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■モンスターがリヤド・シーズンと破格の契約 1



既報の通り、我らがリアル・モンスターがリヤドに降り立った。総額30億円の契約が大きく喧伝され、海の向こうからは、「馬鹿げている。そんな高額じゃない」と冷や水をかける異論が飛び出すなど、当然ボクシング界限定ではあるが、国際的な規模で話のネタになっている。

報道によれば、契約の概要は以下の通り。

(1)スポンサーシップ契約の締結
(2)意義・目的:サウジアラビアと日本の外交関係樹立70周年(2025年)を記念するとともに両国のスポーツ分野を通じたアンバサダー的な役割を期待
(3)トランクス広告:今後使用する試合用トランクスの正面ベルトラインに「リヤド・シーズン」のロゴを掲載
※12月24日のサム・グッドマン戦~契約満了まで(契約期間:未発表)
(4)試合契約は結んでいない(含まれていない模様)
(5)来年超特大のサプライズを用意(!)
※井上陣営にとって最適のタイミングで発表予定(乞うご期待)

◎参考サイト
サウジアラビア総合娯楽(エンターテイメント)庁(リヤド・シーズン)が井上尚弥選手との歴史的契約を締結!
~サウジアラビアと日本の友好関係樹立70周年を祝し、スポーツパートナーシップを発表~
2024年11月4日/PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000077175.html


◎現地で行われた調印式
井上尚弥、サウジアラビアで“推定30億円”の大型契約を締結 2025年のビッグサプライズも予告「彼は史上最強のファイター」
2024年11月6日/oricon
https://www.youtube.com/watch?v=65QLIa0jKgY


「2025年度中のメガ・サプライズ」も含めて、契約の中身がすべて明らかにされた訳ではないが、主に日本国内における「リヤド・シーズン」の広告塔。それが、我らがモンスターに与えられた使命になる。

1,900万ドル($19 million:現在のレートで約29億円)と報じられた契約金(?)は、手っ取り早く言うと「看板料」だが、(推定)30億円を法外と見るか妥当と見るか、はたまた「安い」と断じるかは人それぞれ。


サウジ当局とモンスターの接近は昨年来報じられていたし、タパレス戦の直後の会見で、大橋会長が冗談交じりにではあるが、「サウジアラビアも考えています。はっきりは決まってませんが、選択肢にはあります。」と含みを持たせている。

また、幾つかの在米専門サイトも、サウジ行きに関する見通しに言及した記事をアップ。今年の3試合について、何処で誰とやるのか占っていた。

トップランクも大橋会長に足並みを揃えるように、本件に関して公式サイトのNewsページで報じていたが、今年7月にはリヤド・シーズンとのパートナーシップ締結を正式にリリース済み。規定の路線と表して間違いない。

Hangler_Monster
※左から:ボブ・アラム,モンスター,大橋会長(タパレス戦)

◎井上尚弥の今後 サウジアラビア開催を大橋会長否定せず 相手はネリ、アフマダリエフら視野
2023年12月27日/デイリースポーツ【公式】


◎関連記事:トップランク公式他
<1>THE NIGHTMARE ON CHRISTMAS EVE: NAOYA INOUE TO DEFEND UNDISPUTED SUPER BANTAMWEIGHT CROWN AGAINST SAM GOODMAN DECEMBER 24 AT TOKYO’S ARIAKE ARENA LIVE ON ESPN+
2024年10月24日/Top Rank
https://www.toprank.com/all-news/the-nightmare-on-christmas-eve-naoya-inoue-to-defend-undisputed-super-bantamweight-crown-against-sam-goodman-december-24-at-tokyos-ariake-arena-live-on-espn/
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<2>RIYADH SEASON AND TOP RANK AGREE ON OFFICIAL PARTNERSHIP
2024年7月22日/Top Rank
https://www.toprank.com/all-news/riyadh-season-and-top-rank-agree-on-official-partnership/
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<3>Year-End Combo: Saudi money, Inoue gets the last word
2023年12月22日/15rounds.com(Norm Frauenheim)
https://www.15rounds.com/2023/12/22/year-end-combo-saudi-money-inoue-gets-the-last-word/?print=print
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<4>Team Inoue Eyes Tokyo Dome, Saudi Arabia As Hosting Locations For Planned Three-Fight 2024 Campaign
2023年12月28日/Boxing Scene(Jake Donovan)
https://www.boxingscene.com/team-inoue-eyes-tokyo-dome-saudi-arabia-hosting-locations-planned-three-fight-2024-campaign--180335
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決定的だったのは、先月24日の出来事である。サウジのエンターテイメント産業振興を双肩に担うトゥルキ・アルシャイフ氏(英語:Turki bin Abdul Mohsen Al-Sheikh/詳細は次章にて)が突如来日。滞在先の自室にモンスターを招き、記念撮影の画像を自身の公式Xにポストしていた。

