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■9月14日/IG(愛知国際)アリーナ,名古屋市/4団体統一世界S・バンタム級タイトルマッチ12回戦
統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs WBA暫定王者 ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)



※ファイナル・プレス・カンファレンス(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=l6_7RqfIk4E

「衰え」か、はたまた「増量の限界」か。

ノーマークの代理チャレンジャー,ラモン・カルデナスの左フックをまともに浴びて、腰からストンと落ちた我らがモンスター。昨年5月、4万5千人の大観衆で埋め尽くされた東京ドームを揺るがし、配信された映像を視聴する世界中のファンと関係者を騒然とさせた、ルイス・ネリー戦の第1ラウンドに続く生涯2度目のノックダウン。

なおかつ、倒されても鋭い眼光にいささかの影響も感じさせなかったネリー戦とは違い、明らかに効いている。残り時間が尽きていた為、再開即第2ラウンド終了となったが、楽勝の予想を一変させる急展開に息を呑む。


4年ぶりの王国アメリカ、武漢ウィルス禍による厳しい行動制限から解き放たれたメッカ,ラスベガスのリング。

オレクサンドル・ウシク(1位),テレンス・クロフォード(3位)との三つ巴が続く、リング誌パウンド・フォー・パウンド(P4P)ランキングのトップ争い、推定30億円の超大型契約が国際的な注目を集めて、リヤド・シーズン初登場(本年末)への期待もいや増し、来年5月の東京ドーム開催が決定した(?)中谷潤人との激突を視野に捉える・・・

満を持しての米本土登場に、入場時から常ならぬ高ぶりを隠せなかったネリー戦以上に気合が入り、和製モンスターは気負っているように見えた。

サム・グッドマン(豪/IBF指名挑戦者)の予期せぬ負傷に振り回された2024年、延期と対戦相手の変更が繰り返され、昨年末から今年1月24日にリスケされたキム・イェジェン戦を4回KOで終えた直後の会見で、珍しく「疲れました。(練習の再開は)暫く休んでから」と疲労を滲ませる。


ただ勝つだけでは済まされない。どのような挑戦者を迎えても、開始から終了まで圧倒的なパフォーマンスを要求され、少しでも相手に粘られると「階級の壁」「増量の限界」が囁かれてしまう。

「いやいや、減量が進捗している最中の1ヶ月延期はキツい。落とし始めた体重を一旦戻す時間的な余裕がない。リヤド初見参を含む年間4試合(2025年)を、当初の計画通り進める為に仕方が無いとは言え、流石にモンスターのコンディショニングが心配。」

「しかも9月のドヘニー戦に続く対戦相手の変更で、ピンチヒッターはまったく無名の若い韓国人選手。肉体的な負担以上に、モチベーションの維持がしんどい。そりゃあいくらモンスターでもまいるよ・・・」

そして4年ぶりのラスベガスは、シンコ・デ・マヨに合わせたWBC1位の人気者アラン・ピカソ(メキシコ)とのマッチアップ。だが何としたことか、ピカソ陣営が突然の出場辞退。ピカソ本人はやる気満々の体なのに、マネージャーを始めとするチームが挑戦を回避した。

3戦連続の挑戦者変更。「勝って(倒して)当たり前」ではなく、望まれているのは「有無を言わさぬワンサイドのノックアウト」のみ。代理挑戦のメキシカン,カルデナスは、フェザー級進出を意識してか、ドヘニー戦以降顕著なリバウンドの拡大路線を継続中のモンスターより一回り以上大きい。

「硬くなるな」と言う方が土台無理なシチュエーション。要らぬお節介、無駄な老婆心と承知しつつ、せんない一人語りがつい口を突いて出てしまう。「リラックスして。強振は要らない。軽めの左ジャブ中心でいい。上体を柔らかく、脚を良く動かして・・・」

おかしな不安が脳裏を過ぎる中、立ち上がりのモンスターは上々の滑り出し。重量感に満ちたジャブ&ワンツーをヒットして、カルデナスを下がらせる。ところが、ここでまた嫌な予感がムクムクと鎌首をもたげた。

