カテゴリ:
■12月26日/有明アリーナ/WBA・WBC・IBF・WBO世界S・バンタム級4団体統一12回戦
WBC・WBO統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs WBA・IBF統一王者 マーロン・タパレス(比)


◎OFFICIAL TRAILER


全階級を通じて最高・最強を誇るパワー、日本人離れしたフィジカルの強度は無論、スピード(手足・身体・反応)、心身のタフネス(スタミナ)、リードジャブにコンビネーション&カウンターを含めたオフェンス、ディフェンス、インサイドワーク等々、攻防に関わる総ての要素で1歩も2歩も上回り、122ポンド最強の呼び声も高いスティーブン・フルトンのメンタルを開始から1分もかけずに崩壊させた驚愕の圧勝から早や5ヶ月。

いよいよ、”その日”がやって来た。

バンタム級で4年半の歳月を要した4団体統一。武漢ウィルス禍による1年近いブランク込みとは言え、交渉の難しさ(指名戦履行+タイミング)に象徴される難行を、S・バンタム級では1年でやり遂げようとしている。


1960年代前半~末にかけて表面(激)化した「WBA(全米:旧NBAによる支配体制) vs WBC(メキシコ+フィリピン=東洋連合+英国・欧州連合)」の対立に始まり、およそ20年かけて4つに増えた世界タイトル認定団体の分裂は、そもそも己の利権を剥き出しに主張し合う団体内部の権力闘争に端を発したもので、大金が動く世界戦を1つでも多く誘致したいプロモーターの我欲を絡めた地域間闘争でもあった。

WBAの内部(下部)組織だったWBCが1968年に独立を宣言し、多くの反対・懸念の声を押し切り単独王座の承認とランキング策定を強行した後、ベネズエラとパナマを中心とした反メキシコ(?)中南米勢に主導権を奪われた旧NBAの残党組みが、主に東海岸の主要プロモーターらと結託して再びWBAを割り、1983年にIBFを設立。

さらに5年後の1988年、プエルトリコを中心とするカリブ海沿岸地域の「反メキシコ+ベネズエラ+パナマのヒスパニック連合」が、またまたWBAに叛旗を翻してWBOを立ち上げた。


対立する他団体の王者のみならず、指名挑戦権を持つトップランカーと挑戦が決まった有力ランカーを。それぞれがそれぞれのランキングから外す愚行が横行し、世界の各地域に元々存在する地域王座を無視して、勝手気ままに地域タイトルを粗製乱造。

1970年代前半まで11だった階級を17へと大増設しただけでなく、さらにランキングも10位から15位に拡大して、乱造した地域タイトルの承認料とバーターで、各国・各地域の有力プロモーターが抱える有力選手に下位ランクをセットにして提供する。

承認料をケチってすぐに返上したりせず、律儀に防衛を続けてくれた場合、その選手が月例ランキングの更新に際して優遇されるのは自明の理。

◎公開練習
Highlights from Naoya Inoue's Open Workout As He Prepares for Undisputed Fight Against Tapales
2023年12月16日 Top Rank公式



WBCの単独王者認定が加速する1970年代前半以前、世界チャンピオンは11人しかいなかった。1つの階級に君臨する世界一は1人。世界一は希少だからこそ価値がある。そして、世界ランカーは各階級に10人(10位まで)だから110人。当たり前の常識である。

その当たり前が、当たり前ではなくなってしまった。11人しかいなかった世界チャンピオンは、単純計算で68人(4団体×17階級)に増加。絶対に生ずる同じ選手の重複ランクを無いものと仮定した、これまた乱暴な単純計算にはなるけれど、110人だった世界ランカーは最大1020人に膨れ上がる(4団体×17階級×15人)。

これだけの数を上手に回して行くのはそもそも不可能なのだが、暫定・休養・シルバー・ゴールド・フランチャイズ云々・・・世界一が1つの階級に4人ならまだしも、1つの団体が1つの階級に複数の世界一を平然と並立させる。