◎@Turki_alalshikh 公式X/10月24日



そしてリヤド・シーズンのロゴと聞いて、パっとすぐに思い浮かぶのは、以下に掲載するシンボルマークだろう。

<1>縦使い


<2>横使い



上で紹介したPR TIMESの記事にも掲載されているが、既にトランクスのデザイン見本も出来上がっている。でも、当たり前過ぎて面白くないなと思い、勝手に見本を作ってみた。ボクシングのトランクス用にいかがだろうか。

「いや、全然普通だけど。どこが面白いの?」

「・・・お呼びでない・・・こりゃまた失礼しました・・・(古過ぎ)」

リヤド・シーズンのロゴを表示したトランクス見本
左:各種の記事で掲載・公開されている見本
右:拙ブログ管理人案(知らんがな・・・)


冗談はさておき、井上尚弥が着用するトランクスのベルトラインと言えば、実父の真吾トレーナーが興した「明成塗装(家業)」のロゴが懐かしい。ジェイミー・マクドネルへの挑戦を目前に控えた2018年5月、NTTとの契約を公表した後は、ベルトラインの「明成塗装」の下に「ひかりTV」のロゴが貼られた。

そして、WBSSの初陣となったファン・C・パジャーノ戦から、ラスベガス・デビューを鮮やかなKOで飾ったジェイソン・モロニー戦まで、2017年に誕生した待望の第一子(長男)、明波(あきは)君の二文字を大きく掲載。

ラスベガスでの2連戦となったマイケル・ダスマリナス戦以降は、GGG(トリプル・ジー)ならぬ「AAA(トリプル・エー)」が代名詞に。いずれも女の子の為名前は非公開だが、第二子(2019年)と第三子(2021年)も「A」から始まるらしく、「AAA」の由来とされている。

井上尚弥:トランクスの広告等の変遷
※画像/左から:M・タパレス戦(2023年12月26日/KO10R),ドネア第2戦(2022年6月7日/TKO2R),M・ダスマリナス戦(2021年6月19日/TKO3R),ドネア第1戦(2019年11月7日/UD12R/WBSS Final),J・マクドネル戦(2018年5月25日/TKO1R)

圧巻のボディショットをこれでもかと見せ付けたダスマリナス戦に続き、ディフェンス一辺倒に閉じこもるムエタイの猛者を倒しあぐねて、「俺ってパンチ無いのかなって・・・」と試合後の会見で取材陣の笑いを誘ったアラン・ディパエン戦の2試合は、アルファベット「A」の下末尾左側を、カイゼル髭のように跳ね上げた書体だった。

正直なところ、「う~ん・・・」と首を傾げざるを得ないデザインで、「どうにかならんか」と勝手に心配していたが、ドネアとのリマッチに合わせてシンプルなゴシック系に変わり一安心。ピシっと締まってカッコ良くなった。

「たかが書体、されど書体。」

強くてカッコいいチャンピオンが身に着けるものには、すべからくカッコいいデザインが欠かせない。

モンスターの稀有なボクシングを支え続ける、ファミリーの堅い結束の象徴とも言うべき「AAA(トリプル・エー)」だけに、リヤド・シーズンのロゴにその場所を譲っても、何処かにしっかり存在する筈だ。

例えば、ベルトラインの背面。「チャンスに向けて背中を強く押し、ピンチを迎えた時にはガッチリ支える防衛ラインに(後者はまず必要無いか・・・)」という意味も込めて、これはもう決まりでしょう。そして、左右両サイドを腰から大腿にかけて伸びるライン上に、縦並びに「A」を3つ。

