの配信等々、ちゃぶ台返しが許されない状況だったと推察はするが、旧態前とした実父と叔父の庇護を嫌い、国内引退の道を選び一年発起して渡米した井岡一翔が、自ら興した新興ジムですら、廃れて久しい筈の「気合&根性論(昭和の常識)」を押し通す・・・。

「何とかなる」との希望的観測にすがったのだろうが、安易に過ぎた。


メンタル・ヘルス(うつ病など)に問題を抱えているとして、戦線離脱を宣言した過去を持つガルシアには、以前からその言動を不安視する声が多く聞きかれ、「ガルシアの奇行」は半ば恒例行事と化した感すら否めない。

キック・オフの段階から無益なトラッシュ・トークを繰り返した今回も同じで、開催を危ぶむ関係者と取材記者も少なくなかった。

もっとも、キャリアを左右する大きな挫折を味わったスターボクサーが、その敗北を機に心を病むケースは過去にもあり、ガルシアだけに限った話ではない。


マニー・パッキャオに壮絶な序盤のKO負けを喫したリッキー・ハットンは、アルコールへの依存だけでは済まず、コカインの常用にフケるようになり、事実上そのキャリアを終わらせることになった。

女性用の下着を身に付けた写真が出回り、オスカー・デラ・ホーヤが大きなスキャンダルに見舞われたのは、2007年の夏から秋にかけてのこと。同じ年の5月、PPVセールスの記録を更新(220万件超:当時)したフロイド・メイウェザー戦を落とした直後である。

さらに翌年の暮れ、大き過ぎる体格差故に非難と批判が殺到したパッキャオ戦で、メイウェザー戦とは比較にならないくらい防戦一方となり、ボコボコにされて自ら試合を放棄。引退を表明したデラ・ホーヤは、薬物とアルコールから抜け出せなくなった。

プロモーター業まで一手に引き受けざるを得なくなった右腕リチャード・シェーファー(スイスの超一流銀行家からの転身)は、ゴールデン・ボーイ・エンタープライゼスの多角経営を支えてきた最大の功労者だったが、デラ・ホーヤの放埓かつ自堕落な私生活に見切りを着け、壮大な造反へと動く。


先行きを心配するデラ・ホーヤとも口論を続けたガルシアは、ディヴィス戦後、3試合(1年余り)をともに戦ったジョー・グーセンを更迭。陣営はテキサスでスペンスやジャーメル・チャーロを王者に導いたトレーナー,デリク・ジェームズをチーフに迎えている。

新体制でのキャンプについて、「順調に行っている」と肯定的に語り続けたガルシア(上手く行っていないとブラフをかますのはかつての輪島功一ぐらいだろうが)は、10日に行われた公開練習で悪くない動きを披露した。

軽めのシャドウとミット打ちだけだが、お馴染みのL字ではなく、両方のガードを基本通りの高い位置にキープし、引き手の戻りも怠らない。公開練習でのいつもの光景と言えばその通りで、本番のリングでも同じようにやるとは限らない。

それでも、以前のような”手馴れた感”は後退して、真剣な印象を受ける。サンデーパンチの左フックに痛烈なカウンターを合わせられたディヴィス戦の失敗はもとより、タフで鳴らすオスカル・デュアルテに圧力負けする場面が多かった再起戦で、冷や汗ものだった右のオーバーハンドに対する甘いディフェンスへの改善の意図は感じられた。


受けて立つヘイニーも、ミットワークで相変わらずの切れ味を見せて好調をアピール。レジス・プログレイス戦での水際立ったパフォーマンスに自信と手応えを持ち、ガルシアのウェイト問題も意に返す様子は皆無。

「あいつが何ポンドだろうと関係ない。そもそもオレは触らせないから。違うか?」

「本音を言えば、オッズ通りの簡単な試合じゃない。でも、試合を見た誰もが”イージー・ワーク”だと口を揃える筈だ。プログレイスの時と同じさ。」


RYAN GARCIA OPEN WORKOUT LIVESTREAM | Haney vs. Garcia
2024/04/10 DAZN Boxing



我らがリナレスの挑戦を受け、第9ラウンドに左を貰って危うく倒れかけたヘイニーは、あられもない抱きつき戦術で時間稼ぎに終始。醜態を晒しはしたものの、2~4ポイント差の3-0判定をモノにした。

揉み合い上等の乱戦を不得手にするだけでなく、致命的な打たれ脆さと回復力の欠如を世界中のファンと関係者に知られたリナレスに密着戦を仕掛けて倒しにかかり、くだんの左で過去最大のピンチを招いたヘイニー親子は、KOへの色気を完全に捨て去り、リスクヘッジの徹底を金科玉条に据えたに違いない。

そしてその判断は、プログレイスを完封したことで揺ぎ無い確信へと変わった。1発のパワーとスピードにサイズまで兼ね備えたガルシアに対して、ディフェンス・ラインの堅持は最重要かつ最優先のテーマである。


