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2025年05月

兄弟同時世界王者誕生なるか /メキシコ発の豪打者ヌニェスに挑む左の和製巧打者 - E・ヌニェス vs 力石 プレビュー -

カテゴリ:
■5月28日/横浜BUNTAI/IBF世界J・ライト級王座決定12回戦
IBF位 エデュアルド・ヌニェス(メキシコ) vs IBF位 力石政法(日/大橋)



※ファイナルプレッサー(フル/Lemino公式)
https://www.youtube.com/watch?v=I_PRA3kEFEw

昨年10月、遥々イタリアまで遠征して、母国の期待を一身に背負うマイケル・マグネッシにリードを許しながら、最終12回に劇的な逆転TKOでWBCシルバー王座と指名挑戦権を持ち帰った力石が、どうしたことかIBFの王座決定戦に推挙された。

王座を保持するアンソニー・カカーチェ(アイルランド)が、ヌニェスとの指名戦履行に応じず、より高額の報酬を保障されたリー・ウッド(英)を選び、自らベルトを放棄。ランキング2位が空位だった為、3位の力石にお鉢が回ったという流れ。

昨年11月、五輪金メダリストのロブソン・コンセイソン(ブラジル)から緑のベルトを奪還したWBC王者オシャキー・フォスター(米)には、ブランドン・フィゲロア(米)との再戦を制して、同じWBCのフェザー級を獲ったスティーブン・フルトン(米)との対戦話が持ち上がっている。


ファンと関係者から高い評価を受けるヌニェス(昭和の昔はヌネスと表記された)は、白星がすべてノックアウトという戦跡のみならず、顎にたくわえた黒々とした髭のせいで、メキシカンというよりロシアのファイターに見えなくもない。

決定力に溢れた強打と強靭なフィジカルを武器に、強力なプレスをかけて攻め込む剛直なスタイルも、ロシアと旧ソ連圏出身のステートアマを想起させる。生まれも育ちもメキシコで、P4Pランク入りを目前にしていた長谷川穂積を地獄に叩き落し、WBOとWBCの統一王者となったフェルナンド・モンティエルの実父で、フェルナンドを含む実の息子3人に加えて、ホルヘ・アルセやヘスス・ソト・カラス、ウーゴ・カサレスらを手掛けたマヌエル・モンティエル・Sr.の指導を受けている。

そんなヌニェスだが、どうした訳かニックネームは”シュガー(Sugar)”。スピード&シャープネスに優れた、流麗なスタイルを連想させる二つ名について、「シュガー・レイ・ロビンソンにシュガー・レイ・レナード、シュガー・シェーン・モズリー・・・。偉大なボクサーは、”シュガー”を名乗る。」と述べており、ファイトスタイルとの関連性はどうやら無い模様。


昨年2月にはタジキスタンまで足を伸ばし、地元の強豪シャフカッツ・ラヒモフと激突。IOCと揉めに揉めているアマチュアの統括団体IBA(旧称:AIBA)が主催する、”アマチュアのプロ興行”への参戦が注目を集めた。

一進一退の白熱した攻防が続き、残り2ラウンズを制した方が勝つ。そうして向かえた11ラウンド、自慢の強打を爆発させてストップ勝ち。130ポンドで一度はIBFの王座に就いたラヒモフを倒したこの一戦を、出世試合と見ても間違いではない。


唯一の黒星は、6回戦の修行時代(11戦目)に喫したもので、以来18連続KOを更新継続中。ちゃんとした試合映像がネット上に見当たらないのが残念だが、不惑を過ぎても戦い続ける元フェザー級王者を僅か2回で圧殺した昨年4月のオスカル・エスカンドン戦、ロマチェンコへの挑戦経験を持つミゲル・マリアガ(2人ともコロンビア人)を6ラウンズで破壊した8月の連勝が、米本土におけるヌニェスの認知度アップに貢献した。


モンスターとの対戦が正式決定したアフマダリエフも傘下に収めるエディ・ハーンがチームに帯同していて、大橋会長との初対面に話題が集まっていたが、あくまでメキシコ国外での共同プロモート。

母国内ではオスワルド&レイナルド・クチュル親子(ジョニー・ゴンサレスを長くハンドリングした)の下で戦ってきた。

直前のオッズはヌニェスを支持しているが、その差は意外に小さい。やはり、アウェイで厳しいタフ・ファイトを耐え抜き、見事なTKO勝ちで世界に辿り着いたマグネッシ戦が大きく影響している。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>FanDuel
ヌニェス:-220(約1.45倍)
力石:+172(2.72倍)

<2>betway
ヌニェス:-250(1.4倍)
力石:+200(3倍)

<3>ウィリアム・ヒル
ヌニェス:1/2(1.5倍)
力石:8/5(2.6倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
ヌニェス:1/2(1.5倍)
力石:2/1(3倍)
ドロー:18/1(19倍)


130~140ポンド圏内を通じても、長身の枠に入るレフティの力石は、しっかり距離を取りながら、ジャブ,ワンツーから右の返し(上下)で崩す正攻法のボクサーファイター。あまり打たせるタイプではないが、典型的なインファイターのマグネッシに押し込まれて、激しい打ち合いを余儀なくされた。

晴れ上がった顔がいかにも痛々しかったが、「ボクサーとしての勲章」だと胸を張り、「世界チャンピオンになる為だけに、それだけを目標にしてボクシングに打ち込んできた」と語る。

兄正道とともに、幼い頃から強制半ばに父親からボクシングを習い、何度も反発して練習をサボタージュしたとのこと。それでも、ボクシングでの成功を夢見て上京した兄を追い、18歳で東京へ。

しかし、それ以前に起こした事件が原因で逮捕起訴され、少年院で丸2年を過ごす。名古屋に戻り、薬師寺ジムに入門。その後、兄がいる緑ジムに移籍してプロキャリアを続けたが、チャンスを求めて昨年7月大橋ジムに移り、およそ10年ぶりとなる首都圏再登場。いきなり用意されたマグネッシ戦をモノにして、宿願の世界戦を手繰り寄せる。

◎矢吹・力石兄弟の略歴に触れた過去記事
108ポンド屈指のスラッガー ,矢吹正道- 中京の倒し屋に寄せる期待と不安 -
2021年9月22日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/a12e3f6e3cc021e72cd13bd0568969b4


