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2戦連続の巨人退治 - R・ラミレス vs R・エスピノサ ショート・プレビュー -

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■12月9日/C・F・ドッジシティ・センター,フロリダ州 ペンブロークパインズ/WBO世界フェザー級タイトルマッチ12回戦
王者 ロベイシー・ラミレス(キューバ) vs WBO10位 ラファエル・エスピノサ(メキシコ)





※フル映像:ファイナル・プレス・カンファレンス
https://www.youtube.com/watch?v=mtmzr78PYa4


井上尚弥 vs スティーブン・フルトン戦のセミとして初来日を果たし、清水聡を5ラウンド途中のストップで引退に追い込んでから5ヶ月。2度目の防衛戦に迎えたチャレンジャーは、185センチのタッパに恵まれた無敗のメキシカン。

大差の3-0判定でWBOのベルトを奪取した4月のアイザック・ドグボェ(ガーナ)戦を含め、2年連続の年間3試合ということになる。


「ラミレスなら(尚弥は)勝てると思う。」

試合後のインタビューでリアル・モンスターの今後について聞かれた大橋会長が、「あれなら問題ない・・・」とのニュアンスを漂わせながら、井上自身が否定的(フルトン戦直後まで)だったフェザー級進出に言及。

そして、解説席に陣取った清水の戦友,村田諒太も、「後半まで粘ればわからない」と繰り返し指摘していたが、清水戦のラミレスはけっして褒められた仕上がり&出来ではなかった。


これも村田が再三言っていたことだが、ラミレスは早々と息が上がり出してしまい、コンディションが万全でないのは一目瞭然。

アマチュア時代から欧州を始めとした海外遠征を数多く経験しており、ほぼ2週間前(7月12日/試合は25日)の羽田到着だったことを考慮しても、時差の影響は考えづらい。

プロ入り当初からコンビを組むイスマエル・サラス(現在はラスベガスに拠点を置く)の下で追い込みのキャンプを敢行。18日(来日して6日目)に大橋ジムで行われた公開練習での動きに特段の問題は感じられず、身体もしっかり絞れていた。


世界チャンピオンでさえ、防衛戦の合間にリミット+1~3ポンド程度の契約ウェイトで頻繁にノンタイトルをこなしていた20世紀のプロボクシングでは、2~3ヶ月のスパンが常識だったし、世界戦(15ラウンド制)の本番1ヶ月前に10回戦を組むこともある。

ドグボェ戦(4月1日/オクラホマ州タルサ)から4ヶ月近く開いていたものの、年間2試合が当たり前になってしまった現在、休養も含めた準備期間が十分ではなかったのかもしれない。

大きくてスピードに欠ける上にディフェンスも甘い清水を映像で確認した時点で、「普通にやっていればOK。何の問題もない」と判断していたとしても不思議はなく、「100%に仕上げるまでもない」と見ていたフシも否定はできないけれども。


公称180センチの清水を5センチも上回る規格外の長身を売りにするエスピノサは、メキシコ国内におけるボクシングの要所の1つで、カネロのホームタウンとしても知られるグァダラハラの出身。

2013年2月デビューの10年選手で、無傷の21連勝(18KO)で台頭中(?)と言う訳だが、レコードに名のある相手は皆無。2018年7月から2020年6月まで2年近いブランクを作っているが、無名故に詳細なインタビューは行われておらず理由はわからない。

メキシカンの手厚いバックアップには定評のあるWBCでもランキングに名前はなく、今年9月に突如WBOのランク入り(11位)を果たすも、明確な根拠となる戦果はなく、ラミレスのキャリアを差配するトップランクの政治力と申し上げるのみ。


従って直前のオッズもご覧の通り。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
R・ラミレス:-1200(約1.08倍)
R・エスピノサ:+650(7.5倍)

<2>betway
R・ラミレス:-1099(約1.09倍)
R・エスピノサ:+600(7倍)

<3>ウィリアム・ヒル
R・ラミレス:1/12(約1.08倍)
R・エスピノサ:11/2(6.5倍)
ドロー:25/1(26倍)

<4>Sky Sports
R・ラミレス:1/20(1.05倍)
R・エスピノサ:6/1(7倍)
ドロー:33/1(34倍)


デビュー戦をしくじった大失態の影響が尾を引いているのだろうか、ボブ・アラムは五輪連覇の輝かしい実績を持つキューバ人のキャリアメイクについて、いささか慎重に過ぎるきらいがある。

ファンマ・ロペス(懐かしい)からオルランド・サリド,マイキー・ガルシアを経てロマチェンコへと渡り、さらにオスカル・バルデス,シャクール・スティーブンソン,エマニュエル・ナバレッテへと引き継がれたWBOのフェザー級は、10年以上の長きに渡ってトップランクの支配下にあった。

ロマチェンコ以降の王者たちは、「階級アップによる返上→決定戦」,すなわちベルトの禅譲を繰り返しており、決定戦の相手は通常勝利が見込めるアンダードッグをあてがう。そしてラミレスも例外では有り得ない。


先輩王者たちも安全確実にベルトを巻き、防衛戦では相応の実力者を迎えているが、J・フェザー級で一度は頂点に立ったドグボェは、バルデス,シャクール,ナバレッテの3人に用意した選手たちよりは危険だった為か、ラミレスには「二桁台の大柄な下位ランカー」を連続で調達。

リスク回避がミエミエのマッチメイクに関して、「時間の浪費」「才能の無駄使い」等々の批判的な意見も散見される。

注目度が上昇中のIBF王者ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)もトップランクが保有しており、入札になったWBAの次期王座決定戦(S・フェザー級への増量を表明したリー・ウッドが返上)をトップランクが落札。


東海岸の期待を集めるWBA2位のレイモンド・フォード(24歳/14勝7KO1分け)は、エディ・ハーン率いるマッチルームUSA傘下。対する1位オタベク・ホルマトフ(コルマトフ/ウズベキスタン)は、ジュニアとユースで華々しい実績を持つサウスポーのエリート・アマ。

2021年に渡米。フロリダで活動のベースを築きながら、11連勝(10KO)の快進撃であっという間に王者候補の列に並んだプロスペクトの1人。今年3月に渡英してトーマス・パトリック・ウォード(29歳/33勝5KO1分け)を5回で粉砕。WBAの指名挑戦権を得た。

エリミネーターを直接手掛けたのは、フィル・ジェフリーズというイングランドのローカル・プロモーターで、ウォードを保有している。エディ・ハーンだけでなく、在米大手プロモーションとの契約には漕ぎ着けていない模様。


来るべき井上尚弥の5階級制覇(+3階級での4団体統一)を睨むアラムが、ホルマトフをハンドリングする興行会社(Undisputed Boxing Championship/在フロリダ:代表者はおそらくロシア人か旧ソ連邦に出自を持つと思われる)と渡りを付け、フォードとの対戦交渉を不首尾に終らせ入札に持ち込んだと見るのが正解だろう。

PBC(Premier Boxing Champions)と良好な関係を保つWBC王者レイ・バルガス(メキシコ)以外は、すべてトップランクが抑えたという次第。

もっともそのWBCも、先週マイケル・コンラン相手に大番狂わせを引き起こし、指名挑戦者になったばかりの1位ニック・ボール(英)は、アラムがタイソン・フューリーを共同プロモートするフランク・ウォーレンの持ち駒。

また、武漢ウィルス禍の最中にナバレッテと五分の熱闘(2020年10月)を繰り広げた2位のルーベン・ビリャ(ビジャ/米)もアラムの選手で、S・フェザー級で「階級の壁」に弾き返されたバルガスの首を虎視眈々と狙う。

マッチルームのボクシング部門を束ねるエディ・ハーンは、ウッドとの再戦(今年5月)でリベンジを許し、前王者となった3位マウリシオ・ララ(メキシコ)をPBCへ送り込み、井上も含めた統一路線に割り込みたいところ。

いずれにしても、アラムは井上陣営の意向に配慮しつつ、ビジネスの旨味を最大限に引き出すべく、間もなく126ポンドの統一路線が具体化させる筈。


それまでの間、ラミレスには何としてもチャンピオンでいて貰わねば・・・との内部事情はご同慶の至りと申し上げる以外にないけれど、清水よりも8歳若いエスピノサは、「生涯に一度あるかないか。正真正銘のビッグ・チャンス。必ず勝つ!」と野心を燃やす。

長身痩躯のメキシカンと言えば、ナバレッテを筆頭に、ギクシャクとしたおかしなリズムから遅れ気味に届く大きなフックとアッパーを振って、多少の被弾はお構いなしで接近戦を挑むファイターをイメージしがち。

しかし、「El Divino(エル・ディヴィーノ:神,唯一無二の神聖さを表す)」という大それたニックネームを持つ軽量級の巨人は、清水ほどスローでもなくディフェンスもまずまず。