ガルシアの動き出しに素早く反応して、常に半テンポ早くポジションを変える。前後の単純なステップではなく、左右も使って幻惑しながら、ガルシアのガードを開くタイミングを狙ってジャブとショートの右を刺し込み、直ちに安全圏へとその身を逃がす。

ライト級の暫定王座(WBC)を獲得したザウル・アブドゥラエフ戦(2019年9月)を最後に、KO(TKO)勝利は途絶えたまま。

これまですべて失敗に帰した数多の”メイウェザー・クローン”を押しのけ、真の後継者を争うシャクールを避けて(?)、いち早く140ポンドに上げたのもむべなるかな。


タフ・ガイ,デュアルテの圧力に後退を余儀なくされた前戦のガルシアには、ディヴィスに倒された心理的なダメージを拭い切れないシーンが確かに散見された。

イケイケの連打と攻勢がなかなか見られず、それでもロープ際の接近した攻防の最中、テンプルへの一撃(右)が効いて、デュアルテがたたらを踏む一瞬を逃さず、フィニッシュに持ち込んだのは流石。倒し屋としての嗅覚、生まれ持った強打&センスは健在。

それでもなお、オッズとファン,関係者が示す予想は圧倒的にヘイニー有利。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
ヘイニー:-650(約1.15倍)
ガルシア:+450(5.5倍)

<2>betway
ヘイニー:-800(1.125倍)
ガルシア:+500(6倍)

<3>ウィリアム・ヒル
ヘイニー:1/10(1.1倍)
ガルシア:6/1(7倍)
ドロー:25/1(26倍)

<4>Sky Sports
ヘイニー:2/13(約1.15倍)
ガルシア:6/1(倍)
ドロー:33/1(34倍)


”心の傷”が癒え切らず、不安定な精神状態が懸念されるガルシアでなくとも、ヘイニーの”タッチ&アウェイ”を崩すのは、どんなボクサーでも困難を極める。シャクールも然りである。

左でも右でも、1発まともにヘイニーの顎かテンプルに当たれば、展開と結果がどう転んでも不思議はない。ガルシアの決定力は、群雄割拠の135~140ポンドにおいて突出してはいるが、「触らせなきゃOK。だろ?」とウソぶくヘイニーが、12ラウンズを逃げ切る公算が大。


◎ヘイニー(25歳)/前日計量:140ポンド
戦績:31戦全勝(15KO)
アマ通算:130勝8敗
2013年ジュニア世界選手権(キエフ/ウクライナ)ベスト8(バンタム級)
2015年ユース全米選手権優勝(ライト級)
2014年ジュニア全米選手権優勝(バンタム級)
2013年ジュニア全米選手権準優勝(バンタム級)
身長:173センチ,リーチ:180センチ
右ボクサーファイター


◎ガルシア(25歳)/前日計量:143.2ポンド
元WBCライト級暫定(V0),元WBCライト級シルバー(V1)王者
戦績:25戦24勝(20KO)1敗
アマ通算:215勝15敗
2016年ユース(U19)全米選手権優勝(ライト級)
2015年ユース(U19)全米選手権ベスト8(ライト級)
2014年ジュニア(U17)全米選手権準優勝(フェザー級)
身長:センチ,リーチ:センチ
右ボクサーファイター


DEVIN HANEY VS. RYAN GARCIA WEIGH-IN HIGHLIGHTS
DAZN Boxing



BRAWL! Devin Haney vs Ryan Garcia ? Full Weigh in & HEATED Face Off
Fight Hub TV


ガルシアの愚かな振る舞いについて、意図的な超過であることは明々白々ではあるものの、試合が決まった時点から予定していた計画的なものなのか、ファイナル・プレッサーで火を噴いた言い合いに端を発した偶発的なものなのか、はたまた巷間伝えられる「精神面での問題」に起因する、いわゆる「奇行」の類なのか、真相はよくわかっていない。

「計画的な犯行」を唱える人たちは、前戦(オスカル・デュアルテに8回KO勝ち)の調整が143ポンド(契約ウェイト)だったことから、140ポンドまで絞って万全のコンディションを維持することに確信が持てず、デュアルテ戦と同じ重さで仕上げることを選択したのではないかと言う。

フィジカル・パワーで押され続けたデュアルテとは対照的に、逃げ足の速いヘイニーを追う展開が否が応でも想定される中、オーバーしたウェイトがガルシアの決定力に圧倒的な恩恵をもたらす。

しかも今回、当日の再計量とリバウンド制限は科されなかった。充分な水分補給と食事が許され、少なくとも肉体的には最善の状態でリング・インできる・・・。


一方、「偶発的なアクシデント」説では、勢いに任せて発した”1ポンド=50万ドル”だが、この際現実にしてやれと開き直った。リミットを作る準備はしっかり出来ていたにもかかわらず、ファイナル・プレッサーを終えた後、予定の食事と水分補給を急遽変更。