◎試合映像
<1>ヌニェス 11回TKO シャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン)
2024年2月16日/テニス・パレス&ウォータースポーツ・コンプレックス(ドゥシャンベ/ダジキスタン)
オフィシャル・スコア(10回まで):96-94×2,95-95
IBA Champions' Night(アマチュア統括団体IBA:旧AIBAが主催するプロ・イベント)
https://www.youtube.com/watch?v=PUP3ti13eAI

<2>力石 12回TKO マイケル・マグネッシ(伊)
2024年10月17日/パレス・オブ・アルフレド・ロンボリ(コッレフェッロ/伊)
オフィシャル・スコア(11回まで):103-106×2,102-107
WBC世界S・フェザー級挑戦者決定12回戦(シルバー王座戦)
https://www.youtube.com/watch?v=GNIEBSjBtOE


練習を公開したヌニェスについて、国内スポーツメディアも概ね好評価を与えており、自ら偵察に訪れた大橋会長は、「リカルド・ロペスに近い空気管がある」と、より一層警戒を強めた。

◎公開練習
<1>ヌニェス

https://www.youtube.com/watch?v=kvvYH5TfBwI

<2>力石

https://www.youtube.com/watch?v=QyhhTCOZRYc


率直に申し上げると、掛け率以上に厳しい展開を覚悟した方がいい。大橋会長が言及していた通り、「始めは慎重に距離を取りたい。1発効かされて手数をまとめられると、そこで終わりになりかねない」。

拙ブログ管理人の予想は、中盤~後半にかけてのTKOでヌニェス。力石がスタートの距離を間違えると、序盤の決着も有り。リードジャブを間断無く突き続けても、それだけで距離を保つのは困難。力のこもった左ストレートとボディで、しっかり押し返しておきたい。

マグネッシ戦の再現は容易ではないが、ヌニェスも上半身のボディワークはさほど豊富とは言えず、ディフェンスラインには相応の穴もある。力石の左がまともに当たれば、ヌニェスも無事ではいられない筈・・・。


◎ヌニェス(27歳)/前日計量:129.4ポンド(58.7キロ)
当日計量:139.6ポンド(63.3キロ)
※IBF独自ルールによるリミット上限+10ポンド(140ポンド:63.5キロ)のリバウンド制限
戦績:29戦28勝(28KO)1敗
身長:168センチ,リーチ:173センチ
※以下計量時の計測
血圧:113/73
脈拍:67/分
体温:35.9℃


◎力石(30歳)/前日計量:129.6ポンド(58.8キロ)
当日計量:139.1ポンド(63.1キロ)
※IBF独自ルールによるリミット上限+10ポンド(140ポンド:63.5キロ)のリバウンド制限
戦績:17戦16勝(11KO)1敗
アマ通算:30戦25勝(15RSC・KO)5敗
身長:177センチ,リーチ:182センチ
※以下計量時の計測
血圧:114/71
脈拍:85/分
体温:35.9℃
左ボクサーファイター

◎前日計量


◎前日計量(フル/Lemino公式)
https://www.youtube.com/watch?v=B5bYs0SLzLM


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■オフィシャル

主審:リッキー・ゴンザレス(米/ニューヨーク州)

副審:
クリス・ウィルソン(米/アリゾナ州)
オレナ・ポビヴェイロ(ベルギー)
ダンレックス・タプダサン(比)

立会人(スーパーバイザー):安河内剛(日/JBC事務局長)


国際式で実現・・・K-1 vs ラジャ王者対決 - 武居 vs ユッタポン プレビュー -

カテゴリ:
■5月28日/横浜BUNTAI/WBO世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 武居由樹(日/大橋) vs WBO7位 ユッタポン・トンディー(タイ)



※ファイナル・プレッサー(フル映像/レミノ公式)
https://www.youtube.com/watch?v=I_PRA3kEFEw


「1,000試合!?」

来日した元ラジャダムナン・スタジアム L・フライ級王者は、ムエタイの戦績について問われると、事も無げにそう答えた。

ムエタイでの成功を目指す地方出身の男子は、その多くが、幼い頃に草試合から始めて実戦経験を積み、そこで実績を残した者だけが首都バンコクへの進出を許され、さらに連戦を続けて勝ち残り、ようやくラジャダムナン,ルンピニー2大殿堂のリングに辿り着く。

「1千試合近く戦った。」

幾ら何でも広げる風呂敷が大き過ぎやしないかと呆れる反面、公式記録として開示されるレコードに載ることのない、修行時代こなした試合と実戦に近いスパーリングのすべて数に含めれば、実際それぐらいになるのかもしれないとも思う。


ムエタイで成功(2大殿堂のランカークラス以上)を掴む多くの選手が、10代後半~20代前半の若さでキャリアのピークを迎える。

かつてのサーマートやウィラポンのように、首尾良く2大殿堂のチャンピオンとなり、長期防衛や複数階級制覇を成し遂げ、強過ぎるが故に賭けが成立しづらくなって、半ば止むを得ず国際式に転じるパターンは、昭和の昔から連綿と続く伝統的なキャリアメイク。

また、パンチのある選手をプロモーターが青田買いして、早くから国際式に移行させるケースや、フライ級で一時代を築いたポンサックレックのように、ムエタイではなかなか芽が出ず、自ら見切りを着けて国際式に活路を見い出す場合もある。


そして1950年代以降、ボクシング発祥の地である英国と、世界最大のマーケットを誇る米国から優秀なコーチを招き、継続的にアマチュアの強化に取り組んだタイでは、ムエタイ経験者の国際式転向に際して、アマチュアから始めることも少なくない。

国際式デビュー3戦目で完全アウェイのスペインに乗り込み、WBC J・ウェルター級王座を獲得(1975年7月)し、驚愕の最短奪取記録が国際的な注目を集めたセンサク・ムアンスリンも、ムエタイの中量級を無双した後、短期間だがアマチュアを経験してからプロの初陣を戦った。

1973年9月、シンガポールで行われた東南アジア競技大会(SEA Games)に出場して、5試合すべてにRSC勝ちを収めて優勝している(ウェルター級)。

渡辺二郎と2度激闘を繰り広げたパヤオ・プーンタラトは、タイ史上初の五輪メダリスト(1976年モントリオール大会L・フライ級銅)としても有名だが、スタートはムエタイ。弟と妹を育てる為に、花売りをしながら草試合に出て僅かな賞金を稼ぎ、2大殿堂のベルトを目標にして戦い続ける過程で、国際式への適性を認められて大成功した代表例。


