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■5月6日/東京ドーム/4団体統一世界S・バンタム級タイトルマッチ12回戦
統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs WBC1位 ルイス・ネリー(メキシコ)




※ファイナル・プレッサー(公式フル映像)
2024年5月/4日/Prime Video JP - プライムビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=x0qn6Ihs2Po


■ネリーが狙う”打倒モンスター対策”

これはもう、火を見るよりも明らか。

「ドネア第1戦の再現」以外に有り得ない。きっかけと方法は何だって構わない。早い時間帯にガツンと1発かまして、効かせるかどこか怪我をさせるか。

眼窩底骨折の重傷を負って、一時的に右眼の視力を失った尚弥は、巧まざるインサイドワークで百戦錬磨のドネアを騙し続けて、何度かの危機を乗り越え、強烈な左ボディで決定的なダウンを奪い、念願のアリ・トロフィーを高く掲げた。

しかし、ドネアに通じた駆け引きなど、ネリーは一気呵成の突進と自慢の連打を回転させてゴリゴリの乱打戦に持ち込み、そのまま力でねじ伏せる。尚弥のカウンターで逆襲されグラついても、身体のどこかにしがみついてでも耐え凌ぎ、ホヴァニシアンと同じ目に遭わせて最後は打ち倒す。


「死を賭して戦う。血塗れにする。」

ファイナル・プレッサーで語った物騒な覚悟、公開練習でトレーナーとともに言及した「モンスターの小さからぬディフェンスの穴」発言、そして公式インスタグラムで公開した例の壁画も、その背景には夥しい血痕が描かれていた。

「イノウエは必ずKOを狙って来る。後生大事にポイントメイクなんてしないだろう。オレを安く値踏みしたなら尚更だ。」

「ガンガン来るならしめたものだ。下がって距離を取ろうとしたら、密着してグシャグシャにしてやる。」





壁画


尚弥のファースト・コンタクトを待って、いきなりの相打ちを仕掛けるのか、それとも開始ゴングと同時に猛然と襲い掛かるのか。あるいは、そのどちらもなのか。いずれにしろ、立ち上がりの出方が大きなカギを握る。

フルトン戦とタパレス戦のように、正面に立っての駆け引きは危険。構えと視線,雰囲気だけで圧力をかけて後退させるのではなく、スパーリングで三代大訓(みしろ・ひろのり/国内ライト級の第一人者)を驚愕させた、一瞬たりとも気を抜くことのない凄まじいまでに研ぎ澄まされた集中力をそのままに、ロング・ディスタンスをキープしながら脚を使って距離で捌く。

比嘉大吾との公開スパーリング(2021年2月11日/国立代々木第一体育館/チャリティー・イベント:Legend)で見せ付けた、華麗かつスピードに溢れたフットワーク。あの時ほど魅せることを意識する必要はない。

ネリーの出足を読んで素早く動き、死角から鋭いジャブ&右ストレートを突く。クリンチすら許さない、徹底したサークリングでネリーを翻弄する。ロールモデルは、伝説の石の拳に「ノー・マス」と言わせた、再戦におけるシュガー・レイ・レナード。

序盤の4ラウンズは、他に何も要らない。8割以上の本気のパンチは数発でOK。その中でカウンターのチャンスがあり、それで決まればそれもまた良し。


ネリーは確かにディフェンスに無頓着なところがあり、とりわけジャブに対する反応が鈍い。ただし、あの粗さは誘い水の役割も果たしていて、調子に乗ってワンツーで踏み込む瞬間を、パンテーラは虎視眈々と狙っている。山中を最初に倒したパンチも、ゴッドレフトに合わせたショートのカウンターだった。

ジャブを多少浴びたくらいでは、ビクともしない打たれ強さへの自信がある。さらに、致命的な一撃から身を守るボディワークにも相応の手応えを持っていて、L字の構えを取り、状態を斜めに倒し首を振り、”神の左”をもいなして見せた。そうして一発効かさることさえできれば、立て直す暇を与えない強打の回転が始まる。