興奮を自制できず、カっとなって売り言葉に買い言葉を止められないのは、やはり不安定な精神状態の影響を否定できないが、会見の後、まずまず満足が行くボリュームを食べて呑み、経験済みのデュアルテ戦と同じ143ポンドに合わせた・・・。


勿論、「単純なミス」だと考える人たちも多いだろう。キャンプに入ったのはいいが、メンタル・ヘルスが障害となり、トレーニングに集中することが難しく、結果的にウェイトコントロールに支障をきたす。

ありふれた分かり易いシナリオではあるけれど、その分説得力があると言えなくもない。いずれにしろ、国際的な規模で多くのファンの耳目を集めるタイトルマッチで、3.2ポンドものオーバーは醜態以外のなにものでもなく、一切のエクスキューズと同情を差し挟む余地無し。

秤に乗る直前、ラッパ呑みしていた飲み物について、ガルシアは「炭酸の入ったリンゴ・ジュース(アルコールではない)」だと、お得意のSNSを通じて言い訳したらしい。

しかし、傍で見ていたアリエル・ヘルワニ(中東に出自を持つカナダ人/HBOで修行した後MMAの司会&コメンテーターとして一家を成す)が「ビールだった」と証言(?)した。


「アン・プロフェッショナル(プロにあるまじき行為)」

感想を聞かれたヘイニーは、常套句を用いて返答した。仰る通り。一言一句付け足すことはない。


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■リング・オフィシャル:未発表


”El Venado(イカれたヤツ)”に挑む”大和のサラリーマン” - L・A・ロペス vs 阿部麗也 プレビュー -

カテゴリ:
■3月2日/ターニング・ストーン・リゾート&カジノ,N.Y.州ヴェローナ/IBF世界フェザー級タイトルマッチ12回戦
王者 ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ) vs IBF1位 阿部麗也(日/KG大和)



昨年4月、37歳になったキコ・マルティネス(スペイン)を3-0の大差判定に下し、IBFの指名挑戦権をモノにした痩躯のサウスポーが、ようやくタイトルマッチの舞台に辿り着いた。

福島県出身の阿部は、県立会津工業高校でボクシングを始めたアマ経験者。ところが、戦績は15戦7勝8敗の負け越し。将来この競技で身を立てようと、素直に信じられる成績とは言いづらい。

ボクシングに憧れを抱いたのはずっと早く、「プロボクサーになりたい」と初めて思ったのは小学生の頃だったという。

磐梯山や猪苗代湖、五色沼などで知られる風光明媚な耶麻(まや)郡に生まれ育ち、自然環境は抜群だったが、ボクシングジムも無ければ指導してくれる経験者も皆無。漫画「スラムダンク」が大好きで、その影響で中学時代はバスケットボール部に入部。かなり打ち込んだらしい。

しかも、陸上部との掛け持ちで砲丸投げもやっていたというから、それだけの運動神経に恵まれ、顧問の先生や周囲からも認められていたのだろう。そうした阿部にとって、高校でのボクシング生活は、疑いようのない「青春の挫折」であった。


日々の練習は厳しく、インターハイや国体、高校選抜等の大会(予選)に備えた合宿について、「本気で逃げ出そうと思うくらい辛かった」と、数少ないインタビューの中で答えている。

「これだけ必死に練習しているのに、大会になると全然勝てない。」

あらためてお断りするまでもないが、阿部は今をときめく井上尚弥と同世代である。

尚弥&拓真、田中亮明&恒成、藤田和典&健児、堤駿斗(はやと)&麗斗(れいと)等々、幼い頃から父に鍛え込まれた「親子鷹」の数が格段に増えて、U15全国大会(プロ主催/2007年発足)と、それに続くUJ(アンダージュニア)全国大会の開催により、長らく途絶えていた小学~中学生を対象とした育成プログラムが、不十分な形であれ復活した。

目標とする大会の有無、しっかりしたステータスを有する競争と明確な結果がもたらす影響は大きい。例えば重岡優大&銀次郎兄弟のように、空手や他競技からの転向を幾ばくかでも促進したと思われる。それ以外にも、近隣にボクシングジムがある場合、中学入学を待って入門する子供たちも、多少なりとも増加したのではないか。


こうした経歴を持つ、いわば格闘技経験者である16~18歳と、高校に進んでから本格的な練習を始めた同年齢とでは、競技者としての能力に小さからぬ差が開いたとしても止むを得ない。

中学時代にバスケットと投擲をやっていた阿部も、基礎的な体力はともかく、ボクシングの錬度で敵わなかった。例えば中学で毎週1~2回でもジムに通っていた経験は、結構なアドバンテージになり得る。

ボクシング部を持つ高校の数は限られる。生家から通える地域に会津工高があったのは幸運には違いないけれど、指導者の数と質を含めた首都圏・大都市部と地方の格差も、野球やサッカー,陸上,柔道等の人気競技とは比較にならない。

