最軽量ゾーンのエースに死角なし(?) - 拳四朗 vs カニサレス 直前プレビュー -
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■1月23日/エディオンアリーナ,大阪市浪速区/WBA・WBC統一世界L・フライ級タイトルマッチ12回戦
統一王者 寺地拳四朗(B.M.B.) vs WBA1位/WBC2位 カルロス・カニサレス(ベネズエラ)
統一王者 寺地拳四朗(B.M.B.) vs WBA1位/WBC2位 カルロス・カニサレス(ベネズエラ)
驚くべき即決KOでベルトの奪還に成功した矢吹正道(緑)との再戦を含めて、世界戦5連続KO勝ち(4連続KO防衛中)を続ける拳四朗が、現在の108ポンドを代表する実力者の1人,カニサレスの挑戦を受ける。
直前のオッズは大きく拳四朗を支持。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
拳四朗:-700(約1.14倍)
カニサレス:+500(6倍)
<2>betway
拳四朗:-752(約1.91倍)
カニサレス:+500(6倍)
<3>ウィリアム・ヒル
拳四朗:1/8(約1.08倍)
カニサレス:5/1(6倍)
ドロー:16/1(17倍)
<4>Sky Sports
拳四朗:1/12(約1.08倍)
カニサレス:5/1(6倍)
ドロー:20/1(21倍)
連続KO防衛のインパクトと言ってしまえばミもフタもないが、とりわけ強烈な印象を残したのが、京口紘人(ワタナベ)を左ジャブ1本で減速させ、決死の反撃を断ち切って倒し切った2団体統一戦(2022年11月)。
拳四朗のジャブをまともに食って効かされてしまう京口の姿を、半ば呆然と見つめるしかない。ボディワークが使えなくなってしまった現代日本のボクサーの中にあって、京口はそれでも上体の動きが多い方に入る。
がしかし、拳四朗のジャブにしっかり対応するまでには至らず、予想を超える威力に即応することができないままラウンドを重ねてしまう。
京口推しの私としては、ただただ残念と申し上げるしかないけれど、頭と肩を振り続けることの重要性、打ち始めと打ち終わりの処理が甘くなることの怖さを、あらためて思い知らされた。
そして、よもやのTKO負けでV9に失敗した矢吹との第1戦。偉大なる具志堅用高が、およそ40年前に達成した国内連続防衛記録(13回)更新の夢は破れたものの、真っ向勝負の打撃戦に応じて矢吹をKO寸前まで追い込み、自らのパンチング・パワーとフィジカル・タフネスに手応えも感じたに違いない。
リマッチでファイターに変身した拳四朗は、スタートから前に出てキツい圧力をかけ、フイを突かれた格好の矢吹に態勢を立て直す機を与えることなく、一方的に詰め切ってみせた。
第1戦でも感じたことだが、リマッチで際立っていたのが拳四朗の大きさ。計量後にどの程度リバウンドしているのか、正確な数値は不明ながらも、相当に戻していることが容易に想像できる。
身長で2センチ程度上回る矢吹も、リカバリーに成功してちゃんと大きくなっていたが、拳四朗の気迫とプレッシャーに押されて後退するしかない。第2ラウンドに矢吹のいい右が1発入って一瞬たじろいだが、直ちにガードを作り直して前進を継続。逆に綺麗なワンツーを決めて、矢吹の顔を跳ね上げ返す。
余裕と自信を消失した矢吹の表情がいよいよ強張り、第3ラウンド、一気に勢いを増した拳四朗が、ロープ伝いに逃げる矢吹を力強い左右のボディでスローダウンさせる。ジャブで態勢を崩され、顔面がガラ空きになるその瞬間を拳四朗は見逃さない。素晴らしい右ストレートで打ち抜くと、。
何とか立ち上がった矢吹だが、完全に効いていて足元が定まらず、主審の染谷がそのままストップ。ユーリ阿久井政悟に初回KO負けした際、「自分は打たれ強くない。と言うか、打たれ弱い」と正直に認めていたことを思い出す。
