43歳の閃光三度び日本のリングへ - 両国トリプル世界戦プレビュー 【堤 vs ドネア Part 2】 -
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■12月17日/両国国技館/WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
正規王者 堤聖也(日/角海老宝石) vs 暫定王者 ノニト・ドネア(比)
正規王者 堤聖也(日/角海老宝石) vs 暫定王者 ノニト・ドネア(比)
「倒されたら立ち上がって倒し返せばいい」
「今のドネアに負けることは許されない」
「ずっとずっと準決勝にいる感じです」
発する言葉の端々に、この試合に懸ける堤の覚悟が滲み出る、自身に有利なオッズについて聞かれれば、「ドネアを低く見過ぎ」だと意に介さず、必殺の左フックに対する警戒とともに、「何が何でも突破しなければ(すべてが水泡に帰す)」との決意が溢れ出す。
<1>BetMGM
堤:-275(1.36倍)
ドネア:+230(3.3倍)
<2>シーザース
堤:-380(1.26倍)
ドネア:+260(3.6倍)
<3>ウィリアム・ヒル
堤:2/7(1.29倍)
ドネア:11/4(3.75倍)
ドロー:14/1(15倍)
<4>Sky Sports
堤:4/11(1.36倍)
ドネア:3/1(4倍)
ドロー:18/1(19倍)
本来ならば、7月にやる予定だった暫定王者アントニオ・バルガス(米)とのWBA内統一戦を、2年前から不調を訴えていた左眼の手術を理由に延期。堤は休養王者への横滑りを余儀なくされ、バルガスが正規へと昇格。
手術は左右両眼に行われ、無事な回復が伝えられると、ペンディングになっていたバルガス戦が12月17日開催でフィックスされるも、今度はバルガスが私的理由(母親の逝去による精神的なショック)で戦線離脱。
何とか日本開催に持ち込み、承認料の荒稼ぎを狙うお手盛りとは言え、6月にアルゼンチンで暫定王座を獲得したドネアとの対戦をWBAが義務付け。キャリア最大のライバルでもあり、戦友でもある比嘉大吾(白井具志堅→志成)に引導を渡した格好のバルガスの撤退は、堤のモチベーションに少なからぬ影響を与えたに違いない。
なおかつ代わりに浮上したドネアは、どこからどう見てもキャリアの終幕を迎えており、最短での殿堂入りを確実視されているとは言え、半ば「勝って当たり前」と表すべき状況。戦友比嘉の敵討ちという、年末に打ってつけのストーリーも含めて、色々な意味でバルガスの方がやり易かった。
バルガス戦を飛ばす原因となった眼疾は、懸念材料の筆頭。ファンなら誰もが気がかりで心配をしている筈。左眼の角膜に傷ができてしまい、痛みと濁りで酷い時はまともに目を開けていられなかったというから、そんな状態でキャリアを左右する大勝負をよく続けていたものだと驚くばかり。
症状を放置して治療が遅れれば、角膜の上皮が欠損するなどして、より深い層にまで病巣が浸透。角膜潰瘍を発症する恐れもあるという。角膜を傷つける原因のトップは、コンタクトレンズ装着時のアクシンデントとのことだが、堤の場合、やはり激闘の代償で負った戦傷ではないかと疑ってしまう。
今後も戦い続けていく以上、傷病名や状態をつまびらかに出来ない事情は理解するけれど、そうであるがゆえに心配も尽きない。手術が両眼に及んだという点も、詳細を知ることができないファンの不安を増幅する。「もう問題ない。万全です」と語る堤の言葉を、今はただただ信じるしかない。
◎公開練習
2025年12月3日/oricon
オープン・ワークアウトの堤は、パンチにも動きにもキレがあって好調そのもの。石原トレーナーとのミットワークでも、鋭いジャブから小気味のいいショートのコンビネーションを叩き込み、これだけ見ていれば頼もしい限り。
前日計量にはゲッソリ殺げた頬で登場。大胆にウェイトを上げ下げしてきたドネア以上に、減量は過酷さを増している様子。止むを得ないことではあるが、ここからのリカバリー,回復が何よりも重要になる。
◎計量後の囲み取材
2025年12月16日/oricon
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◎参考にすべきサンティアゴの戦い方
公称159センチのアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)は、あえて遠目の中間距離をベースにして、左フックのカウンターを徹底して警戒しながら、鋭く素早い踏み込みで大きなドネアとの距離を潰すことに成功した。
同じ位置に留まらないよう、頭の位置にも気をつけつつ、踏み込む時にはさらにクラウチングを深くして、西岡利晃を沈めた(右)アッパー対策も兼ねるなど、至るところに工夫の跡が伺える。
もともとドネアのディフェンスには穴が多く、特にジャブを貰う確率が高い。あれだけの攻撃力と決定力があれば、オフェンスに偏重しがちになるのは当然で、左リードを無造作に出しては、引き手の戻りがおざなりになるところへオーバーハンドの右を狙い打たれる場面も増えた。
”フィリピノ・フラッシュ”の語源となったスピード&シャープネスを最大限に活かし、先に右(オーソドックス)を打たせておいて、一瞬遅らせてクロスで放つ電光石火の左フックは、”後の先”とも言うべき芸術の域に達していた。
加齢と勤続蓄積により、ダルチニアン,シドレンコ,モンティエルを血祭りに上げた当時の絶妙なタイミングは失われたが、破壊力は健在と見るのが妥当で無難。ドネアに容易に肉薄されない為にも、立ち上がりの早い時間帯に、当たらなくてもいいから(左右どちらでも)強打を見舞っておきたいところではある。