メキシコのトップボクサーは、あのビクトル・ラバナレスのように、ディフェンスそっちのけでガンガン振り回すブル・ファイターでも、いざとなったらアウトボクシングで時間を稼ぐ器用さも併せ持つ。


タイで上り調子のシリモンコンとやった時、大幅なリバウンドでウェルター級近くまで戻したヤング・チャンプの馬力に苦しんだラカンドンは、名匠ナチョ・べりスタイン仕込みのステップワークでイケイケのプレスに対抗していた。

日本人キラーとして名を馳せたオスカー・ラリオス然り。バンタム級で当たるを幸い倒しまくっていたジョニー・ゴンサレスも、階級を上げて簡単に勝てなくなってからは、丁寧なボクシングも混ぜるようになったし、ジュニア・ジョーンズによもやのKO負けを食らった後、マルコ・アントニオ・バレラもアウトボックスのボリュームを増やして延命を図っている。

ネリーもそれなりにやれそうだが、過去の試合を振り返ると、やはり技術戦が得意そうには見えない。パワーへの分厚過ぎる信頼故に、「オレにはそんなものは不要」と考えているのかもしれず、実際にやればできるのかもしれないが・・・。


Camp Life: Inoue vs Nery | FULL EPISODE | Undisputed Fight Monday Morning on ESPN+
2024年5月2日/トップランク公式





スタートの4ラウンズを「デュラン2のレナード」で幻惑翻弄すれば、我慢できなくなったネリーが。それこそ遮二無二突進して来る。頭の衝突だけに気を付けて、くっつかれる前にサイドステップで安全圏に逃げつつ、ガードがバラけても委細構わず、身体を翻してさらに追いすがろうとするパンテーラに、強烈無比な右ストレートを叩き込む。

ガクンと膝が揺れたら、すかさず左の連打(上下)で畳み掛け、最後はロープかコーナーに詰めてドネア2,フルトンと同じフィニッシュ。

余りにも安易かつ荒唐無稽な妄想だと笑われるだろうが、”パワー・ハウス”ならぬ”ファンタジスタ・ナオヤ”も悪くないと、本気でそう思っている。


とにかくネリーは、この一戦さえモノにできれば、後はもうどうなってもいいというぐらいの覚悟を決めてモンスターに対峙する筈。ゆめゆめ油断することは無いと信ずるけれど、スタートはどこまでも慎重に距離を取って。

ロング・ディスタンスのキープに努めて欲しい。


身銭を切って賭けてる連中は、どんな様子だろうか。発表直後と直前のオッズを見比べてみよう。


□主要ブックメイカーのオッズ
◎3月19日
<1>betway
尚弥:-1408(約1.07倍)
ネリー:+700(8倍)

<2>FanDuel
尚弥:-1100(約1.09倍)
ネリー:+640(7.4倍)

<3>DraftKings
尚弥:-1200(約1.08倍)
ネリー:+700(8倍)

<4>ウィリアム・ヒル
尚弥:1/12(約1.08倍)
ネリー:13/2(7.5倍)
ドロー:16/1(17倍)

<5>Sky Sports
尚弥:1/10(1.1倍)
ネリー:6/1(7倍)
ドロー:20/1(21倍)

◎5月4日
<1>BetMGM
尚弥:-1200(約1.08倍)
ネリー:+750(8.5倍)

<2>betway
尚弥:-1587(約1.06倍)
ネリー:+750(8.5倍)

<3>ウィリアム・ヒル
尚弥:1/16(約1.06倍)
ネリー:7/1(8倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
尚弥:1/12(約1.08倍)
ネリー:9/1(10倍)
ドロー:25/1(26倍)

MGMもしっかり並び、少しづつだが差は開いている。パンテーラのパワーショットと旋風のような勢いに一抹の怖さを認めつつ、総合力に優るモンスターが明白なアドバンテージを有する。大方の見立てが、そうした結論に辿り着く。

