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昨年末(12月4日)、キャナストゥータから驚きの吉報が届く。2026年度のインダクティーとして、女子モダン部門に藤岡奈穂子が選出された。

同時に選ばれたのは、一足先に栄誉に浴したアナ・マリア・トーレス(2024年)とともに、女子王国メキシコの隆盛を牽引した最大の功労者であり、アナ・マリアと人気を二分したトップスター,ジャッキー・ナーヴァ。

男子の人気選手をアンダーに従えて、メヒコのボクシング・ファンを熱狂させた両雄は2011年に2度の直接対決が実現。1勝1分けでアナ・マリアに軍配が上がっている。

◎昨年12月5日に公開されたIBHOF(国際ボクシング殿堂)公式サイトの発表記事
MODERN BOXERS GENNADIY GOLOVKIN, ANTONIO TARVER, NIGEL BENN, NAOKO FUJIOKA & JACKIE NAVA ELECTED TO INTERNATIONAL BOXING HALL OF FAME
http://www.ibhof.com/pages/inductionweekend/2026/announce_26.html

そして周知の通り、男子のモダン部門には以下の3王者が顔を並べた。

IBA(旧AIBA)に代わるアマチュアの統括機関として、IOCから正式に承認されたワールド・ボクシングの会長に就任した”GGG”ことゲンナジー・ゴロフキン。

L・ヘビー級で長く無敵を誇った上、ヘビー級を制して出戻ってきたロイ・ジョーンズを衝撃的なKOで駆逐したアントニオ・ターヴァー(後にヘビー級進出)。2006年の暮れに公開された映画「ロッキー・ザ・ファイナル」にも出演。敵役の現役ヘビー級王者メイソン・ディクソンを演じるなど、リング内外を大いに賑わせている。


もう1人はミドル級とS・ミドル級の2階級で世界タイトルを獲得し、リング禍で世界中を騒然とさせたジェラルド・マクラレン戦の悲劇を乗り越えて戦い続けたナイジェル・ベン。

”ダーク・デストロイヤー”の異名を取ったベンは、親子二代に渡るライバル・ストーリーを繰り広げることになったクリス・ユーバンク、ケルトの勇者スティーブ・コリンズ、アイドル的な人気を得たハンサム・ボーイのロビン・リード、そしてWBOのベルトを連続21回守り、事実上の4団体統一を果たすジョー・カルザゲといった優れたタレントとともに、長らく停滞していた発祥の地,英国の再興に大きく寄与した。

王国アメリカに半歩でも1歩でも追いつくべく、欧州の中心軸とも言うべき英国とドイツは、新興のWBOとIBFを積極的に利用して世界チャンピオンを作り、マーケットの充実と繁栄にまい進する。

1984年に発足間もない第三の団体IBFによって新設され、1987年~88年にかけて老舗のWBAとWBCが追随し、4つ目のWBOも足並みを揃えたS・ミドル級は、息も絶え絶え(?)だった英国のボクシング界に、見違えるような活況をもたらす原動力となった。

ショーマンシップ全開の入場パフォーマンスで注目を集めたユーバンクに続き、軽量級に出現した破戒無慚の異端児ナジーム・ハメドは、驚嘆すべき柔軟性とムーヴィング・センスに豪打を併せ持ち、セオリー無視の破天荒なスタイルが国際的な規模で人気を博したが、試合ごとに手を変え品を変え、豪華な衣装と演出で趣向を凝らした入場は、ユーバンクの発展形と表して間違いない。

◎ゲンナジー・ゴロフキン、ナイジェル・ベン、アントニオ・ターバーが主役 国際ボクシング殿堂2026年クラスが発表
2025年12月4日/リング誌公式
https://ringmagazine.com/ja/news/gennady-golovkin-nigel-benn-antonio-tarver-headline-hall-of-fame-2026-ja


さて、国際ボクシング殿堂(ニューヨーク州キャナストゥータ)が女子選手の表彰をスタートしたのは、武漢ウィルスが猛威を振るい始める2020年(選考期間は2019年秋~12月初旬頃)。「モダン(ラストファイト:1989年~)」と、「先駆者:Trailblazer(トレイルブレイザー/ラストファイト:~1988年)」の2部門で構成されている。

選出基準が緩和されたのもこの年からで、「ラストファイトから5年経過」→「3年経過」に短縮された。IBHOF(国際ボクシング殿堂)が1990年に発足する際、そっくり引き継いだ「リング誌殿堂」が定めていた元々の基準は、確か「引退後5年経過」だったと思う。

例によって、短縮に対する賛否両論が渦巻いた模様。冷静な評価の為に必要とされるクールダウン(冷却期間)は、果たしてどちらが適切なのか。「5年は長過ぎる」という声は、以前から上がっていたらしいけれども・・・。

昨年までの6年間に、功績を認められて名誉の博物館に招かれた女子選手は総勢19名。始まったばかりだから仕方ないが、モダン部門は以下に挙げる13名しかいない(先駆者部門6名)。

◎殿堂入りした女子選手
■2020年度
ルシア・ライカ(オランダ)
クリスティ・マーティン(米)
※先駆者部門:バーバラ・バトリック(英)
ルシア・ライカ(左)とクリスティ・マーティン(右)2020年第1回選出

■2021年度
レイラ・アリ(米)
アン・ウルフ(米)
※先駆者部門:ジャッキー・トナワンダ(米)マリアン・トリミアー(米)
レイラ・アリ(左)とアン・ウルフ(右)2021年第2回選出

■2022年度
ホーリー・ホルム(米)
レッジーナ・ハルミッヒ(独)
※先駆者部門:選出無し
ホーリー・ホルム(左)とレッジーナ・ハルミッヒ(右)2022年第3回選出