ただし、ドネアが元気な前半戦(3~4ラウンズ)の間は、正面突破の突進はしない方がいい。賢明なサンティアゴがやったように、どちらかと言えばロング・ディスタンスに身を置き、ドネアの打ち終わりに合わせて飛び込み、そのままサイドへ脱出するか、いっそくっついてブレイクを待つ。
右のオーバーハンドも常に狙いたいが、打ち込み際は頭と左肩を左サイドへ傾け、上体を沈めながら振り抜く。きめ細かい前後のステップを踏み、ドネアが疲れて集中の維持が難しくなるまで大振りは慎む。
せわしなく丁寧な出はいりとフェイントを繰り返し、前後左右に揺さぶりをかけ続けて、ドネアの頭脳を自由にさせないことが肝心。堤の眼に不安が無ければ、マージンはともかく順当に3-0の判定をモノにできる。
その為にも、とにかく拙攻・攻め急ぎは厳禁。豊富なアマ経験を今こそ総動員して、サンティアゴと同程度に攻防をまとめることさえ出来れば、後半から終盤にかけてストップを呼び込み、現役にこだわるドネアの執念を断つことも可能。
前半3~4ラウンズ、できれば6ラウンドを過ぎるまでは、攻防が単調かつ粗く雑にならないよう集中を切らさず、ドネアの左リードがルーズになる瞬間を逃さず、右を決め切って欲しい。
左ボディと十八番にする上下のコンビネーションは、その為の囮,陽動と考えるくらいで丁度いいのでは。
◎堤(29歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
WBAバンタム級王者(V1),元日本バンタム級王者(V2/返上)
戦績:15戦12勝(8KO)3分け
世界戦:2戦1勝1分け
アマ通算:101戦84勝(40RSC・KO)17敗
九州学院高校→平成国際大学
2013年(平成25年度)高校選抜L・フライ級優勝
※高校選抜:JOCジュニアオリンピックを兼ねる
身長:166センチ,リーチ:164センチ
血圧:157/91
脈拍:46/
体温:36.7℃
※計量時の検診
好戦的な右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)
◎ドネア(43歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
現WBAバンタム級暫定王者(V0)
戦績:51戦43勝(28KO)8敗
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世界戦通算:27戦20勝(12KO)7敗
■5階級制覇
(1)IBFフライ級:2007年7月~2009年7月(V3/返上)
(2)WBA S・フライ級暫定:2009年8月~2010年10月(V1/返上)
(3)WBC・WBO統一バンタム級:2011年2月~2012年2月(V1/返上)
(4)WBO J・フェザー級:2012年2月~2013年4月(V2)
(5)IBF J・フェザー級:2012年7月~10月(V0/返上)
(6)WBAフェザー級スーパー:2014年5月~10月(V0)
(7)WBO J・フェザー級:2015年12月~2016年11月(V1)
(8)WBAバンタム級:2018年11月~2019年11月(V1)
(9)WBCバンタム級:2021年5月~2022年6月(V1)
(10)WBAバンタム級暫定:2025年6月~(V0/在位中)
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アマ通算:68勝8敗(2000年シドニー五輪代表候補)
2000年全米選手権優勝
1999年インターナショナル・ジュニア・オリンピック(メキシコシティ)金メダル
1999年ナショナル・ゴールデン・グローブス ベスト8
※階級:L・フライ級
身長:170.2センチ,リーチ:174センチ
※井上尚弥第1戦の予備検診データ
血圧:121/88
脈拍:130/
体温:35.5℃
※計量時の検診
右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)
◎前日計量
◎前日計量:U-NEXT公式
https://www.youtube.com/watch?v=YSMvH0Olk7s
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■オフィシャル
主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)
副審:
レシェック・ヤンコヴィアク(ポーランド)
ピニット・プラヤッサブ(タイ)
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)
立会人(スーパーバイザー):安河内剛(日/JBC)
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■高見に残る懸念と不安
レネ・サンティアゴ(プエルトリコ)との統一戦に臨む高見享介(帝拳)は、パンチの決定力(重さと硬さ)だけを採れば、具志堅用高から始まった108ポンドの歴代日本人チャンプの中でも突出している。
持ち前の強打で一気に押し潰してしまうのがベストには違いないが、同門の岩田翔吉がやられたように、距離を縮める前に動かれすかされ、誤魔化し戦術に絡め取られて、空転を繰り返す恐れは十二分。
とにかく上体が突っ立てしまわないよう、ある程度ガードを楽に構えて、長めの距離をキープしながら間断なくジャブを突き、テンポ良くリズムを刻んで圧力をかけつつ、サンティアゴを呼び込む工夫も必要になる。
オラスクアガに挑む桑原は、遅かれ早かれのるかそるかの勝負に出るしかない。まともにボクシングをやっていたら、オラスクアガにプレスされて万事窮す。タイミングの余り良くない挑戦だが、チャンスはすべからくこうしたもの。
8~9割方の確率で、オラスクアガのKO防衛との見立てにならざるを得ない。

