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■9月14日/T-モバイル・アリーナ,ラスベガス/WBA・WBC・WBO3団体統一世界S・ミドル級タイトルマッチ12回戦
統一王者 カネロ・アルバレス(メキシコ) vs WBA1位 エドガー・バーランガ(米)



「ああ、やっぱりそうなのか・・・」

昨年1月~2月にかけて、バーランガとマッチルームの契約が報じられた時、妙に腑に落ちた方も多くいらっしゃったのではないか。トップランクからの離反は規定の路線と見られていたので、落ち着く先が取り沙汰される状況だった。

バーランガ本人も「オスカー(デラ・ホーヤ)から直接連絡がきて驚いた」とか、「メイウェザー(プロモーションの代理人)がアプローチしてきた」など、SNSやインタビューに対して可能な範囲のリップサービスに余念がない。

実際に複数の打診があったのは確からしいが、階級(S・ミドル)を考えれば、現在進行形でカネロと良好な関係を保つエディ・ハーンが最右翼になるのは、半ば当然の結果と言える。

カネロと3試合の契約を結んだPBC(Premier Boxing Champions)は、懸案のデヴィッド・ベナビデス戦を巡って対立が表面化。ジャーメル・チャーロ(昨年9月/Showtime)とハイメ・ムンギア(今年5月/Amazon Prime)の2試合を持って提携を終了するとの風説も流れた。


もともとPBCとの3試合にベナビデスは含まれていなかったらしいが、カネロをリングに上げる為に必要な資金は巨額で、ファンの感心が最も高い”メキシカン・モンスター(El Monstro:ベナビデスのニックネーム)”との激突を、PBCとAmazonが熱心に打診するのもまた自然な流れ。

ドミトリー・ビヴォルに散々な目に遭い、2度目のL・ヘビー級挑戦に失敗したカネロは、三十代の半ばを迎えて衰えを実感し出したのか、マッチメイクは慎重無難の一途を辿るばかり。安全確実に稼げる相手にしか興味がない。

開花を待つムンギアのポテンシャルに疑いを差し挟む者は少ないだろうが、2020年にミドルに上げて以降、中堅どころとの5試合で満足の行くパフォーマンスを見せられず、何1つ結果を出さないままS・ミドルに上げて、デレヴィヤンチェンコとジョン・ライダーの2人とやったのは良い判断だったにしても、打倒カネロに期待を抱かせるには程遠かった。

”メイウェザー化”が止まるところをしらないカネロにとって、ムンギア以上に安全パイ(?)のバーランガは他の誰よりも打ってつけ。PBCとのラスト・ファイトに持って来いという訳で、円満に話が出来るハーンを通じて交渉は無事に妥結。王様カネロは、モンストゥルオの顔だけは見たくない。とにかくその一心なのだ。


という訳で、まずは直前のオッズ。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
カネロ:-1600(約1.06倍)
バーランガ:+600(7倍)

<2>betway
カネロ:-2000(1.05倍)
バーランガ:+900(10倍)

<3>ウィリアム・ヒル
カネロ:1/16(約1.06倍)
バーランガ:15/2(8.5倍)
ドロー:20/1(21倍)

<4>Sky Sports
カネロ:1/12(約1.08倍)
バーランガ:11/1(12倍)
ドロー:33/1(34倍)

ほとんど万馬券の扱いである。ムンギアでも概ね4~5倍(1.2 vs 4.5~5.5)だったから、身銭を切って賭ける人たちの見立てはやはり厳しい。バーランガに勝機があると考える者は、皆無に近いのが現実。

contract
※マッチルームとの契約書にサインをする様子(2023年1月23日)/左から:エドガー・シニア(実父/アシスタントとしてコーナーにも入る有名なステージ・パパ)/バーランガ/キース・コノリー(ビジネスの舵を取るチーム・マネージャー)


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バーランガの登場は鮮烈だった。2016年4月のデビュー以来、16試合続いた初回KO勝ちのインパクトは絶大で、対戦相手のレベルはともかく、豪快かつ気持ちのいい倒しっぷりに、黙っていてもファンの注目が集まる。

ニューヨークのブルックリンで生を受けたバーランガは、名前が示す通りのヒスパニック系でプエルトリコに出自を持つ。

1930年代にバンタム級で一家を成したシクスト・エスコバル(プエルトリコ初の世界王者)に始まり、50~60年代のホセ・トーレスとカルロス・オルティス(カーロス・オーティズ)らの活躍によって、ニューヨークのボクシング興行におけるプエルトリコ移民の重要性は、西海岸と西部の確固とした集客基盤に成長したメキシコ系移民のコミュニティに優るとも劣らない。