「ドヘニー、タパレス戦と同じ流れ(ディフェンス第一の待機戦術)か。前がかりになり過ぎなきゃいいけど・・・」

第2ラウンドに入ると、カルデナスが守勢一辺倒になりそうな気配を感じたモンスターが、案の定積極性を増す。力量の差は誰の目にもはっきりしているが、カルデナスは単純に大きいだけでなく、メキシカンらしい心身のタフネスだけはパンテラ・ネリーを上回る。

そして終了間際に起きたショッキングなダウン。残り10秒を知らせる拍子木の音は聞こえていた筈なのに、モンスターはロープ際まで後退するカルデナスを追って、いささか雑に、らしくない左フックを振るう。

あくまで威嚇目的だったと思うが、狭い空間をスッと右へ横移動しながら、カルデナスがショートの左フックを一閃。下から突き上げるように、モンスターの顔面を捉えた。

第3ラウンド以降、平常運転に戻ったモンスターは、危ない被弾を許すことなくペースを握り、ほぼ問題のない展開に引き戻してダメージを与え続け、第7ラウンドに右の4連打でダウンを奪い返すと、第8ラウンドにレフェリーストップを呼び込み終了。


終わってみれば完勝。間違いなく圧倒はしたけれど、カルデナスも非常に良く仕上がっていて、頑健なフィジカル以上にメンタルも強靭だった。序盤のダウンで自信を持ったのも確かだったが、モンスターの強打を浴び続けて後退を余儀なくされ、一瞬怯むことはあっても、すぐに気持ちと身体を立て直して反撃する。クリンチもほとんどない。

ポストファイト・カンファレンスで、先に席に着いていたカルデナスがステージに登場してきたモンスターを見て立ち上がると、満面に笑みを浮かべて自ら握手を求めるモンスターの姿が印象的だった。

「心からカルデナスを認めている。」

ダウンを奪われたからではない。苦境に陥っても挫けないカルデナスの闘志、闘い続けようとする意思の強さ、ダーティファイトを良しとしない心意気,志の高さに、モンスターはごく自然に敬意を表したのだ。


S・ウェルター級に上げたクロフォードが、懸念されていた通りWBA王者イスラエル(イズライル)・マドリモフ(ウズベキスタン)との体格差に苦しみ、厳しい12ラウンズを何とか乗り切って4階級制覇を達成はしたものの、パフォーマンスの低下は否めない。

P4Pランクの逆転は無いだろうと思い、実際トップ3の入れ替えはなかった。けれども、生涯2度目のダウンに加えて、アフマダリエフとカルデナスのトレーナーが同じ(南カリフォルニアを代表するコーチ,ジョエル・ディアス)ということも相まって、アフマダリエフ戦に向けたファン及び関係者の興味と関心は否が応にもアップする。

そこで直前のオッズ。意外にも(?)大差が着いている。身銭を切って賭ける人たちは、問題なくモンスターの勝利を支持。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井上尚弥:-1100(1.09倍)
アフマダリエフ:+650(7.5倍)

<2>betway
井上尚弥:-1000(1.1倍)
アフマダリエフ:+600(7倍)

<3>ウィリアム・ヒル
井上尚弥:1/10(1.1倍)
アフマダリエフ:6/1(7倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
井上尚弥:1/8(1.13倍)
アフマダリエフ:7/1(8倍)
ドロー:33/1(34倍)


率直に申し上げて、私の感覚もほぼオッズ通り。仮にモンスターが本当に衰え出していたとしても、攻め急いで攻防のキメが粗雑にならない限り、アフマダリエフに名をなさしめる心配は無い。

「階級の壁」にガツンとぶち当たった訳でもない。フェザー級を見据えたフィジカルの強化が、マイナスに響いている可能性=身体を大きくし過ぎて(リバウンド込み)運動量を落とさざるを得ない=を完全に否定することは現時点では憚られる。その点だけは、今夜のリング上を見てみないとわからない。

ただ、衰えているとすれば、それはむしろアフマダリエフではないのか。五輪(銅)と世界選手権(銀)でメダルを獲った実績、豊富なアマキャリアに裏打ちされた技術と経験、モンスター本人が認めたフィジカル&パンチング・パワーは紛れも無い本物。

しかし、アフマダリエフの試合映像を見返す都度感じるのは、接戦をしのいで2-1判定を握り、2団体統一王座に就いたダニエル・ローマン戦から、日本を代表するS・バンタムの1人で、暫定を含めてIBFの王座を2度獲得した岩佐亮佑(セレス/引退)を下した2020年から2021年が、この人のピークだったのではないかということ。

