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■9月3日/有明アリーナ,京都江東区/4団体統一世界S・バンタム級タイトルマッチ12回戦
統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs WBO2位 T・J・ドヘニー(アイルランド/豪)



流石に間違いは無いだろう。

12キロを超えるリバウンドとパンチング・パワーを武器に、我らがモンスターのスパーリング・パートナーを努めて名を上げたホープ,ジャフェスリー・ラミドを叩き潰した起死回生のKO勝ちで、評価をV字回復させたドヘニーとは言え、褌の紐を締め直した我らがモンスターには歯が立つまい。

ウルトラ・スーパーな天文学的乖離に落ち着いたオッズが示す通り、どこをどう掘り返してみても、37歳のオールド・タイマーに勝機は見当たらず、何ラウンド持つのかという、いつもの話題に戻る堂々巡り。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井上:-5000(1.02倍)
ドヘニー:+1600(17倍)

<2>betway
井上:-5000(1.02倍)
ドヘニー:+1600(17倍)

<3>ウィリアム・ヒル
井上:1/50(1.02倍)
ドヘニー:14/1(15倍)
ドロー:25/1(26倍)

<4>Sky Sports
井上:1/41(約1.02倍)
ドヘニー:20/1(21倍)
ドロー:40/1(41倍)


西岡利晃に次いで、王座防衛に成功した日本ボクシング史上2人目のS・バンタム級王者,岩佐亮佑を番狂わせの3-0判定に下して、IBFのベルトを持ち去ったのが2018年8月。

全米に配信を行ったESPNのアン・オフィシャルジャッジは、116-113の3ポイント差で岩佐を支持していたが、自分の名前が勝者としてコールされた瞬間、誰よりも驚いていたのがドヘニー自身だった。

この時点で、戦績は20戦全勝(14KO)。5ヶ月後の初防衛戦でニューヨークの殿堂MSGに進出すると、横浜光の高橋竜平をまったく問題にせず、一方的に叩きまくって11回TKO勝ち。連勝を21に伸ばして、いよいよこれからという時、メヒコの勇者ダニエル・ローマンの挑戦を受けて0-2の判定負け。プロ初黒星を喫して、虎の子のベルトを失う。


オーストラリアを拠点にするアイリッシュの苦難が、ここからスタートする。ローマンに敗れてから半年後、コロンビアのベテラン中堅を5回終了後にギブアップさせて再起するも、翌2020年3月のドバイ遠征でルーマニアの伏兵イオヌット・バルタに0-3判定負け(8回戦)。

さらに、同じアイルランドでも、北の中心地ベルファストの出身で、ロンドン五輪のフライ級銅メダルとリオ五輪連続出場の戦果を手土産にプロ入りしたマイケル・コンランが、WBAフェザー級の王座決定戦に出場する運びとなり、その相手として白羽の矢が立つ。

コンランのホーム,ベルファストに飛んだドヘニーは、コンランのボディアタックとロングのワンツーを攻略できず0-3判定負け。

階級をS・バンタムに戻して、パンデミックが猛威を振るう最中、メキシコの猛者セサール・ファレスを2回TKOに屠って一息つくも、オーストラリアのホープ,サム・グッドマンに完敗(大差の0-3判定)。


これで命運も尽きたかと思われたが、大橋会長が期待を寄せるサウスポー,中嶋一輝のステップボードに選ばれ、昨年6月に再来日。オボコさの残る中嶋を4ラウンドでストップして、WBOアジア・パシフィック王座を獲得。

そして昨年10月、またもや大橋会長の肝いりで売り出しにかかったラミドの生贄にと、後楽園ホールに連続出場。左1発でラミドを吹っ飛ばして、日本のファンと関係者を唖然とさせる。

大橋ジムと堅い連携を結んだドヘニーは、今年5月の東京ドーム興行にも担ぎ出された。ルイス・ネリーが体重超過した場合に備えて、リザーバー(万が一の時の代役)を仰せつかったのである。

幸いにも(?)、ビッグマネーを逃したくないネリーが真面目に身体を絞り、ドヘニーは当初組まれた通り、8回戦の第1試合に登場。7勝2KOのフィリピン人,ブリル・バヨゴスを3度倒して4回TKO勝ち。

第二の故郷はオーストラリアではなく、日本なのではないかと錯覚しそうになるが、4戦立て続けの首都参上とあいなった。


トシを取って運動量が落ちた為だと推察するが、最近のドヘニーは目一杯のリバウンドを最大限に利用したパワー勝負にすべてを懸ける。左の一撃を効かせたら、回復の間を与えず一気に決着してしまう。

しかし岩佐に勝った6年前は、前後左右に良く動きながら、ジャブとコンビネーションで時間をかけて崩すボクサーファイターだった。格下相手には、崩しのプロセスがそのままKOにつながり、結果的にKO率を押し上げることになってはいたが、判定を前提にした丁寧な組み立てで戦うのが基本。

20代半ば~30代に突入した直後のように、ふんだんに脚は使えない。さらに、サウスポーには滅法強いが、地力と経験のあるオーソドックスにかかると存外に脆い。4度の敗戦のうち、サウスポーはコンラン1人。サイズ&スピード負けが顕著だった。