嘆かわしくも醜い承認料ビジネスと化したチャンピオン・シップ運営、4団体のあられもないシェア争い(陣取り合戦)が常態化してしまった惨憺たる状況下において、指名戦履行の優先順位を巡る政治的抗争を見れば明らかな通り、統一王者の存在は認定団体にとって本来厄介者でしか有り得ない。

すなわち、「世界チャンピオン×68名体制(1つの階級に4人)」の安定的な維持・稼動こそが、主要4団体にとって最も望ましい。

80年代半ば以降、プロボクサーが1年間にこなす試合数が激減した。世界チャンピオンの防衛戦も、概ね年間2試合。「17階級×4名×2回」で136回。下手に統一戦なんてやられようものなら、集金(承認料徴収)のチャンスがその分減ってしまう。


極めて例外的な存在が、80年代にスタートしたPPVを起動に乗せ、マーケットを作った立役者としてのマイク・タイソンであり、タイソンからPPVセールスキングの座を引き継いだオスカー・デラ・ホーヤであり、デラ・ホーヤを破ってスターダムの頂点に立ったフロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオである。

WBOがスタートする2年前にWBC王座を奪取したタイソンは、矢継ぎ早にWBAとIBFを吸収して3団体を統一。レイプ事件で有罪判決を受け、3年半に及んだブランクから再起した後も、ボクサーとしてのピークはとっくの昔に過ぎていたが、すぐにWBCとWBAのベルトを撮っている。

また、主戦場のドイツ国内で巨大なサッカースタジアムを満杯にし続けたクリチコ兄弟も、EU域内における超例外的存在と言えた。弟のウラディーミルは、兄ヴィタリ(現在キーウ市長)が持つWBCを除く3団体を統一。兄弟でヘビー級の4団体を制圧した珍しいケース。


ライト級でWBOとIBFの2団体を制したデラ・ホーヤは、ウェルター級に上げてWBCを獲り、WBA王座を返上したアイク・クォーティに薄氷の逆転勝利を収めた後、IBF王者ティト・トリニダードと事実上の3団体統一戦をやって初黒星を献上。

その後S・ウェルター級でもWBAとWBCの2つを巻いて、ミドル級のWBO王座をフェリックス・シュトルムから強奪(露骨な地元判定勝ち)すると、3団体(A・C・I)をまとめたバーナード・ホプキンスにボディを抉られ、屈辱のテン・カウントKO負け。史上初となる4団体統一の夢を打ち砕かれた。

そのホプキンスも、ジャーメイン・テーラーによもやの大番狂わせを許し、あっという間に4本のベルトを失う。名うてのダーティ・ファイターとして知られるホプキンスは典型的なヒールの嫌われ者で、人気者のティト・トリニダードが階級を上げて来なければ、ミドル級の3団体統一は無かった。4団体統一の栄誉も、デラ・ホーヤがいたればこそ。

B-HOPのような嫌われ者ではなかったが、スターと呼べるほど人気に恵まれなかったテーラーは、認定団体からの手厚い庇護を受けることなく、B-HOPとの再戦を優先する為に、指名戦の履行に何かとうるさいIBFを即座に返上。

さらにWBAからの指名戦通告を無視し続けてはく奪され、残った2つのベルトもケリー・パブリックに譲ってジ・エンド。


統一路線に積極的ではなかったメイウェザーは、収入面でキャリアのピークを築いたウェルター級とS・ウェルター級の2階級でWBAとWBCを同時に保持していた時期があり、400万件超のPPVを売りまくったパッキャオ戦でWBOも獲得。ウェルター級で3団体を統一した。

8階級制覇(リング誌王座を含む/主要4団体:6階級)の偉業を成し遂げ、目も眩むようなアメリカン・ドリームを実現したパッキャオが、王座統一に無縁だったのは意外な気もするが、マネー・メイとパックマンクラスになると、もはやベルトの有無はさしたる意味を持たない。

◎Behind The Scenes of The Press Conference with Naoya Inoue & Marlon Tapales
2023年12月25日 Top Rank公式



日本という狭くて小さなボクシング・マーケットにおいて、ネット配信で数十万件のPPVを売り、1~2万人規模の会場をソールド・アウトにする井上尚弥は、経済規模から見ても”リアル・モンスター”である。