◎公開練習
<1>アフマダリエフ


※ノーカット版
https://www.youtube.com/watch?v=05pnKIBrAHs

<2>モンスター


<3>真吾トレーナーの反応



スピードはけっして世界の最高水準ではないが、素早く強いワンツーと強烈な左フックで圧力をかけ、相手を下がらせ続けるのがアフマダリエフ本来のボクシング。ディフェンスは前後のステップを軸に足で外すのが基本型。タフで気の強い相手に粘られたり、プレスが効き切らずに思わぬ反撃を食らうと、一転して距離のキープに務めて深追いを避ける。

防衛戦で唯一の判定勝ちとなったホセ・ベラスケス戦(2021年11月)が、その典型例。公称159センチの小柄なチリ人は、武漢ウィルスの感染症を発症したロニー・リオスに代わり、急遽用意された下位ランカー。かなり格下のベラスケスを、MJは開始と同時に猛然と攻め立てた。

けっしてナメてはいなかった筈だし、実力差が明白な代理挑戦者をさっさと片付けようと、短期決戦を仕掛けること自体は間違っていない。だがしかし、小さなベラスケスが強引に大振りする右フックは想像以上に重く、大ベテランのチーフ,ジョエル・ディアスは速やかに作戦を変更。

窮鼠猫を噛んだベラスケスの1発に気を付けながら、慎重に出はいりを繰り返しつつセーフティ・リードを保ち、三者一致の大差判定勝ち(119-109)を収めはしたが、アンダードッグをフィニッシュし切れなかった恨みは残る。


2022年6月に仕切り直したリオスとの指名戦では、長身の勇敢なパンチャーを強烈なボディ1発で弱らせ、早い決着かと思いきや、必死に持ち直して食い下がるリオスを警戒。ベラスケス戦に続いてラウンドが長引き、「今回も判定か」と思われた最終12回、ボディアタックを受け続けたダメージによる決壊でリオスが沈没。

世界ランクの常連だったリオスは、ベラスケスとは一味も二味も違う本物の実力者で、判定に持ち込まれても何ら不思議はなく、最終的にKO(TKO)したのは流石と評すべき。

15戦のプロキャリアで経験した世界戦は7回(直近の暫定王座決定戦を含む)。結果は6勝(4KO)1敗で、王座に就いたローマン戦と、番狂わせに泣いたタパレス戦はいずれも2-1のスプリット。


相手に対する警戒のシフトチェンジ、必要に応じて深追いを避けるアフマダリエフについて、とにもかくにも、一方的かつ何もさせずに倒し切ることにまい進するしかなかったドヘニー戦以降のモンスターと比較して、「イノウエは後退(戦術転換)できないんだ」と述べたジョエル・ディアス。

それが本心から出た言葉、正真正銘の本音だとすれば、大きな誤りと指摘せねばならない。2023年12月のケヴィン・ゴンサレス戦以降、連勝を重ねて復調しているとは言いつつ、ローマン戦や岩佐戦当時のキレと冴えは無くなったまま。もともと守りは鉄壁と言える水準ではないが、ケアレス・ミス(うっかり被弾)も増えていた。

そして僅かに公開される練習映像から確認できるモンスターは、以前(今のところキャリアのベストとすべきバンタム級以降)と変わらぬスピード&反応を維持している。


「今回は勝ちに徹する。無理をしてまで倒しには行かない。どういう展開になっても、競った判定になっても勝てばいい。」

ディアスの分析(ブラフ?自らに言い聞かせている?)を見透かすかのように、会見で基本方針を明らかにしたモンスター。その言葉とは裏腹に、「でも、きっと倒しに行くんだろうな」と、日本のファンの大半がそう確信している。無論、私も同じ。


タパレスとの指名戦を延期せざるを得なかったアフマダリエフの左拳と手首は、ベラスケス戦とリオス戦で傷めたと言うより、アマチュアを含めた長いキャリアによる勤続疲労と考えるべきだろう。

タパレス戦でどこまでその影響が残っていたのか、あるいは今もまだ全力で打ち込めないのか。真実はアフマダリエフ本人にしかわからない。しかし拳の負傷と言えば、我らがモンスターも過去に右拳を複数回骨折している。