嗚呼、考え出すともう止まらん・・・。


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本当に冗談は程々にして、さらに追記。リヤド・シーズンのボクシング・アンバサダーは、我らがモンスターだけではない。既に報じられているのは、テレンス・クロフォードとアンソニー・ジョシュアの2人。

ウズベク中量級の雄,イスラエル(イズライル)・マドリモフに競り勝ち(?)、154ポンドの2団体(WBA・WBO:決定戦)を制しはしたものの、冴えないパフォーマンスへの評価は芳しいものとは言えず、栄えある4階級制覇にケチが付いた格好のクロフォード。

リング誌のP4Pランキングも3位に据え置きとなって、5月6日の更新でモンスターに追い落とされた1位への復帰は成らなかった(10月14日の更新も変動無し)。

サイズのディス・アドバンテージが露となり、急に年齢(37歳)の影響を取り沙汰され出す。拙ブログもプレビューで年齢の問題には触れたが、ボクシング・ビジネスの常とは言え気の毒な気もする。プロである以上、内容と結果を問われるのは致し方のないことではあるけれども。


8月3日にロサンゼルスのBMOスタジアム(旧ロサンゼルス・メモリアル・スポーツ・アリーナ:2万2千人収容のサッカースタジアム)で行われたS・ウェルター級タイトルマッチは、リヤド・シーズンが主催する初の海外イベントと銘打って行われ、リングに張られたキャンバスには、特大サイズのロゴがプリントされていた。

ただし、トランクスへのロゴ掲載は無し。クロフォードとの合意については、トゥルキ氏が6月13日付けの公式Xにポスト済み。モンスターのような、包括的なスポンサー契約ではない場合も有り得るし、条件の詳細は未だ交渉中なのかもしれない。

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Terence Crawford vs Israil Madrimov

◎関連URL
<1>2024年6月13日/Turki Alalshikh 公式X
We welcome World Boxing Champion Terence Crawford as an Ambassador for #RiyadhSeason to promote global events.
https://x.com/Turki_alalshikh/status/1801226827857342869

<2>HE TURKI ALALSHIKH ANNOUNCES RIYADH SEASON TO HOST FIRST OVERSEAS EVENT IN LA AS CRAWFORD FACES MADRIMOV FOR WORLD 154 TITLES
APRIL 24 2024/Matchroom
https://www.matchroomboxing.com/news/he-turki-alalshikh-announces-riyadh-season-to-host-first-overseas-event-in-los-angeles-as-crawford-takes-on-madrimov-for-world-super-welterweight-titles/


クロフォードから2週間遅れの6月27日、アンバサダー就任が伝えられたジョシュアもまた、「リヤド・シーズンによる海外イベント第2弾」となったダニエル・デュボア戦(9月21日/ロンドン)で、リングのキャンバスやコーナーカバー、その他のイルミネーションには「リヤド・シーズン」のロゴとタイトルが盛大に使われていたが、トレードマークとなった純白のトランクスにロゴは無かった。

ジョシュアのトランクス(デュボア戦)

ジョシュア vs デュボア戦のキャンバス(左)とコーナーカバー(右)

96,000人(!)の大観衆が見つめるウェンブリー・スタジアム(フットボールの聖地)で、ショッキングなKO負けを喫してトゥルキ氏とハーンを愕然とさせたジョシュアだが、2人のハンドラーは傷心の元王者にして金メダリストを、早くもデュボアとの再戦に煽り立てている。

トゥルキ氏はハーンに対して、来年2月22日(サウジ開催?)を提示したとのことだが、ジョシュアの準備が間に合う筈がないとの見立てが大勢の様子。

◎Anthony Joshua's next fight date revealed by Eddie Hearn with Brit set to pass up chance for immediate Daniel Dubois rematch
By SPENCER MORGAN
2024年11月7日/Daily Mail
https://www.dailymail.co.uk/sport/boxing/article-14053485/Anthony-Joshuas-fight-date-revealed-Eddie-Hearn-Brit-set-pass-chance-immediate-Daniel-Dubois-rematch.html

ちなみに、ジョシュアのベルトライン背面のロゴ「Gisada(ジサダ)」は、スポンサー契約を結んでいるスイスの香水ブランド。米英のトップボクサーの場合、ベルトラインの正面にはファーストネームかニックネーム、背面にはファミリーネームをあしらうケースを多く見受ける。