ユッタポンも21歳でムエタイから国際式に活躍の場を移し、まずはアマチュアで基本を学ぶ。短期間で代表チームに召集されるまでになっただけあり、柔らかい身のこなしと反応(見切り)の良さにセンスを感じさせる。

プロ転向後の戦い方は、ジャブと崩しもそこそこに、左右を強振して倒しにかかるファイター寄りのボクサーファイターがベース。ただし、力でねじ伏せるスタイルは、力量差が明白な格下相手限定。WBAのローカル王座を懸けたタイトルマッチでは、しっかり距離を取って慎重なボックスに徹する場面も目に付く。

公称160センチの小兵ながら、左右どちらでも倒すことができるパンチ力が売りで、160センチ台後半~170センチ台前半のナチュラルなバンタム級にも当たり負けしないフィジカル&気の強さは、昭和の昔に常套句として使われた”ムエタイ上がりは例外なくタフ”そのもの。


武漢ウィルス禍が猛威を振るい始める2020年7月、6回戦でデビュー。11月まで毎月リングに上がったが、翌2021年はパンデミックの影響で1試合(8回戦)しかできず、2022年も3試合(6,10,8回戦×各1)に留まったものの、4月に行った9戦目でWBAの下部タイトルを獲得。

このベルトをすぐに投げ出すことなく、律儀に3度も防衛。承認料と引き換えに世界ランクを上げて行く、日本を除く諸外国ではセオリーとして定着した手法に倣う。

ここまでの対戦相手は、ユッタポンの攻撃力と圧力で押し切れるレベルだったこともあり、ジャブ,ワンツーに対して無頓着な面が見受けられる。来日後の会見やインタビューで、「ガードが甘い」と武居の弱点を指摘していたが、その言葉はそっくりそのままユッタポン自身にも当てはまる。



被弾すると顔と全身を怒らせ、「もっと打って来い!」と威嚇・挑発。ノーガードのまま1~2歩前進して、切った張ったのしばき合いに雪崩れ込むことも少なくない、ムエタイで鳴らした実力者たちに共通する展開もお手のもの。


無論のこと、ワールドクラスに進んでもなお、ユッタポンがこれをやり切れるかどうかはわからない。もう1つ気がかりなのが、計量後に膨らむお腹周りが気がかり。リバウンドの積極利用は、今やファイトスタイルの違いに関係なく、大多数のボクサーが拠り所にして戦う。

中でもその効用を必要とするのが、小柄・短躯のパワーハウス型。フェザー級でモンスターを待つニック・ボール(公称157センチ)と、引退を撤回して世界戦が続く比嘉大吾(160.8センチ)はその代表格と表して良く、ユッタポンもその系譜に連なる豆タンク型と言っていい。

体格差を克服する為に止むを得ない面はあるものの、ボディアタックに対する耐久性と、ハードな白兵戦が続いた場合のスタミナは未知数。強烈なミドルキックの打ち合いを耐える打たれ強さと、芯を外すボディワーク&エルボーブロックは、そのまま国際式のボディアタックにも通用するとの見立ての説得力を承知しつつ、「どうなんだろう?」との疑問は沸く。

ペース配分(スタミナの温存)も兼ねて、距離を上手に調節しながら、サイズのディス・アドバンテージをアドバンテージに転化させる上手さは、これまでのところ破綻なく機能してはいるけれど、対戦相手のレベル次第で状況は一変し得る。

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ユッタポンが地域王座を獲得したのと同じ、国際式9戦目で118ポンドの世界を獲った武居由樹の本領が、ロング・ディスタンスを一気に詰めるスピードと瞬発力、独特の間合いから放つフックの強打で倒すヘッドハンティングにあることは論を待たない。

しかしそれと同時に、大橋ジムの俊英たちが揃って得意にするボディ(フック&アッパー)にも、キックのタイトルを総ナメにした天才は適性を発揮する。

井上尚弥が一括返上した4本のうち、WBOのベルトを巻いたジェイソン・モロニーを廃位させた1年前の挑戦は、中~大差の3-0(116-111×2,117-110)を付けたオフィシャル・スコアへの疑義を主張する声も聞かれたが、今現在のスコアリングのトレンドにおいて、武居の勝利は許容の範囲内だったと申し上げるしかない。


さらに4ヶ月後の昨年9月、比嘉大吾(志成)を迎えた初防衛戦では、比嘉の圧力に巻き込まれて打ちつ打たれつの打撃戦となり、最終盤の11ラウンドにはダウンを奪われるなど、モロニー戦以上の苦境に追い込まれたが、終始一貫攻め続けた比嘉の息切れにも助けられて、ラストラウンドを明白に攻め切って僅少差の3-0判定(114-113×2,115-112)を得ている。

モロニーは今年2月にも東京にやって来て、那須川天心に煮え湯を呑ませた。モロニーも黙っていられず、判定に対する不満を公然と語り、それを援護する日本のファンも多かった。

6~7ポイント差を付けたオフィシャル・スコア(97-93×2,98-92)は、拮抗したラウンドが多く、少なくとも接戦と見るべき試合内容を正しく反映できていなかったし、”アンチ天心”の過剰反応も込みで、モロニーに同情を寄せるファンの主張も理解はできる。

これもまた、拙ブログ管理人が性懲りも無く言い続けている「振り分け採点の欠陥」が顕著に現れたケースで、妥当性を欠くスコアリングとの指摘は免れないものの、「不当な判定」とまでは言い切れない。


いずれにしても、モロニーと比嘉が証明した最も重要な事実は、武居や天心ほどの才能&ポテンシャルの持ち主でさえ、ルールの異なる競技で世界の第一線と渡り合うのは、大変な困難を伴うということ。

モンスターの圧倒的な勝ちっぷりにすっかり慣れてしまい、かく言う私自身も含めて、観る側の感覚を矯正する必要があると痛感させられる。同じ父の下で、同じハードトレーニングを積んできた実弟拓真も、一度びワールドクラスに出ると勝ち続けることができない。

むしろそれが当たり前で、誰もが井上尚弥にはなれないのである。


直前の掛け率を見てみよう。オッズ上は王者武居の圧勝だが、「キック有りならどう?」とユッタポンにジョークをかます大橋会長に、「(国際式・ムエタイ・キックのいずれのルールでも)問題ない。勝つのは私」と余裕の笑みを見せる挑戦者。

