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■12月6日/フロスト・バンク・センター(旧称AT&Tセンター),テキサス州サンアントニオ/WBC世界S・フェザー級タイトルマッチ12回戦
王者 オシャキー・フォスター(米) vs WBCフェザー級王者 スティーブン・フルトン(米)



「ふーん・・・」

S・バンタム級時代に繰り広げた接戦で因縁を結んだ(?)フィゲロアにけじめを着け、ベルトの統一に向けて急ぎ足で動き出すのかと思いきや、130ポンドに上げて3階級制覇に挑む。

東京で一敗地に塗れた我らがモンスターの参戦を待たずして、このまま126ポンドを後にしてしまうのか、それとも結果次第で王座を保持したまま出戻るつもりなのか。いずれにせよ、フルトンの3冠挑戦が報じられた時、さしたる感慨にふけることもなく、思いの外(ほか)恬淡としている己に気づく。


「イノウエがやるべきことをやったら、もう一度戦う。そして私自身の実力をあらためて証明したい。」

帰国後に受けたインタビューのどれかで、あるいはフィゲロアへの挑戦(再戦)が決まった直後だったかもしれないが、リベンジへの思いを口にしていたと記憶する。しかし、それはそれ、これはこれ。

サイズ(階級&体格)の違いは、明白な実力差を埋めて余りあるアドバンテージを大きな選手に与える。その事実を踏まえる前提で、両雄のリマッチ(126ポンド)を想像してみるが、どう考えを張り巡らせようとも、我らがモンスターの優位は動きそうにない。

再戦があればあったで良し。無ければ無いでそんなものかと・・・。


それより何より問題なのは、ちっともワクワクしない期待感の無さ。130ポンドと126ポンドのWBC現役王者対決。しかもチャレンジャーのフェザー級王者には、3階級制覇が懸かっている。90年代以前(20世紀)のプロボクシングなら、世界中のファンと関係者が注視せずにはいられない「事件」だった。

WBAとWBC老舗2団体が我先にと争いながら、猛然と突っ走り続けた乱脈なチャンピオンシップ運営が招いた当然の帰結。ミもフタも無い言い方で恐縮だが、チャンピオンとランカーの粗製乱造による権威の失墜と喪失は、止まるところを知らない。

リスク回避を第一に、ポイントメイクを主眼にして揺るがない王者フォスターのスタイルが、興味と関心の低下にさらなる拍車をかける。上手いと前向きに評価することもやぶさかではないものの、それ以外に評価のしようがないボクシング。

そしてムーヴィング・センス&クィックネスを含む完成度は、例えばシャクール・スティーブンソンの域には達しておらず、手足と身体全体のスピード&シャープネスにおいても、世界最高水準の太鼓判を押すことは難しい。


ウェルター級に転じたフロイド・メイウェザーが、露骨極まりないラスベガス・ディシジョンのバックアップを背景に確立した”タッチ&アウェイ”は、王国アメリカで戦う黒人選手たちを中心にして、世界的規模で瞬く間に拡散浸透。数多くのクローン(亜流)を生むこととなったが、フォスターもその列に並ぶ1人。

どうしようもない”出来損ないのコピー(失礼)”が引きも切らず、玉石混交の渦の中でフォスターは十二分に上等の部類と評せはするけれど、「何を置いても観なければ」と、筋金の入ったファンのモチベーションを掻き立ててはくれない。

共産主義体制の崩壊により、90年代に始まった旧ソ連・東欧出身のエリート・アマ流入は、王国アメリカの屋台骨を揺るがす深刻な人材の枯渇(特に中~重量級の黒人選手のレベル低下)、年間にこなす試合数の激減と相まって、プロボクサーの高齢化を一気に加速拡大した。

執拗なクリンチ&ホールドの横行を、むしろ積極的な容認支援すら惜しまない王国アメリカのレフェリングの堕落が、見るも無残な抱きつき合戦と、それによる安易なインファイト潰しを常態化させてしまう。

