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■9月18日/有明アリーナ/WBA・WBC統一世界L・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 寺地拳四朗(B.M.B) vs 元WBAスーパー王者/WBC1位 ヘッキー・バドラー(南ア)





※フル映像:ファイナル・プレス・カンファレンス
https://www.youtube.com/watch?v=J-FZ7QUMWII


傷つき疲弊した田口良一(ワタナベ)からベルトを奪い去った2018年5月。自前の興行で世界戦の招致が可能だったワタナベジムが、常打ち小屋にしていた大田区総合体育館で、108ポンドのベルト奪還に成功した南アフリカを代表する軽量級のアイドルは、一目も憚らずに歓喜の涙を流した。

そして同じ年の大晦日。マカオまで遠征して京口紘人(ワタナベ)に11回TKOの完敗。あれからもう5年も経つ。

105ポンド時代の減量苦による消耗に加えて、打ち合いを好むスタイルが災いして、肉体的なダメージが顕著になったバドラーはその後実戦から遠ざかる。同胞のファンの間でも限界説が取り沙汰された。

がしかし、敢然と引退を拒否したバドラーは長い休暇を終えてジムへ戻り、本格的なトレーニングを再開。復帰に向けて動き出したところへ、予期せぬパンデミックが襲来。


同国で発見された変異株(ベータ:N501Y系統)が猛威を振るい、カムバックは大幅な遅れを余儀なくされ、ようやく実戦のリングに登ったのは2021年5月。ヨハネスブルグに無名のフィリピン人を呼び、大差の12回判定勝ち。WBCのシルバー王座を得て、世界ランキングに再び名を連ねる。

海外の元トップスターにありがちな、お約束通りの復帰戦と言ってしまえばそれまでだが、2年半近くに及んだブランクと年齢(33歳)を考慮すれば、108ポンドのL・フライ級リミットを作り(南アの計量には不正が少なくない)、12ラウンズを戦い切っただけでも上首尾と言えた。

しかし、次々と変異を続けるCovid-19の脅威は容易に収束の気配を見せず、さらに丸1年の待機を経て、昨年6月メキシコまで飛んで遅ればせの再起第2戦。

WBOのベルトを巻いて大成を期待されながら、マイキー・ガルシアのアンダーカードでジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)に1-2の判定で敗れたエルウィン・ソトと対戦。

有体に言うなら、復活に賭ける若きスター候補のステップボードとして、遥々南アフリカから呼ばれた元王者。これもまた、世界中で日々繰り返される見慣れた光景ではある。


ところが・・・。ソトのKO勝ちに期待を寄せる地元ファンのブーイングにもめげず、南アの元アイドル,いや古豪がしぶとく食い下がった。

小柄なソトよりもさらに小さな体をコンパクトなガードでまとめ、ステップ&ボディワークを絶やさず、キレのある動きで的を絞らせない。手数を抑えてスタミナをやりくりしながら、とにかく打たれ(せ)ないことに注力。

互いに目立ったヒットもパンチの応酬もなく、駆け引きに終始した前半の5ラウンズ。中継を行うESPN(スペイン語)のアンオフィシャル・スコアは、フルマークでソトを支持していた。


第6ラウンドから圧力を強めるバドラー。全盛期の迫力は望むべくもないが、細かな出はいりをキープしつつ、手数を増やして積極性をアピール。一方のソトは、バドラーのステップを追い切れず、徐々に息が上がり出す。

ベテランの元王者をナメていた訳ではないだろうが、調整不足が垣間見える。ソトのペースダウンが明確になった第7ラウンド、ESPNのアンオフィシャル・ジャッジが初めてバドラーにポイントを与えた。

ラウンドが進むにつれ、顕著なスローダウンへとさらなる下降が続くソト。しかし、バドラーは足を止めることなく、代名詞だった全力のフル・スウィングも封じ込め、慎重な出はいりを堅持。最終ラウンド、疲労と焦りで隙が増えたソトを、バドラーの右カウンターが捉える。

腰から落ちてエイト・カウントのダウン。致命的なダメージこそないが、完全にダメを押した格好となり、ESPNのアンオフィシャル・スコアも、7ラウンド以降はすべてバドラーに振るしかなかった。

3名のオフィシャル・ジャッジが、113-114の1ポイント差ながらも全員一致でアウェイの古豪に軍配を上げる(ESPNのスコアも同じく113-114)。


率直に申し上げて、バドラーのコンディションの良さに驚いた。歴戦のダメージと消耗が目立つベテランが長い休みを取り、一次的にせよ疲れが抜けて鋭気を取り戻すことがある。

「問題なく勝てる」と踏んだソトの油断に助けられたのも事実ではあるが、12ラウンズの長丁場をフルに動き続け、後半勝負の作戦を見事にまとめ切ったバドラーとコリン・ネイサン(チーフ・トレーナー)を賞賛するしかない。


奇跡的なアップセット(?)により世界の第一戦に舞い戻ったバドラーだが、再び丸々1年のレイ・オフ。今年5月にヨハネスブルグでセットされたチューンナップは、109ポンド契約の10回戦で、対戦相手は無名のタイ人。

ソト戦に比して明らかに重く見える足取りに一瞬不安を覚えたものの、開始間もなく放ったボディから上に返す左フックの連射で、タイ人は遭えなく腰から沈没。エイト・カウントで立ち上がった後、レフェリーがそのまま試合を止めた。

