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■9月18日/有明アリーナ/WBO世界J・バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 中谷潤人(M.T) vs WBO6位 アルヒ・コルテス(メキシコ)



アンドリュー・モロニー(豪)を完全に気絶させた凄絶な左ストレートで、MGMグランドのメイン・アリーナを震撼させてから4ヶ月。2階級を制した中谷が、115ポンドにおける初防衛戦を迎えた。



※フル映像:ファイナル・プレス・カンファレンス
https://www.youtube.com/watch?v=J-FZ7QUMWII


チャレンジャーのメキシカン,コルテスは、発表時点(7月19日)で11位だったランキングが大幅にアップ。世界挑戦が決まったランカーのかさ上げはプロボクシングの常なれど、ご祝儀相場にしても程がある・・・?。

デビュー当時から名匠ナチョ・ベリスタイン(2011年殿堂入り)の薫陶を受けていただけあり、攻防の基本的な技術に不足はなく、疲れを知らない前進を繰り返しつつ、上下のコンビネーションを間断の無い手数で少しづつ相手を削って行く。

遠めの距離からやや遅れて届く、フォロースルーの良く利いたメキシカン特有のロング・フックとアッパーは勿論のこと、ナチョの教え子たちに共通する後退のステップも過不足なくこなす。


好戦的でありながら無駄に打たせない防衛ラインを築き、バチバチに打ち合いながらも、大きなカットや腫れはほぼ無し。出世試合と言っていいファン・F・エストラーダへの初挑戦(2022年9月/メキシコ国内)でも、激しく強打を応酬していたが、エル・ガーヨ(雄鶏:エストラーダのニックネーム)ともども、試合後の顔は綺麗だった。

アマチュア経験の有無も含めて情報は少なく、プロデビュー直後に2連敗(3~4戦目)を経験した他、2度の引き分けも6~8回戦の修行時代。初の10回戦が19戦目(2019年9月)だから、”叩き上げ”と称すべきキャリアの典型。

武漢ウィルス禍の間も長い間隔を開けずに戦い続け、初の10回戦から9戦をこなしてエストラーダ戦のチャンスを得ている。


メキシコの国内トップレベルに相応しい、良くまとまった好選手であることは間違いない。持病を抱える心臓が悲鳴を上げ、一度ならず現場復帰を絶望視されたナチョが、高齢を押してコーナーに入り続けているのも理解できる。だが、戦績が示し自らも認めている通り、1発のパワーに欠ける点が珠にキズ。

身長自体はこのクラスとしては標準的だが、映像や写真で確認する限り(正確な数値は不明)リーチは長くは見えない。計量後のリバウンドもどちらかと言えば控え目で、エストラーダとは上半身の厚みが結構違っていた。

最軽量ゾーンでは規格外のサイズと表すべき中谷とは、体格差がより鮮明に際立つだろう。


昨年11月と今年3月にローカル・ファイトを2試合やって、いずれも判定勝ち(10回戦:相手は無名選手)。そして、エストラーダ戦から丁度1年で実現した再挑戦は、自身初となるメキシコ国外への遠征(渡米経験も無い)。

今年の7月で84歳になったナチョの来日は流石に難しかったらしく、エリック・ロペスというトレーナーがヘッドとして帯同。ナチョの顔を描いたTシャツをお揃いで着用し、チームの結束とバリューアップに余念がない。


米本土で2度世界戦のリングに立ち、印象的なKO(TKO)で認知度を上げた中谷。2階級制覇+無敗の実績も加味され、在米マニアと関係者の評価も好感触。対するコルテスは、エストラーダ以外に名のある選手とのマッチアップがなく、スポーツブックのオッズは大差が付いた。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
中谷:-1200(約1.08倍)
コルテス:+700(8倍)

<2>betway
中谷:-1587(約1.06倍)
コルテス:+1000(11倍)

<3>ウィリアム・ヒル
中谷:1/16(約1.06倍)
コルテス:8/1(9倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
中谷:1/20(1.05倍)
コルテス:10/1(11倍)
ドロー:20/1(21倍)


「(KOへの自信を問われて)丁寧に戦う。」

ファイナル・プレッサーで揺るがぬ自信を見せつつ、慎重な言葉を選んだ中谷、コルテスを軽く見ていない様子が伺える。もう1つ別な心配もあるが、常識的にはKO防衛の予想を立てざるを得ない。

磐石に見える若き2冠王にまったく懸念材料が無い訳ではないし(別な心配=後述)、タフで上手さも併せ持つコルテスに粘られる展開も充分に想定の範囲内ではある。


◎中谷(25歳)/前日計量:114.6ポンド(52.0キロ)
現WBO J・バンタム級王者(V0),前WBOフライ級(V2/返上),元日本フライ級(V0/返上),元日本フライ級ユース(V0/返上)王者
2016年度全日本新人王(フライ級/東日本新人王・MVP)
戦績:25戦全勝(19KO)
アマ戦績:14勝2敗
身長:172センチ,リーチ:170センチ
左ボクサーパンチャー


◎コルテス(28歳)/前日計量:114.4ポンド(51.9キロ)
戦績:30戦25勝(10KO)3敗2分け
身長:163センチ
右ボクサーファイター




上にご紹介した最終会見で気になったのが、中谷の消耗ぶり。タッパを考えれば減量がキツいのは当たり前で、げっそり殺げた頬もいつものことではあるのだが、顔色が悪く精気が感じられない。

前日計量でも疲れ切ったかのような表情に変わりはなく、1発クリアに安堵はしたものの、たっぷりの水分補給と食事で一晩ぐっすり眠れたとしても、十全な回復を図れるのかどうか。

よもやの大番狂わせを献上することはないと信じるけれど、いつものスピード&シャープネスが発揮できない場合、コルテスに相当押し込まれる覚悟が必要になる。

興味が半減した(?)井岡一翔との統一戦や、井岡との争奪戦に拍車が掛かるエストラーダとの激突ではなく、さらなる階級アップ(バンタム級進出)を検討した方が良いのでは・・・。


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■オフィシャル

主審:スティーブ・ウィリス(米/ニューヨーク州)

副審:
エフレン・レブロン(米/ニュージャージー州)
リン・カーター(米/ペンシルベニア州)
ルイス・ルイス(プエルトリコ)

立会人(スーパーバイザー):未発表


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■キック・オフ・カンファレンス



◎フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=SmFNfNLCS-4