115ポンドの初陣で、熟練の古強者オマール・ナルバエスを瞬殺。文字通り世界に名乗りを上げた快勝の代償として右拳を骨折。丸々1年休んで復帰した初防衛戦でまたもや負傷。無理を押して強行したV2戦(2016年5月/デヴィッド・カルモナに大差3-0判定勝ち)とV3戦(2016年9月)でさらに悪化させた。

過酷さを増す減量苦も加わり、腰痛まで背負ってしまった若きモンスターに、4度左拳を骨折して7度もの手術を受け、左肩の脱臼癖にも悩まされた”カミソリ・パンチ”こと海老原博幸の苦悩と苦難が重なる。

満身創痍の海老原は、世界王者としては大きな実績を残せずに、溢れんばかりの天才を完遂することなくキャリアを終えたが、モンスターには窮地を救う救世主が登場。バンテージ職人として名高い永末貴之氏(“ニック”の愛称で知られる)氏の助けを借りて、モンスターは最大の危機を乗り越えた。無論モンスターの右拳も、いつまた壊れても不思議はない。

クラウチングに上体を一瞬沈めて、頭ごと下からぶつかるようにクリンチに行くアフマダリエフを真正面から受け止めたり、右の打ち下ろしを合わせに行くのは危険過ぎる。頭がぶつかってカットしたり、右拳の故障という最悪の事態を招きかねない。


グッドマンがもたらした暗雲(とんだ災難)を完全に振り払う為に、今こそ課されるべきモンスターのテーマは、「フルトン戦への回帰」一択あるのみ。

異常なまでに高い集中力と研ぎ澄まされた反応、歩幅を自在に調整しながら、これもまた尋常ならざる速さで移動を繰り返すステップワークと、身長&リーチの差をいとも容易く潰してしまい、フルトンの生命線とも言うべきジャブの刺し合いをも制した正確無比な左リード(&ボディストレートのコンビネーション)。

122ポンドのラスボスを完黙させた、水も漏らさぬ最上級のテクニック&スキルを発揮すれば、まったく危なげのない攻防を創出した上で、中盤~後半にかけてのフィニッシュに期待が高まる。

反面アフマダリエフに活路があるとすれば、クロスレンジでのパンチの交換・応酬に持ち込み、左フックの一撃を決め切るか、その左を囮に使った返しの右フックでモンスターを撃沈させるぐらいしか思い浮かばない。

フリッカー気味に放つタパレスの右リードに反応できず、試合の流れを引き寄せ切れなかったアフマダリエフ。モンスターの左ジャブは、タパレス以上に速くて正確で強烈。足を止めず全補佐雄に動きながら、とにかくジャブを絶やさないこと。

ドヘニー戦~カルデナス戦までの、正面に立ち付けて強打を振るうファイタースタイルは、自ら語った言葉通り完全に封印して欲しい。


◎井上(32歳)/前日計量:121.7ポンド(55.2キロ)
WBA(V4)・WBC(V5)・IBF(V4)・WBO(V5)4団体統一王者
前4団体=WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
戦績:30戦全勝(27KO)
世界戦通算:25戦全勝(23KO)
※4団体統一S・バンタム級王座連続V4(2020年10月31日~継続中)
※世界戦11連続KO勝ち(20)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
※計量時の測定
血圧:122/81
脈拍:65/分
体温:35.9℃
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎アフマダリエフ(30歳)/前日計量:121.3ポンド(55.0キロ)
現WBA S・バンタム級暫定王者(V0),元WBA・IBF統一S・バンタム級王者(V3)
戦績:15戦14勝(11KO)1敗
世界戦通算:7戦6勝(4KO)1敗
アマ通算:300勝20敗
2016年リオ五輪バンタム級銅メダル
※準決勝でロベイシー・ラミレスに0-3負け
2017年世界選手権(ハンブルク/独)バンタム級2回(緒)戦敗退
2015年世界選手権(ドーハ/カタール)バンタム級銀メダル
※決勝でマイケル・コンランに0-3負け
2017年アジア選手権(タシケント/ウズベキスタン)金メダル
2015年アジア選手権(バンコク/タイ)銀メダル
2014年アジア大会(仁川/韓国)バンタム級初戦敗退
※ロベイシー・ラミレスやデューク・レーガンと対戦した中国のジャン・ジャウェイ(Zhang Jiawei)に0-3でポイント負け
2012年ユース世界選手権(イェレヴァン/アルメニア)L・フライ級銀メダル
2013~14年ウズベキスタン国内選手権優勝(階級不明)
身長:166センチ,リーチ:173センチ
血圧:137/70
脈拍:75/分
体温:36.1℃
左ボクサーファイター