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京口との統一戦でも、本番当日の体格差が目についた。京口に対しては、左右のステップを絶やさず押し退きしながらのボクシングだったが、無駄に下がったりはしない。リードジャブで着実に先手を取り、強めのパンチを交換しても常にパワー負けせず、ごく自然に圧力がかかって行く。
「まさかここまでとは・・・」
拳四朗のパワーは京口にとっても脅威だったようで、顔色を失った表情が矢吹のそれと瓜二つ。WBC王者に距離と間合いを握られたまま、正面での対応を続けるしかないWBA王者の顔面を遂にワンツーが捉える。
たまらず倒れ込む京口。第5ラウンド開始30秒過ぎだった。ジャブとボディが効き出していたとは言え、けっして打たれ弱くはない京口がこんな倒れ方をするとは・・・。
エイトカウントを待って再開されると、し止めにかかる拳四朗。しかし、京口も意地を見せる。クロスレンジでの打ち合いなら簡単には負けないとばかり、得意の左フックをきっかけに拳四朗をロープに押し込み、渾身の逆襲で見せ場を作った。
ラウンド終了のゴングと同時に、両通がもつれて京口が下になる状態で倒れてヒヤリとしたが、起き上がる時の表情がまるで違う。ダウンを奪いながら、逆に攻め込まれた拳四朗には充分な余裕があり、口が開いて呼吸が辛そうな京口は、ダメージの影響が否が応でも滲み出る。
続く第6ラウンド、一息置いて距離とペースを作り直す拳四朗。お陰で京口も回復の時間を得られたが、ジャブと左右のコンビネーションを浴びて腫れ出した顔が痛々しい。
フィニッシュの第7ラウンド、再び圧力をかける拳四朗のジャブと左右が効き、京口の足と動きが止まる。完全に鈍った京口は、拳四朗の動き出しに反応できない。「まずいな・・・」と思いつつ、画面に集中し直す。
ガードを完全に解いた拳四朗が、左の拳をグルっと回すパフォーマンスでけん制しながらし止めにかかる。ほぼノーガードで勝負に出ている拳四朗に、京口のジャブと右ストレートが当たり、密着すると左ボディからの上下も当たって場内が沸く。
しかし、京口のパンチに拳四朗を脅かす力は残っておらず、何度目かの交錯の後、またもや拳四朗の右が決まってグラリと揺れる京口。そのまま、たたらを踏むように後退しながら態勢を崩すところへ、文字通り止めの追撃(右)。
ロープ際のキャンバスに背中から倒れると、矢吹第2戦に続いて主審の重責を任された染谷は、左腕で京口を抱きかかえながら大きく右手を振り、カウントを数えることなく試合終了を宣告。
統一王者となった拳四朗は、前評判の高い天才児トニー・オラスクアガ(米)を9回TKOに退けると、南アの元アイドル,へッキー・バドラーのかき回し戦術に手を焼きながらも、同じく9回TKOで締め括り、力の違いを見せ付ける。
◎ファイナル・プレッサー(抜粋)
2024年1月21日/Top Rank公式
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勇猛果敢なインファイトでド突き合うかと思えば、健脚を活かした出入りで安全確実にラウンドをまとめにかかる。柔軟に硬軟を使い分けるカニサレスは、今回が3度目の来日。
2016年の大晦日に、田口良一(ワタナベ)が保持していたWBA王座に挑戦して、三者三様のスプリットドローで涙を呑んだ初来日。奪取こそ成らなかったが、驚異的な打たれ強さを発揮する田口に対して、退くべきところは退くクレバネスが奏功していた。
翌2017年は母国で3戦を消化。2018年3月に再来日を果たし、小西伶弥(真正)とのWBA正規王座決定戦に出場。2017年の大晦日に、田口がミラン・メリンド(比)を3-0判定に破りIBF王座を吸収。WBAスーパー王者に昇格した為、正規王座を空位にして行われたお馴染みの措置。