すると大橋会長、待ってましたとばかりに「(蹴りの勝負になったら)武居は自信が無いって」と続けて、笑いを取りに行く。「一方的に殴って倒す」と、いつもの優しく大人しい口調で述べる武居を心配するかのように、真顔で口にしていた筈の警戒感にブラフの匂いが漂う。



□主要ブックメイカーのオッズ
<1>FanDuel
武居:-1450(約1.07倍)
ユッタポン:+770(8.7倍)

<2>betway
武居:-1408(約1.07倍)
ユッタポン:+800(9倍)

<3>ウィリアム・ヒル
武居:1/10(1.1倍)
ユッタポン:11/2(6.5倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
武居:1/10(1.1倍)
ユッタポン:8/1(9倍)
ドロー:25/1(26倍)


武居がサイズのアドバンテージを無駄使いせず、ロング・ディスタンスのキープに務めて、丁寧にポジション・チェンジを織り交ぜながら深追いを慎み、単発のヒットを繰り返してラウンドをまとめて行ければ、中差以上の判定で問題なく逃げ切れる。

力で倒そうとするのではなく、距離で駆け引きしながらユッタポンを焦らし、攻め急がせて開いたディフェンスの穴を、精度とタイミングに注力したカウンターで突く。強振の一発狙いを闇雲に続けるよりも、着実なポイントメイクとノックアウトの確率が確実に増す上、スタミナのロスも少なくて済む。

でも、それだけではファンが満足しないし、武居自身も納得できない。必ず倒しにかかる。その時、どんな戦術を採るのか採らないのか。武居のセンスと本能を信じて、これまで通り真っ正直にやり合うのはユッタポンに利するだけ。

だからと言って、ユッタポンがイケイケのファイトしか出来ないと見積もってもいけない。キューバに代表チームの一員として乗り込み、ロンドン(フライ級)とリオ(バンタム級)を連覇したロベイシー・ラミレス相手にメガ・アップセットを引き起こしたユッタポンが、強気一辺倒のインファイトを引っ込めて、本気になって出はいりのボクシングに徹したとしたら・・・。

その方が厄介な事態に発展しそうで怖い。攻防に良くまとまった手堅いボクシングをやらせたら、小兵の不利が有利に転じて、モロニー以上に崩しにくくなってしまうリスクも、陣営は頭に入れておく必要がある。

ラミレス戦の試合映像はネット上にアップされておらず、軽々に断定はできないけれど、長身サウスポー(格下)との対戦経験が有り、その映像を見る限り、綺麗な右ストレートでガードの真ん中を打ち抜いていて、左を苦手にするとの印象は受けない。


◎武居の公開練習



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想像以上の苦戦・苦闘も想定の範囲内とした上で、モロニー&比嘉に強いられたタフ・ファイトが、今現在の武居にとって唯一最大の不足となる”国際式の経験値”に、厚みと引き出しをプラスしてくれたに違いないと言っておこう。

それはすなわち、変化と工夫の引き出し。苦境に追い込まれた時、己を信じ、チームを信じ、しかし得手に固執することなく、本意ではない安全確実な待機策も含めて、大胆な戦術転換を厭わない。

しぶとく食い下がる相手を引き離すには、捨てパンチと駆け引きの労を惜しまず、手間暇かけて細かい崩しを入れて行くことも大切。豪快に倒し切ることだけが、ファンの期待に応える術ではない。フルトン戦のモンスターのように、水も漏らさぬ隙の無い攻防で追い詰めて隙を誘い、周到に準備した一撃で止めを刺す。

そういう姿を思わず夢想してしまう、そんな誘惑にかられるだけの埋蔵量を、武居由樹は秘めている。大いなる期待値を込めて、単(散)発の強打による1発KOではなく、セーフティリードを保持したまま大差(中差以上)3-0判定勝ち。


70~80年代の軽量級を席巻した中南米の技巧派たちの中には、エルネスト・マルセルやルイス・エスタバ、エウセビオ・ペドロサにイラリオ・サパタ、サムエル・セラノといった、セオリーを超越するムーヴィング・センスと高い技術を融合させた、やりにくさ満載の手練が相次いで出現した。

「リスク回避第一の安全策=手堅く無難にまとめること」ではけっしてない。難攻不落を誇ったペドロサ.サパタ,セラノから、限度を超えるラフ&ダーティと執拗なクリンチ&ホールドを取り除き、マルセル,エスタバの機動力に、時代を易々と超越する異能パナマ・アル・ブラウンの意外性をまぶす。

日本人離れした武居由樹の身体能力と柔軟性に、あらぬ夢物語を期待してしまうマニアの哀しい性をお許しいただきたい。

本来ならば、1月24日に行われる予定だったが、周知の通り武居の故障が原因で延期された。全治4週間の診断を受けた右肩(肩関節唇損傷/関節唇の靱帯剥離)は、大橋会長の言葉通り、「完治した」ものと信じるのみ。


◎武居(28歳)/前日計量:118ポンド(53.5キロ)
WBOバンタム級(V1),元OPBF S・バンタム級(V1/返上)王者
戦績:10戦全勝(8KO)
キック通算:25戦23勝(16KO)2敗
2017年度K-1 WORLD GPスーパーバンタム級優勝
Krush 53キロ級王者(V1)
WINDY KICKS・フライ級王者(V0)
身長:170センチ,リーチ:173センチ
※以下計量時の計測
血圧:110/80
脈拍:72/分
体温:36.2℃
左ボクサーファイター(パンチャー)

◎ユッタポン(31歳)/前日計量:117ポンド(53.1キロ)
戦績:15戦全勝(9KO)
アマ通算:不明
2018年アジア大会(ジャカルタ/インドネシア)フライ級胴メダル
2017年ヒラルド・コルドバ・カルディン国際トーナメント出場(ハヴァナ/キューバ)
※バンタム級/予選1試合に勝利,続く準決勝でロベイシー・ラミレスに判定勝ち(3-2)/決勝でオスヴェル・カバジェロ(2021年世界選手権フェザー級銅メダル/ベオグラード,セルビア)に0-5判定負け
ムエタイ戦績:不明/本人申告:約1,000試合(9歳~21歳)
元ラジャダムナン・スタジアム L・フライ級王者(2011年6月獲得)
※在位期間,防衛回数不明
身長:160センチ
※以下計量時の計測
血圧:123/85
脈拍:59/分
体温:36.1℃

