KO負けのヴェナードが脳出血 /レフェリングの是非について批判も・・・本人は再起を明言 - L・A・ロペス vs A・レオ レビュー 1 -
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■8月10日/ティングリー・コロシアム,ニューメキシコ州アルバカーキ/IBF世界フェザー級タイトルマッチ12回戦
IBF11位/元WBO J・フェザー級王者 アンジェロ・レオ(米) KO10R 王者 ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)
IBF11位/元WBO J・フェザー級王者 アンジェロ・レオ(米) KO10R 王者 ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)
HEART OF A WARRIOR.
— Top Rank Boxing (@trboxing) August 11, 2024
No doubt @VenadoLopez1 will be back ???? pic.twitter.com/XyuYceMtdr
先々週の末、メキシコからショッキングなニュースが届いた。8月10日、ジョニー・タピアの故郷アルバカーキで壮絶なKO負けを喫したヴェナード・ロペスに、脳出血が発見されたという。
程度問題はあるにせよ、打たれ(せ)ることを前提に組み立てる攻撃的なスタイルだけに、「早過ぎるツケが回ってきたか・・・」との印象が否めず、言葉は悪いが「遅かれ早かれ」との思いも過ぎる。
幸いにも程度は軽く、既に出血も止まっていて開頭手術も行わずに済み、このまま経過観察を続けて半年後にもう一度検査(MRI・CT)を行い、異常が無ければ御赦免ということらしい。
言語や運動に関する機能障害なども一切無く、ロペス本人は現役を継続する意向で、前々から述べていた通り、130ポンドに主戦場を移すことも視野に入れいている。気になる米国内での状況だが、開催地のアルバカーキを所管するニューメキシコ州が、90日間の出場停止(健康面と安全性を考慮/延長の可能性有り)という暫定的な措置を決めた以外、今のところ目立った反応は無し。
※下に列挙した関連記事の<2>:ジェイク・ドノヴァン記者がリング誌に寄稿した記事参照
ただし、かつてのエドウィン・バレロのように、脳出血の痕跡(2001年にバイク事故を起こし開頭手術を受けていた)を理由に、ニューヨーク州アスレチック・コミッションの「無期限ライセンス停止リスト」に名前が載ってしまい、2004年~2009年までのおよそ5年間、米本土から締め出された事例もある。
窮地のバレロに手を差し伸べ、日本に連れて来てS・フェザー級のWBA王座を獲らせたのが、帝拳グループを率いる本田会長だったという次第。
メキシコ国内でのカムバックに関する限り、特に支障は無いものと思われる。そもそもプロ・ライセンスの管理すらままならないほどメキシコはコミッションの機能が脆弱で、WBCの会長職を二代に渡って世襲・独占するスレイマン親子が、事実上のコミッショナーとしてメキシコ国内を統治せざるを得ない。
開頭手術を受けて復帰した著名選手はメキシコにもいて、マルコ・アントニオ・バレラが良く知られている。新興団体WBOのベルトを巻き、WBCのエリック・モラレスとともに無敵の快進撃を続けていたバレラは、ジュニア・ジョーンズにまさかの2連続KO負けを喫した後、1年近い長期の休養(1997年4月~1998年2月)を取ったが、この時秘密裏に手術を受けていた。
ゴールデン・ボーイ・プロモーションズとの契約(2003年秋)を巡り、ほとんど一方的に関係を絶った前マネージャー,リカルド・マルドナドとの間で泥沼の法廷闘争が勃発し、怒り心頭のマルドナドがメディアにリークして明るみになったのだが、カリフォルニアとネバダでライセンスを更新していたビッグネームのバレラは、米国内のどの州からもサスペンドを受けずに済んでいる。
深刻の度合いを増すスター不在も、ロペスの復帰を後押ししてくれそうだ。バンタム級とS・バンタム級を長らくお家芸にしてきたメキシコも、バレラ&モラレス、マルケス兄弟とイスラエル・バスケス、ジョニー・ゴンサレス,オスカー・ラリオス辺りを最後に、傑出した才能が現れなくなって久しい。