ファン・C・パジャーノ戦並みとまで贅沢は言わない。でも、パワーでねじ伏せるボクシングではなく、技&スピードで倒す”芸術的なKO”を久々に見てみたい。

期待値などではなく、当然の帰結として中盤までのKO防衛。


◎井上(30歳)/前日計量:121.7ポンド(55.2キロ)
戦績:26戦全勝(23KO)
現WBC・WBO統一S・バンタム級王者
前4団体=WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
世界戦通算:21戦全勝(19KO)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎ネリー(29歳)/前日計量:120.8ポンド(54.8キロ)
現WBC S・バンタム級(V0) ,元WBCバンタム級(V0)王者
戦績:36戦35勝(27KO)1敗
アマ戦績:9戦全勝(5KO・RSC)
身長:165センチ,リーチ:167センチ
※山中第2戦の予備検診データ
左ボクサーファイター


ネリーの500グラムアンダーについて、ネット上では様々な憶測が飛び交っている。調整の失敗に言及するインフルエンサー(あくまでボクシングの話題限定)も居て、なかなかにかまびすしい。

しかし、ネリーは130ポンド契約でカルモナ戦をやったかと思えば、直近のサルダール戦を119ポンドで仕上げたり、大胆にウェイトを上げ下げしている。本気で追い込めば、今でもバンタム級でやれないこともないのでは?。

自身もピークにあったS・フライ級時代、WBOのベルトを保持する尚弥にアタックして、慢性化した減量苦+右拳の負傷に腰痛まで加わり、満身創痍の割引モンスターだったとは言え、12ラウンズをフルに持ち応えたカルモナに130ポンドを呑ませたのは、前戦から8ヶ月の間隔が開いて完全にオフしていた為だろう。

僅かでもオーバーした瞬間、ボクシング人生最大のビッグ・マネー・ファイトを、リザーバーのT・J・ドヘニーにさらわれてしまう。何があってもリミット以下に落とさなければと、素行不良の問題児なりに取り組んだ結果だと考えるのが妥当。

◎前日計量(トップランク公式チャンネルにアップされたハイライト)


◎Inoue Picks Gloves, Has Final Words for Nery | Undisputed Fight Monday Morning ESPN+
トップランク公式(グローブチェックの様子と囲みのインタビューを収めた別バージョンのハイライト)


◎前日計量フル映像(公式)
Prime Video JP - プライムビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=wgw-XvtA9ag


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■オフィシャル

主審:マイケル・グリフィン(カナダ)

副審:
ホセ・アルベルト・トーレス(プエルトリコ)
アダム・ハイト(豪)
ベノイ・ルーセル(カナダ)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:ウォン・キム(韓)
WBC:ドゥウェイン・フォード(米/NABF会長)
IBF:安河内剛(日/JBC事務局長)
WBO:レオン・パノンチィーリョ(米/ハワイ州/WBO副会長)


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■無料公開された公式映像
<1>【無料公開】『独占密着 井上尚弥VSルイス・ネリ 東京ドーム決戦直前SP』 |プライムビデオ
(1)#1 “最強”のキャリアに「まだ満足していない」と語る井上尚弥。
https://www.youtube.com/watch?v=P3_ROltzHoo

(2)#2 「激闘で汚名を返上する」と語る“最恐”ルイス・ネリ。
https://www.youtube.com/watch?v=8du9Gqf-koU

(3)#3日本ボクシング界34年ぶりに行われる東京ドーム決戦。
そこには世界に挑む5人の日本人選手それぞれの物語があった。
https://www.youtube.com/watch?v=1VOyDMnkevE


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■単独インタビュー 大橋秀行会長、井上尚弥に託した東京ドーム「特別な思い」 
5・6ボクシング4大世界戦あと4日
2024年5月2日/サンケイスポーツ
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/sanspo/sports/sanspo-_sports_others_Y3IG3FYPJNNF5EZTOVDLTKX3PM?redirect=1