第3ラウンドに右でダウンを奪ったカニサレスは、その後も優位に試合を進めるも、しぶとく食い下がる小西のボディアタックで後半失速気味となり、苦しみながらの3-0判定勝ち。
中国で木村翔(青木→花形)を大差の判定に下した試合を含めて、このベルトを2度防衛して田口との再戦のチャンスを待つも、メキシコに遠征したV3戦でエステバン・ベルムデスに6回TKO負け。虎の子の王座を失う(2021年5月)。
「高地対策が充分ではなかった。もう一度やれば勝てる」と語ったが、再戦のチャンスは無く、WBAスーパー王座は田口→ヘッキー・バドラー→京口と推移し、京口がベルムデスとのWBA統一戦を制している。
2021年~2022年は、ガニガン・ロペス戦(4回KO勝ち)を含めメキシコで3連勝(2KO)。昨年6月、アルゼンチンに飛んでダニエル・メテロンを8回負傷判定で破り、WBAの指名挑戦権を獲得。
スピードに欠けるベルムデスとの打ち合いを選択して、攻防のキメがどんどん粗くなり、自滅半ばに敗れた時もそうだが、小西に粘り負けしそうになるなど、上手いのか下手なのかわからないところがある。
計量後のリバウンドを遠慮なく利用するのも特徴で、安定政権を築きつつあった田口良一と引き分けた初挑戦)時も、長身(167.5センチ)の田口に対して、158センチの小兵とは思えない強打を振るっていた。
鍛え込まれた上半身は、田口と戦った頃よりも厚みを増している。パンチへの自信が裏目に出たベルムデス戦を教訓にするのか、ファイター化した拳四朗に合わせて真正面からシバキ合うのか。
積極的に倒しにかかる拳四朗は、当然のことながら被弾の確率が増している。試合運びの安定感に関して言えば、矢吹戦以前の「フットワーク&ジャブ」の方が良い。スタイルを変えたことについて、「これが自分のボクシング。多少打たれても前に出る方がいい」と、田口や田中恒成と同じ方向性を志向する。
無駄に打たれ(せ)ていいことは何も無い、堅実に距離をキープする拳四朗を、今一度見てみたい気もするけれど・・・。
◎拳四朗(32歳)/前日計量:107.4ポンド(48.7キロ)
現WBC(通算V11/連続V8)・WBA(V2)統一L・フライ級王者
元日本L・フライ級(V2/返上),OPBF L・フライ級(V1/返上),元WBCユースL・フライ級(V0/返上)王者
戦績:23戦22勝(14KO)1敗
世界戦通算:14戦13勝(9KO)1敗
アマ通算:74戦58勝(20KO)16敗
2013年東京国体L・フライ級優勝
2013年全日本選手権L・フライ級準優勝
奈良朱雀高→関西大学
身長:164.5センチ,リーチ:163センチ
※矢吹正道第2戦の予備検診データ
※計量後の検診データ
体温:36.1℃
脈拍:44/分
血圧:136/86
右ボクサーファイター
◎カニサレス(30歳)/前日計量:107.6ポンド(48.8キロ)
元WBAレギュラー王者(V2)
戦績:28戦26勝(19KO)1敗1分け
身長:159.5センチ,リーチ:164センチ
※小西伶弥戦(WBAレギュラー王座決定戦)の予備検診データ
※計量後の検診データ
体温:36.1℃
脈拍:40/分
血圧:124/84
右ボクサーファイター
◎前日計量
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■オフィシャル
主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)
副審:
ジェレミー・ヘイス(カナダ)
オマール・ミンタン(メキシコ)
リム・ジュンバェ(韓)
立会人(スーパーバイザー):
WBA:レンツォ・バグナリオル(ニカラグァ/WBA国際コーデイネーター,元審判)
WBC:タナポン・バクディブミ(タイ/ABC=WBCアジアボクシング評議会役員・WBCムエタイ会長)