ミドル級でゴロフキン戦を引き当てた村田諒太は別にして、軽量級の王者が国内で億単位のギャランティを得るなど、閉鎖的な民放地上波を基盤とした旧来型のビジネスモデル、古くから続く業界の常識では到底考えらなかった。

マーケットの確立に程遠い女子ボクシングでは、男子より一足も二足も早く4団体統一がトレンドになっていたが、遅ればせの流れを男子にもたらしたのは、井上が世界にその名を広めるきっかけにもなったWBSS(World Boxing Super Series)に他ならない。

第1シーズン(2017~18年)でオレクサンドル・ウシクがクルーザー級の4団体を獲り、続く第2シーズン(2018~19年)でも、S・ライト級のジョシュ・テーラーと井上が2団体統一に成功して、完全制覇への大きな足掛かりとなった。


名実ともにメイウェザーの後継者(PPVセールス・キング)たるカネロ・アルバレスは、4団体をまとめてさらに維持する必要などないのに、S・ミドル級の4団体統一を丸2年続けている。

そして井上 vs フルトン戦から4日後、男子初の「2階級+4団体統一」に成功したテレンス・クロフォードに、ウシクとカネロを交えた4つ巴でパウンド・フォー・パウンドのトップを競う井上尚弥も、「例外中の例外(金額はともかく)」の列に並んだと称して然るべきだろう。

勿論、4団体統一後の防衛ロードは予断を許さない。先週末、無事に再起を果たしてWBAの指名挑戦者となったムロジョン・アフマダリエフだけでなく、WBCから指名挑戦権を認められている不良メキシカン,ルイス・ネリー(日本国内では半永久追放状態)の2人が、観戦目的の来日を明言している。

IBFとWBOにも1位のサム・グッドマン(豪)が控えており、アフマダリエフとネリーが本当に姿を見せるのかどうかはともかく、指名戦の消化に頭を悩ます大橋会長の姿が目に浮かぶ。

認定団体から譲歩を引き出すことができなければ、早々に返上を余儀なくされる場合も有り得る。返上まで行かなくても、暫定王者が承認され、結局は指名戦指示の繰り返し・・・。

◎井上(30歳)/前日計量:121.7ポンド(55.2キロ)
戦績:25戦全勝(22KO)
現WBC・WBO統一S・バンタム級王者
WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)前4団体統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
世界戦通算:20戦全勝(18KO)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎タパレス(31歳)/前日計量:121.3ポンド(55.0キロ)
WBA・IBF統一S・バンタム級王者,元WBOバンタム級王者(V0/体重超過によるはく奪)
戦績:40戦37勝(19KO)3敗
世界戦通算:4戦3勝(2KO)1敗
アマ戦績:50戦超(詳細不明)
身長:163センチ,リーチ:165センチ
左ボクサーファイター

◎前日計量(Top Rank公式)


◎前日計量+グローブチェック(Top Rank公式)
2023年12月26日
Naoya Inoue Selects Gloves + Behind the Scenes of the Weigh-In With Inoue & Marlon Tapales



●●●●●●●●●●●●●●●●●●

■オフィシャル

主審:セレスティーノ・ルイス(米/イリノイ州)

副審:
ロビン・テーラー(米/ニューヨーク州)
ラウル・カイズ(米/カリフォルニア州)
クレイグ・メットカーフ(カナダ)

立会人(スーパーバイザー)
WBA:ホセ・オリヴィエ・ゴメス(パナマ/WBAランキング委員)
WBC:マイケル・ジョージ(米/ロードアイランド州/WBCシルバー・チャンピオンシップチェアマン)
IBF:ベン・ケイティ(豪/IBF Asia担当役員)
WBO:レオン・パノンチーリョ(WBO副会長/米ハワイ州/タイ在住)

◎Lemino公式
<1>WBA・WBC・IBF・WBO 世界スーパー・バンタム級王座統一戦 井上 尚弥 vs マーロン・タパレス
12月26日(火)無料LIVE配信(開場15:45/開演16:00)

<2>前日軽量:12月25日(月)ライヴ配信済み(開場12:45/開演13:00)