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■1月6日/ヴァージン・ホテルズ・ラスベガス/S・ウェルター級12回戦
ヴァージル・オルティズ(米) vs フレデリック・ローソン(米)





◎ファイナル・プレス・カンファレンス:フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=jQVjTHZvkb0


エロール・スペンスとテレンス・クロフォードの2強を完黙させ、最激戦区の2023年から33年までの10年間(ディケイド)を大きくリードする真の才能。

140ポンドから154ポンドまでの3階級を席巻し、複数階級に及ぶ4団体統一を含む完全制覇を果たした後、160ポンドのミドル級を狙うことにおそらくなるだろう。

”ゴールデン・ボーイ”ことオスカー・デラ・ホーヤからメイウェザー&パッキャオへと継承され、今現在はカネロが担う”ボクシング界の顔(単なる稼ぎ頭を超えて)”に成り得る存在。


それこそが間違いなく”彼”だと、私はそう確信していた。

やがて147ポンドに参戦するに違いない、ライアン・ガルシアとジャーボンティ・ディヴィスではなく、シャクール・スティーブンソン,デヴィン・ヘイニーでもない。

クロフォードに続く140ポンドの4冠王ジョシュ・テーラーは勿論、”ハイテク”ロマチェンコを追い落とし、135ポンドをまとめたテオフィモ・ロペスも、”彼”と対峙した途端あっさり圏外へと追いやられる。


その”彼”、ヴァージル・オルティズ・Jr.を予期せぬ異変が襲ったのは、2022年初春のことだった。

3月19日にロサンゼルスのガレン・センター(南カリフォルニア大学が所有する多目的屋内アリーナ/収容人員:1万人超)で、前年にマッチルームと契約したイングランドのホープで、WBO5位にランクされるサウスポー,マイケル・マッキンソン(当時:22戦全勝2KO)との対戦を控えた本番4日前、突然の欠場が発表される。

興行を主催するゴールデン・ボーイ・プロモーションズは、受診した病院で「横紋筋融解症(おうもんきん・ゆうかいしょう/英名:Rhabdomyolysis)」と診断され、治療と静養が必要な状態を明らかにした。

日本国内でも「難病を発症」と報じられ、重度の腎機能障害(透析の必要性)や歩行困難など、深刻な合併症と後遺症の可能性への言及を含め、再起が危ぶまれる事態を想定せざるを得ない状況に言葉を失う。

◎関連記事
<1>Vergil Ortiz Jr. pulls out of Saturday bout vs. Michael McKinson due to rhabdomyolysis
2022年3月15日/ESPN Mike Coppinger
https://www.espn.com/boxing/story/_/id/33512169/vergil-ortiz-jr-pulls-march-19-bout-michael-mckinson

<2>Vergil Ortiz (Rhabdomyolysis) Hospitalized, Forced To Withdraw From March 19 DAZN Headliner
2022年3月15日/Boxing Scene Jake Donovan
https://www.boxingscene.com/vergil-ortiz-rhabdomyolysis-hospitalized-forced-withdraw-from-march-19-dazn-headliner--164792

<3>VERGIL ORTIZ JR. WITHDRAWS FROM MICHAEL MCKINSON FIGHT AFTER BEING DIAGNOSED WITH RHABDOMYOLYSIS
2022年3月16日/Ring Magazine Francisco Salazar
https://www.ringtv.com/636310-vergil-ortiz-jr-withdraws-from-michael-mckinson-fight-after-being-diagnosed-with-rhabdomyolysis/


医薬品の服用による重篤な副反応の他、激しい運動や熱中症(夏場のマラソンに代表される長距離走を含む)が原因となって発症するケースが報告されており、骨格筋の細胞が壊死・融解して、壊れた細胞内の成分が血中に流出。運動の最中だけでなく、静かに横になっていても筋肉痛や脱力感に襲われ、血尿のような赤褐色のおしっこが出ることもあるという。

放置を続けると、上述した通り、歩行困難や寝たきりに近い状況に陥るだけでは済まず、腎機能障害の併発が重なると、健常な生活の回復がさらに難しくなる。


試合に向けて本格的なジムワークに戻り、追い込みのキャンプに入るまでは順調だったらしい。キャンプの途中でこれまでにない疲労を覚えるようになったが、メニューの調整で解消すると考えていた模様。