とりわけ大切なのが、近代ボクシングの歴史そのものと言っても過言ではない、ニューヨークの殿堂マディソン・スクウェア・ガーデンをソールド・アウトにするスターボクサーの存在。

磐石のライト級王者としてMSGに君臨したカルロス・オルティスから、2人のウィルフレド(ゴメス&ベニテス/70年代)を経て、ヘクター・カマチョ,ティト・トリニダード(80~90年代)へと受け継がれたバトンは、ミゲル・コットの鉄拳を最後に継承者不在が続く。

ニューヨークとフロリダの大きなコミュニティだけでなく、全米各地で暮らすプエルトリカンの熱い視線は、否が応でもバーランガのハードヒットに注がれる。


そして大き過ぎる期待は、時により大きな失望を招く。2020年12月の17戦目で、メリーランド在住の大型黒人中堅選手に食い下がられ、快記録が途絶えてしまう(8回3-0判定勝ち)。続く18戦目は、念願の10ラウンズ。

気合を入れ直して臨んだが、第9ラウンドに初のノックダウンを奪われ、スコア自体に問題は無かったもののまもや判定勝ち。どんなに凄い強打者でも、対戦相手のレベルが上がるに連れて倒せなくなって行くものではあるが、それにしてもちょっと早過ぎやしないか。

◎試合映像:バーランガ 判定10R(3-0) マルセロ・コセレス(亜)
2021年10月9日/T-モバイル・アリーナ(ラスベガス)
オフィシャル・スコア:96-93×3
NABO S・ミドル級王座決定10回戦
※ダウンシーンを含むハイライト

※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=u7IDcw59J-s

映像を見ればすぐにわかる通り、ノックアウトに執着するバーランガは、完全に効いていないコセレスに反撃する力が十分残っているにもかかわらず、ノーガードになって真正面から、思い切り大きな右を振るっている。逆襲のカウンターを誘っているようなものだ。

コセレス(対戦時:30勝16KO3敗1分け)にパンチが無さ過ぎたのか、バーランガのフィジカルが異常に頑丈過ぎるのか、あるいはその両方なのか。フィニッシュされずに済んで本当に良かったと思う。


名も無いローカル・ランカーと言えども、相応にプロの修羅場をくぐり抜けてきた中位~上位になると、馬力と勢いだけではし止め切れない猛者が、一定の割合で出張って来る。

ひと癖もふた癖もあるプロを相手に、何が何でも1ラウンドで決着する必要はさらさら無いが、世界のトップ戦線に出ても倒しまくろうと野望を燃やす若きプロスペクトなら、多少苦労をすることはあっても、中堅の負け役と対峙した時は、後半に行く手前辺りで終わらせないとまずい。

そしてこれもまた当たり前というか良くある話なのだが、当たるを幸い景気良く倒しまくるニューフェイスが、ラウンドが長引いた途端に攻防のキメの粗さを露呈して、何も出来なくなってしまう。バーランガはまさしくこの典型と表して良く、前々から指摘されていた身体の硬さも際立つ。

ハンド&パンチに目や肩その他使えるところは総動員して駆け引きを続け、捨てパンチも含めたジャブと細かいコンビネーション、抜け目無くボディも叩く上下の打ち分け等々、しっかりボクシングをしないと思わぬところで足下をすくわれる。


バーランガをハンドルしてきたトップランクは、一旦相手のレベルを落として再修業させるのかと思いきや、ハードルを上げてきた。ひょっとしたら、挽回を急ぐ(焦る)バーランガの側から出た要望の可能性もあるけれど、いずれにしても、本当に世界に打って出て輝けるタマなのかどうか、地金を見極める機会になった。

選ばれた試験台(踏み台)は、カナダの元ランカー,スティーブ・ロールス。2019年6月、やっと陽の目を見たカネロとの再戦に敗れて、無冠になったゴロフキンの復帰戦に抜擢され、4ラウンドで撃沈した38歳の黒人ボクサー(対戦当時)。

GGGとは164ポンドの契約だったが、今度はS・ミドル級リミットの168ポンド。トシは取ったが顕著な錆付きは見られず、世界選手権(2009年ミラノ/ミドル級)に出場して3回戦まで勝ち残ったアマ・エリート組み。83勝14敗の立派な戦績も残している。

7歳からボクシングを始めたバーランガも、162勝17敗(推定:自己申告)の戦果を誇るアマチュア経験者ではあるが、実績は米国内に止まり、なおかつジュニア・ユース限定。シニアの国内選手権を連覇した上、世界選手権に派遣されたロールスには及ばない。