こうして阿部は、卒業と同時に神奈川県大和市に移り、現在も勤務を続ける自動車部品メーカーに就職する訳だが、7勝8敗の負け越しにもかかわらず、大学からスカウトを受けたというから、キラリと光る潜在能力は発揮できていたようだ。


KG大和ジムの門を叩いたのは、社会に出て2年目。プロ志望ではなく、フィットネス会員だったが、2007年にジムを開いた片渕会長によると、「スパーリングをやらせたら、日本ランカーとまあまあやれてしまう。上を目指せるんじゃないかと感じた」とのこと。

片渕会長に薦められるまま、19歳の阿部は週1回のジム通いを週6回に増やし、1年かけてプロテストに合格。デビュー2戦目で早くも初黒星を味わうものの、翌2014年の新人王戦で見事全日本のトップに。

これで勢いに乗るかと思いきや、初の6回戦でまたもや判定負け。プロの船出は順風満帆とは行かなかったが、この後、11連勝をマーク。溜田剛士(ヨネクラ)と細野悟(大橋)を破った金星も含まれる。


そして2019年5月、6年目にして実現した日本タイトル初挑戦は、王者の源大輝(ワタナベ)を追い込むも、無念のスプリット・ドロー。再戦を望むも源は階級アップを表明して返上。

1位になった阿部と、2位佐川遼(三迫)の決定戦が承認され、同年9月に2度目のチャンスを得たが、0-3のユナニマウス・ディシジョンで敗北。僅少差のポイントとは裏腹に、ファンと関係者の評価は阿部の完敗だった。

念願のタイトルマッチを迎えたのに、2試合続けて勝ち切れなかった。ようやくスポンサーが付き、ボクシング1本に専念すべきとの話になる。サラリーマンとの二束の草鞋に限界を感じ、大手ジムへの移籍も考えたというが、「いい話が来たから飛びつくのか?。本当にそれでいいのか?」と、父の叱咤を受け翻意。


正式に申し出ていた退職の意向を撤回し、「サラリーマン・ボクサー」を売りにするようになった阿部は、武漢ウィルス禍の間も1年を超えるブランクを1回だけに抑え、プロ生活8年目にして円熟の時期を迎える。

3連勝で復調すると、2022年5月、3度目のチャンスがやって来た。TV番組でも採り上げられ、話題になった丸田陽七太(森岡)への挑戦が決定。日本タイトルだけでなく、WBOのアジア・パシフィック王座も懸けられ、阿部が不利の予想を覆して載冠。

◎丸田陽七太戦:12回3-0判定勝ち
2022年5月15日/墨田区総合体育館


前後左右に細かく足を刻み、相手の前進を捌きながら、長いワンツーを軸にしたコンビネーションでポイントメイクするスタイルに、安定感と力強さが加わり、国内フェザー級の顔と呼べる存在になった。


井上尚弥、伊藤雅雪の2王者とのスパーリングで、自身の成長に手応えを感じていたとのことだが、昨年4月8日、有明アリーナで行われた拳四朗 vs オラスクアガ,井上拓真 vs リボリオ・ソリス戦のアンダーカードで、キコ・マルティネスと対戦。

愚直に真っ直ぐ前進して来る小柄なマルティネスに、阿部のアウトボクシングが面白いようにハマる。この試合に備えてさらなる磨きをかけた左ストレートだけでなく、ワンツーと左アッパーで変化を付けたコンビネーションも、歴戦の元王者を再三ヒット。

大阪城ホールで長谷川穂積を地獄に落としたのは、既に8年前の出来事で、直後にカール・フランプトンに敗れてベルトを失い、スコット・クィッグのWBA王座にアタックして2回TKO負け。


フェザー級に転じてレオ・サンタ・クルスにも5回TKO負けを喫し、完全に終わったものと思われていたが、ジョシュ・ウォーリントンと繰り広げた白熱の好勝負(判定負け)が評判となり、ゲイリー・ラッセル・Jr.のWBC王座に挑戦するも、左の瞼をカットしてストップ負け。

それでも諦めずに戦い続けたマルティネスは、2021年11月、フェザー級で3度目のチャンスを掴み、もはや第二のホームと呼んでもいい英国でキッド・ギャラハドに6回TKO勝ち。超特大の大番狂わせで2階級制覇に成功した。

この王座も初防衛戦で雪辱を期したウォーリントンに奪われたが、マッチルームが押すジョーダン・ジルを4回TKOに屠り、豪腕健在を示していた。


丸田に切り裂かれた右の瞼を再びカットするなど、阿部も少なからず傷を負うことになったが、歴戦の豪打者を多くのラウンドで空転させ、顔面を破壊しての完勝は、想像を超える戦果と表していい。

◎K・マルティネス戦:12回3-0判定勝ち
2023年4月8日/有明アリーナ
https://www.youtube.com/watch?v=IjcHIlaSoik

