Naoya The Great - Chapter 1 夢のまた夢・・・リング誌ファイター・オブ・ジ・イヤーに選出 Part 3 -
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■2023 Fighter of the year - リング誌が井上尚弥を選出
井上の受賞に一言いいたいと思うのは、クロフォード本人や在米マニアだけに止まらず、ボクシングに愛情を注ぎ続けてきた、それこそ一家言を持つ者たちの中に、国と地域に関わらず一定の割合居るに違いない。
主にSNSを通じて展開される異論・反論もまた、井上自身には何の責任もないことではあるが、反骨心にも並々ならぬものを持つモンスターだけに、心に期すものが既に溢れているのではないか。
それは、2年連続での受賞。いや、3年連続で受賞し、アジアNo.1のパッキャオに並ぶこと。100年近いリング誌の表彰歴を振り返っても、3年連続での受賞は過去に例がない。パックマンを超える4度の受賞ですら、今現在の井上なら不可能ではないとさえ思えるが、30代に突入した年齢を考えると流石に厳しい。
また、階級も大きなハンディキャップになる。何だかんだ言っても、王国アメリカのボクシング・マーケットを支える揺ぎ無い看板は、ウェルター級から上の中~重量級になる。軽量級のトップ・ファイターが伍していくには、誰もが納得するしかない結果、頭3つも4つも飛び抜けた実績が不可欠。
4つあるフェザー級のどれか1つを獲って5階級制覇を達成しても、それだけではアンチの口を完全に黙らせることはできない。「中量級とは競争の激しさが違う。同列には論じられない」との主張が繰り返される。
これまでと変わらない圧倒的なパフォーマンスを維持したまま、126ポンドでも4本のベルトを集めて、史上唯一となる「3階級+4団体統一」をやってのければ、2度目の年間MVPは確実だ。外す理由がない。
だが、相対的なパワーダウン&体格差をスピード&テクニックで補い切れず、悪戦苦闘が続く中でのギリギリ薄氷の載冠であったり、メイウェザーよろしくタッチ&アウェイの安全策に閉じこもるしかなくなったら、突出した力を発揮する若い才能に道を譲らざるを得ない(それが米国籍の黒人やメキシコ系ならなおさら)。
あくまで試合内容と勝ち方次第にはなるが、フェザーを完全制覇した後、さらにS・フェザーの2団体をまとめて(4つすべては無理にしても)、6階級制覇+王座統一(3つ・4つである必要はない)の離れ業まで行けば、パッキャオに並ぶことも夢ではなくなる。
◎パッキャオの受賞歴:3回
第1回目:2006年:S・フェザー級
一度惜敗したエリック・モラレスと2度対戦して連勝。特に3回KOで圧勝した第3戦は、出世試合となったフェザー級時代のマルコ・A・バレラ第1戦に勝るとも劣らない、大きな衝撃を全世界に与えた。
■ vs モラレス第3戦:3回KO勝ち
<1>2006年11月18日/トーマス&マックセンター,ラスベガス
WBCインターナショナルS・フェザー級タイトルマッチ12回戦
<2> vs モラレス第2戦:10回TKO勝ち
2006年1月21日/トーマス&マックセンター,ラスベガス
WBCインターナショナルS・フェザー級タイトルマッチ12回戦
https://www.youtube.com/watch?v=W8RDO7VaJ34
<3> vs モラレス第1戦:12回0-3判定負け
2005年3月19日/MGMグランド,ラスベガス
WBCインターナショナルS・フェザー級タイトルマッチ12回戦
https://www.youtube.com/watch?v=Sl4V0e2Odqw
<4> vs マルコ・アントニオ・バレラ第1戦:11回TKO勝ち
2003年11月15日/アラモドーム,テキサス州サンアントニオ
※リング誌フェザー級王座認定(WBCフライ,IBF J・フェザーに続く3階級制覇)
https://www.youtube.com/watch?v=I0rhQX6WFpw
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第2回目:2008年
<1>3月15日:ファン・M・マルケスに2-1判定勝ち
マンダレイ・ベイ・リゾート&カジノ,ラスベガス
WBC S・フェザー級王座獲得(4階級制覇=リング誌フェザー級王座を含む)
https://www.youtube.com/watch?v=31WoU-BJMdw
<2>6月28日:デヴィッド・ディアスに9回TKO勝ち
マンダレイ・ベイ・ホテル&カジノ,ラスベガス
WBCライト級王座獲得(5階級制覇=リング誌フェザー級王座を含む)
※個人的にはパッキャオのベスト・パフォーマンスだと確信する
https://www.youtube.com/watch?v=WgsHmnnMC34
<3>12月6日:オスカー・デラ・ホーヤに8回終了TKO勝ち
MGMグランド,ラスベガス/ウェルター級契約12回戦
ボクシング界のセオリーを難なく乗り越え、「階級の壁」を根底から覆したパッキャオが、メイウェザーと並ぶスーパースターへと飛翔した歴史的な勝利。
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第3回目:2009年