◎前日計量


◎前日計量(フル映像/Lemino公式)
https://www.youtube.com/watch?v=B5bYs0SLzLM


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■オフィシャル

主審:クリス・ヤング(米/フロリダ州)

副審:
ダニエル・ジエンバ(米/テネシー州)
マルティノ・レドナ(米/カリフォルニア州)
ホセ・R・トーレス(プエルトリコ)

立会人(スーパーバイザー):エンリケ・メンドーサ(プエルトリコ/チャンピオンシップ・コミッティ副委員長)









最軽量級の星は再び輝くか - タドゥラン vs 銀次郎 2 プレビュー -

カテゴリ:
■5月24日/インテックス大阪5号館,大阪市住之江区/IBF
世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 ペドロ・タドゥラン(比) vs 前王者/IBF4位 重岡銀次郎(日/ワタナベ)



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※入力したコードの一部に誤りがあり、ブラウザや視聴環境によって正常に表示されない箇所、同じ内容が重複して表示される箇所が発生していました。修正済みです。
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ワンサイドのTKO陥落から10ヶ月。再起戦(調整試合)を挟むことなく、重岡銀次郎がリベンジに挑む。この間、どうしたことか新チャンピオンもリングに上がってはおらず、初防衛戦がダイレクトリマッチになった。

昨年3月、銀次郎より早くWBCのベルトを失った兄優大は、サミュエル・サルヴァ(比)とのテストマッチ(昨年8月)を経て、今年3月30日にメルヴィン・ジェルサレム(比)との再戦を敢行したが、僅少差の1-2スプリット(112-114×2,114-113)を落とした第1戦以上の差を付けられ、中~大差の0-3判定(109-119,110-118,112-116)で無念の連敗。

ジェルサレムが放つ電光石火のストレートに対して、「1年開いた試合間隔がプラスになった。対策はバッチリ。もう貰わない」と自信を見せたが、確かにその言葉通り、ジェルサレムの動き出しに敏感に反応して、ダックで外すディフェンスは機能した。前半戦だけは・・・。


優大のマイナーチェンジを読み切った前半~中盤にかけて、ジェルサレムは突破のタイミングに微妙な変化を付けて、リードのタイミングにも気を付けながら、時には優大の打ち気を誘い、ガードの開いたところを的確に打ち抜く。

実力者サルヴァとの復帰戦でも感じたことだが、チーム・シゲオカ(ワタナベジム)の修正能力に疑問を覚えた。結局のところ、正面に留まって真っ正直にワンツー,左のパターンを繰り返す、ボクシングのベースは変わっていない。入り方の工夫が決定的に足りない。

尊大なまでに過剰だった自信はかなり抑制されてはいたものの、まだそこかしこに見え隠れして、「”ちゃんとやれば”負けっこない」という、根拠がはっきりしない雪辱への手応えを述べていた。


昭和のトップボクサーたちのように、小刻みなウィービングにステップを連動させ、細かくリズムを刻みながらポジションチェンジを繰り返し、ジャブ&捨てパンチを惜しまず、可能な限りのフェイントも駆使して相手を崩す、プロのプロたる所以とも言うべき駆け引き、巧まざるインサイドワークは望むべくもない。

もっともこの抜本的かつ重大な欠陥は、重岡兄弟に固有の問題ではなく、洋の東西を問わず、現代のボクサーに共通する一般的な課題だと、拙ブログ管理人は個人的に整理・結論付けているけれども。

それはもう充分に分かっているつもりだが、ジェルサレムほど速くてキレるステップインもろとものストレートは、脚(距離&ポジション)で外すのが第一ではないのか。完全に対応し切る必要はなく、相手の出足を多少なりとも狂わせることが大事。

これはそっくりそのまま、タドゥランに対する銀次郎にも当てはまる。スピード&シャープネスのジェルサレムと、フィジカル&パンチング・パワーでガンガン圧をかけてくるタドゥランのスタイルは左右の構え(スタンス)も含めてまったく違う。

違うけれども、丁寧なボディワークの習得に期待と可能性を見出せない以上、基本的な対処法はフット(ステップ)ワークにならざるを得ない。


優大と同程度の対策では、文字通りボコボコにされて、意識が飛んだまま第9ラウンドまで立ち続けた前戦の過ちを繰り返すだろう。


◎第1戦試合映像:タドゥラン 9回TKO 銀次郎
2024年7月28日/滋賀ダイハツアリーナ(滋賀県大津市)
オフィシャル・スコア(8回まで): 78-74×2,77-75
IBF世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
ttps://www.youtube.com/watch?v=SiWHjh13J88

2ラウンズを銀次郎に振った(4ポイント差)オーストラリアとイタリアの副審に対して、フランスから招かれたジャッジは、3ラウンズを銀次郎に与えている。あれほど一方的な展開にもかかわらず。見方1つで実態からかけ離れてしまう、振り分け採点の根本的な欠陥をいまさらながらに痛感する。


直前のオッズは、思ったよりも接近していた。攻撃型であるが故に、タドゥランのディフェンス・ラインはけっして堅いとは言い切れず、銀次郎のパンチも当たる。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>FanDuel
タドゥラン:-144(約1.69倍)
銀次郎:+108(2.08倍)

<2>Caesars
タドゥラン:-150(約1.67倍)
銀次郎:+120(2.2倍)

<3>Sky Sports
タドゥラン:4/5(1.8倍)
銀次郎:13/10(2.3倍)
ドロー:16/1(17倍)


◎公開練習
<1>銀次郎
(1)

(2)2025年4月23日/サンケイスポーツ


<2>タドゥラン(関連記事)
<1>IBFミニマム級王者タドゥラン「重岡をもう一度KOする」と気合い十分
2025年5月21日/Boxing News
https://boxingnews.jp/news/112243/

<2>タドゥラン「もっと早く倒す」 IBFミニマム級
2025年05月20日/時事
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025052000792&g=spo


深手を負った初戦のショックは流石に大きかったようで、剥き出しの自信が影を潜めた。眼差しと表情はまるで別人。よく言えば「憑き物が取れた」となるし、「完全に自信を喪失したんじゃないのか」と、逆に取られる恐れもあって、謙虚であればそれでOKとならないところが勝負事の難しさ。

◎重岡銀次朗、プロ初の敗戦を振り返る「全身のダメージがすごくて」『3150×LUSHBOMU vol.6』公開スパーリング
2025年4月23日/マイナビニュース