ご本尊のメイウェザー様が第一線を退き、落ちるところまで落ちたレフェリング&スコアリングにようやく揺り戻しの兆しが見られ、今やプロボクシングの頂点に君臨しようかという(?)トゥルキ長官の「トムとジェリー(必死に逃げ回るベイビー・フェイスのネズミを悪漢のネコが必死に追いかけ回す)は真っ平御免」発言に勇気付けられつつ、プロボクシングに巣食い根付いた”タッチ&アウェイ”からの脱却はほとんど不可能だろう。

何となれば、当のフルトンも立派な”メイウェザー・クローン”の流れに属する典型的な現代版ボクサータイプであり、何を血迷ったのか、フェザー級の初陣でタフなカルロス・カストロを相手にスタートから猛然と打ち合いに雪崩れ込み、したたかに効かされノックダウンを喫した挙句、薄氷の2-1判定に救われる大失態を経て、乾坤一擲のフィゲロア戦では原点回帰を選択。首尾良く2階級制覇に辿り着いた。



駆け引きとディフェンスに重きを置く(せざるを得ない)という点では、似た者同士と言えなくもない。しかしよりアクティブかつ、時と場合によってはインファイトにも応じるフルトンを、私個人は好ましいと思うし支持もしたい。

ただし、130ポンドから上のクラスになると、S・バンタムでストロング・ポイントになっていたサイズのアドバンテージがその機能を失う。

遠めの中間距離をベースにしつつ、間断のない出はいりを繰り返すフォスターは公称174センチ。130~140ポンドでは十分な長身と言える。リーチも183センチだから、正確な数値だと仮定すればメイウェザー(H:173センチ/R:183センチ)とほとんど同じ。

対するフルトンのタッパは公称169センチ(リーチ:179センチ)。ワールドクラスのトップで覇を競うレベルになると、10センチ前後までのサイズの不利をものともせず、傍目には容易く克服してのけるトップボクサーが大勢を占める。

しかしそうした場合、小さな選手に不可欠となるのがフィジカルの強さ。一定程度以上のパンチ力も、当然あるにこしたことはない。


フルトンが126ポンドで披露した2試合のみを持って、130ポンド以上では通用しないと結論付けるのは拙速の謗りを免れず、流石に憚られる。曲がりなりにも世界の第一線で鎬を削る技術と経験があり、より大きくてリスクテイクを嫌うフォスターを相手に、フルトンがいかなる戦術で打開を図るのか。

モンスターとは違い、フォスターが強打を振るって倒しにかかることはまず考えらない。KOされる心配はゼロに等しいけれど、右のカウンターを決め切るチャンスは自ずと限られる。

試合の内容と展開、そして結末は全然異なるにしても、我らがモンスターとの大勝負に臨んだ際、生命線のリードジャブで遅れを取り、強打の応酬だけでなく、分があると思われていたタッチ合戦でも優位に立てず、文字通りの完敗した悪夢がデジャヴのように蘇って仕方がない。

痺れを切らしたフルトンが前に出ざるを得なくなり、攻防のキメが粗くなったところをコツンと狙い打たれて、窮鼠猫を噛むインファイトもクリンチ&ホールドで阻まれる。目立ったクリーンヒットも無いまま、両者ともに綺麗な顔のまま終了。無念の小差0-3判定負けでフルトンが怒りの会見・・・そんな光景が当たり前に浮かんでしまう。

互いに安全圏から出ようとせず、フェイントとインサイドワークの掛け合いで12ラウンズを終えるのが想定し得る最悪のシナリオ。そうした微妙な塩梅を象徴するかのように、掛け率も拮抗。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
フォスター:-120(1.83倍)
フルトン:+110(2.1倍)

<2>シーザース
フォスター:-135(1.74倍)
フルトン:+105(2.05倍)

<3>ウィリアム・ヒル
フォスター:10/11(1.91倍)
フルトン:10/11(1.91倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
フォスター:19/20(195倍)
フルトン:15/13(2.15倍)
ドロー:16/1(17倍)