力の差が有り過ぎて、調子と状態を正確に測ることが難しい即決KO。ソト戦に続く綺麗なノックアウトのお陰で(?)、思いのほか賭け率は接近している。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
拳四朗:-600(約1.17倍)
バドラー:+450(5.5倍)

<2>betway
拳四朗:-1000(1.1倍)
バドラー:+650(7.5倍)

<3>ウィリアム・ヒル
拳四朗:1/10(1.1倍)
バドラー:11/2(6.5倍)
ドロー:20/1(21倍)

<4>Sky Sports
拳四朗:1/12(約1.08倍)
バドラー:8/1(9倍)
ドロー:20/1(21倍)


直近の防衛戦(4月8日/有明アリーナ)で、ルディ・エルナンデスの秘蔵っ子,トニー・オラスクアガ(2戦続けての来日/アンダーカードの8回戦に登場予定)に強いられた苦闘も、オッズに少なからず影響しているのかもしれない。

個人的にはSky Betの1-9を支持したいし、額面通り拳四朗のKO防衛は堅い筈。アウトボクシングに活路を見い出すしかないバドラーに取って、一段と威力を増した拳四朗の左ジャブは、明白なサイズの違いも併せて大きな壁となって立ちはだかるだろう。

唯一最大の不安要素は、矢吹正道(緑)との再戦,京口紘人との統一戦の快勝で、打ち合いに開眼したかのごとく積極性を増したスタイルの変貌。


オラスクアガのポテンシャルと将来性は、間違いなくS級の評価が与えられて然るべき。それでもなお、プロキャリア僅か5戦の24歳に追い詰められた前戦の出来を、遠来のバドラーとネイサンが大きな攻略の糸口と捉えても無理はない。

5月のチューンナップとは別人のバドラーを、完全アウェイのメキシコでソトをコントロールしたバドラーを、拳四朗と寺地会長は想定する必要がある。

スタートから一気に距離を詰めて、強引なプレスでバドラーの足を止めにかかるのか。それとも以前のように、滑らかなフットワークで対抗するのか。


どちらにしても、バドラーは煩く出はいりしながら、低い姿勢とボディワークで拳四朗のジャブを外し、ディフェンスを軸に据えた駆け引きでリズムとテンポを崩しにかかる。ソト戦同様、前半戦のポイントをすべて捨ててでも、拳四朗のペースを乱すことに腐心するに違いない。

正面から打ち合い勝負に出た拳四朗が、バドラーを捉え切れずに空転する可能性を全否定し切れない恐れを、ソト戦のバドラーが感じさせるのも確か。

曲者ガニガン・ロペスを1発でし止めた右のボディ・ストレート(2018年5月のリマッチ)が、生命線のジャブ,レバーを抉る左ボディとともに、大きなカギを握るかも・・・。


◎拳四朗(31歳)/前日計量:107ポンド(48.6キロ)
現WBC(通算V10/連続V8)・WBA(V1)統一L・フライ級王者
元日本L・フライ級(V2/返上),OPBF L・フライ級(V1/返上),元WBCユースL・フライ級(V0/返上)王者
戦績:22戦21勝(13KO)1敗
世界戦通算:13戦12勝(8KO)1敗
アマ通算:74戦58勝(20KO)16敗
2013年東京国体L・フライ級優勝
2013年全日本選手権L・フライ級準優勝
奈良朱雀高→関西大学
身長:164.5センチ,リーチ:163センチ
※矢吹正道第2戦の予備検診データ
右ボクサーファイター


◎バドラー(35歳)/前日計量:107.6ポンド(48.8キロ)
元WBA世界ミニマム級王者(V5)
※V6戦前にスーパー王者昇格,バイロン・ロハス(ニカラグァ)に敗れて王座転落
戦績:39戦35勝(11KO)4敗
身長:159.5センチ,リーチ:166.5センチ
※田口良一戦の予備検診データ
好戦的な右ボクサーファイター





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■オフィシャル

主審:グァダルーペ・ガルシア(メキシコ)

副審:
ラウル・カイズ・Jr.(米/カリフォルニア州)
ホセ・マンスール(メキシコ)
ジョエル・スコービー(カナダ)

立会人(スーパーバイザー):未発表


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■キック・オフ・カンファレンス



◎フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=SmFNfNLCS-4


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国際式2戦目に臨む那須川天心(帝拳)は、対戦相手の変更がどう響くのか。初陣で与那覇勇気(真正)を完封しながら、一部のファンから判定決着に関する不満の声が漏れていた。

「日本キック史上最高」と称される存在故に、期待のハードルが高くなるのは致し方のないところではあるものの、ノックアウトにこだわり過ぎず、自ら信ずるボクシングを追及し続けて欲しい。

拳四朗への大善戦で、敗れたとは言え高い評価に確信を得た”ルディの秘蔵っ子”トニー・オラスクアガ(米)も、フライ級契約の8回戦で連続参戦。

中谷潤人と空位のWBOフライ級王座を争ったジーメル・マグラモ(比)は、前日計量で40グラムのオーバー。全裸になって秤に乗ったが、契約ウェイトをクリアできず。50.9キロでパスしたオラスクアガが、そのまま了承したと思われる。

桑原拓(大橋)とのOPBF王座戦でも、マグラモは900グラムオーバーしていた前科があり、40グラムまでおっつけただけでも良しとすべき・・・?。