カテゴリ:
■7月20日/両国国技館/WBO世界フライ級王座決定12回戦
WBO3位 トニー・オラスクアガ(米) vs WBO2位 加納陸(大成)


拳四朗との激闘(昨年4月/9回TKO負け)が未だ記憶に新しい、ルディ・エルナンデスの秘蔵っ子トニーが、本来の階級に戻して2度目の世界戦に臨む。

同じルディの指導とサポートを受ける中谷とは、ステーブル・メイトの枠を超える親友として知られており、昨年9月の再起戦に続く2度目の共宴。3戦連続での日本のリングとあって、すっかり馴染んだ様子。

好戦的な本格派のボクサーファイターで、デビュー前から逸材との評判で持ちきり。それでも6戦目での拳四朗挑戦は、無理が有り過ぎると思われた。

当初拳四朗は、当時のWBO王者ジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)との3団体統一戦を行う筈だったのだが、WBO王者が急病を理由にドタキャン。大勝負が流れただけでなく、代役として手配した13位のランカーもビザの発給が間に合わず、アンダーで出場予定のオラスクアガが断れば、事実上のメイン・イベント(井上拓真 vs リボリオ・ソリスとのWメイン)が潰れてしまう。

帝拳サイドは、絶頂期を迎えた拳四朗に負けても大きな傷にはならないと判断。ゴンサレスを想定して準備をしてきた拳四朗にとっても、タイプがまったく異なるオラスクアガとの対戦には小さからぬリスクはあったが、オオトリの責任感を優先した。


そして拳四朗はやはり強く、オラスクアガは9ラウンドでストップされたが、プロ6戦目とは思えない完成度の高いボクシングを披露。想像以上の善戦で、陣営の思惑通り評価&認知を大きくアップ。

5ヶ月のスパンを開けて再来日。中谷 vs A・コルテス,拳四朗 vs H・バドラーのセミで、比国のローカル・トップ,ジーメル・マグラモ(中谷とWBOフライ級王座を争い8回KO負け)との復帰戦に、多くの日本のファンが注目する。

ところが・・・。

S・フライ級の契約ウェイトが影響したのか、拳四朗戦のダメージが十分に抜けていなかったのか、オラスクアガの状態は非常に悪く、いかにも重い身体を引きずるようなスローな動きで、パンチにもスピード&キレが皆無。

マグラモは特に変わったところはなく、普段通りの仕上がりなのだが、反応も鈍っているオラスクアガが再三危ない貰い方をする。ヒヤヒヤもので正視していられない。「判定負けがあるかも・・・」と、あらぬ心配をしながら中盤を折り返すと、それまでと同じ流れで一進一退の打ち合いになった第7ラウンド、ロープ際まで後退したマグラモとフックの応酬になり、相打ちの右フックがマグラモの顔面をクリーンヒット。

グラリと左方向に身体を傾けたマグラモを見て、主審の中村がストップを宣告。完全に効いていた為、TKOは妥当な裁定ではあったが、止められたマグラモは「まだやれる」と一瞬戸惑いを見せていた。

◎試合映像
<1>オラスクアガ TKO7R G・マグラモ
2023年9月18日/有明アリーナ(S・フライ級10回戦)
https://www.youtube.com/watch?v=GVHXdG5PQ5g

<2>拳四朗 TKO9R オアラスクアガ
2023年4月8日/有明アリーナ
WBA・WBC統一世界L・フライ級タイトルマッチ12回戦
https://www.youtube.com/watch?v=7eoh6f-wST8

<3>オラスクアガ TKO1R マルコ・サスタイタ(米)
2022年10月14日/セネカ・ナイアガラ・リゾート&カジノ, N.Y.州ナイアガラ・フォールズ
WBAフェデラテンフライ級タイトルマッチ10回戦



不出来の極みと評すべきマグラモ戦から10ヶ月。あらためてのテストマッチをやらずに、いきなり世界戦に雪崩れ込んでも大丈夫なのか。拳四朗戦と同等の仕上がりなら、WBA王者ユーリ阿久井政吾(倉敷守安)を含む邦人フライ級の誰とやっても、むざむざ名をなさしめることは無い筈。

しかし、酷過ぎたマグラモ戦から1年近くが経ち、付いて回るコンディショニングへの不安をどうしても払拭することができない。微妙なマージンに落ち着いたオッズにも、身銭を賭けるマニアたちの揺れる心(?)が見え隠れする。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
オラスクアガ:-300(約1.33倍)
加納:+250(3.5倍)

<2>betway
オラスクアガ:-357(約1.28倍)
加納:+250(3.5倍)

<3>ウィリアム・ヒル
オラスクアガ:3/10(1.3倍)
加納:5/2(3.5倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
オラスクアガ:1/3(約1.33倍)
加納:14/5(3.8倍)
ドロー:25/1(26倍)


約3倍のアンダードッグとなった加納陸(かのう・りく)は、今を去ること10年前、2013年の暮れにフィリピンへ渡り、弱冠15歳でのプロ・デビューが話題となった兵庫県出身のサウスポー。同門の同い年だった服部海斗(はっとり・かいと)も行動を共にして、1歳年上のデビュー2戦目の比国人と4ラウンドを0-1で引き分ける。

加納は、負け越しとは言え既に8戦を経験していた地元の無名選手と戦い、無念の4回1-2判定負け。敵地の真っ只中で、同じミニマム級で実戦のリングに登り、いきなりプロの洗礼を浴びることになった。その後タイへ活動の拠点を移し、2014年12月までの2年間に7戦5勝(3KO)1敗1分けの戦績を残して帰国。