■2023年度
アリシア・アシュリー(アシュレー/ジャマイカ)
ラウラ・セラノ(メキシコ)
※先駆者部門:ジョアン・ハーゲン(ヘイゲン/米)
アリシア・アシュリー(左)とラウラ・セラノ(右)2023年第4回選出

■2024年度
ジェーン・カウチ(英)
アナ・マリア・トーレス(メキシコ)
※先駆者部門:テレサ・カービー(米)
ジェーン・カウチ(左)とアナ・マリア・トーレス(右)2024年第5回選出

■2025年度
メアリー・ジョー・サンダース(米)
ジェシカ・チャベス(メキシコ)
アンヌ・ソフィー・マティス(仏)
※先駆者部門:キャシー・”キャット”・デイヴィス(米)
メアリー・ジョー・サンダース(左),ジェシカ・チャベス(中),アンヌ・ソフィー・マティス(右)2025年第6回選出

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■2026年度・・・新たに加わった2王者
ジャッキー・ナーヴァ(メキシコ)
藤岡奈穂子(日)
※先駆者部門:選出無し
ジャッキー・ナーヴァ(左)と藤岡奈穂子-2026

◎IBHOF(国際ボクシング殿堂)公式サイト
<1>Women's Modern Category(女子モダン部門)
http://www.ibhof.com/pages/about/inductees/women_modern.html

<2>Women's Trailblazer Category(女子先駆者部門)
http://www.ibhof.com/pages/about/inductees/women_trailblazer.html


余りにも強過ぎて相手が見つからず、遂には男性のムエタイ戦士(プロの無名選手)と真剣勝負(形式上はエキジビション=ノーヘッドギアのリアルファイト/結果は凄絶なKO負け)で戦い、キックと国際式で無敗のまま引退。”史上最強の女子格闘家”と称されたルシア・ライカ。

90年代に忽然と現れ、女子ボクシングの本格的な勃興を支えた最初にして最大のスター,クリスティ・マーティン、王国アメリカの女子重量級を支配したレイラ・アリとアン・ウルフ。

多くの女子選手と同様、キックを出発点に国際式で大きな成功を収めた後、MMAに転じてあっという間にUFCの頂点に登り詰めたホーリー・ホルムは、まさしくルシア・ライカの後継者。そして、アナ・マリアとジャッキーのメヒコ・ツートップ。

彼女たちの列に、日本の女子選手が並び立つ。その日がこんなに早く訪れるとは・・・。


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◎長期防衛よりも複数(多)階級制覇

栄えある殿堂の門をくぐる最初の日本人女性が、WBCアトム級のベルトを連続17回も守り、最後の試合で階級を1つ上げて、黒木優子(Yuko)から同じWBCのM・フライ(ストロー/ミニマム)級を奪い、2階級制覇を達成して王者のままリングを去った小関桃(青木)ではなく、大胆にウェイトを増減させながら、M・フライ級からバンタム級までの5階級を獲った藤岡だった。

この事実は、プロボクサーに対する評価基準についてあらためて思いを馳せる時、実に象徴的な出来事のように思える。

小関桃(左)と藤岡奈緒子(右)

1つの階級を可能な限り長く保持すること。そして1回でも数多くベルトを防衛して、安定政権を築く。それこそが王者としての最大の誉れであり、名声だけでなく経済的な成功をも意味する、プロボクシングの歴史に連綿と受け継がれてきた揺ぎ無い評価基準だった。

そうした歴史の頂点に立つのが、11年に及ぶ在位期間(第二次大戦による4年間の中断を含む)に、25回連続防衛のとてつもない記録を樹立した不世出のヘビー級王者ジョー・ルイス(米)であることに、真正面から異論を差し挟む者はいないだろう。

70年代と80年代のミドル級に、それぞれ無敵の王者として君臨したカルロス・モンソン(亜/V14)と”マーヴェラス”・マーヴィン・ハグラー(米/V12)、70年代前半のウェルター級を支配し、事実上のP4Pキング的存在でもあった”マンテキーヤ”・ホセ・ナポレス(キューバ/2度の載冠で通算V13)、時を同じくしてL・ヘビーを治めたボブ・フォスター(米/V14)は、偉大な”ブラウン・ボンバー”とともに、伝統的な価値観を体現する名王者と称して間違いない。

左から:ジョー・ルイス,ボブ・フォスター,モンソン,ナポレス


世界最強の称号たるヘビー級の覇権を巡る抗争に端を発した、「英国(発祥の地) vs 米国(隆盛する新大陸)」の激しい主導権争いは、英国を中心とした欧州がいち早く立ち上げた史上初の世界王座認定機関と、10年近く遅れて発足した米国版世界王座認定機関の衝突=「IBU(現在のEBU) vs NBA(現在のWBA)」へと引き継がれる。

さらには、米国内における「NBA vs NYSAC(ニューヨーク州アスレチック・コミッション)のバトル。互いの面子とプライドを剥き出しに対峙する近親憎悪が、NBA王者とニューヨーク州王者(トップスター同士)の激突というドラマを生む。

近代ボクシングが産声を上げた19世紀半ば以降、欧米には真の世界一を決める「王座統一」の歴史と伝統が一貫して存在した。

さらにWBAとWBCが分裂して2団体時代に突入した70年代以降、A・C2団体の統一という絶対的な価値基準が加わる。1つの階級に2人の世界一は要らない。あってはならない。それが当たり前の常識であり、疑う余地のない当然の在り様でもあった。

価値観の大転換が始まったのは、忘れもしない1981年・・・。


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