マルティネス戦から開いた1年近いブランクは、2試合連続のカットによる右瞼の古傷化を防ぐ為に必要な、長めの休養だったと捉えることもできる。

メイン・イベンターになって以降、現代のボクサーとしてはごく平均的な年間2試合ペースに落ち着いた阿部に、試合勘の鈍化や調整ミスといった懸念は不要と考えたい。


受けて立つ王者ロペスは、アメリカと国境を接するバハ・カリフォルニア州第二の都市メヒカリ出身。年齢は阿部と同じ30歳で、プロデビューは阿部より2年遅い2015年の冬だが、修行時代の4年間は矢継ぎ早に試合をこなしている。

レコードに残る2度の敗戦は、10回戦に進んだ2018年と翌2019年に喫したもので、いずれもローカル・タイトルが懸かっていた。2敗目のルーベン・ビリャは、カリフォルニア出身のトップ・アマで、2020年10月にフェザー級時代のエマニュエル・ナバレッテに挑戦して中差の0-3判定負け。

ロペスは同年2月に続く2度目の米本土参戦だったが、善戦及ばずユナニマウス・ディシジョンを失い、地元のローカル・ファイトでやり直し。2020年7月、トップランクの主催興行に呼ばれて、カリフォルニアの中堅アンディ・ヴェンセスに2-1の10回判定で競り勝つ。

在米ファンの注目を集め出したのは、2021年の秋以降。まずは9月10日のガブリエル・フローレス戦。アリゾナ州ツーソンで行われたトップランクの主催興行で、18連勝(7KO)中のフローレスをフルマークの3-0判定に下すと、12月3日には渡英してイングランド期待のアイザック・ローウェ(対戦当時無敗)に7回TKO勝ち。


この連勝でトップランクとの複数年契約を手にしたロペスは、主戦場をアメリカに移してさらに連勝を重ね、2022年12月、キコ・マルティネスを追い落としたジョシュ・ウォーリントンとの白兵戦をしのぎ、敵地で僅少差の0-2判定勝ちを収め、IBF王座奪取に成功。

昨年5月の初防衛戦も、アイルランドへ飛んでマイケル・コンラン(ロンドン五輪フライ級銅メダル)の挑戦を5回TKOで退けている。

英国を代表する2大プロモーター,エディ・ハーンとフランク・ウォーレンの興行を立て続けに潜り抜けたロペスは、昨年9月にカリフォルニアの元プロスペクト,ジョエト・ゴンサレスに3-0判定勝ち。

ジョエトはシャクール・スティーブンソンとナバレッテに挑戦して敵わず、2022年7月にはアイザック・ドグボェにも敗れてしまい、新人時代の輝きは失われてしまったが、堅いガードでロペスの突破を再三阻み、フルラウンズを粘って世界ランクの地力を証明した。


セオリーに囚われない自由かつトリッキーなムーヴ、距離を取って離れようとする相手に、ジャンプしながら左右のパンチもろとも飛び込む様が、往年の悪魔王子を連想させることから、”メキシコの(ナジーム)ハメド”と呼ばれたりもする。

ロペスの特徴が最も良く発揮されているのは、以下にご紹介するジェイソン・バルデス戦ではないかと思う。

◎J・バルデス戦:2回KO勝ち
2022年8月20日/パチャンガ・アリーナ,サンディエゴ



ルーズガードのまま左右フックを強振する気の強さが災いして、ビッグショットを食ってダウン寸前に陥る隙の多さも含めての評価だが、個人的にはオーバー・レイテッドと言わざるを得ない。

公称163センチの小柄な体躯をものともせず、修行時代には130ポンド超の調整を複数回経験するなど、フィジカルの強度とパンチ力を武器に戦うロペスだが、ご本家最大の持ち味だった柔軟性と卓越した全身のバネは望むべくもなく、世界タイトルを懸けた3試合は、バルデス戦のように自由にやれなかった。

◎ロペスの世界戦3試合
<1>J・ゴンサレス戦:12回3-0判定勝ち
2023年9月15日/アメリカン・バンク・センター,テキサス州コーパスクリスティ
https://www.youtube.com/watch?v=3qkLZPFeLN8

<2>M・コンラン戦:5回TKO勝ち
2023年5月27日/SSE(オデッセイ)アリーナ, ベルファスト(英/アイルランド)
https://www.youtube.com/watch?v=2hUxcEsPAkg

<3>J・ウォーリントン戦:12回2-0判定勝ち
2022年12月10日/ファースト・ダイレクト・アリーナ, リーズ(英/イングランド)
https://www.youtube.com/watch?v=VYInWEwV9P0


王座に就いたウォーリントン戦は、第11ラウンドに食った強烈な左フックが効いて、クリンチ&ホールドも辞さない逃げ切りでKOを免れている。12ラウンド終了のゴングと同時に、ウォーリントンが素早く右手を突き上げ勝利を誇示していたが、地の利を考えれば防衛成功でもおかしくなかったと思う。