スピーディなワンツーと意外に素早い前後のステップワークを駆使しながら、中間距離で無難に手数をまとめたり、中途半端なスウェイバックに頼って墓穴を掘る長身特有の悪癖が余り目立たない。

ラミレスが清水戦と同程度の仕上がり具合だと、後半まで食い下がられてガス欠に追い込まれ、自滅半ばに万が一の事態に陥る確率がゼロとは言えなくなる。


とは言え、速さと柔軟性ではキューバの天才サウスポーに及ぶ筈もなく、ややもすると左フックに対する反応が遅れる傾向を、アマチュアの最高峰を極めた高精度のコンビネーションで抜け目なく襲う。

上手に押し引きしながら、適時カウンターをまぶしては安全圏を行き来する。丁寧なポイントメイクを徹底されると、もうどうしようもない。

”メヒコ版タワーリング・インフェルノ”よろしく、カウンターを恐れずスタートからガツガツ行くのも一策なれど、自分の距離をキープしながら長いストレートを打ち下ろし、頭を低くして入って来る相手をステップバックでいなしつつ、アッパーで身体を起こしてはまた打ち下ろすのがエスピノサ本来のボクシング。


簡単に倒せるとばかりに、序盤から無闇に強振して息切れした清水戦の愚を、ラミレスが再びやらかすことはないだろう。

エスピノサの打たれ強さによっても状況は変わるが、仮にサイズで脅威を感じさせることができたとしても、その瞬間にラミレスは安全策を採り、無駄を省いて隙を見せなくなる。大差の3-0判定か中盤意向のTKOでV2達成と見るべき。


◎ラミレス(29歳)/前日計量:125.6ポンド
戦績:14戦13勝(8KO)1敗
アマ通算:400勝30敗(概ね)
2016年リオ五輪金メダル(バンタム級)
2012年ロンドン五輪金メダル(フライ級)
2013年世界選手権(アルマトイ/カザフスタン)ベスト8(バンタム級)
※本大会で銅メダルを獲得する地元カザフのカイラット・イェラリエフ(リオ五輪代表/2017年世界選手権金メダル)に0-3判定負け
2011年世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)3回戦敗退(フライ級)
※ロシア代表ミーシャ・アローヤン(ロンドン五輪銅だメル/世界選手権2連覇)に11-15で惜敗
2011年パン・アメリカン・ゲームズ金メダル(フライ級)
2013年パン・アメリカン選手権金メダル(バンタム級)
2010年ユース世界選手権(バクー/アゼルバイジャン)金メダル(バンタム級)
2010年ユース・オリンピック(シンガポール)金メダル(バンタム級)
キューバ国内選手権優勝5回(2011年・2012年・2014年・2015年・2017年)
身長:168センチ,リーチ:173センチ
左ボクサーファイター


◎エスピノサ(29歳)/前日計量:125.3ポンド
戦績:21戦全勝(18KO)
身長:185センチ
右ボクサーファイター

◎前日計量


※フル映像:前日計量
https://www.youtube.com/watch?v=3uSNo7BtpAo


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■リング・オフィシャル:未発表



3階級制覇へ挑むシャクール /生贄(?)に選ばれたのはドミニカの若きスラッガー - S・スティーブンソン vs ロス・サントス プレビュー -

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■11月16日/T-モバイル・アリーナ,ラスベガス/WBC世界ライト級王座決定12回戦
前統一S・フェザー級王者/WBC1位 シャクール・スティーブンソン(米) vs WBC6位 エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ)



※OFFICIAL TRAILER


国内ライト級の雄,吉野修一郎(三迫)から2度のダウンを奪い、一方的な展開で支配し続け、6ラウンドでストップに追い込んだシャクールのパフォーマンスは、「五輪銀メダル+無敗でプロ2階級制覇」の実績に恥じない立派なものだった。

130ポンドの卒業ファイトとなったジャーメル・ヘリング戦以降、WBCのベルトを吸収したオスカル・バルデス(メキシコ)、統一王者としてリオのライト級を制したロブソン・コンセイソン(ブラジル)、そして吉野を加えた直近4試合について、積極性を増したモデル・チェンジが高い評価を受けており、P4Pランク入りを後押しする声も上がる勢い。

135ポンドの頂点を争うジャーボンティ・ディヴィスとデヴィン・ヘイニーの強力な対抗馬として、揺るぎないポジションを確立。140ポンドへの進出を明らかにしたヘイニー(来月9日レジス・プログレイスに挑戦)に「ダックしやがった!(ディヴィスとシャクールから逃げた)」と逆風が吹き、株価急落(?)もむべなるかな。


バンタム級世界2位の実績とともに意気揚々とブラジルから帰国した翌年、2017年4月に6回戦でプロの初陣を飾った後、シャクールは無傷の13連勝(7KO)をマーク。上述したオスカル・バルデスがようやく放棄したフェザー級のWBO王座に就く。

スピード&アジリティに特化したディフェンシブなスタイルは、現代アメリカの黒人トップボクサーたちのトレンドを超えて、もはや金科玉条と呼ぶべき主流、基本中の基本と化した感が否めない。

あらためてお断りするまでもなく、プロの概念を一変させる「超安全運転」を流行らせはびこらせた張本人はフロイド・メイウェザーその人であり、「何はなくともリスク回避」の系譜に続々と連なる”マネー・クローン”たちの中にあって、とりわけシャクールはアマチュアライクなタッチ&アウェイが目立った。


「確かに速いし上手い。でも退屈。つまらない。」

「力の差がはっきりしている相手遥か格下のアンダードッグも倒そうとしない。」

「安くないカネを払ってスパーリングを見せられるファンはたまったもんじゃない。」

「本物のエリート・クラスだと胸を張るなら、それに相応しいボクシングを見せてくれ。話はそれからだ。」


WBC暫定王座を懸けた決定戦で、ジェレマイア・ナカティラ(ナミビア)を完封(フルマークの3-0判定)したシャクールは、多くのファンから痛烈な反発を受け批判を浴びる。

ご本尊のマネー・メイウェザー様だって、始めから専守防衛の塩漬けスタイルだった訳ではない。アトランタ五輪(1996年)のフェザー級で銅メダルに終ったメイウェザーは、130ポンドのJ・ライト級でプロのキャリアをスタート。

この階級で最初の世界王座(WBC)に就き、破竹の快進撃で連続8回の防衛に成功したが、そのうち6度をKO(TKO)で締め括った。ベルトを獲得したヘナロ・エルナンデス戦を含めれば、J・ライト級時代の世界戦は9戦9勝(7KO)であり、KO率はなんと88%。



この後ライト級に上げて事実上の黒星とされるホセ・ルイス・カスティーリョ第1戦、リマッチ(文字通りの辛勝)を含むV3を果たし、3つ目の140ポンドへとさらなる増量。

サウスポーの黒人パンチャー,デマーカス・コーリーに倒されかけながらもワンサイドの3-0判定を勝ち獲ったV3戦、スピードの違いにモノを言わせてアルトゥロ・ガッティを思うがままに嬲ったV4戦を経て、終の棲家とも言うべきウェルター級へと上がる。

135ポンドでカスティーリョに煮え湯を呑まされてもなお、”プリティ・ボーイ”と呼ばれた若き日のメイウェザーは十分に攻撃的で、自信満々の裏返しでもあるのだが、危うい姿を幾度となく晒す破目に陥った。

トップクラスの147パウンダーたちを前に、遂に本格的な体格差に直面したご本尊様は、チーフとしてコーナーを任せる叔父ロジャー(元2階級制覇王者)とともに、”超守備的なタッチ&アウェイ”へと方針転換を図る(130ポンドの終盤に実父フロイド・シニアともう1人の叔父ジェフを追放=後に和解)。


翻ってシャクールは・・・。

開花を待つ埋蔵量と素質は紛うことなき一級品。そうであるからこそ、血気に逸って然るべき20代前半から、増量を繰り返しつつ三十路に突入した老雄よろしく、リスクの徹底回避に閉じこもってどうする、いったい全体どういう了見なのかという次第。

「完全に決着するまで闘う」

20世紀におけるプロボクシングのセオリー、容赦呵責なくプロボクサーに求められたかつてのスタンダードは、今や死語と表して間違いない。

2012年のロンドン五輪に合わせて大きくルールを変更し、露骨な先行逃げ切りとタッチスタイルからの脱却を図ったアマチュアに対して、現在のプロは駆け引きとジャブの応酬が幅を利かせ過ぎだろう。

いわゆる「ラスベガス・ディシジョン」に象徴される、相手のパンチをとにかくかわし続けることを第一に、ジャブや軽めのリターンを数発当てるだけでポイントが転がり込むスコアリングに加えて、クリンチ&ホールドに頼る時間稼ぎに甘く緩くなった王国アメリカのレフェリングの堕落が拍車をかけてきた。