タドゥランへの雪辱だけでなく、王座を奪還したあかつきには、ジェルサレムとの統一戦に進み、兄の屈辱も晴らすと意気込む。ノーマルな表情に戻った銀次郎の変貌に、ここは一番乗りたい気持ちはヤマヤマなれど、拙ブログ管理人はタドゥランの3-0判定勝ちと見る。

ポイントのマージンは中差を基準値として、ジャッジごとにバラつく場合も有り。銀次郎のボクシングがほとんど変わっていなければ、「前回よりも早く倒す」と語るタドゥランの言葉通りになりかねない。


◎タドゥラン(28歳)/前日計量:104.5ポンド(47.4キロ)
※当日計量:114.9ポンド(52.1キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
(4回目でパス/1回目:52.4キロ,30分後2回目:52.3キロ,+100分後3回目:52.25キロ)
元IBF M・フライ級王者(V1)
戦績:22戦17勝(13KO)4敗1分け
世界戦:6戦2勝(2KO)3敗1分け
アマ通算:約100戦(勝敗を含む詳細不明)
身長:163センチ,リーチ:164センチ
脈拍:48/分
血圧:146/82
体温:36.3℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター


◎銀次郎(25歳)/前日計量:104.9ポンド(47.6キロ)
※当日計量:114.2ポンド(51.8キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
現在の世界ランク:IBF4位/WBO10位
戦績:13戦11勝(9KO)1敗1NC
世界戦:5戦3勝(3KO)1敗1NC
アマ通算:57戦56勝(17RSC)1敗
2017年インターハイ優勝
2016年インターハイ優勝
2017年第71回国体優勝
2016年第27回高校選抜優勝
2015年第26回高校選抜優勝
※階級:ピン級
U15全国大会5年連続優勝(小学5年~中学3年)
熊本開新高校
身長:153センチ,リーチ:156センチ
脈拍:/分
血圧:/
体温:℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター

◎前日計量


◎前日計量&会見(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=KlMCBXFbi7w


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■オフィシャル

主審:チャーリー・フィッチ(米/ニューヨーク州)

副審:
ジル・コー(比)
デイヴ・ブラスロウ(米/メリーランド州)
中村勝彦(日/JBC)

立会人(スーパーバイザー):ジョージ・マルティネス(カナダ/チャンピオンシップ・コミッティ委員長)

リング誌王者レオ初来日 /来るべき(?)モンスター戦に向けてKO防衛を期す - A・レオ vs 和毅 プレビュー -

カテゴリ:
■5月24日/インテックス大阪5号館,大阪市住之江区/IBF
世界フェザー級タイトルマッチ12回戦
王者 アンジェロ・レオ(米) vs IBF1位 亀田和毅(日/TMK)



昨年9月、126ポンド最強と目されていたルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)をショッキングな失神KOに屠り、見事2階級制覇に成功したレオが初来日。指名挑戦権を持つ和毅を相手に、初夏の陽気となった大阪でV1に臨む。

会場のインデックス大阪は、1935(昭和10)年に開場した大阪国際見本市会館(本町橋:ほんまちばし/現在の中央区本町)が元々の始まりで、1985年に八幡屋総合公園から現在の住之江区に移転した。「インテックスプラザ」と名付けられたドーム型の屋根に覆われた大きな空間と、「スカイプラザ」と称する広場の周辺に、6つの展示場(1号館~6号館)が配置されている。

今回はコンサートとセミナー向けに作られた5号館を借用しての開催だが、メインのAゾーンは「1万人規模」と宣伝されることが多いけれど、あくまでスタンディングのみの設営であり、座席のみの収容人員は5~6千人規模とのこと。

スタンディング8千人,座席5千人を収容可能な別会場(Bゾーン)が併設されていて、連結にも対応できるらしいが、今現在の和毅のバリューと、日本国内におけるレオの認知度(ボクシング・ファン以外は皆無に等しい)を考慮すれば、5千席を埋められたら御の字だと思う。


結論を申し上げれば、関心の対象はレオのパフォーマンスのみ。このままIBFのベルトを保持し続ければ、2026年中にもモンスターの標的に選ばれ、全世界的な注目を浴びる。この試合が持つ意味は、それ以上でもそれ以下でもない。

中盤辺りまでのKO(TKO)ですっきり決着してくれるのが最善ではあるが、まともなボクシングをやれば勝ち目のない和毅が、頭・肩・肘を総動員した”当たり屋戦術”+クリンチ&ホールドありきの泥仕合を仕掛けて、挙句の果てに意味不明な僅少差2-1判定になったとしても、レオの勝利までが動くことはまず無いだろう。

WBOのバンタム級王座を獲得した後、JBC職員との間で裁判沙汰になり、次男大毅のS・フライ級王座統一戦(WBA・IBF/リボリオ・ソリスに判定負け)を巡る騒動=”負けても王座保持”=が引き鉄となって、亀田一家全員国内ライセンスを喪失。アル・ヘイモンの傘下に潜り込み、米本土で生き残りを賭して戦ったものの、確たる評価を得られぬまま、JBC職員との裁判に勝訴したことを機に、復職が叶った盟友(?)安河内事務局長とともに国内復帰。


MGMグランドのメイン・アリーナでプンルアン・ソー・シンユー(タイ)を左ボディでKOして一時は評価を上げかけたが、続く防衛戦で暫定王者アレハンドロ・エルナンデス(メキシコ)に苦闘を強いられ、一転して株価は急落。

さらにWBA王者ジェイミー・マクドネル(英)との統一戦を目論むも、WBAにはスーパー王者のファン・カルロス・パジャーノ(ドミニカ)がいた為、WBOから統一戦出場の承認を得られず。ベルトを返上して挑み2連敗。

アメリカでの成功を夢見た和毅のチャレンジは、マクドネルに喫した連敗で完全に費えた訳だが、もっと露骨に言うなら、ワールド・クラスとしての商品価値も同時に終わりを告げた。

エルナンデス戦を観戦したリング誌元編集長のナイジェル・コリンズが、オフィシャルのツィッター(現X)に投稿した辛らつなコメントがすべてを表現尽くしている。


「アメリカでスーパースターになるだって?。気は確かか。軽いパンチをエルナンデスに当てるだけ。彼にできることはそれだけだ。」

プンルアン戦のKO勝ちを唯一の勲章として帰国した和毅は、古巣の協栄ジムに所属して復帰。その後「3150ファイトクラブ(長男興毅が西成に開いたジム)」、「TRY BOX 平成西山ジム(3150ジムの元トレーナー,西山一志が独立)」、そして自らが出資して金平桂一郎元協栄会長を招き、「TMKジム」を設立。