ルイス・ネリー程度のチンピラ・ボクサーが未だに商品価値を認められ、目ぼしい次期スター候補として名前が挙がるのは、アラン・ダヴィド・ピカソがせいぜいといったところ。ピカソは確かに好選手ではあるけれど、上述したメキシカン・レジェンドたちとまともに比較できる段階には無く、ネリー同様の過大評価と言わざるを得ず、井上尚弥の好敵手扱いは節足に過ぎる。
今後の動静についてカギを握るのは、全米に大きな影響力を行使するネバダ,ニューヨーク,カリフォルニア3州の判断。3つのうちどれか1州でもサスペンドに動くと、事情は一変してしまう。
ロペスの現在地はあくまで「注目すべき存在」であり、押しも押されもしないビッグネームではないだけに、トップランクとの契約を含めて、一気に雲行きが怪しくなってもおかしくはない。
◎関連記事
<1>Luis Alberto Lopez Suffers Brain Bleed In Knockout Loss To Angelo Leo
2024年8月17日/Boxing News 24(寄稿:ダン・アンブローズ)
https://www.boxingnews24.com/2024/08/luis-alberto-lopez-suffers-brain-bleed-in-knockout-loss-to-angelo-leo/
<2>REPORT: LUIS ALBERTO LOPEZ SUFFERED SMALL BRAIN BLEED FOLLOWING LOSS TO ANGELO LEO
2024年8月18日/リング誌公式(寄稿:ジェイク・ドノヴァン)
https://www.ringtv.com/711464-report-luis-alberto-lopez-suffered-small-brain-bleed-following-loss-to-angelo-leo/
<3>The unlikely success story of Luis Alberto Lopez
2024年8月18日/Boxing Scene(寄稿:ルーカス・ケトル)
https://www.boxingscene.com/unlikely-success-story-luis-alberto-lopez--185454
<4>Griego-Ortega's right hand in a cast; Lopez was treated for a brain bleed
2024年8月25日/Yahoo! Sports(寄稿:リック・ライト/アルバカーキ・ジャーナル)
https://sports.yahoo.com/griego-ortegas-hand-cast-lopez-190100870.html
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そして今、この試合を裁いた主審アーニー・シェリフのレフェリングについて、非難轟々という程ではないが、妥当性を欠いていたとの批判的な意見がネット上に散見される。
レオが放った左フックのカウンターを浴びたロペスが、背中から仰向けに倒れた際、キャンバスにバウンドして後頭部を強く3回連続的に打ち付けた。ダウンシーンではけっして珍しくないケースではあるが、問題視されているのはその後の対応。
被弾した瞬間にロペスは意識を失っており、完全に昏倒した状態だったのだが、主審シェリフはご丁寧にテン・カウントを数えたのである。
ROAD RAGE ??
— Top Rank Boxing (@trboxing) August 11, 2024
THE HOMETOWN KID PUT VENADO TO SLEEP. pic.twitter.com/kLpIYbQ201
気絶してしまった、もしくは立てないことが分かり切っている選手に対するカウントアウトは、20世紀のプロボクシング(1980年代前半以前)においては、ごく当たり前の光景と言って差支えがない。ちゃんと10秒数えることで、試合が決着したことを満天下に知らしめる。必要必須なプロセスと考えられた。
「完全なる決着」こそがプロに求められるスタンダードであり、打ち合いから逃げることはプロにあるまじき振る舞いの最たるもので、それこそ最大の恥辱とされたし、優位に立った者は容赦仮借なく止めを刺しに行く。行かねばファンが許さない。臆病者の烙印を押されて、自身のバリューも急落する。