もっとも、あられもない抱きつき戦術に逃げ込むヘイニーに比べれば、シャクールはまだマシとの見方も成り立つのだが、ナカティラ戦の余りの評判の悪さに顔をしかめつつ、「流石にマズい」と考えたチームは、ファンの支持を得る為に戦術の転換を実行した。

それでもなお、130ポンド時代のジャーボンティ・ディヴィスやイサック・クルスのような、打ちつ打たれつの荒ぶるインファイトは有り得ない。乗るか反るかのリスクテイクなど、チーム・シャクールが追求する理想郷には存在し得ないのである。

積極性を増したとは言っても、相手の出方を良く見て慌てることなくプレスをかけ、適切な距離と間合いを見誤ることなく、無駄打ちと無駄な被弾に気を付けながら、どこまでも抑制的かつ効率的に自分の展開に持ち込む。

シャクールもまた、遅かれ早かれS・ライト~ウェルターへの階級アップを目指すに違いない。そこでどんな戦いを見せてくれるのかは、また別のお話ということになる。


◎ファイナル・プレス・カンファレンス


※フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=oSH6FlTPfaM


近未来のスーパースターに3階級制覇をアシストすべく、ドミニカから呼ばれたロス・サントスは、9割近いKO率を誇る24歳の若きサウスポー。WBCとWBAが直轄する中米のローカル・タイトル(S・フェザーとライト級)に続いて、WBCの米大陸ライト級王座(有象無象の地域王座の中では長い歴史を持つ)を足がかりにランキングを上げて来た。

「グレネード(Grenade:手榴弾と言うよりランチャーのイメージ?)」のニックネームが示す通り、「危険極まりないハードヒッター」との触れ込みだが、秀逸なスピード&シャープネスに抜群のタイミングを兼ね備えたボクサーパンチャータイプ。

タンク・ディヴィスの爆発力やイサック・クルスの突進力とは一線を画し、前後のステップを軸に距離を調節しながら、鋭い踏み込みもろとも繰り出す長い左ストレート(ワンツー)が怖い。

ディフェンス無視の突貫ファイトでは当然なく、スキル&センスを感じさせるボクシング。誤解を恐れずに言えば、むしろシャクールに近いとの印象。


ハビエル・フォルトナ,ジェイソン・ロサリオ,ジョナサン・グスマン,ミシェル・リベラ等々、ドミニカの優れた才能をアメリカに送り出してきた敏腕マネージャーでプロモーターでもあるサンプソン・ルコヴィッツと、2021年4月に契約。

フェザー級で大成を期待されるルイス・レイナルド・ヌネス(24歳/19連勝13KO/アマ:85勝5敗)も同時に獲得したルコヴィッツは、ドミニカの有望株2人をPBC(Premier Boxing Champion)に売り込んだ。

そして昨年1月、Showtimeが中継する待望の全米デビュー戦で、ロス・サントスは手痛いプロ初黒星を喫する。

コネチカットを拠点に活動するS・フェザー級プロスペクト,ウィリアム・フォスター三世(30歳/16勝10KO1敗/対戦時点では無敗同士)との8回戦で、小差のスプリット・ディシジョン(74-77×2名,77-74×1名)を失う。


第4ラウンドにホールディングで減点を食らい、左瞼のカット(バッティング)にも苦しみながらフルラウンズを戦い抜き、「アンフェアなレフェリングだ」と減点に抗議するも時既に遅し。

何だかんだ言ってもアメリカ人のフォスターがホームであり、アウェイの逆風を受けるのはドミニカからやって来たジャーニーマン。オン・ザ・ロードの厳しさは覚悟の上。がしかし、どうにかこうにか冷静さ保ちつつも、抑え切れない憤懣をインタビュアーにぶつけるしかなかった。

文字通りの惜敗から僅か3ヶ月、瞼の傷が癒えるのを確認すると、テキサス出身のメキシコ系を2ラウンドで瞬殺。王国で初白星を挙げたロス・サントスは、さらに9月、フランシスコ・バルガス(元WBC S・フェザー級王者)を衝撃的な初回KOに屠ったホセ・バレンズエラと激突。

序盤からダウンを応酬し合う打ち合いとなったが、第3ラウンドでし止めることに成功。WBC米大陸のベルトを巻き、無視すべからざる存在感を示す。


そして今年7月、同じルコヴィッツ傘下の同胞エルヴィス・ロドリゲスとのホープ対決に敗れ、140ポンドからの階級ダウンを決行したフィラデルフィア期待のホープ,ジョセフ・アドルノ(24歳/18勝15KO3敗2分け)に大差を付けアウトポイント。

高い評価を受けるアドルノへの警戒感からだろうが、両サイドへの細かいポジション・チェンジを怠らず、アマ仕込みのディフェンス・ワークを駆使した丁寧な組み立てでラウンドをまとめ続け、スキルフルなボクシングへの適性を披露する。

センセーショナルなKOで話題を振りまいたバレンズエラに打ち勝ち、フィリーのスター候補にも完勝。ランキング(WBC6位)と実績に関する妥当性はともかく、シャクールを相手にしても相応の勝負ができるのではないか・・・という流れになった。


とは言え、直前の賭け率は圧倒的にシャクール。磐石に近い安定感と隙の無い緻密さは、ヘイニーが逃げ出すのも止む無し(?)。サントスのポテンシャルは注目に値するが、せめてもうあと1年、それなりに名のあるベテランや中堅と2~3試合やってからでも遅くはないとの見立て。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
シャクール:-1400(約1.07倍)
ロス・サントス:+700(8倍)

<2>betway
シャクール:-1299(約1.08倍)
ロス・サントス:+700(8倍)

<3>ウィリアム・ヒル
シャクール:1/12(約1.08倍)
ロス・サントス:13/2(7.5倍)
ドロー:18/1(19倍)

<4>Sky Sports
シャクール:1/10(1.1倍)
ロス・サントス:7/1(8倍)
ドロー:20/1(21倍)


「シャクールが最近の4試合と同じ戦術を採るようなら、エドにも十分勝ち目はある。」

「エドのスピード&パワーを恐れて、シャクールがパッシブな安全策に戻る可能性は低くない。そうなったら厄介。崩すのは容易じゃない。」

アウェイのドミニカンを推す少数派は、専守防衛に閉じこもるシャクールを想定しつつも、速さとキレでも五分に渡り合える筈だと、ロス・サントスの覚醒に望みを託す。


拙ブログの予想は・・・大差の3-0判定でシャクールの3冠達成と見るのが筋ではあるが、賭け率ほどの開きは無いというのが素直な感想。どちらとも取れる接近した内容のラウンドを手際良く引き寄せて、小~中差の逃げ切り3冠達成・・・?。

前評判通りにシャクールがロス・サントスをコントロールしてしまうようだと、打倒ディヴィスへの期待がいよいよ盛り上がる。

PBCがスティーブン・フルトンを日本へ送り出し、対立するアラムが強力にバックアップする井上尚弥と対峙させたのは、あくまで「勝ってくれる筈」との目論みであり、今回のロス・サントスは「負けてもとと。善戦してくれたらめっけもの」。

ライアン・ガルシアを粉砕して、事実上のライト級No.1と目されるディヴィスとのビッグ・マネー・ファイトを睨みながら、丁々発止の共闘という運び。


◎オフィシャル・プレビュー(トップランク公式)
2023年11月9日



◎Blood Sweat & Tears | Shakur Stevenson vs Edwin De Los Santos | FULL EPISODE
2023年11月13日



◎スティーブンソン(26歳)/前日計量:ポンド
WBO J・ライト級(V2/はく奪:体重超過による失格),WBC S・フェザー級(V0),元WBOフェザー級(V0)王者
戦績:20戦全勝(10KO)
世界戦:4戦全勝(1KO)
現在の世界ランク:IBF1位(9月度/10月未発表)/リング誌:ライト級5位(P4Pランク外)
※WBAとWBO:10月月例にてランク外(WBCの決定戦出場が決定した為)
アマ戦績:詳細不明
2016年リオ五輪バンタム級銀メダル
2015年ユース全米選手権(18歳以下対象)バンタム級優勝
2014年ユース世界選手権(ソフィア/ブルガリア)フライ級金メダル
2014年ジュニアオリンピック(ネバダ州リノ)フライ級優勝
2014年ユースオリンピック(南京/中国)フライ級金メダル
2013年ジュニア世界選手権(キエフ/ウクライナ)フライ級金メダル
2013年ジュニア全米選手権フライ級優勝
身長:173(170)センチ,リーチ:173センチ
ディフェンシブな左ボクサーファイター


◎サントス(24歳)/前日計量:ポンド
戦績:17戦16勝(14KO)1敗
アマ戦績:100戦超(12敗)
※ジュニア~ユースで国際大会出場経験有り(タイトル歴含め詳細不明)
身長:173センチ,リーチ:178センチ
好戦的な左ボクサーファイター