中嶋に勝った時も、ロープ際に追い込んだところで左フックを1発食らってヨロける場面があり、年齢とは関係なく耐久性に問題を抱えているのではと実感。あれだけ慎重に出入りしていたことも、そう考えると合点が行く。

◎井上尚弥~孤高の王者の行方~【ダイジェスト版】
Lemino公式

※Lemino公式(フル)
https://lemino.docomo.ne.jp/?crid=Y3JpZDovL3BsYWxhLmlwdHZmLmpwL2dyb3VwL2JmMTAwM2U%3D


我らがモンスターの決定力と卓越したスピードに反応があれば、左の餌食になることはまず有り得ない。ネリー戦の失敗を糧に、今回はどんな立ち上がりを見せてくれるのか。

S・フライ級の頃と同じレベルでフットワークを使ってくれとまでは言わないけれど、”パワーハウス・ナオヤ”ではなく、”ファンタジスタ・ナオヤ”の復活を性懲りもなく願う。

動きの遅いパンチャーの正面に正対して圧をかけて行くのではなく、前後左右に自分から動いて、角度とタイミングに変化をつけたジャブとコンビを死角から突く。そうやって、1発頼みの古豪を翻弄する。

バトラーとタパレスをねじ伏せた力のボクシングではなく、ファン・カルロス・パジャーノの息の根を止めた美しいスピード・ボクシング。フルトンを圧倒した駆け引き&プレスに、健脚をプラスできないものか。

来るべき126ポンド対策として、最も効果的で確実な打開策になると信じて疑わない。ネリー戦と同様、「一切触らせない(何もさせない)」と言い切っているが、モンスターなら幾通りかの方法を試せる筈だ。

まったく危なげのないクレバーな進め方で、前半のうちに倒し切って欲しい。


◎ファイナル・プレス・カンファレンス(フル)



◎井上(31歳)/前日計量:122ポンド(55.3キロ)
戦績:27戦全勝(24KO)
現WBA・WBC・IBF・WBO統一S・バンタム級王者(WBC・WBO:V2/WBA・IBF:V1)
前4団体=WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
世界戦通算:22戦全勝(20KO)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
--------------
脈拍:75/分
血圧:107/77
体温:35.6℃
※計量時の計測
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎ドヘニー(37歳)/前日計量:121.5ポンド(55.1キロ)
元IBF J・フェザー級王者(V1)
現在の世界ランク:WBA6位/WBC・IBF7位
戦績:30戦26勝(20KO)4敗
世界戦通算:4戦2勝(1KO)2敗
アマ戦績:不明
北京五輪代表候補
身長:166センチ
リーチ:172.5センチ
※岩佐亮佑戦の予備検診データ
--------------
脈拍:99/分
血圧:115/103
体温:36.7℃
※計量時の計測
左ボクサーファイター


◎前日計量


◎前日計量:Lemino公式
https://lemino.docomo.ne.jp/?crid=Y3JpZDovL3BsYWxhLmlwdHZmLmpwL2dyb3VwL2IxMDI0YTY%3D

◎ファイナル・プレス・カンファレンス:Lemino公式
https://lemino.docomo.ne.jp/?crid=Y3JpZDovL3BsYWxhLmlwdHZmLmpwL2dyb3VwL2IxMDI0YTU%3D

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■心配の種はやはり減量

計量時の血圧と体温を見て、老婆心がムクムクと鎌首をもたげる。ちょっと低過ぎやしないか。計量直前の食事制限の過酷さを、余計なお世話と承知の上で想像せざるを得ない。2~3日ぐらいの間、ほとんど絶食に近い状態だった・・・?。

◎今回
脈拍:75/分
血圧:107/77
体温:35.6℃

◎ネリー戦
血圧:124/82mm/Hg
体温:36.6℃
脈拍:82/分

◎タパレス戦
血圧:117/82mm/Hg
脈拍:77/min
体温:36.1℃

◎フルトン戦
血圧:138/81mm/Hg
脈拍:65/min
体温:36.3℃

◎バトラー戦
血圧:129/80mm/Hg
脈拍:61/min
体温:36.5℃

フィジカルを担当する八重樫東が、「折角S・バンタムに慣れてきたのに、今すぐフェザーに上げたら、慣れない階級でまた同じ苦労をすることになる」と、早い時期のさらなる階級アップに否定的な意見を述べていた。

モンスター自身、「あと2年くらいはこの階級で」と展望を示してはいる。でもどうだろう。無理な減量で身体を苛めない方が、むしろプラスに働くのでは。


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■オフィシャル

主審:ベンス・コヴァックス(ハンガリー)

副審:
デヴィッド・サザーランド(米/オクラホマ州)
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)
パヴェル・カルディニ(ポーランド)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:ホセ・ゴメス(パナマ/WBAランキング委員)
WBC:ケヴィン・ヌーン(アイルランド/WBCアジア事務局長他要職を兼任)
IBF:ベン・ケイティ(豪/IBF Asia担当役員)
WBO:レオン・パノンチーリョ(米ハワイ州/WBO副会長/タイ在住)