足場となるジム及びプロモーションは短期間にめまぐるしく変わったが、S・バンタム級に転じた2016年10月以降、拳を交えたリアルな世界の一線級は、WBCの暫定王者としてカリフォルニア州カーソン(ロサンゼルス近郊)に乗り込み、大差の0-3判定(110-117×3)に退いた、正規王者レイ・バルガス(メキシコ)のみ。

しかもこのバルガス戦が酷かった。正当なボクシングの攻防では歯が立たず、バッティングありきの亀田スタイルに先祖帰り。前戦でも挑戦者のラフ・ファイトに巻き込まれてしまい、大小の傷を負って苦しんだバルガスは、もともとラフ&タフの混戦を不得手にしている。

慢性化した減量苦の影響も小さくなかったとは思うが、和毅の”当たり屋戦術”に腰が退ける一方のバルガスに対して、会場のディグニティ・スポーツ・ヘルスセンターに集まった同胞のファンからも、容赦の無いブーイングが飛んだ。


2021年12月には、元WBAバンタム級暫定王者でWBA S・バンタム級10位に付けていたヨンフレス・パレホ(ベネズエラ)に、何とも微妙な判定勝ち(116-112,116-111,114-113)を収めて、WBAとIBFのベルトを保持していたムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)への挑戦権を獲得したが、行使せずにフェザー級に増量。

事あるごとにモンスターの名前を口に出して対戦を煽りながら、最短の近道となる筈のアフマダリエフ戦を回避したことで、国内のコアなファンから失笑を買ったことは記憶に新しい。

昨年、IBFフェザー級王座への指名挑戦権を懸けて2度戦ったレラト・ドラミニ戦に至るまで、数多くの関係者とファンに指摘された深刻な”パワーレス”を克服するだけの武器を、和毅は遂に持ち得なかった。

今でも惜しまれるのは、マクドネル戦に向けて組んだイスマエル・サラスとのコンビを、連敗した後すぐに解消してしまったこと。”負けない為なら何でもあり”+”反則ありき”の亀田スタイルと決別して、本格派のボクサーファイターとしての出直しを図ったことは、彼のキャリアにおいて素直な評価に値する唯一の決断ではなかったか。

何を言ってみたところで、結局は父と2人の兄と行動を共にする以外にない。自分のジムを持ったら持ったで、頭に担いだのは2代目金平元会長。一事が万事、元サヤである。


直近の掛け率も、ホームのチャレンジャーに厳しい数字を突きつけている。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>FanDuel
レオ:-700(約1.14倍)
和毅:+440(5.4倍)

<2>betway
レオ:-599(約1.17倍)
和毅:+400(5倍)

<3>ウィリアム・ヒル
レオ:1/6(約1.17倍)
和毅:15/4(1.75倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
レオ:3/14(約1.21倍)
和毅:19/4(5.75倍)
ドロー:18/1(19倍)

◎公開練習
<1>レオ


<2>和毅



ボクシングである以上、和毅に勝機がゼロということは有り得ない。ヴェナード・ロペス戦の鮮やか過ぎるノックアウトは、その後の悲劇(ロペスに脳出血が発覚)とも相まって、新チャンピオンのバリューを実態以上に上げているきらいが否めない。

詳細はレオの略歴と特徴に触れた過去記事をご覧いただくと有り難いが、S・バンタムから階級を上げたレオは、以前にも増して打たれ(せ)る傾向が目立つ。プロのワールド・クラスの中では、けっしてズバ抜けたとまでは言い切れない、自身の身体能力とタフネスを過信したロペスの粗さに助けられたことも事実である。

精度と威力はともかく、和毅が間断なくジャブを突き続けて、前後左右にステップを踏み続けることができれば、スタミナがキツくなる中盤以降、許容される限度一杯までクリンチワークを使わざるを得ないにせよ、僅少差の判定に漕ぎ着けること自体は不可能でも夢物語でもない。

ただし勝敗は別だ。キャンプで手数と運動量のアップに徹底的に取り組んだとしても、それだけで勝てるほどレオは組し易い相手はなく、その上でドラミニ戦で見せた後半の息切れは、手数と脚の動きを増やすことの困難を如実に物語っている。

加齢と増量によるフィジカル面でのマイナスが、はっきり顕在化したと見るべき。33歳の和毅が、どこまでスタミナを強化できるのかは未知数。


生来の打たれ脆さは、長男興毅に共通する和毅最大のウィークネスと言って良く、だからこそ技術の裏づけと強靭なハートを併せ持つ、本物のファイターとのマッチアップを避け続けてきた。

止めるタイミングがいささか早かったとは言え、あの上手くて賢い岩佐亮佑(セレス/引退)に1発効かせて、そのまま連打でロープ際まで押し込み、反撃らしい反撃を許さず、一気呵成にレフェリーストップを呼び込んだアフマダリエフから逃げるのは、亀田一家にとっては当たり前の常識。

五輪と世界選手権でメダルを獲ったアフマダリエフは、一級品のパワー&タフネスに加えて、その気になればボクシングも巧い。アウトボックスのクォリティでも、和毅を軽く上回る。アメリカ(ネバダかカリフォルニア)ならまだしも、ウスベクへの遠征など絶対に有り得ない。

一度び打ち合いに応じたレオは、防御に開く穴も小さくはない。突け入る隙もそれなりにある。だけれども、レオの圧力を力で押し返す選択肢は和毅にはない。真っ当なボクシングの技術の範疇で打ち合いに応じると、本来インファイトが苦手なマクドネルとバルガスにも遅れを取った。

そして繰り返しになるが、フェザー級へのアップによって、スタミナを含めたフィジカルの脆弱さがより露になっている。それが和毅の現実。


当たり前に勝敗を予想するなら、中差以上の判定でレオ。王者の防衛は揺るがない。和毅の仕上がりと戦術によっては、中盤~後半にかけてのストップもあり。

唯一最大の懸念は、審判団に対する悪しき影響も含めた亀田スタイル。ラフ&ダーティは、きっとどこかで発動する。その時レオと彼の陣営がどうするのか。「眼には眼を」でやり返すタイプではないだけに、一抹の不安は残る。