◎前日計量


※フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=mEKIQ0bW_0k


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■リング・オフィシャル:未発表

The Last Voyage 2 - カテラル vs リナレス ショートプレビュー -

カテゴリ:
■10月21日/エコー・アリーナ,リヴァプール(英)/WBAインターコンチネンタル S・ライト級タイトルマッチ12回戦
前王者/WBC5位 ジャック・カテラル(英) vs 元3階級制覇王者 ホルヘ・リナレス(ベネズエラ/帝拳)



Inside Look: Jack Catterall v Jorge Linares (Final Build Up Content)



「勝ったり負けたりだったけど、そんなに悪いボクシング人生じゃなかった。」

昨年6月、Number Webに掲載されたインタビューの冒頭、37歳になったリナレスは控えめな言葉を選び、20年に及ぶリング・キャリアを振り返っている。

インタビューから遡ること4ヶ月、2月中旬に春まだ遠いエカテリンブルグへと渡り、デヴィン・ヘイニーとのWBC王座決定戦(2019年9月/)に抜擢され、第4ラウンド終了後の棄権TKO負けに退いたザウル・アブドゥラエフと対峙。

「ヘイニーに負けた者同士」の一騎打ちには、アブドゥラエフが保持するWBCシルバー王座とともに、「挑戦者決定戦への出場資格」が懸けられると報じられていた。


前半から中盤まで終始ペースを支配し続け、後半距離を詰めて必死に追い上げを図るアブドゥラエフを上手に捌き、「もう大丈夫だろう。」と安堵した最終12ラウンド、丁度2分になろうかというところで、強烈な左フックのカウンターを浴びて背中からキャンバスに落ちてしまう。

立ち上がってエイト・カウントを聞いたが、虚ろな瞳を見て「ああ、ダメだ・・・」と唇を噛み、PCの画面を見つめる自分の顔が歪むのをはっきり自覚した。

S・フェザー級のラスト・ファイトとなったファン・C・サルガド(メキシコ)との初防衛戦(2009年10月/国立代々木第2体育館)で露になった打たれ脆さ以上に、「回復力の欠如」こそがリナレス最大のウィークネス。

打たれたら必ず打ち返し、常にリスクを取る「強気の姿勢」、クリンチワークを良しとしない潔さが拍車をかける。

一度び「破綻モード」に入ると、もうどうやっても取り返しがつかない。3階級制覇に手が届く目前、アントニオ・デマルコ(メキシコ)のラフ・ファイトに巻き込まれて、血まみれの終盤逆転TKO負け(2011年10月/ロサンゼルス)。


5ヶ月後にセットされたメキシコでの復帰戦でも、地元カンクンのホープ,セルヒオ・トンプソンにスタートからラフ&タフを仕掛けられ、序盤のレフェリー・ストップ(ドクターもグルになった伝統的なメキシカン・トラップではあったが)でよもやの連敗。

4年余りの雌伏の時を耐えたリナレスは、ハビエル・プリエト(メキシコ)を4ラウンドKOに屠り、遂に135ポンドの王座に辿り着く。2014年の晦日だった。

この直後、英国への3度の遠征を含む6度の防衛に成功。WBA王座を吸収して2団体の統一を果たし、イングルウッド・フォーラムで行われたV5戦では、ロンドン五輪のバンタム級を制したイングランドの雄,ルーク・キャンベルを破り、ボクシング発祥国と浅からぬ縁を結ぶ。


こうして実現したのが、プロ・アマの両方で「P4Pキング」の栄光に浴したロマチェンコとの大勝負。

「ハイテク」と呼ばれ、目にも止まらぬサイドへの動きと間断なく繰り出される膨大な手数、変幻自在な攻防一体を映画「マトリクッス」になぞらえられたロマチェンコに、鮮やかな右のカウンターを決めて生涯初となるダウンを与え、ポイントでリードした第10ラウンド、左フックでレバーを抉られカウント・アウトのKO負け。

大半の対戦相手と同様、絶え間なく続くロマチェンコの軽打に消耗させられ、疲弊が健在化していたこともあり、「逆転」の2文字に疑問符を付ける声も聞かれたが、「リスクを取る姿勢」がここでも裏目に出る。


帝拳のスカウトを受け、来日してプロのライセンスを取り、まだ少年の面影を残すリナレスをデビュー当時から見続けて来たファンの誰もが、後半~終盤にかけての逃げ切りが不得手なベネズエラの天才をハラハラしながら応援していたに違いない。

だからこそ、最終ラウンドも残り1分に差し掛かり、「もう大丈夫」だと安心もした。「初めてのロシア。いくらアウェイ慣れしているリナレスでも、ここは大事を取ってくれる筈」だと。

だがしかし、いかに地の利の追い風を受けているとは言え、「倒さなければ勝てない」と悟ったアブドゥラエフは、残ったスタミナと集中力を総動員してリナレスに迫り、カウンターで致命的な傷を負う覚悟もろとも、決死の形相で相打ち狙いを繰り返す。

ジャブを多用して前後左右に動きながら、アブドゥラエフが放つ渾身の左右と前進に対処していたリナレスだが、やはり疲労していたのだろう。反応が鈍っていた。


おそらくリナレスには、あられもないクリンチ&ホールドで時間を稼ぐ余裕も残っていない。案の定、再開と同時に右→左の逆ワンツーをまともに食らい、ロープ際で腰から落ちる。

それでもどうにか立ち上がったが、あっという間にロープに押し込まれ、連打が始まったところでレフェリー・ストップ。ロシアで喫した逆転KO負けのショックは余りも大きく、youtubeの公式チャンネルは昨年1月22日のアップを最後に休止状態。

◎【2022年】Jorge新たなステージで挑戦が始まる!2022年の目標を語る
https://www.youtube.com/watch?v=VMf1t1gOUnM

いつもの事ではあるけれど、海外で先行して報道されたロシアのRCCプロモーションズとの契約について、この動画で自ら事実だと認め、「3試合をやる予定」だと明らかにしていた。

実のところ、このアップも1年3ヶ月ぶり。武漢ウィルス禍で試合もままならない状況ではあったものの、1万9千人弱の登録者の関心が薄れるのも仕方がない。


Number Webの依頼を快諾したリナレスは、四十の大台が間近になった年齢も含め、「引退 or 再起」以外に取材のテーマはあり得ないと承知をしており、話を聞いて記事にまとめる金子達仁も当然そこに向かって行く。

そしてリナレスは、「世界チャンピオンに返り咲く。その為にあと2試合・・・」と、「キャリアの終活」に向け決意を述べていた。

◎[ゴールデンボーイ黄昏の光]ホルヘ・リナレス「あと2戦、まだ頂点へ」
2022年6月18日/Number Web(有料記事)
https://number.bunshun.jp/articles/-/853595


インタビューが行われた時点で、契約通り3試合をこなすつもりでいたリナレス。昨年末、再び冬のロシアへと旅立ち、10歳若いアルメニア人のライト級と相まみえたが、いいところなく攻め込まれて10ラウンズの判定を失う。

アマキャリアを含めた詳細は不明で、国際的には無名と言っていいゾーラ・アマザリヤンは、2015年9月にモスクワでプロ・デビュー。リナレス戦を前にした時点での戦績は、13勝(9KO)3敗2分け。

3度の黒星の中にはアブドゥラエフの名前もあり、公称170センチのサイズ(身長・リーチとも)も相まって、「流石に負けはないだろう」と思われた。


しかし、リング・インしたアマザリヤンの上体は分厚く、脆弱なリナレスに体力勝負を挑む気満々。スタートから積極的に強打を振るい、打ち合いに巻き込もうと突進を敢行する。

対するリナレスは力強い左ジャブとフックを軸に迎え撃つが、パンチだけでなく動きにも精彩を欠き、いつもの冴えが見られない。トレーナーに転身した実弟カルロスがコーナーに付いていたが、チームとしても手薄な印象が否めなかった。

立ち上がりから失速気味になったアブドゥラエフ戦の中盤過ぎに近く、ヘイニー戦で発揮した集中力とキレ味には程遠い。すぐさま嫌な予感に襲われたが、序盤はそれでもリナレスがリードを保つ。


様子が変わり始めた中盤、アルメニア人のコーナーはリナレスに打たせてパンチを合わせた方が得策だと気付く。もともとボディワークを多用するタイプではなく、悪い時には打ち終わりにほとんど頭の位置が変わらない。前進しては相打ちを貰う悪循環に陥った。

勝利を確信したアマザリヤンは、8ラウンド以降完全に逃げ切りの態勢。ほとんどまともに打つ気はなく、トリッキーなムーヴで陽動しつつ安全な距離を取り、距離を詰めるリナレスから逃げる。