◎前日計量


プロデビュー戦と2戦目を128ポンド超のS・フェザーで戦い、3戦目でフェザー級まで絞り、4戦目からベストと想定されるS・バンタム(アマのバンタム級は56キロ上限)に落ち着いたMJは、以降の11戦をすべてS・バンタムリミット契約でこなしてきた。

計画的な増量でフェザー級を目指すモンスターも、122ポンドの維持がいよいよ困難になりつつあると思われるが、アフマダリエフも相当に厳しいのではないか。体重の維持が限界を超えているのは、実はウズベクのヒーローという気がしてならない。

「(計量前に)水を飲んできた。ウェイト調整にまったく問題はない。」

どこまでも余裕を見せるアフマダリエフ。3週間前に来日については、時差の解消も含めた対応との説明にウソはないと思うが、タパレス戦以降のパフォーマンスがイマイチなのも、左拳(と手首)の故障ではなく減量の影響と考えれば合点が行く。

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■オフィシャル

主審:ベンス・コヴァックス(ハンガリー)

副審:
ヘラルド・マルティネス(プエルトリコ)
マイク・フィッツジェラルド(米/州)
ファン・カルロス・ペラヨ(メキシコ)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:ホセ・ゴメス(パナマWBAランキング委員)
WBC:マイケル・ジョージ(米/ロードライアンド州/WBC国際事務局員)
IBF:マッシミリアーノ・ビアンコ(伊/IBF理事)
WBO:レオン・パノンチーリョ(米/ハワイ州/WBO副会長/タイ在住)


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■クロフォードとのP4Pトップ争いの行方やいかに・・・

まったく同じ日になるとは思わなかったが、147ポンドからさらに3階級を上げてカネロに挑むクロフォード。154ポンドでの苦闘を思うと、168(+14)ポンドの調整が成功する確率は極めて低い。そう考えるのが妥当だ。

しかも、安全運転に閉じこもることにかけては、現在のカネロもまた当代随一と言ってよく、S・ウェルター級で明確に退化したクロフォードのスピード&反応が、168ポンドにある程度フィットできたとしても、ステロイドを使って(?)実現したカネロのフィジカルに弾き返される公算が大。

注目の前日計量は、双方ともに167.5ポンド。卓越したクロフォードの技とセンスなら、年齢的な限界も見え始めたカネロを何とかしてしまうのでは?との希望が皆無ではないけれど、おそらく無理はしないであろうカネロをどうやって崩すのか。

万が一にも(?)クロフォードが勝利を収めて、「3階級+4団体統一(+5階級制覇)」に成功すれば、ウシクとモンスターを抜いて再びP4Pのトップに立つのは疑う余地無し。


2023年7月25日、フルトンを寄せ付けずに8回KOに沈めたモンスターは、文句無しでP4P1位を回復する筈だったのだが、僅か4日後の7月29日、エロール・スペンスとの4団体統一戦を圧勝で制して、一足早く男子初の「2階級+4団体統一」を果たしたクロフォードに逆転を許している。

今回もまた、リング誌P4Pの頂点をクロフォードにさらわれてしまのかどうか。モンスター自身の結果と内容が問われるのは言うまでないが、クロフォードの場合おそらく内容は問われない。それぐらいのミラクルと認識すべきだ。

スポーツブックの描け率は思いのほか競っている。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
カネロ:-185(1.54倍)
クロフォード:+155(2.55倍)

<2>betway
カネロ:-163(1.61倍)
クロフォード:+140(2.4倍)

<3>ウィリアム・ヒル
カネロ:8/13(1.62倍)
クロフォード:13/10(2.3倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
カネロ:7/11(1.64倍)
クロフォード:8/5(2.6倍)
ドロー:18/1(19倍)

◎前日計量