ロペスとのリマッチがスムーズに運ばず、ターゲットをリー・ウッド(WBA王者)に移したウォーリントンは、昨年10月シェフィールド・アリーナで今が盛りのウッドと激突。第4ラウンドに王者の右瞼をカットして奮戦するも、第7ラウンドにラビットパンチで減点され、ダウンを喫してKO負け。熱望していた「ロペス2」も胡散無償。


上体を立てたまま、強引に力任せの強打を振り回すロペスは、多くのファンと関係者が指摘する通りディフェンスに穴が多い。相手のスタンス(左右)にかかわらず、右から入って左を返す逆ワンツーをすかされ、左フックを浴びる場面も散見される。

阿部も当然カウンターを狙って行くだろうが、ロペス陣営はフィジカルの弱いコンランの再現を目論んでいるに違いない。

ルーズガードは阿部も同じで、キコ・マルティネスを翻弄したスムーズな3~4連打は、楽に構えたガード(脱力)の効果が大きく、ジョエトのように高い位置に両腕をキープしながら、肘を内側に絞ってガッチリ防御を固めると、不用意な被弾を防ぐことはできるが、手数が減って阿部の良さも消えかねない。

動き出し(立会い)に変化が無く、同じテンポとリズムで真っ直ぐ前に出てくるマルティネスと違って、予測しづらいポジションと角度から、おかしなテンポで飛び出してくるロペスを自由にさせないことが何よりも大事。

とりわけ立ち上がりの2~3ラウンズ、ガードの上からでも左の強打を叩き込み、ロペスを下がらせ、簡単に飛び込めない雰囲気を作ることができるかどうか。先にロペスの強振を貰うと、そのまま一気に終わる可能性も充分。

マルティネス戦の第2ラウンド、歴戦のスパニッシュが放つ左アッパーで顎を痛打され、腰を落としかけた場面を、ロペス陣営は「これだ!」と膝を打ちながら見つめていたのでは・・・。


前評判は大差でロペスを支持。勧進元のトップランクは、事実上のメインイベントになる同じ階級のWBA王座決定戦(オタベク・コルマトフ vs レイモンド・フォード)の勝者と、ロペスとの統一戦を計画中。

ビッグアップセットで阿部の手が挙がれば、統一戦はもとより、その先には井上尚弥との日本人対決も見えて・・・来る?。



◎ロペス(30歳)/前日計量:125.3ポンド
IBFフェザー級王者(V2)
戦績:31戦29勝(16KO)2敗
アマ戦績:6勝4敗
身長:163センチ,リーチ:169センチ
好戦的な右ボクサーファイター


◎阿部(30歳)/前日計量:125.8ポンド
前日本フェザー級(V1/返上),元WBOアジア・パシフィック同級(V1/返上)王者
2014年度全日本新人王(フェザー級)
戦績:29戦25勝(10KO)3敗1分けNC
アマ戦績:15戦7勝8敗
福島県立会津工業高
身長:172センチ,リーチ:175センチ
左ボクサー


◎前日計量




両国3大決戦 プレビュー 3  - ”4団体統一を公言・中谷戦をも見据えた拓真の勝算は・・・ -

カテゴリ:
■2月24日/両国国技館/WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 井上拓真(日/大橋) vs WBA位/前IBF J・バンタム級王者 ジェルウィン・アンカハス(比)




「兄(尚弥)が返上したバンタム級のベルトを、もう一度自分が集める。」

歴戦の雄,リボリオ・ソリスを3-0の判定に下してWBA王座に就いた拓真は、今後の目標についてはっきり言い切った。

半ば無理やりに自らを鼓舞しているようにも見えたし、本心からそれを望んでいるのかどうか、今1つ釈然としない印象も残ったけれど、他に自分自身を納得させ得るチャレンジが見当たらない。

兄尚弥との実績の差は、もはや埋めようがないほど乖離してしまった。アンカハス戦に向けた会見やインタビューの中で、「目標を見失いかけた」と本音を吐露することも・・・。

尚弥への評価と賞賛が高まる一方で、まばゆい光の傍らに追いやられた影のように、地味で目立たない存在へと追いやられてしまう。それこそが勝負の世界の常,容赦呵責のない現実とは言え、簡単に言葉で表し切れない相克があったに違いない。


桁外れの爆発力で当たるを幸い倒しまくる尚弥に対して、拓真最大のストロング・ポイントは、スピード&タイミング。

「相手に何もさせない。触らせないボクシング」こそ拓真の本領だと、父の真吾トレーナーはこれまで何度もそう繰り返してきたが、愚直なと言いたくなるほど不器用な打ち合いにのめり込み、負わずに済んだ筈の傷とダメージを負う。

WBC暫定王座を獲得した4年前のペッチ・CPフレッシュマート戦でも、打ち終わりに棒立ちになる悪い癖を面白いように突かれ、無用な被弾を続けて苦しんだ。

正規王者ナルディーヌ・ウバーリ(仏)とのWBC内統一戦では、「経験が違う。拓真は良いボクサーだが、私のような万能型とは初めての対戦になる」と、自信満々に語るウバーリの言葉通り、ダウンを奪われ一敗地に塗れている。