アルメニアのチームがはっきり戦術を変更した第8ラウンド、相打ちに悩まされていたリナレスは攻勢に転じ切ることが出来ず、確保できた筈のポイントを逃したのが大きかった。

三者一致のユナニマウス・ディシジョンが告げられたが、2人のジャッジは92-98,91-99のワンサイド。露骨極まるホーム・タウン・ディシジョン。残る1人が付けた94-96が最も戦況の実態に近かったが、何を言ってもせんないこと。


ちなみに、私のスコアは96-95でリナレス。まともに戦う気がなく、逃げるだけのボクサーにポイントを与えてはいけない(リゴンドウにも同じ事が言える)。リナレスの左を食ってグラつき、ホールド三昧で大きなブーイングを浴びたヘイニーの終盤も酷かったが、まだ本気で打っていた。

アマザリヤン戦のジャッジは最低だったけれど、アブドゥラエフ戦も含めたレフェリングはしっかりしていて、リング・オフィシャルの振る舞いは想像していた以上にフェアだった。


「本当にもう1回ロシアに行く気なのか。それとも・・・」

決定的な3連敗。確実にランキングから姿を消す。第一線への復帰はいよいよ難しくなった。ロシアから戻ったリナレスの続報を暗澹とした思いで待っていると、狂気の独裁者がウクライナに牙を剥く。

和睦の道を探っていたゼレンスキー大統領も、ブチャで行われたロシアの蛮行を契機に、徹底抗戦の肝(はら)を決めたが、ウクライナはアメリカとNATOからの手厚い支援が生命線。

他国から供与された兵器をクリミアの奪還に使うことは出来ても、ロシア国内に向けてミサイルを撃ったり、最新鋭の戦車で地上から逆襲に打って出ることができない。真剣に懸念される第三次世界大戦の勃発は勿論、核の使用という最悪の事態も招きかねず、ウクライナは本土の防衛に止まる。

すぐにロシア領内に戦禍が及ぶ可能性は極めて低いが、独裁者プーチンの一方的な武力侵攻と残虐非道は許されるべきではなく、北方領土と漁業交渉の困難な課題を一旦棚上げにして、対ロシア制裁の和に加わる以外に道はなし。

ほどなくして、渡航中止の措置が取られた。アメリカとの同盟以外に頼る術がなく、中国&朝鮮半島も込みの厄介な連中への対応に苦慮し続ける日本の立場は、あらためて言及するまでもない。

リナレスの国籍はベネズエラのままで、2014年以降は活動の足場を米本土に移している。日本人と同じに扱うことは憚られるものの、情勢の推移を見守る必要は当然ある。ウクライナへの本格的な侵攻を始めてしまったロシアに、代表選手の筆頭格でもあるリナレスを平時と同じ感覚で送りこむ判断は難しかったと思う。

年末に敢行された2度目の訪ロは、アブドゥラエフに次ぐ135ポンドの有望株と見込んだアマザリヤンを、リナレスの賞味期限が残っているうちにぶつけてステップボードにしたいRCC側の思惑と、よもやのアップセットを許した連敗からの逆襲・回復を急ぐリナレスの強い要望が一致したと見るのが妥当か。

リナレスが日本に帰化していれば、何をどう考えたとて選択の余地はない。本田会長と浜田代表も、本意は別にして認めるしかなかったということだろう。


「3度目の訪ロ」は費えたが、2007年の契約締結以来、長らく良好な関係を築いてきたゴールデン・ボーイ・プロモーションズが、米本土で最後の花道を用意してくれる期待は薄い。トップランクとアル・ヘイモンも大同小異。

井上尚弥を看板にした大きな興行のアンダーカードか、それとも定番の後楽園ホールでの挨拶になるのかはともかく、フィナーレは日本国内のリングで迎えることになると、そんな風向きが強くなる中、英国から予想外の一報がもたらされる。

合縁奇縁とは良く言ったもので、アンソニー・クローラとの2試合を直接手掛け、ルーク・キャンベル戦をデラ・ホーヤと共同プロモートしたエディ・ハーンが、S・ライト級で第一人者の地位を確立したジャック・カテラルのチューンナップに呼んでくれた。


ロマチェンコに敗れた後、リナレスは4階級制覇を目指して140ポンドに参戦。アブネル・コット(プエルトリコ初の4冠王ミゲル・コットの血縁)との初陣を見事な3回KOで飾った直後、鬼門とも言うべきメキシカン,パブロ・セサール・カノとの第2戦で、初回KO負けの悪夢が再現。

一度は諦めたS・ライト級で、断崖絶壁からのサバイバルを期すことになったという訳だが、なにしろ状況は厳しい。

加齢と歴戦の疲労による衰え。前戦での不出来について、今のところはそう判断するしかなく、カウンターのタイミングに秀でた試合巧者で、チャンスと見れば脱兎のごとく襲い掛かる勇敢さも併せ持つサウスポーを攻略する確率はどの程度あるのか。

直前のオッズも当たり前だが大差がついた。


□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
カテラル:-800(1.125倍)
リナレス:+550(6.5倍)

<2>betway
カテラル:-1000(1.1倍)
リナレス:+600(7倍)

<3>ウィリアム・ヒル
カテラル:1/9(約1.1倍)
リナレス:11/2(6.5倍)
ドロー:18/1(19倍)

<5>Sky Sports
カテラル:1/10(約1.1倍)
リナレス:7/1(8倍)
ドロー:20/1(21倍)

MGMとウィリアム・ヒルのマージンは、これでもまだリナレスに好意的と見るべき。確かにカテラルはビッグ・パンチャーではないし、リナレスが最も苦手にするフィジカル勝負のタフ&ラフでもない。

ロマチェンコの多彩と一息つく間もない忙しさとは無縁で、ヘイニーの抱きつき戦術も心配せずに済む。この階級としては小柄な部類に入り、技術&神経戦に本領を発揮するカテラルの特徴は、リナレスに取って本来組し易いタイプにはなる。

ただし、そう断言する為には、アブドゥラエフ戦の仕上がりが最低条件。まともに勝機を口にしようとすれば、ロマチェンコ,ルーク・キャンベル戦の中盤までのキレと集中を、最終盤まで維持することが求められる。


「この試合をモノにして、次はタンク・ディヴィス。」

大言壮語ととられかねない希望を語ったリナレスのコーナーに、イスマエル・サラスが復活したのは何よりの朗報だが、今夏のトレーニングをフロリダで行った後、ラスベガスに移動していたようだ。

卓越したパワーに一級品のスピードを兼ね備えて、その気になればボクシングも出来る。それに加えてラフ・ファイトも得意にするディヴィスは、リナレスが絶対に避けなくてはならない相手であり、仮に特大の番狂わせに成功したとしても、ライアン・ガルシアを粉砕して、事実上のライト級No.1と目されるディヴィスが、リナレスに関心を示す可能性は低い。

また実現したらしたで、リアルなラスト・ファイトと化す確率が99.9999パーセント?。


◎ファイナル・プレス・カンファレンス


※ファイナル・プレッサー(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=3gbvRHIbRxM


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■4団体統一テーラーから実質的な白星をマーク(?)

公称170センチのテクニカルなカウンター・パンチャー,ジャック・カテラル(現地での発音は”キャタロール”に近い)の名前が一躍クローズアップされたのは、今もなお記憶に新しい昨年2月のことだった。

完全アウェイのグラスゴー(スコットランド最大の都市)に赴き、140ポンドの4団体を統一した地元のヒーロー,ジョシュ・テーラーと12ラウンズをフルに渡り合い、僅少差の1-2判定(113-112,111-114,112-113)で涙を呑む。

当然のことながら、オフィシャル・スコアの妥当性を巡って議論が巻き起こる。カテラルの勝利を推す声は多く、評判を気にしたテーラーはウェルター級への参戦を取り下げ。リマッチを受けて立つ構えを見せたものの、一向に交渉がまとまる気配はない。


今年5月、長引く一方の不調な交渉を待ちくたびれたカテラルは、1年3ヶ月ぶりの実戦復帰。ケントから呼ばれた35歳の中堅選手を完封して、WBAの下部タイトルを獲得している。

2018年からコンビを組むジェイミー・ムーア(マーティン・マレー,ロッキー・フィールディング,カール・フランプトンらのコーナーを歴任)との息もぴったりで、ブランクを感じさせない動きでファンを安心させた。

「ジョシュと決着を着ける。(交渉は)間もなく妥結すると思う。」

第一のターゲットは今もテーラーであり、リナレスを迎えた下部タイトルの初防衛戦は、あくまで調整の一貫に過ぎない。「落ち目の3冠王など眼中になし」との自信もまた、ただ今の時点では致し方のないところ。


抜群のタイミングを誇る左ストレートの一撃。カテラルのボクシングは、まさにその一点に集約される。

しかし、ベースになっているのは英国伝統の正攻法であり、クリーンで勇敢なボクサーファイトが身上。今や常態化した感さえ否めないクリンチ&ホールド、頭突き込みの体当たり等々のラフ・ファイトとは一線を画す。