バーランガに比べれば小さいけれど、サイズ的に大きな不満は無く(身長178センチ)、GGGに屈した後も、パンデミックが猛威を振るう中、2020年と2021年に1試合すつ消化。ブラジルとフィラデルフィアから調達した無名の白星配給役だったけれど、それぞれ4回と9回にストップして気を吐く。

Berlanga_SteveRolls

不惑を前にした11年選手に手を焼いたとしても、それ自体は止むを得ない。要は冷汗三斗の危ない姿を晒すことなく、最終的に圧倒できるのかできないのか。試されるのはそこになる。

パワーではっきり見劣りするロールスが、深刻なダメージ回避を第一に考えて、ひたすら専守防衛に閉じこもる可能性も低くない。そうなった場合に備えて、具体的な打開策となるプランBを用意できるのか。

実際にロールスは、ディフェンシブなスタイルを選択した。逃げ腰と言うほど露骨ではないが、まあ攻めづらく崩し難い。残念なことに、バーランガと彼のチームにプランBは存在せず、非常に言葉が悪くて申し訳ないが、”木偶の坊”の印象を強く残す。

リスクを冒そうとしないロールスに、みすみす3~4ラウンズを持って行かれてしまったのは、まったく工夫の無かったバーランガ本人もさることながら、ヘッド・トレーナーを筆頭にしたチームの責任(能力不足とまでは言わない)と指摘せざるを得ない。

◎試合映像:バーランガ 判定10R(3-0) スティーブ・ロールス(カナダ)
2022年3月19日/MSGシアター(N.Y.)
オフィシャル・スコア:97-93×2,96-94×1
NABO S・ミドル級タイトルマッチ12回戦(V1)
※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=jsmH5QZjIAQ


さらに3ヶ月後の2022年6月、S・ミドル級時代のヒルベルト・ラミレスに挑戦して、判定まで持ち込んだコロンビアの大型選手,アレクシス・アングロと仕切り直しのテストマッチ第二弾。

ハッサン・エンダム・ヌジカム(仏)とともに、我らが村田諒太と2度相まみえたペドロ・ディアス(ナショナル・チームを率いたキューバ人コーチ)がチーフを勤めるアングロは、ロールスと同い年の十分過ぎる高齢ボクサーだが、ロールスのような柔軟性と機動力は無く距離も近い。

Berlanga_Angulo

ガードを高く保持して、ジャブを増やしたことそのものは悪くない。がしかし、直立したアップライトスタイルが後傾バランスを生じさせ、パンチに体重が乗っていかない。アングロが自分から前に出て来てくれるのに、バーランガはあっさり下がってしまう。相打ちを嫌う姿勢があからさまで、たまに強く振ってもおっかなびっくり。この有様では、プエルトリカンでなくてもガッカリである。

自らロープやコーナーを背負って守勢に回り、クリンチでパンチの交換を回避するシーンが目に付く。ちゃんとサイドに回り込んで中央に戻ることもあるが、打たれることを極端に怖がっているように見えてしまう。どこか故障でもしているんじゃないかと、余計な心配までする始末。


見せ場の少ないい10ラウンズを終えた直後に睨み合う一瞬があり、フェイス・オフ状態になってカっとなったバーランガが頭をぶつけに行く。「臆病者」とか「意気地無し」とか「それでもプロか」とか、アングロに何か言われたのかもしれないが、7ラウンドのひと悶着が原因なのは明らかで、むべなるかなというのが正直な感想。

そんなだから、フルマークに近い大差のスコアを聞いて腰を抜かしそうになった。幾らニューヨークの開催で、それもMSGのシアター(5千人収容の小ホール)だからと言っても、流石にそれは無い。

◎試合映像:バーランガ 判定10R(3-0) アレクシス・アングロ(コロンビア)
2022年6月11日/MSGシアター(N.Y.)
オフィシャル・スコア:99-91×2,98-92×1
NABO S・ミドル級タイトルマッチ10回戦(V2)
※フルファイト
https://www.youtube.com/watch?v=SOGGO-IQp4I


程度の悪い地元判定と割り切るしかないと思っていたところが、試合後事態は大きく動く。第7ラウンドにバーランガが噛み付こうとしていたと、アングロ陣営がニューヨーク州アスレチック・コミッション宛て正式に抗議を行う。

録画映像を確認したNYSACは、アングロの抗議を認めてバーランガに1万ドルの罰金と6ヶ月のサスペンドを命じる。

確かに7ラウンドの30秒を過ぎた頃、クリンチの直後にアングロが何かやられたようなポーズを取りつつ、主審に文句を言う場面があったが、主審は取り合わず、アングロも特にそれ以上怒る様子はなく、バーランガとグローブタッチして再開に応じた。