その後は、栗原慶太(一力)からOPBF王座を奪うと、122ポンドに上げて和氣慎吾(FLARE山上),古橋岳也(川崎新田)の2人を破るも、尚弥のS・バンタム進出に伴いバンタムに出戻り。

フィリピンの中堅選手を8回TKOに屠り、およそ6年半ぶりとなる手応えに思わず吼えた。そして、4本のベルトを巻いた尚弥が予定通り返上。ソリスとの王座決定戦出場のチャンスをモノにする。

ソリス戦の拓真は、ペッチ戦,ウバーリ戦とは違って、打ち終わりの処理をサボらず頭の位置を変え、ソリスの攻撃を足で外しながら、「打たせずに打つ」スタイルに撤していた。肝心要の「打つ」方は、精度に今一歩の課題を残しはしたものの、綺麗な顔のまま12ラウンズを戦い終えることができたのは大きな収穫と表していい。


直前のオッズは、何とも微妙な数字になった。本来ならば、昨年11月15日に開催される予定だったが、延期の原因となった拓真の負傷(肋骨骨折)も無関係ではないと思う。万全な状態に回復しているというが、アンカハスは当然そこを狙ってくる。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
拓真:-225(約1.44倍)
アンカハス:+200(3倍)

<2>betway
拓真:-225(約1.44倍)
アンカハス:+188(2.88倍)

<3>ウィリアム・ヒル
拓真:4/9(約1.44倍)
アンカハス:7/4(2.75倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
拓真:1/2(1.5倍)
アンカハス:9/4(3.25倍)
ドロー:22/1(23倍)


115ポンドで安定政権を築いたアンカハスは、フェルナンド・マルティネス(亜)に連敗して階級アップを決断。以前からフィジカルの強さを嫌う傾向が顕著で、力で押されることを苦手にする。

技術&神経戦に相性の良さを発揮するだけに、拓真を「持って来いの相手」と見立ている可能性が高く、会見で「勝算は100%」と語る大橋会長に対して、MPプロモーションズの代表を務めるショーン・ギボンズが「110%勝つ」と胸を張ったのは、前景気を煽るリップサービスでもなければ空元気でもない。


アンカハスをアウトボックスするのは、骨の折れる仕事になる。その為に最も重要なピースは、ジャブの精度&タイミング。これが向上していないと、アンカハスのプレスがかかり易くなり、見栄えの良くない時間帯が増えてしまう。

ソリス戦の展開も、見る人によっては「押し負けた」「地の利を得ての逃げ切り勝ち」と言われてしまいかねない。

サウスポー対策にも抜かりはないと信じるが、とにもかくにも足を止めないこと。そして正確かつコンパクトなジャブを絶やさないで。


◎【ダイジェスト版】2.24 LIVE BOXING 7 スペシャルコンテンツ | プライムビデオ
2024/02/10





◎拓真(27歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
現WBAバンタム級王者(V0),元WBCバンタム級暫定王者(V0),前日本S・バンタム級(V0),WBOアジア・パシフィック S・バンタム級(V1),OPBFバンタム級(V0), 元OPBF S・フライ級(V2)王者
戦績:18戦17勝(4KO)1敗
アマ通算:57戦52勝(14RSC)5敗/綾瀬西高校
キッズボクシング(小学高学年~中学)
戦績:15戦14勝1敗
2012年インターハイ準優勝(L・フライ級)
2011年ジュニア世界選手権ベスト16(L・フライ級/アスタナ,カザフスタン)
2011年高校選抜優勝(L・フライ級)/ジュニアオリンピックを兼ねる
2011年国体(山口県)準優勝(L・フライ級)
2011年インターハイ優勝(ピン級)
※中京高時代の田中恒成(現WBO J・フライ級王者/畑中)とは、5度対戦して2勝3敗。
”スーパー高校生”として大きな注目を集めたライバル同士。
身長:164.2センチ,リーチ:163センチ
※ウバーリ戦の予備検診データ
脈拍:51/分
血圧:142/84
体温:36.0℃
※計量後の検診
右ボクサーファイター


◎アンカハス(32歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
前IBF J・バンタム級王者(V9)
戦績:39戦34勝(23KO)3敗2分け
身長:168センチ,リーチ:169センチ
脈拍:98/min
血圧:100/71 Hgmm
体温:35.9℃
※計量後の検診
左ボクサーファイター

◎前日計量


◎「何もさせない」



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■オフィシャル

主審:マーク・ネルソン(米/ミネソタ州)

副審:
ルイージ・ボスカレッリ(伊)
アレックス・レヴィン(米/フロリダ州)
キム・ビュンム(韓)

立会人(スーパーバイザー):ウォン・キム(韓)