一緒に渡航した服部海斗は、突然の病に倒れて緊急入院。骨髄性白血病と診断され、17歳の青春を散らす。TV大阪が2人の軌跡を追うドキュメンタリーを制作するなど、あくまで関西中心ではあったが、ボクシング・ファンの強い関心を惹く。

◎「海と陸・16歳のプロボクサー」
https://www.tv-osaka.co.jp/sp/nameless_hero_another/


17歳の誕生日を待ってJBCライセンスを取得(当時の規定)すると、加納は大成ジムから正式に国内デビュー。以来、「三田(さんだ:兵庫県三田市)から世界へ」をキャッチフレーズに戦い続けてきた。

U-15全国大会での優勝経験を持ち、フィリピンとタイで実戦を経験した加納は、国内5戦目で世界挑戦経験のあるメルリト・サビーリョ(比)を2-1の判定に下して、105ポンドのWBOアジアパシフィック王座を獲得(2016年5月)。

余勢を勝って3ヶ月の2016年8月、国内最軽量で長らく第一人者として君臨する高山勝成(仲里:当時の所属ジム)と、空位のWBO王座を懸けて対戦。加納が勝てば、井岡弘樹が持つ国内最年少奪取記録(18歳9ヶ月10日)を、6日短縮する新記録(18歳9ヶ月4日)となることことから、地元三田市での開催(駒ヶ谷公園体育館)と相まって注目を集めるも、偶然のバッティングで高山が古傷の瞼をカット。

第6ラウンド終了後の負傷判定となり、ベテランの高山が3-0のユナニマウス・ディシジョンを得る。番狂わせの載冠は成らなかった。


この後2018年の夏まで105ポンドに留まったが、小野心(ワタナベ)の日本タイトルに挑戦して8回TKOに退き、同年12月の復帰戦で108ポンドに増量。WBCユース,WBOアジア・パシフィック王座を獲得したが、武漢ウィルス禍による停滞を経て、2022年にフライ級に進出。

同年9月に井上夕雅(真正)を12回3-0判定に下し、WBOアジア・パシフィック王座を2階級制覇。さらに昨年4月、亀山大輝(ワタナベ)の挑戦を受けて激闘を展開。三者三様のドローで辛くもベルトを守っている(6月12日付けで返上)。

12月10日のエディオン・アリーナ興行(第2競技場/メインは石田匠)に出場して、タイ人とのチューンナップを2回TKOで難なく終わらせ、世界タイトルに照準を合わせた。

そして今年4月、エディオン・アリーナ(第2競技場)でのシリーズ興行に参戦が決まるも、ジェシー・ロドリゲスの王座返上により、WBOがオラスクアガとの決定戦を通告。4月の試合をキャンセルして、本格的なトレーニングに専念する。


◎ファイナル・プレス・カンファレンス


※ファイナル・プレス・カンファレンス(アマプラ公式:フル)
https://www.youtube.com/watch?v=V6L9QXkR_nQ


お互い正統派のクリーンなボクシングを身上にしていて、変わったことはやらない。左右の違いはあれど攻防は良くまとまっている。スピード,パワー,テクニックのいずれにおいても、突出したアビリティがある訳ではないが、細かい崩しを厭わず総合力で戦況を切り開く。

そうなると、すべての要素について上回るオラスクアガが優位に立たざるを得ない。問題はトニーのコンディション。万全なら判定まで粘れるかどうか。加納が最終ラウンドまで立っていられたら、上首尾と称されるべき。


◎オラスクアガ(25歳)/前日計量:111.3ポンド(50.5キロ)
戦績:7戦6勝(4KO)1敗
アマ通算:23戦22勝1敗
身長:163(167)センチ,リーチ:175センチ
※Boxrec記載の身長が大きく変わった/164.5センチの拳四朗とどっこいだったから、167はサバを読んでいたのかもしれない
※以下計量時の測定
脈拍:62/分
血圧:128/75
体温:35.7℃
右ボクサーファイター


◎加納(26歳)/前日計量:111.8ポンド(50.7キロ)
元WBOアジア・パシフィックフライ級(V1/返上),元WBOアジア・パシフィックJ・フライ級(V1/返上),元WBC L・フライ級ユース(V0/返上).元OPBFミニマム級暫(V0/返上),元WBAアジアミニマム級(V0/返上)王者
戦績:28戦22勝(11KO)4敗2分け
身長:162センチ,リーチ:167センチ
※以下計量時の測定
脈拍:60/分
血圧:114/85
体温:35.4℃
左ボクサーファイター


◎前日計量


◎前日計量(アマプラ公式:フル)
https://www.youtube.com/watch?v=hWuuj-UUNvc


●●●●●●●●●●●●●●●●●●

■オフィシャル

主審:ホセ・リベラ(プエルトリコ)

副審:
ルイス・ルイス(プエルトリコ)
リシャール・ブルアン(カナダ)
エドワルド・リガス(比)

立会人(スーパーバイザー):レオン・パノンチーリョ(米/ハワイ州/WBO副会長)


●●●●●●●●●●●●●●●●●●

■アマゾン・プライムで無料配信(午後6時~)

2024 那須川天心ボクシング第4戦、中谷潤人・加納陸 世界戦

◎【無料全編公開】 LIVE BOXING 9 『独占密着 那須川天心第4戦、中谷潤人、田中恒成、加納陸出場トリプル世界戦直前SP』|プライムビデオ
2024年7月6日/アマプラ公式