ラウンド終了後、ESPNが問題の場面をスロー・リプレイしてくれたが、タイソンにやられた時のホリフィールドとは違ってことさら痛がってはいないが、少なくともレフェリーはバーランガに対して減点が警告を与えておくべきだったと思う。

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当然の成り行きとして、犯行の瞬間を捉えた切り抜き映像と画像が出回り、バーランガは謝罪に追い込まれ、トップランクを通じてNYSACの決定を受け入れる声明が出された。

「ヤツがしつこくエルボーをぶつけてきたからだ。」

バーランガは言い訳も忘れなかったけれど、確かに密着した状態でのフックやアッパーは、肘打ちに見えないこともない。現実に悪用する卑怯者も常にいる。この試合でも、それらしい場面があるにはあったが、はっきり肘打ちだと断定するのは・・・。

まあ、どんな理由があったにせよ、「噛み付こう」とすること自体が完全にアウト。


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◎ファイナル・プレス・カンファレンス

※フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=tTSCxPrZ_wo


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■新たな体制でリスタート

こうしてバーランガとトップランクの蜜月は終わりを告げ、マッチルームの下で心機一転の巻き返しという運びになった。そしてこれも常套手段の1つにはなるが、バーランガはチーフ・トレーナーを交代する。

2019年の夏頃(8月の12戦目に合わせて)からチームを率いたアンドレ・ロジアー(ニエル・ジェイコブス,セルゲイ・デレヤンチェンコ,カーティス・スティーブンスらのコーナーを歴任)を更迭し、以前にコンビを組んでいたマーク・フェレイト(Marc Farrait)と復縁。

もっともアングロ戦のコーナーを仕切っていたのは、既にロジアーではない。クルーザー級で一時代を築いたカルロス・デ・レオンを兄に持ち、ジョー・メッシやアルベルト・マチャドのコーナーを歴任した同胞のファン・デ・レオンが立っていた。

だから正確に述べると、ロジアーとファン・デ・レオンの2人を更迭したことになる。

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※写真左:ロジアーとバーランガ/写真右:ファン・デ・レオン

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※マーク・フェレイトとバーランガ

「今後について時間をかけて話し合ったが、方向性を巡る意見の隔たりが大きく、一致点を見出すのは困難と判断した。」

基本的に情報を発信するのはバーランガ陣営で、「沈黙は金」を貫くトップランク。おそらくだが、このまま世界へ進みたいバーランガとチームが、「いや無理。有り得ないから」と再修業を譲らないトップランクに業を煮やしたのだと推察する。

「出て行きたければお好きにどうぞ」

トップランクの本音を包み隠さず申せば、そういうところに落ち着く。新しいトレーナーの選択についても、トップランクは別の見解を持っていたのかもしれない(ロジアーとデ・レオンの解雇は仕方ないにしても)。


新チームによる初陣は、昨年6月。3戦連続の登場で、常打ち小屋になりつつあるMSGシアターで行われた。

大事な試合に呼ばれたのは、アイルランドのジェイソン・クィッグリー。ジュニア・ユースの時代から代表チームに召集され、国際大会に派遣されたエリート選手で、2016年リオ五輪の有力な代表候補だったが、ゴールデン・ボーイ・プロモーションズと契約してプロ入り。2014年7月のデビュー以来、ずっとアメリカで戦ってきた。

元ホープのグレン・タピアを破り、北米(NABF)王座を獲得した後、バハマ出身のオリンピアン,トゥレアノ・ジョンソンに9回終了TKO負けを喫して、連勝を16でストップされるも、シェーン・モズリー・Jr.に競り勝ち(10回2-0判定)、2021年11月にデメトリアス・アンドラーデが保持するWBOミドル級王座に挑戦。

衝撃的な2回KOに散った後、プロ転向後初めて里帰りして行った昨年4月の再起戦で、正式にS・ミドルに進出。これが新しい階級での2戦目。キャンプで取り組んだ筈の新機軸を試すには、格好の相手と表していい。


不安視されていたバーランガの出来は、思いのほか良かった。コンパクトにまとめたガードは変わらないが、ごく自然に前傾の浅いセミ・クラウチングに構えて、適度な脱力を保ったまま、体重の乗ったパンチをスムーズに振るう。

脚も非常に良く動いて、何もしなくても圧力がかかり、いきなりアイリッシュから先制のダウンを奪うと、終始一貫ペースを掌握。クィッグリーも意地を見せて反撃したが、けっして逃げの態勢に陥ることなく強気で前に出続ける。