1発のパンチ力はさほどでもないが、左のカウンターが額面通りに炸裂したら、リナレスの昇天は不可避。

フロリダでの集中的なキャンプに続く名匠サラスとの追い込みで、顕著だった錆付きをリナレスがどこまでリフレッシュできたのか。オンラインの配信が間もなくスタートする。


◎カテラル(30歳)/前日計量:140ポンド
世界ランク:WBA7位・WBC5位・IBF7位・WBO5位
戦績:28戦27勝(13KO)1敗
アマ通算:48勝18敗
身長:170センチ,リーチ:175センチ
左ボクサーファイター


◎リナレス(38歳)/前日計量:140ポンド
元WBCライト級(V4),元WBAライト級(V3),元WBA S・フェザー級(V1),元WBCフェザー級(V1)王者
戦績:55戦47勝(29KO)8敗
世界戦通算:15戦11勝(7KO)4敗(3KO)
アマ通算:156戦151勝 (100RSC・KO) 5敗
身長:172.6センチ,リーチ:175センチ
※ハビエル・プリエト戦の予備検診データ
右ボクサーファイター


◎前日計量


※前日計量(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=AfYJ4GBhTGU

◎Behind Closed Doors: Jack Catterall vs Jorge Linares (Pre Fight Feature)



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■リング・オフィシャル:未発表

男子初の4冠王対決 /2階級差のアドバンテージ・・・文句無しの完勝が最低ライン? - カネロ vs ジャーメル 直前プレビュー -

カテゴリ:
■9月30日/T-モバイル・アリーナ,ラスベガス/WBA・WBC・IBF・WBO4団体統一世界S・ミドル級タイトルマッチ12回戦
統一王者 カネロ・アルバレス(メキシコ) vs 4団体統一S・ウェルター級王者 ジャーメル・チャーロ(米)





異なる2つの階級で、4つのベルトを保持するチャンピオン同士の激突。今秋一番の注目カード(?)が、いよいよ本番当日を迎える。

話題の中心は、2階級越えのギャンブルに打って出た挑戦者ジャーメル・チャーロの勝算の有無にならざるを得ず、在米専門サイトやyoutubeチャンネルも勝敗予想に余念がない。

リング誌も恒例の予想記事をアップしているが、7名の専門記者を含む総勢20名のボクシング関係者のうち、19名が受けて立つカネロの勝利を支持しており、KO勝ち~僅差の判定まで展開と結果に関する見解に差異はあれど、「階級の壁(168ポンド vs 154ポンド)」を超えることは難しいとの見立て。

◎FIGHT PICKS: CANELO ALVAREZ VS. JERMELL CHARLO
9月27日/リング誌
https://www.ringtv.com/658758-fight-picks-canelo-alvarez-vs-jermell-charlo/


唯一「チャーロの判定勝ち」としたロン・ボルヘス(ボストン・ヘラルド,スウィート・サイエンス等に寄稿するベテラン記者)は、「カネロの年齢的な衰え(ビヴォル戦の敗北で露になった下降線)」に言及しつつ、ジャーメルのアグレッシブネス&スキル、左フックの決定力を高く評価する。

さらには、154ポンドの4団体を統一したにも関わらず、リング誌P4Pランキング入りを果たし切れていない現状、ギャランティを含めた「過小評価」に対する鬱積した不満、メガ・ファイトを渇望し続けてきたチャーロのハングリネスにも言及。

「ジャーメルの旺盛な攻勢力と圧力を前に、カネロは有効な手立てを結局見い出せないだろう。明白な判定でジャーメル。」


1995年にBWAA(The Boxing Writers Association of America,:全米ボクシング記者協会)から「ナット・フライシャー賞(優れたボクシング・ジャーナリストの業績を讃える年間表彰の1つ)」を贈呈されたボルヘスは、実は両雄が同い年であること、多くのファンと関係者が関心を寄せる「サイズの問題(カネロ:H175センチ/R179センチ,ジャーメル:H183センチ/R185センチ)」には触れておらず、ジャーメルの積極果敢なスタイルは落ち目のカネロ(?)には手に余ると結論。


そうした一方で、リング誌編集長のダグ・フィッシャー(カネロ:7ラウンド以降KO勝ち)、及びシニア・ライターのアンソン・ウェインライト(カネロ:3-0判定勝ち)の見解に同調するマニア,ファンも多いと思われる。

■D・フィッシャー
サイズだけでなく高い身体能力にも恵まれたジャーメルは、154から168へ一気にジャンプしても十二分なパフォーマンスを発揮し、前半はカネロとも五分に渡り合える(打ち合いではなく駆け引き・インサイドワークの応酬)。

「階級の壁」はジャーメルにとって致命的な障害にはならないが、S・ミドル級にしっかりアジャストしたカネロ(リアルなエリート・クラス)のパンチに耐え切れるかどうか。そこには疑問の余地が残る。

ワールド・クラスのS・ミドル~L・ヘビーのパワーを肌で知るカネロと、未知のジャーメル。ジャーメルのタイミング,リズム,スタイル,戦術を読み切った後、カネロは充分な圧力をかけて決定的な場面を作る。

第7ラウンド以降、おそらく強力なボディ・ショットでカネロがストップを呼び込む。


■A・ウェインライト
エリクソン・ルビン,ジェイソン・ロサリオ,ブライアン・カスターノをリマッチでストップしたジャーメルと、ジョン・ジャクソン,トニー・ハリソン,カスターノに苦闘を強いられた初戦のジャーメル。

果たして今回、そのどちらが登場するのか。私が抱く最大の関心と疑問がそれだ。

待望久しいAマッチ(ビッグ・マネー・ファイト)に、ジャーメルは気合十分で臨むだろうが、S・ウェルター級の4団体を統一したカスターノとの第2戦以来、16ヶ月(1年4ヶ月)の長いオフが、(33歳になった)ジャーメルにどんな影響を及ぼすのか(及ぼさないのか)。

コンスタントに戦い続けているカネロにも、その分疲労と消耗の不安がある。(ビヴォル戦以降のパフォーマンスはいまいち冴えを欠き)全盛の勢いを失ったと見ることもできるが、それでもなお他の168パウンダーより優れている。

カネロの仕上がり次第にはなるけれど、メキシカンが慣れ親しむ拮抗したせめぎ合いに持ち込み、3-0の判定でカネロが前進を続けるだろう。


ライヴ中継を実現させたWOWOWエキサイトマッチのスペシャル・ゲストに招かれ、解説席に陣取る我らが村田涼太は、「僕の中ではイーブン。カネロが勝つにしても圧勝はない」と自論を展開。P4Pセールス・キングの落城も有りと述べる。

「(二度)L・ヘビーに上げて、またS・ミドルに戻している。5キロの増減がフィジカルにもたらす影響は小さくない。重いクラスで階級を下げて成功するケースは滅多にない。」

「(ジャーメルにとっても)6キロの体重差は確かに大きい。でも、無理をしてまでS・ミドルに合わせて来ないことも考えられる。身長とリーチのアドバンテージを活かす意味でも、スピードを維持できる状態でリング中央に留まって戦う筈(ロープを背負う時間が長くなればなるほど勝利は遠のく)。」


拙ブログの予想は・・・。フィッシャーとウェインライトの中間ぐらい。

ステロイドの助けを諦めざるを得なくなった(?)カネロに、175ポンドの調整はいかにも負担が大きく、もともと後半~終盤にかけてのスタミナを疑問視されてはいたものの、重い身体を懸命に引きずりながら息切れもかなり早かった。

S・ミドルに出戻ったカネロは、前半の貯金でゴロフキンとの因縁に決着を着けた第3戦に続いて、豪快なKOが期待されたジョン・ライダー(英)にも判定勝ち。

増量の負荷に加えて、歴戦の疲労いよいよ健在化したとの指摘は無視できないながら、168ポンドの調整によって明らかに活力と精気を取り戻している。

スタミナのやりくりに苦労が絶えず、14歳から戦い続けた経年劣化も致し方のない面はあり、キャリアが第4コーナーに差し掛かっていることに疑いを差し挟む余地はなし。がしかし、それでもカネロの優位は動かし難い。


168ポンドのリミットぎりぎりで仕上げたジャーメルの上半身は、思っていた以上に引き締まって無駄な脂肪は無かった。フィジカルの強化に「PED(Performance-Enhancing Drugs:運動能力の強化を目的とした薬物)」が含まれていないことを願いつつ、計量後のリバウンドが気にかかる。

村田の言う通り、170ポンド前後のウェイトを維持したままリングに上がるのか、180ポンド超まで戻すカネロのパワーに対抗する為にと、一定程度のスピード喪失を招致の上で175ポンド辺りまで体重を増やすのか。