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◎フルトンがよもやのウェイト・オーバー

そんなこんなを書き連ねていたら、「フルトンが2ポンドオーバーで失格」との一報が舞い込み言葉を失った。しかもあろうことか、WBCがライト級(135ポンド)の暫定王座決定戦を認めるという。

馬鹿馬鹿し過ぎて真面目に論じる気にすらなれない。天心 vs 拓真戦に立会人として臨んだマウリシオ・スレイマン会長が、満面の笑みとともに持参した「サムライ・ベルト」にも呆れたが、タガの外れっぷりに関する限り、またぞろ正規・暫定・スーパーの並立をやり出したWBA以上ではないのか。

承認料の未払いを理由に、WBCからS・ウェルター級のベルトをはく奪されたテレンス・クロフォードが、自身のSNSで痛烈極まりない正論をぶちまけて話題になっている。「良くぞ要ってくれた」と喝采を浴びる一方で、払うものを払わずシカトを決め込むクロフォードを全面的に擁護する気にもなれない。


その昔、WBAバンタム級王者時代のルイシト・エスピノサに、J・バンタム級のトップランカーだったタノムサク・シスボーベー(タイ)が挑むことになり、関係者の1人として臨席していたジョーさん(ルイシトの個人マネージャーになるのは後の話)が、下から上げてきたタノムサクが最後の最後まで減量に苦しんでいたことを明かしていた。

「1階級上げるから楽だろうとみんな思う。でも違う。余裕があるからとキャンプでの体重調整が贈れ気味となり、直前になって慌てるケースは珍しくない。」

ジョーさんはそんな具合に述べていたと記憶するが、タノムサクは計量の時刻までに何とか118ポンドのリミットを間に合わせた。


バンテージへの言いがかりの一件では、王国アメリカの本当に嫌な一面を見せられたが、ことコンディショニングについて、フルトン自身は真面目にやりくりする選手だと感じていただけに、2ポンドもオーバーしておいて下げる努力を放棄する居直りには、もはや付ける薬が無い。

130ポンドのNo.1と目されているのは、心身ともに万全ではなかったけれど、とにもかくにもジャーボンティ・ディヴィスと互角以上に渡り合ったラモント・ローチで間違いなく、私生活でトラブルの耐えないディヴィスが戦力外となった為か、同じリングでイサック・クルスとS・ライト級のWBC暫定王座を争う。

フルトンもローチも、勝敗の結果如何によらず、現在保持しているベルトはそのまま承認される気配が濃厚。明らかにWBCも末期状態・・・。


◎フォスター(31歳)/前日計量:130ポンド
WBC S・フェザー級王者(第2期:V0/第1期:V2)
戦績:26戦23勝(12KO)3敗
世界戦:5戦4勝(1KO)1敗
アマ通算;100戦超(詳細不明)
2012年ロンドン五輪バンタム級代表候補
オリンピック・トライアル:アントニオ・ニエヴェス(井上尚弥の初渡米の相手)と、代表権を得たジョセフ・ディアスに勝ったものの、トラメイン・ウィリアムズに2戦2敗。補欠として代表チームに残る。
2010年ナショナルPAL優勝(バンタム級)
リングサイド全国トーナメント優勝×5回
ナショナル・ジュニア・ゴールデン・グローブス優勝×2回
※いずれも年度と階級不明
身長:174センチ,リーチ:183センチ
右ボクサーファイター


◎フルトン(31歳)/前日計量:132ポンド
※2ポンドの超過で失格
前WBC・WBO統一S・バンタム級王者(WBO:V2/WBC:V1)
戦績:24戦23勝(8KO)1敗
世界戦:5戦4勝1敗
アマ通算:75勝15敗
2014年ナショナル・ゴールデン・グローブス準優勝
2013年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
2013年全米選手権準優勝
※階級:フライ級
ジュニア:リングサイド・トーナメント優勝
ジュニア・ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
※年度及び階級等詳細不明
身長:169センチ,リーチ:179センチ
右ボクサーファイター


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■リング・オフィシャル:未公表