結局4度倒して(1回は明らかなスリップ)3-0の判定になったが、これは敢えて深追いを避けた為で、バーランガは本当によく仕上がっていた。

◎試合映像:バーランガ 判定12R(3-0) ジェイソン・クィッグリー(アイルランド)
2023年6月24日/MSGシアター(N.Y.)
オフィシャル・スコア:116-108×2/118-106×1
NABO S・ミドル級タイトルマッチ12回戦(V3)



直近の試合は、今年2月にフロリダ開催となった12回戦。S・ミドル級のリミット契約だが、特にベルトは懸けられていない。好調を維持するバーランガは、大柄なマクローリーをスタートからプレスし続け、無理のない波状攻撃で削り、6ラウンドのチャンスに集中打をまとめると、マクローリーのコーナーからタオルが投入された。
※フロリダ州の公式裁定はTKOではなくKO採択

16度目の初回KO(2020年12月)以来、3年9ヶ月ぶりのノックアウトに思わず相好を崩すバーランガ。ぐいぐい追い詰めていく迫力は、むしろクィッグリー戦に軍配が上がる。自分より大きい相手に対して丁寧に対処したと見るのは、少し褒め過ぎだろうか。

◎直近の試合映像:バーランガ KO6R パトレイグ・マクローリー(英/アイルランド)
2024年2月24日/カリブ・ロイヤル・オーランド(フロリダ州オーランド)
オフィシャル・スコア:49-46×3
S・ミドル級12回戦



アングロ戦までの雑で一本調子のバーランガなら、一切期待はできない。どエラい差がついたオッズ通り、中盤まで持てば御の字である。しかし、気心の知れたマーク・フェレイトとのトレーニングでリフレッシュできた今のバーランガは、ちょっと様子が違う。

最大の武器になる筈の体格差を活かす術を、フェレイトならきちんと授けられる。それをカネロ相手にやり切れるかどうかは、バーランガのハート次第。

負けて失うものは何も無い。当たって砕けても、それが本望といい意味で割り切れれば、安住の地でぬくむ王様に一泡か二泡くらいは、吹かせられるのではないかと想像する。

若いチャレンジャーが前がかりになる分、「カネロのカウンターが火を噴く」,「ボラード(右フック)の餌食」との見方も成り立つけれど、王様のリスクヘッジ第一主義はおそらく不変。サイズの違いとパワーへの警戒を最優先する公算が大・・・としておこう。


◎GLOVES OFF: CANELO vs. BERLANGA
<1>Episode 1
https://www.youtube.com/watch?v=ckmVK4-gEq4


<2>Episode 2
https://www.youtube.com/watch?v=pXt-cmiag5Y



◎カネロ(34歳)/前日計量:166.75ポンド
現WBA(V8),現WBC(V7),現WBO(V5)S・ミドル級王者
前現IBF S・ミドル級(V3/はく奪),前WBO L・ヘビー級(V0/返上),前WBCミドル級(第2期:V1/返上),前IBFミドル級(V1/返上),WBAミドル級スーパー(V1/返上),元WBC S・ウェルター級(V6/WBA王座吸収V0),元WBCミドル級(第1期:V1/返上),元WBO J・ミドル級(V0/返上)王者
戦績:63戦61勝(39KO)2敗2分け
世界戦通算:25戦22勝(11KO)2敗1分け
アマ通算:不明
※20戦,44勝2敗など諸説有り
2005年ジュニア国内選手権優勝
2004年ジュニア国内選手権準優勝
※年齢・階級等詳細不明
身長:171(175)センチ,リーチ:179センチ
※Boxrec記載の身体データ訂正
右ボクサーファイター


◎バーランガ(27歳)/前日計量:167.5ポンド
戦績:22戦全勝(17KO)
アマ戦績:162勝17敗(推定:正確なレコードは不明)
2015年ユース(U-19)全米選手権準優勝
2014年ユース(U-19)全米選手権3位
2013年ジュニア(U-17)全米選手権準優勝
2013年ナショナルPAL準優勝
※階級:ミドル級
身長,リーチとも185センチ
右ボクサーパンチャー


◎前日計量(ハイライト)


◎前日計量(中継対象カード/ハイライト)


◎前日計量(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=nYZcl39SxgU


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■オフィシャル

主審:ハーヴィー・ドック(米/ニュージャージー州)

副審:
マックス・デルーカ(米/カリフォルニア州)
スティーブ・ウェイスフィールド(米/ニュージャージー州)
デヴィッド・サザーランド(米/オクラホマ州)

立会人(スーパーバイザー):未発表