ジャブ&ステップでカネロを捌き切ったビヴォルの快勝は、チーム・ジャーメルにとって大きな福音になるだろうが、S・ミドルのカネロはあの時ほど鈍くはないし、身体のキレも違う。

計量の映像を見る限り、「14ポンドの飛び級」に関するダグ・フィッシャーの推察には敬意を表するし、ボストンの論客ボルヘスが確信を抱くアップセットの可能性も当然あるとは思う。

ただし、ボルヘスが積極的に買う「ジャーメルのアグレッシブネス」は、必ずしもプラスにばかり働かないのでは。カネロほどの手練れなら、敢えて手数を控えてジャーメルを引き出し、外寄りのフックやインサイドから突き上げるアッパーのカウンターを効かせられるだろう。

そしてカネロのボディ・アタックは、充実している筈のジャーメルの気力を削り続ける確率が高く、フィッシャーが読む「7ラウンド以降のKO(TKO)決着」に確かな説得力を与える。

◎ファイナル・プレス・カンファレンス


◎フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=UC5xLTgCbiQ


直前の賭け率はやはりカネロ。意外に接近したマージンは、ボルヘスが推す「ジャーメルのハングリネス」+「サイズのアドバンテージ(考慮せざるを得ない)」への可能性と見るべき・・・?。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
カネロ:-480(約1.21倍)
ジャーメル:+330(4.3倍)

<2>betway
カネロ:-400(1.25倍)
ジャーメル:+333(4.33倍)

<3>ウィリアム・ヒル
カネロ:2/9(約1.22倍)
ジャーメル:7/2(4.5倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
カネロ:1/4(1.25倍)
ジャーメル:7/2(4.5倍)
ドロー:14/1(15倍)


よって拙ブログは、6-4でカネロを支持。順当なら3-0の小~中差判定勝ち。ジャーメルのコンディションと戦術次第で、中盤以降のストップも有り。


◎カネロ(33歳)/前日計量:167.4ポンド
現WBA(V6),現WBC(V5),現IBF(V3),現WBO(V4)S・ミドル級王者
前WBO L・ヘビー級(V0/返上),前WBCミドル級(第2期:V1/返上),前IBFミドル級(V1/返上),WBAミドル級スーパー(V1/返上),元WBC S・ウェルター級(V6/WBA王座吸収V0),元WBCミドル級(第1期:V1/返上),元WBO J・ミドル級(V0/返上)王者
戦績:63戦59勝(39KO)2敗2分け
世界戦通算:23戦20勝(11KO)2敗1分け
アマ通算:不明
※20戦,44勝2敗など諸説有り
2005年ジュニア国内選手権優勝
2004年ジュニア国内選手権準優勝
※年齢・階級等詳細不明
身長:175センチ,リーチ:179センチ
右ボクサーファイター


◎チャーロ(33歳)/前日計量:167.4ポンド
現WBA(V2)・WBC(V3/通算V6)・IBF(V2)・WBO(V0)4団体統一S・ウェルター級王者
戦績:37戦35勝(19KO)1敗1分け
世界戦通算:9戦7勝(6KO)1敗1分け
アマ通算:56勝8敗(56勝9敗説有り)
※BoxrecとWiki(英)には「2005年ジュニア・オリンピック銅メダル」の記述があるものの正式な記録は確認できない。
身長:183センチ,リーチ:185センチ
右ボクサーファイター


◎前日計量


◎フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=nriJgsNDrMM

180センチ超のタッパとリーチは伊達じゃない。一切弛緩したところがないジャーメルの上半身を見るにつけ、フィジカルに関する黒人ボクサーのポテンシャルの高さにはため息をつくしかない。

あらためてお断りするまでもなく、PEDに手を染めていない前提にはなるけれど、カネロに一泡吹かせることに成功して、クロフォードに続く「2階級+4団体統一王者」となったあかつきには、念願のリング誌P4Pランク入り&定着(一度入ったがすぐに外された)のみならず、名実ともにビッグネームの仲間入りが遂に実現する。

内容と出来にもよるが、首尾良くカネロ撃破を成し遂げた場合、直ちにS・ミドルの4冠を捨ててミドルに降りるのも一策。

「3階級+4団体統一」は、挑戦を続けるプロセスそのものが最高のビジネス・チャンスになる上、男女を通じて誰も成し得ていない偉業を達成したとなれば、クロフォードを超える評価とカネロに匹敵する巨額の報酬も夢物語ではなくなる。


◎メディア・ワークアウト
<カネロのみ:1時間>
https://www.youtube.com/watch?v=igqZb-16EXM

<ジャーメルのみ:1時間>
https://www.youtube.com/watch?v=XTFN16a3rSg

<アンダーカード・フル:2時間>
https://www.youtube.com/watch?v=rdbngPKX5ck

両陣営とも本気の動きではけっしてないが、カネロ,ジャーメルともに少し重そうに見える。本番2週間前(9月14日)のセットだから、キャンプ(追い込み)の疲労を隠し切れないとしても無理からぬところ。

カネロもきちんと絞れてはいるものの、やや鈍い印象。計画通りのペースなのか、2階級下のジャーメルを軽く見た結果の調整遅れなのか。あるいは、キャンプのスケジュールを狂わせるアクシデントでもあったのか。

GGGとの決着戦(2022年9月17日/T-モバイル・アリーナ)に向けた公開練習を見ると、絞り方の相違にいささかの不安を感じないこともない。単なる老婆心に過ぎないかもしれないが。

◎ゴロフキン第3戦時の公開練習
CANELO ALVAREZ FULL GENNADY GOLOVKIN MEDIA WORKOUT - CANELO BEAST MODE TRAINING TO KO GOLOVKIN
2022年8月30日
https://www.youtube.com/watch?v=2fxB8_iK1kI


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■オフィシャル

主審:ハーヴィ・ドック(米/ニュージャージー州)

副審:
マックス・デルーカ(米/カリフォルニア州)
ディヴィッド・サザーランド(米/オクラホマ州)
スティーブ・ウェイスフィールド(米/ニュージャージー州)

立会人(スーパーバイザー):4団体とも未発表


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■All Access(Showtime)

<1>ALL ACCESS: Canelo vs. Jermell Charlo | Episodio 2
2023年9月22日


<2>ALL ACCESS: Canelo vs. Jermell Charlo | Ep 1 | Full Episode
2023年9月9日
https://www.youtube.com/watch?v=lFIDHPOFsIA

<3>Canelo Alvarez vs. Jermell Charlo: Press Tour Recap
2023年8月21日
https://www.youtube.com/watch?v=FdCiN31NsMk


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■キック・オフ・カンファレンス
<1>ロサンゼルス
2023年8月17日
https://www.youtube.com/watch?v=Crp4_sIBx6U

<2>ニューヨーク
2023年8月16日
https://www.youtube.com/watch?v=L7L28V2_Bg8

充実の拳四朗に歴戦の元王者がアタック - 拳四朗 vs バドラー 直前プレビュー -

カテゴリ:
■9月18日/有明アリーナ/WBA・WBC統一世界L・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 寺地拳四朗(B.M.B) vs 元WBAスーパー王者/WBC1位 ヘッキー・バドラー(南ア)





※フル映像:ファイナル・プレス・カンファレンス
https://www.youtube.com/watch?v=J-FZ7QUMWII


傷つき疲弊した田口良一(ワタナベ)からベルトを奪い去った2018年5月。自前の興行で世界戦の招致が可能だったワタナベジムが、常打ち小屋にしていた大田区総合体育館で、108ポンドのベルト奪還に成功した南アフリカを代表する軽量級のアイドルは、一目も憚らずに歓喜の涙を流した。

そして同じ年の大晦日。マカオまで遠征して京口紘人(ワタナベ)に11回TKOの完敗。あれからもう5年も経つ。

105ポンド時代の減量苦による消耗に加えて、打ち合いを好むスタイルが災いして、肉体的なダメージが顕著になったバドラーはその後実戦から遠ざかる。同胞のファンの間でも限界説が取り沙汰された。

がしかし、敢然と引退を拒否したバドラーは長い休暇を終えてジムへ戻り、本格的なトレーニングを再開。復帰に向けて動き出したところへ、予期せぬパンデミックが襲来。


同国で発見された変異株(ベータ:N501Y系統)が猛威を振るい、カムバックは大幅な遅れを余儀なくされ、ようやく実戦のリングに登ったのは2021年5月。ヨハネスブルグに無名のフィリピン人を呼び、大差の12回判定勝ち。WBCのシルバー王座を得て、世界ランキングに再び名を連ねる。

海外の元トップスターにありがちな、お約束通りの復帰戦と言ってしまえばそれまでだが、2年半近くに及んだブランクと年齢(33歳)を考慮すれば、108ポンドのL・フライ級リミットを作り(南アの計量には不正が少なくない)、12ラウンズを戦い切っただけでも上首尾と言えた。