複数回のノックダウンがあって、さらに決定的なフィニッシュブローが叩き込まれた場合、現代と同じく即座にストップしたり、途中まで数えたカウントを止めて終了を宣告することはあったが、倒れた選手の状態にかかわらず、カウントアウトが原理原則。
がしかし、時代は変わった。
世界戦を任されるほどのレフェリーなら、ロペスが倒れるのと同時にストップを合図し、速やかにリングドクターを要請して応急措置を講じるべきだったとの主張で、反論の余地を許さない正論ではある。
勿論、倒れた勢いで後頭部を3回打ち付けたことが、脳出血の直接的な原因だったとの断定は難しいと思われるし、「肉を切らせて骨を絶つ」ロペスのファイトスタイルそのものが、被弾によるダメージの蓄積を常に考慮・懸念しなければならないことも、外形的な判断を一層困難にする。
リング禍により四肢の自由と視力を失い、24時間体制の要看護となったジェラルド・マクラレンのケース(1995年)でも、開頭手術を行ったドクターとそのチームは、ナイジェル・ベンが続けたラビットパンチとの因果関係について、「否定はできない」と述べるに止めていた。
2017年にリング禍の犠牲となり、全身の麻痺と言語機能の重篤な後遺症に苦しむプリッチャード・コロンも、試合で受けたラビットパンチ原因説が流布され、母親が速やかなストップを主審に進言しなかったリングドクターとプロモーターを相手取り、総額5000万ドルを超える損害賠償を求めて告発したが、審理が開始される目処は立たず、解決へ向けて事態が進展する気配も無いとのこと。
蛇足ついでにもう1つ、、少し上に添付した写真をご覧になって、「あっ!、こいつ・・・」とお気づきの方もおられるのではないか。
「この顔にピンときたら~」ではないが、井上尚弥とノニト・ドネアの第1戦、WBSS(World Boxing Super Series)の決勝を裁いたのもこの人だった。
そう、我らがモンスターのKO必至と思われた第11ラウンド、痛烈な左ボディを食らった途端、苦悶しながら背を向けて走り出したドネア。この機を逃してなるものかと追いかけるモンスターを、巨大なお腹で邪魔をするように突き飛ばし、「幻のノックアウト」を演出してしまったあの人物。
今さら解説も無いだろうが、この時主審シェリフは、背後からの加撃を阻止しようとしたに違いない。それ自体は責められる行為ではないが、緩慢かつ曖昧な動作が原因で、我らがモンスターのKO勝ちを妨害しただけに見えてしまった。
では、彼はどうするべきだったのか。簡単である。リチャード・スティールやミルズ・レーンのように、「(ノック)ダウン!」と大きな声を発して走り出し、タイムキーパーに目で合図をしながら、態勢を考慮すれば左腕を真っ直ぐ伸ばしつつ、我らがモンスターの追走を制止すると同時に、ニュートラルコーナーを指差し待機を命じる。
そして、仮にドネアが立ったままだっとしても、素早くタイムキーパーからカウントを引き継ぐ。
「あれっ、スタンディング・カウントは廃止されたんじゃなかったの?」
確かに仰る通りなのだが、スタンディング・カウントを取るケースがまったく無い訳ではない。主審の裁量の範疇という解釈なのか、それとも個別ローカル・ルールの変更なのか、各国・各州コミッション・ルールをつぶさに調べていないのでわからない。
少なくとも主要4団体の試合ルール上は、おそらく「No-Standing eight count」のまま変わっていない筈なので、日本国内の世界戦における判断は「レフェリー・ストップ」になる。
ルール・ミーティングでの確認が不足していて、JBC(日本国内ローカル)ルールとWBA,IBFルールを思わず頭の中で反芻してしまい、一瞬どうすべきか迷った可能性もあるけれど、敵に背中を見せて逃げ出すこと自体が反則なので、一旦「タイム!」と声がけして井上を押し止め、ドネアが立ったままなら反則の注意を与えれば良かった。
現実にはドネアが腹を押さえて座り込む。主審シェリフは、その時点でタイムキーパーと視線を合わせてカウントを開始する。ボディを効かされたドネアが、背を向けて逃げ出したその時に、ダウンを宣言すれば何も問題は無い。
加えて、この審判は本当に駄目だと思った。カウントの間、井上のポジションを一切気にしていない。お話にならない酷さである。