タイソン・フューリーなら、正面は「Gipsy King」で背面にFuty」だし、なかなかスポンサーに恵まれない(?)クロフォードは、正面・背面ともファミリーネームの「Crawford」がもっぱら。

2度のリヤド登場に際して、自身のロゴ(独特のデザイン)を大きく強調して、ベルトラインがほとんど無いトランクスを使用していたワイルダーも、以前は太いベルトラインのポピュラー(現代)なトランクスを使い、「Wilder」と太い文字を入れていた。


それから、リング誌やESPNでお馴染みのマイク・コッピンガーが、クロフォードと一緒にヘビー級ホープのジャレッド・アンダーソン(米)と、イングランド期待のミドル級,ハムザ・シーラズ(シェーラズ/英)の2人にもオファーされたとXに投稿していたが、これは流石にフライングが過ぎたようだ。

引退の意向を漏らしたワイルダーに続いて、痛恨のストップで4敗目を喫したジョシュアにも限界説が公然と囁かれる中、ヘビー級のスターが何としても欲しいのは良く分かる。

しかし、8月3日のクロフォード vs マドリモフ戦のアンダーに出場したアンダーソンは、スコットランドを拠点に活動するコンゴ人,マーティン・バコーレ(21勝1敗/16KO)によもやの5回KO負け。

クルーザー級の元WBC王者イルンガ・マカブ(2019年以降ドン・キング傘下)を兄に持つバコーレをバックアップするのは、新興勢力BOXXERを率いる若きプロモーター,ベンジャミン・シャローム。名前(アラビア語ではサラーム)と風貌から容易に出自を推察できるが、弱冠30歳の敏腕シャロームは、既にトゥルキ氏と良好な関係を築いている。

がしかし、32歳のバコーレに多くを望み過ぎるのは厳しい。幸いにもアンダーソンは24歳と若く、”ビッグ・ベイビー”を手掛けるトップランクは、性急なリマッチではなく、地元ヒューストンでの地道な巻き返しを図るのでは・・・?。


アミル・カーンと同様、パキスタンに出自を持つムスリムのシーラズ(21連勝17KO)は、アマで一定の戦果を残してフランク・ウォーレンの眼に止まり、クィーンズベリー・プロモーションズのハンドリングでプロ入り。

6月1日の「マッチルーム vs クィーンズベリー」対抗戦にも出場。キングダム・アリーナでテキサスの新星オースティン・ウィリアムズ(米/16連勝11KO)を11回TKOに屠り、WBCシルバー王座のV3に成功。無敗同士のプロスペクト対決を制して、9月21日のウェンブリーにも姿を現し、マッチルームが推す33歳の黒人サウスポー,タイラー・デニー(ウェスト・ミッドランズ出身)を2ラウンドで瞬殺。

空位の欧州(EBU)王座を獲得して、2年前に得た英連邦との2冠を達成し、残る英国王座(BBBofC British)を射止めれば、発祥国のトップクラスが世界に雄飛する為の三種の神器が揃う。3本のベルトを手中にすれば、リヤド・シーズンのアンバサダーもより現実味を増す。

現英国王者ブラッド・ポールス(19勝1敗1分け/11KO)は、同じクィーンズベリーの支配下にあり、ウォーレンの決断次第にはなるが、世界へのチケットを懸けた勝負は意外に早く訪れるかもしれない。

◎2024年6月13日/Mike Coppinger 公式X
https://x.com/MikeCoppinger/status/1801234833873506539
Turki Alalshikh announced one-year Riyadh Season ambassador agreements with Terence Crawford, Jared Anderson and Hamzah Sheeraz.

トゥルキ氏のポストに貼り付けられていたプレスリリース(画像)を拡大して確認したが、やはりアンダーソンとシーラズ(シェーラズ,シェラーズ,シラーズ等カナ表記は様々)の名前は無い。アンダーソンに関しては、バコーレ戦の結果次第だった可能性もあるけれど。

クロフォードとの合意を報じるプレスリリース(画像)

◎2024年6月13日/Turki Alalshikh 公式X
We welcome World Boxing Champion Terence Crawford as an Ambassador for #RiyadhSeason to promote global events.
https://x.com/Turki_alalshikh/status/1801226827857342869


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