しかし、次々と変異を続けるCovid-19の脅威は容易に収束の気配を見せず、さらに丸1年の待機を経て、昨年6月メキシコまで飛んで遅ればせの再起第2戦。

WBOのベルトを巻いて大成を期待されながら、マイキー・ガルシアのアンダーカードでジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)に1-2の判定で敗れたエルウィン・ソトと対戦。

有体に言うなら、復活に賭ける若きスター候補のステップボードとして、遥々南アフリカから呼ばれた元王者。これもまた、世界中で日々繰り返される見慣れた光景ではある。


ところが・・・。ソトのKO勝ちに期待を寄せる地元ファンのブーイングにもめげず、南アの元アイドル,いや古豪がしぶとく食い下がった。

小柄なソトよりもさらに小さな体をコンパクトなガードでまとめ、ステップ&ボディワークを絶やさず、キレのある動きで的を絞らせない。手数を抑えてスタミナをやりくりしながら、とにかく打たれ(せ)ないことに注力。

互いに目立ったヒットもパンチの応酬もなく、駆け引きに終始した前半の5ラウンズ。中継を行うESPN(スペイン語)のアンオフィシャル・スコアは、フルマークでソトを支持していた。


第6ラウンドから圧力を強めるバドラー。全盛期の迫力は望むべくもないが、細かな出はいりをキープしつつ、手数を増やして積極性をアピール。一方のソトは、バドラーのステップを追い切れず、徐々に息が上がり出す。

ベテランの元王者をナメていた訳ではないだろうが、調整不足が垣間見える。ソトのペースダウンが明確になった第7ラウンド、ESPNのアンオフィシャル・ジャッジが初めてバドラーにポイントを与えた。

ラウンドが進むにつれ、顕著なスローダウンへとさらなる下降が続くソト。しかし、バドラーは足を止めることなく、代名詞だった全力のフル・スウィングも封じ込め、慎重な出はいりを堅持。最終ラウンド、疲労と焦りで隙が増えたソトを、バドラーの右カウンターが捉える。

腰から落ちてエイト・カウントのダウン。致命的なダメージこそないが、完全にダメを押した格好となり、ESPNのアンオフィシャル・スコアも、7ラウンド以降はすべてバドラーに振るしかなかった。

3名のオフィシャル・ジャッジが、113-114の1ポイント差ながらも全員一致でアウェイの古豪に軍配を上げる(ESPNのスコアも同じく113-114)。


率直に申し上げて、バドラーのコンディションの良さに驚いた。歴戦のダメージと消耗が目立つベテランが長い休みを取り、一次的にせよ疲れが抜けて鋭気を取り戻すことがある。

「問題なく勝てる」と踏んだソトの油断に助けられたのも事実ではあるが、12ラウンズの長丁場をフルに動き続け、後半勝負の作戦を見事にまとめ切ったバドラーとコリン・ネイサン(チーフ・トレーナー)を賞賛するしかない。


奇跡的なアップセット(?)により世界の第一戦に舞い戻ったバドラーだが、再び丸々1年のレイ・オフ。今年5月にヨハネスブルグでセットされたチューンナップは、109ポンド契約の10回戦で、対戦相手は無名のタイ人。

ソト戦に比して明らかに重く見える足取りに一瞬不安を覚えたものの、開始間もなく放ったボディから上に返す左フックの連射で、タイ人は遭えなく腰から沈没。エイト・カウントで立ち上がった後、レフェリーがそのまま試合を止めた。

力の差が有り過ぎて、調子と状態を正確に測ることが難しい即決KO。ソト戦に続く綺麗なノックアウトのお陰で(?)、思いのほか賭け率は接近している。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
拳四朗:-600(約1.17倍)
バドラー:+450(5.5倍)

<2>betway
拳四朗:-1000(1.1倍)
バドラー:+650(7.5倍)

<3>ウィリアム・ヒル
拳四朗:1/10(1.1倍)
バドラー:11/2(6.5倍)
ドロー:20/1(21倍)

<4>Sky Sports
拳四朗:1/12(約1.08倍)
バドラー:8/1(9倍)
ドロー:20/1(21倍)


直近の防衛戦(4月8日/有明アリーナ)で、ルディ・エルナンデスの秘蔵っ子,トニー・オラスクアガ(2戦続けての来日/アンダーカードの8回戦に登場予定)に強いられた苦闘も、オッズに少なからず影響しているのかもしれない。

個人的にはSky Betの1-9を支持したいし、額面通り拳四朗のKO防衛は堅い筈。アウトボクシングに活路を見い出すしかないバドラーに取って、一段と威力を増した拳四朗の左ジャブは、明白なサイズの違いも併せて大きな壁となって立ちはだかるだろう。

唯一最大の不安要素は、矢吹正道(緑)との再戦,京口紘人との統一戦の快勝で、打ち合いに開眼したかのごとく積極性を増したスタイルの変貌。


オラスクアガのポテンシャルと将来性は、間違いなくS級の評価が与えられて然るべき。それでもなお、プロキャリア僅か5戦の24歳に追い詰められた前戦の出来を、遠来のバドラーとネイサンが大きな攻略の糸口と捉えても無理はない。

5月のチューンナップとは別人のバドラーを、完全アウェイのメキシコでソトをコントロールしたバドラーを、拳四朗と寺地会長は想定する必要がある。

スタートから一気に距離を詰めて、強引なプレスでバドラーの足を止めにかかるのか。それとも以前のように、滑らかなフットワークで対抗するのか。


どちらにしても、バドラーは煩く出はいりしながら、低い姿勢とボディワークで拳四朗のジャブを外し、ディフェンスを軸に据えた駆け引きでリズムとテンポを崩しにかかる。ソト戦同様、前半戦のポイントをすべて捨ててでも、拳四朗のペースを乱すことに腐心するに違いない。

正面から打ち合い勝負に出た拳四朗が、バドラーを捉え切れずに空転する可能性を全否定し切れない恐れを、ソト戦のバドラーが感じさせるのも確か。

曲者ガニガン・ロペスを1発でし止めた右のボディ・ストレート(2018年5月のリマッチ)が、生命線のジャブ,レバーを抉る左ボディとともに、大きなカギを握るかも・・・。


◎拳四朗(31歳)/前日計量:107ポンド(48.6キロ)
現WBC(通算V10/連続V8)・WBA(V1)統一L・フライ級王者
元日本L・フライ級(V2/返上),OPBF L・フライ級(V1/返上),元WBCユースL・フライ級(V0/返上)王者
戦績:22戦21勝(13KO)1敗
世界戦通算:13戦12勝(8KO)1敗
アマ通算:74戦58勝(20KO)16敗
2013年東京国体L・フライ級優勝
2013年全日本選手権L・フライ級準優勝
奈良朱雀高→関西大学
身長:164.5センチ,リーチ:163センチ
※矢吹正道第2戦の予備検診データ
右ボクサーファイター


◎バドラー(35歳)/前日計量:107.6ポンド(48.8キロ)
元WBA世界ミニマム級王者(V5)
※V6戦前にスーパー王者昇格,バイロン・ロハス(ニカラグァ)に敗れて王座転落
戦績:39戦35勝(11KO)4敗
身長:159.5センチ,リーチ:166.5センチ
※田口良一戦の予備検診データ
好戦的な右ボクサーファイター





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■オフィシャル

主審:グァダルーペ・ガルシア(メキシコ)

副審:
ラウル・カイズ・Jr.(米/カリフォルニア州)
ホセ・マンスール(メキシコ)
ジョエル・スコービー(カナダ)

立会人(スーパーバイザー):未発表


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■キック・オフ・カンファレンス



◎フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=SmFNfNLCS-4


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国際式2戦目に臨む那須川天心(帝拳)は、対戦相手の変更がどう響くのか。初陣で与那覇勇気(真正)を完封しながら、一部のファンから判定決着に関する不満の声が漏れていた。

「日本キック史上最高」と称される存在故に、期待のハードルが高くなるのは致し方のないところではあるものの、ノックアウトにこだわり過ぎず、自ら信ずるボクシングを追及し続けて欲しい。

拳四朗への大善戦で、敗れたとは言え高い評価に確信を得た”ルディの秘蔵っ子”トニー・オラスクアガ(米)も、フライ級契約の8回戦で連続参戦。

中谷潤人と空位のWBOフライ級王座を争ったジーメル・マグラモ(比)は、前日計量で40グラムのオーバー。全裸になって秤に乗ったが、契約ウェイトをクリアできず。50.9キロでパスしたオラスクアガが、そのまま了承したと思われる。

桑原拓(大橋)とのOPBF王座戦でも、マグラモは900グラムオーバーしていた前科があり、40グラムまでおっつけただけでも良しとすべき・・・?。

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