スティールやレーンは、カウントを数えている間もニュートラルコーナーを二度・三度振り返り、コーナーから離れて(近づいて)いないか確認を怠らなかった。事実井上はコーナーでじっとしていられず、思いっきり近くに寄っていたが、この審判はそのままの位置で再開を合図する有様。本来なら井上を一旦下がらせて充分な距離を取り、それから再開を命じなくてはならない。
アケスケに本音を申せば、世界戦を担当させてはいけないレベル。実際にこの審判は、帰国後4~8回戦のアンダーカードばかりを担当しており、いつぞやのラッセル・モーラ(ネバダ州)のように、何がしかのペナルティを受けて修行のやり直しをさせられていたとも考えられる。
世界戦のリングに立つのは、井上 vs ドネア第1戦以来4年ぶり。生年月日と正確な年齢はわからないけれど、元々アマチュアの競技選手だった人で、Boxrecには1983年に1試合だけプロで戦った記録があり(判定負け)、この当時20代だったとすればとっくに還暦を過ぎている。
WBSS決勝戦の時と比べて、少しお痩せになったようだ。パンデミックの間もそれなりにレフェリー業をこなしていて、Boxrecの記録を追う限り、おそらくご病気はされていないとお見受けする。一念発起してダイエットに取り組まれたのかもしないが、本当に余計なお世話でしかないと百も承知で、真剣に引退を検討されるべきなのでは。
録画映像を繰り返し見て、自身の仕事がプロに相応しい水準を維持できているのか否か、冷静に見つめ直すことをお勧めする。
◎井上尚弥 vs ドネア第1戦/第11ラウンド幻のKOシーン(削除済みの可能性有り)
2019年11月7日/さいたまスーパーアリーナ
※ファンが撮影した現地映像(削除済みの可能性有り)
https://www.youtube.com/watch?v=0ek3nu2agPc
※Part 2 へ
◎ロペス(30歳)/前日計量:125.6ポンド
IBFフェザー級王者(V2)
戦績:33戦30勝(17KO)3敗
アマ戦績:6勝4敗
身長:163センチ,リーチ:169センチ
好戦的な右ボクサーファイター
◎レオ(30歳)/前日計量:125.6ポンド
戦績:26戦25勝(12KO)1敗
アマ通算:65勝10敗
ニューメキシコ州ジュニア・ゴールデン・グローブス,シルバー・グローブス優勝
※複数回のチャンピオンとのことだが階級と年度は不明
身長:168センチ,リーチ:174(175)センチ
※Boxrec記載の身体データ修正(リーチ/カッコ内:以前の数値)
右ボクサーファイター
◎前日計量
◎ファイナル・プレス・カンファレンス
Venado Lopez vs Angelo Leo | WEIGH-IN(フル映像)
2024年8月9日/Top Rank公式
https://www.youtube.com/watch?v=QA_KuTtxHcA
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■オフィシャル
主審:アーニー・シェリフ(米/ペンシルベニア州)
副審:1-2でレオを支持(第9ラウンドまでの採点)
エステル・ロペス(米/ニューメキシコ州):85-86(レオ)
フェルナンド・ビラレアル(米/カリフォルニア州):85-86(レオ)
ザック・ヤング(米/カリフォルニア州):86-85(ロペス)
立会人(スーパーバイザー):レヴィ(リーヴァイ)・マルティネス(米/ニューメキシコ州/IBF執行役員)
■オフィシャル・スコアカード
※清書
※管理人KEI:85-86でレオ
◎パンチング・ステータス
■ヒット数(ボディ)/トータルパンチ数(ヒット率)
ロペス:142(28)/586(24.2%)
レオ:203(66)/487(41.7%)
■ジャブ:ヒット数/トータルパンチ数(ヒット率)
ロペス:26(3)/162(16%)
レオ:53(6)/137(38.7%)
■強打:ヒット数/トータルパンチ数(ヒット率)
ロペス:116(25)/424(27.4%)
レオ:150(60)/350(42.9%)
※compubox - Boxing Scene
https://www.boxingscene.com/compubox-punch-stats-angelo-leo-luis-alberto-lopez--185331