練習と減量のペースを落として食事も改善したが、疲労感は日に日に増すばかり。本人も周囲も変だと気付いたものの、人間なら誰しもある体調不良の延長と捉えていた。ところが、キャンプを打ち上げ、ウェイト(ウェルター級リミット)の最終調整段階を迎えても、オルティズの状態は悪くなる一方。ようやくただ事ではないと悟り病院へ・・・。

オルティズの場合、当然のことながら継続的かつ慢性的なオーバーワークが疑われた。まずは静養に努め、点滴を主とした治療を根気良く続けるしかない。


最悪の事態(引退・要介護)が脳裏を過ぎり、暗澹とした思いにがっくり首を落とす。長期の戦線離脱も止む無し。ボクサーとしての復帰はともかく、1日も早く健康な日常を取り戻して欲しいと願っていたら、6月中旬にマッキンソン戦の再スケジュールが伝えられる。

◎Vergil Ortiz Jr. to face Michael McKinson in welterweight bout on Aug. 6 in Fort Worth, Texas
2022年6月16日/ESPN Mike Coppinger
https://www.espn.co.uk/boxing/story/_/id/34102333/vergil-ortiz-jr-face-michael-mckinson-aug-6-fort-worth-texas


場所を地元のテキサス州(フォートワース)に移し、8月6日に行うとのことだったが、「本当に大尿部なのか?」と不安だけが大きくなってしまう。

無事に療養が明けたとのことだが、寛解と言える段階にあるとは到底思えず、それでも戦前のオッズは大差でオルティズを支持する中、前(2021)年8月のエギディウス・カヴァリアスカス戦以来、丸々1年ぶりとなる実戦のリングに登る。


一応無敗同士の対決ではあったが、格の違いは明々白々。開始早々、オルティズの圧力を受けて腰が引けるイングランドのホープは、低い姿勢から左ストレートで突っかけ、そのまま抱きついてレスリング行為に及ぶ。余裕の無いこと夥しい。

荒れ模様を予感させる展開に、早速場内からブーイング。バタバタと落ち着かない流れに乗じてマッキンソンの左フックも1発当たったが、「オルティズ!オルティズ!」の大合唱に後押しされるように前進。強烈なワンツーでワイルドなイングランド人を弾き返す。

第2ラウンドに入っても攻防のキメは粗いままで、マッキンソンの頭がオルティズの左頭部に衝突。左の眉尻から出血してドクターチェック。ファンの心配が現実のものとなった。


一息入ったオルティズは高く構えたガードを保持したまま、ジャブと長い右ストレートでマッキンソンを突き放す。第3ラウンド以降、ジャブでペースを落ち着かせつつ、強烈な左の上下も交えて圧力を強めて行く。

防戦で手一杯のマッキンソンも、逃げの態勢から思い出したように手数を返し、揉み合う場面は減ったものの、適時抱きついて時間を使う。勝利への道筋がまったく見えないまま、それでも諦めずに粘るマッキンソン。

第8ラウンド終了間際、重量感に溢れた左フックを右のわき腹にねじ込むと、耐え切れずキャンバスに膝まづいて土下座状態。「やれやれ、やっと終わったか。」と水を飲もうとすると、カウントエイトで立ち上がり、渾身のステップでラウンドを逃げ切る。


「あと4ラウンズだ!」

発破をかけられコーナーを出たマッキンソン。だがしかし、もう限界を超えていた。触るような左ボディ1発で、ズルズルと下がりながらまた土下座。それでも起きて再開に応じたが、ステップでロープ伝いに逃げ出したところで英国のコーナーからタオルが入った。

ジャブの切れ味と瞬間的な反応のスピード,集中力は今1つ。完全に戻り切ってはいなかったけれど、それ自体は想定の範囲内。

パンチング・パワーはブランク前とほとんど変わらず、一時にせよ再起不能への懸念が流布されたことを思えば、ウェルター級リミットを作った上で、後半まで落ちることがなかったスタミナを含めて、上々の仕上がり&出来映えに見えた。