両国3大決戦 プレビュー 2  - ”3階級制覇の先に見えるバンタム級統一路線・・・中谷 vs 拓真の行方やいかに -

カテゴリ:
■2月24日/両国国技/WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ) vs WBC1位/2階級制覇王者 中谷潤人(日/M.T)




昨年9月のS・フライ級ラスト・マッチから5ヶ月。中谷のバンタム級初陣は、大番狂わせの3-0判定で黄昏のドネアを破り、緑のベルトを手中にしたサンティアゴへのアタック。

アルヒ・コルテス戦のプレビューで触れた減量苦は、118ポンドに上げても劇的な改善には至っていない様子だが、土気色でまるで精気が感じられなかった前回に比べれば、まだ人間らしい顔色をしている。

※過去記事:戦慄の左ストレートは火を噴くか? - 中谷潤人 vs A・コルテス 直前ショート・プレビュー -
2023年9月17日
https://keisbox.online/archives/22847676.html


心配していた通り、中谷の仕上がりは万全とは言えず、実力差が明らかなアルヒ・コルテスにかなり押し込まれていた。公称159センチのサンティアゴは、同じく163センチのコルテスよりさらに小さい。

それでも、老いたりとは言え160センチ台後半のドネアに力負けせず、最後までガス欠することもなく、12ラウンズを動き続けてユナニマウス・ディシジョンをもぎ取っている。

※過去記事:ドネアが3度目の載冠へ /小兵のメキシカンは叩き上げの兵(つわもの) - ドネア vs サンティアゴ ショートプレビュー -
2023年7月30日
https://keisbox.online/archives/22106755.html


そして、13センチに及ぶ身長差を武器に変える術を、サンティアゴはそれなりに身に付けており、低い態勢で懐に潜り込んでくるところを十八番のショートアッパーで迎え撃とうとガードが開いたところへ、下から打ち上げるストレートやフックで狙われると怖い。

中谷のことだから、積極的に自分から距離を潰して、アッパーを軸にしたコンビネーションで崩しにかかりそうだが、ロングの左を効かせてからで充分。

ミドル級に上げた途端、打たれ脆さが露になったトーマス・ハーンズのように、痩身のパンチャーが一旦崩れ出すと手の施しようがなくなる。むしろここは、打ち下ろしのストレートでしっかり捉えたいし、その為には、ロングジャブ&ステップで距離をキープする時間も重要。

密着しないと勝負にならないサンティアゴを突き放して焦らしつつ、長めのアッパーを真ん中から打ち抜くなど、メキシコ陣営の想定にない工夫が必要になるかもしれない。

例え僅かであったとしても、3ポンドがもたらす調整末期の余裕のお陰で、コルテス戦より上向くであろう仕上がり状態が、増量の影響+サンティアゴのしつこさを当たり前に超えていれば、ここまであれこれ考えることもないと思うが・・・。


直前のオッズは、概ね予想通りのマージンで着地。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
サンティアゴ:+500(6倍)
中谷:-700(約1.14倍)

<2>betway
サンティアゴ:+500(6倍)
中谷:-800(1.125倍)

<3>ウィリアム・ヒル
サンティアゴ:9/2(5.5倍)
中谷:1/6(約1.17倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
サンティアゴ:6/1(7倍)
中谷:1/6(約1.17倍)
ドロー:40/1(41倍)


◎【ダイジェスト版】2.24 LIVE BOXING 7 スペシャルコンテンツ | プライムビデオ
2024/02/10


◎「ターニングポイントになる試合」



開始間もない時間帯は、じっくり落ち着いて慎重に。サンティアゴの動きと当たりに気をつけながら、けっして打ち急がず、ジャブから入る基本&細かく丁寧なステップの励行を。


◎サンティアゴ(27歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
戦績:36戦28勝(14KO)3敗5分け
身長:159センチ,リーチ:166センチ
血圧:127/75
脈拍:118/分
体温:36.3℃
※計量時の測定
好戦的な右ボクサーファイター

◎中谷(25歳)/前日計量:117.5ポンド(53.3キロ)
前WBO J・バンタム級王者(V1/返上),前WBOフライ級(V2/返上),元日本フライ級(V0/返上),元日本フライ級ユース(V0/返上)王者
2016年度全日本新人王(フライ級/東日本新人王・MVP)
戦績:26戦全勝(19KO)
アマ戦績:14勝2敗
身長:172センチ,リーチ:170センチ
脈拍:81/分
血圧:106/70
体温:36.4℃
※計量時の測定
左ボクサーパンチャー

◎前日計量


◎Inoue, Nakatani, & the Japan Card Make Weight | FULL WEIGH-IN
Top Rank Boxing



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■オフィシャル

主審:ローレンス・コール(米/テキサス州)

副審:
アラン・クレブス(米/ワシントン州)
フェルナンド・バルボサ(米/フロリダ州)
ジョエル・スコービー(カナダ)

立会人(スーパーバイザー):ミゲル・パブロ(スペイン/WBC大使)



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