<1>5月2日:リッキー・ハットンに衝撃的な2回KO勝ち
MGMグランド,ラスベガス
リング誌J・ウェルター級王座認定(6階級制覇=リング誌フェザー級王座を含む)
※世界中のファンが支持するに違いないパッキャオのベストKO
<2>11月14日:ミゲル・コットに12回TKO勝ち
MGMグランド,ラスベガス
WBOウェルター級王座獲得(7階級制覇=リング誌J・ウェルター,フェザー級王座を含む)
https://www.youtube.com/watch?v=kUruG4y9mak
マルケス(2008年3月)とディアス(2008年6月)を連破して、3ヶ月のスパンでS・フェザーとライトの2階級を獲り、暮れにデラ・ホーヤを引退に追い込んだ後、さらにハットン,コットと三立ての快進撃。2008年から2009年にかけてのパッキャオは、紛れも無い”東洋の奇跡”だった。
「正気か?。カネに眼が眩むのも程がある。本気でパッキャオを殺す気か?」
デラ・ホーヤの引退試合に担ぎ出され、ウェルター級契約の12回戦と公表されるや否や、、存命だったドン・ホセ・スレイマンWBC会長を皮切りに、世界中の関係者から轟々たる非難が集中。
加齢と歴戦の疲労に、古傷(左肩の腱筋断裂)の再発まで重なり、その上無理なウェイト調整を自らに科したゴールデン・ボーイ。ラスト・ファイトのコーナーを預かったメヒコの名匠ナチョ・べリスタインによると、本番1ヶ月前に147ポンドの契約リミットまで絞っていたらしい。
154ポンドのS・ウェルター級に主戦場を移して7年が経ち、仕上がりに不安があったのだと思う。147でどの程度動けるのか、確かめたかったに違いない。しかしナチョは、「性急に落とし過ぎだ。キャンプのメニュー消化にも悪影響を及ぼす。すぐに150まで体重を戻すべきだ。」と進言。
お付きの栄養士に、ナチョ自身が直接食事の改善を申し入れしたというが、実際にどうなったのかは不明。公式計量と再計量の結果は次の通りだが、体格差に関する辛らつな批判が余程堪えていたかもしれない。
◎デラ・ホーヤ:前日145ポンド⇒当日147ポンド
◎パックマン:前日142ポンド⇒当日148ポンド1/2
わざわざ契約体重を2ポンドアンダーして、空腹のまま眠れる一夜(?)を耐えて、当日午前中の再計量で147のリミット丁度に合わせたのは、「ウェイトのハンディは無い。フェアな勝負だ」との、デラ・ホーヤなりの無言のアピールではなかったか。
内容と結果を振り返って見れば、ナチョの心配がそのまま現実になってしまった。足取りも反応も鈍く重く、満足に動けないまま為す術がない落日のスーパースターを、小柄なパッキャオがスピードと手数で翻弄。思うがままに打ち据え、最後はコーナーに詰めて滅多打ち。
8回終了後のインターバル中、顔面を酷く腫らしたゴールデン・ボーイは、すっくと椅子から立ち上がると、対角線上を真っ直ぐ歩みを進めて、パックマンとローチにギブアップの意思を伝えてジ・エンド。
フルトンを完封した井上のボクシングも圧巻ではあったが、年間MVPを連続受賞したパックマンと3名のビッグネームが繰り広げた熱いドラマ、現在の井上と同じ30歳前後のパッキャオが発揮したアビリティとパフォーマンスは言語を絶する。
デラ・ホーヤ,ハットン,コットに比肩し得る名前が、現在のS・バンタム~S・フェザーには見あたらない。バレラ&モラレス,イスラエル・バスケスとラファエル・マルケス、以上ベスト4より1~2枚格は落ちるが、レオ・サンタクルス,アブネル・マレス,ジョニー・ゴンサレス,オスカー・ラリオス・・・。
90年代半ば~2000年代の最初の10年の軽量級を、強力に牽引したメキシカン・レジェンドに匹敵するヒスパニック系の後継者がいてくれたら、122~126ポンドの景色はまるで違ったものになっていただろうに・・・。
モンスターと言えども、この男たち(全盛期のバレラ,モラレス,R・マルケス=4強)と戦ったらどうなるかわからない。誰もがそう思える真のライバル不在こそ、リアル・モンスター,井上尚弥にとっての最大の悲劇ではないのか。
ルイス・ネリーごときは、リアルなメキシカン・レジェンド4強の足元にも及ばない。はっきり申し上げて「顔じゃない」のである。
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■複数回の受賞者一覧/最多はアリの6回(!)
<1>6回:モハメッド・アリ(米)
<2>4回:ジョー・ルイス(米)
<3>3回:
(1)ロッキー・マルシアノ(米)
(2)ジョー・フレイジャー(米)
(3)イヴェンダー・ホリフィールド(米)
(4)マニー・パッキャオ(比)
<4>2回:
(1)トミー・ローラン(米)
(2)バーニー・ロス(米)
(3)エザード・チャールズ(米)
(4)シュガー・レイ・ロビンソン(米)
(5)インゲマール・ヨハンソン(スウェーデン)
(4)フロイド・パターソン(米)
(7)ディック・タイガー(ナイジェリア)
(8)ジョージ・フォアマン(米)
(9)シュガー・レイ・レナード(米)
(10)トーマス・ハーンズ(米)
(11)マーヴィン・ハグラー(米)
(12)マイク・タイソン(米)
(13)ジェームズ・トニー(米)
(14)フロイド・メイウェザー(米)
(15)タイソン・フューリー(米)
(16)カネロ・アルバレス(メキシコ)