「この調子ならイケる!」

GBPを率いる総帥オスカー・デラ・ホーヤは、マネージャー兼チーフ・トレーナーとして少年時代から息子のサポートを続けるヴァージル・シニアの了解を取り付け、WBAレギュラー王者エイマンタス・スタニオニス(リトアニア/2016年リオ五輪代表)との対戦をまとめる。

2023年3月18日、オルティズが生まれたダラスの近郊フォートワース(盲目の天才ピアニスト辻井伸行が優勝したヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの開催地としても有名)開催で合意も、スタニオニスが急性の盲腸炎にかかり延期。

同じテキサス州内のアーリントンに変更の上、4月29日に再セットされると、今度はオルティズの容態が悪化。「横紋筋融解症」の再発により、再延期が発表された。


それでも陣営は諦めることなく粘り腰の交渉を続け、7月8日サンアントニオでの仕切り直し(AT&Tセンター)をリリース。ところが、本番前日になってオルティズがまたもや緊急入院。

「やはり難病なんだな・・・」

◎「横紋筋融解症」に関する医療記事
<1>江戸川病院
運動誘発性横紋筋融解症

<2>国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」
横紋筋融解症による急性腎障害発症の新たなメカニズムを解明-発症予防の薬剤開発へつながる成果-

<3>昭和大学
学士会会誌 第75巻 第4号(PDF形式)
特集 医薬品による重篤副作用への対処法と救済精度「横紋筋融解症」

<4>厚生労働省
(1)横紋筋融解症(重篤副作用疾患別対応マニュアル/PDF形式)
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1c09.pdf

(2)【神経・筋骨格系】重篤副作用疾患別対応マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/tp1122-1c.html


デラ・ホーヤはあくまで「延期」を強調していたが、「まず無理」との意見が大勢を占める。そして事態は、大方の見立て通りに推移した。

スタニオニスへの挑戦は消滅。昨年11月初旬、S・ウェルター級での再起が正式に報じられる。ノンタイトルの12回戦で、シカゴに本拠を置くガーナ人,フレデリック・ローソンを抜擢。

◎ローソン戦関連記事
<1>THE UNDEFEATED VERGIL ORTIZ JR. TO MAKE DEBUT IN SUPER WELTERWEIGHT DIVISION AGAINST GHANA’S FREDRICK LAWSON
2023年11月2日/Golden Boy Promotions
https://www.goldenboypromotions.com/latest/the-undefeated-vergil-ortiz-jr-to-make-debut-in-super-welterweight-division-against-ghanas-fredrick-lawson/

<2>難病から復帰のヴァージル・オルティスJr 今年の抱負を語る | ボクシング
2024年1月6日/DAZN日本語版
https://www.dazn.com/ja-JP/news/%E3%83%9C%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0/2024-01-05-boxing-vergil-ortiz-jr-drick-lawson-ambitions/taxs62l6kujm1qw8lz6egx2bk


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◎オルティズ(22歳)/前日計量:ポンド
元WBAウェルター級ゴールド(V2),元WBOインターナショナルウェルター級(V2),元NABF(北米)S・ライト級(V0)王者
戦績:19戦全勝(19KO)
アマ通算:140勝20敗
2016年ナショナル・ゴールデン・グローブス準優勝(L・ウェルター級)
2014年ジュニア(U17)全米選手権2位(119ポンド/54キロ)
2013年ジュニア(U17)全米選手権優勝(110ポンド/50キロ)
※ジュニア・オリンピックを兼ねる
2013年ナショナル・シルバー・グローブス(14~15歳)優勝(106ポンド/48キロ)
2012年ナショナル・シルバー・グローブス(12~13歳)優勝(90ポンド/40.8キロ)
身長,リーチとも178センチ
右ボクサーファイター


◎ローソン(34歳)/前日計量:ポンド
元WBCシルバーウェルター級王者(V0)
戦績:33戦30勝(22KO)3敗
身長:175センチ,リーチ:178センチ
右ボクサーファイター

◎前日計量


◎前日計量:フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=DeL8sL1lfZ8