◎レオ(31歳)/前日計量:125.7ポンド(57.0キロ)
戦績:26戦25勝(12KO)1敗
世界戦通算:3戦2勝(1KO)1敗
アマ通算:65勝10敗
ニューメキシコ州ジュニア・ゴールデン・グローブス,シルバー・グローブス優勝
※複数回のチャンピオンとのことだが階級と年度は不明
身長:168センチ,リーチ:174(175)センチ
※Boxrec記載の身体データ修正(リーチ/カッコ内:以前の数値)
血圧:103/67
脈拍:78/分
体温:36.1℃
※以上計量時の検診
右ボクサーファイター


◎和毅(33歳)/前日計量:125.7ポンド(57.0キロ)
元WBC S・バンタム級暫定(V0),元WBOバンタム級王者(V3返上)
現在の世界ランク:IBF1位/リング誌1位
戦績:46戦42勝(23KO)4敗
世界戦通算:8戦5勝(1KO)3敗
アマ戦績:27勝 (10RSC・KO) 1敗1分2NC
身長:171センチ,リーチ:170センチ
※アビゲイル・メディナ戦の予備検診データ
血圧:149/83
脈拍:40/分
体温:36.6℃
※以上計量時の検診
右ボクサーファイター


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■オフィシャル

主審:イグナチウス・ミサイリディス(豪)

副審:
ジル・コー(比)
カール・ザッピア(豪)
リシャール・ブルアン(カナダ)

立会人(スーパーバイザー):ジョージ・マルティネス(カナダ/チャンピオンシップ・コミッティ委員長)

オフィシャルの人選に悪い予感を覚えるのは私だけだろうか。オーストラリアから主審と副審1名、フィリピンからも副審が1名。まずどこよりも心配な韓国、そしてタイ、事後にいくらでも勝手な解釈が可能なペースポイントと、ダメージ&効果などお構いなしにジャブ&軽打を重視したがるネバダとカリフォルニアから選ばれなかったのは何より。

がしかし、韓国とタイに続いて亀田一家の悪しき影響力が懸念されるフィリピンと、同じOPBF圏内で呉越同舟の豪州から2名。

恣意的なスコアリングもさることながら、和毅の”当たり屋戦術”に寛容なレフェリングへの小さからぬ懸念を抱く。これで立会人が安河内JBC事務局長なら、「12回終わって立っていたら和毅の判定勝ち」の悪夢が現実になりかねない。

願わくば、カナダから派遣された立会人と副審1名が、アウェイに乗り込む王者陣営を不正義から守るストッパーとして機能してくれることに大きな期待と望みを懸ける。

すべてが杞憂、要らぬ取り越し苦労であることを願うのみ。


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■王者陣営の動向

大きな収入が確約されるモンスターとの大一番を視線の先に捉えるレオと、マネージャー兼トレーナーとして息子を支える父ミゲルは、日本での防衛戦が持つ意味と重要性を他の誰よりも深く理解・認識している。

興行を主催する亀田一家が手配した航空便とホテルをあえて使わず、亀田側に伝えることなく、予定よりも一足早く来日した王者陣営の用意周到さ、慎重かつ適切な対応にまずは敬意を表したい。

当然のことながら、ホテルを自前で押さえた上での首都上陸。到着直後にやったことは、練習環境の確保だったという。

「Googleマップでボクシングジムを探して、Uberタクシーを呼んで当たりを付けたジムへ行き、練習させて欲しいと頼んだんだ。」

アポなしで突撃(?)された金子ジムは、さぞかしびっくりしたことだろう。アウェイでの初防衛戦を目前に控えた遠来の世界チャンピオンが、前触れもなく突然やって来たのだ。

「快く受け入れて貰えて本当に良かった。」

どこまでが本気でどこまで(から)がブラフなのか。大阪へ移ってからは、亀田側が用意したホテルとジムを利用したとのことだが、最後まで勝手に動くと、必要以上に事を荒立てることになりかねない。

折り合いをつけるべきところはつける。王者陣営は、妥協のさじ加減も一流。大したものである。

◎来日後の様子を追ったショート・ムービー
THE ANGELO LEO アンジェロ・レオJAPANESE BOXING EXPERIENCE!!! ??????
2025年5月22日/TRU SCHOOL SPORTS


ラスト・ファイト? /運命のゴングを待つリマッチ - F・マルティネス vs 井岡一翔 2 プレビュー -

カテゴリ:
■5月11日/大田区総合体育館/WBA世界S・フライ界級タイトルマッチ12回戦
王者 フェルナンド・マルティネス(亜) vs 前王者/WBA6位 井岡一翔(日/志成)

左:フェルナンド・マルティネス/右:井岡一翔(ファイナル・プレッサー)

無事に来日したと思った王者のインフルエンザ発症により、中止を余儀なくされた大晦日決戦から4ヶ月余りが経ち、つつがなく計量も終えて開始ゴングを待つのみ。36歳になった井岡一翔に取って、10ヶ月越しのダイレクトリマッチが持つ意味は大きく重い。

WBA6位という現在のランキングが、4階級制覇(L・フライとフライは本来数に含めることはできない)を果たし、短期間ではあったがリング誌P4Pのベスト10にも入りながら、トップ・オブ・トップの評価を勝ち得ないまま、遂に王座を追われた井岡の現在地を如実に示している。

それほど前戦の内容は悪かった。細かいところで様々言えることはあるにせよ、試合全般を通じてほぼ一方的に押し捲られたと表していい。

◎第1戦の試合映像
<1>フルファイト(スペイン語放送)
https://www.youtube.com/watch?v=DnK6YXuvenU

<2>現地映像
ttps://www.youtube.com/watch?v=I61fjRkmaqI

第1戦のプレビューをアップする際、拙ブログ管理人は「5.5 vs 4.5」でマルティネス有利と書いた。以下に挙げた条件を理由に、井岡の勝機を見出すのは難しいと見立てはしたものの、それでも「5.5 vs 4.5」と微妙な開きになったのは、前半~序盤の決着はまず無いだろうと考えたから。

◎好戦的なパワーファイトに対する井岡のディス・アドバンテージ
<1>距離をキープする為のハードジャブ(左リード)が無い
<2>フットワークが無い
<3>1発の決定力が無い(強引かつ前がかりに攻めても決め切れない=パワー不足)
<4>加齢とともにスピード(身体全体・ハンド)が鈍化
<5>接近戦でのパンチの回転力も落ちている

もう1つ、重要なファクターがある。大事な点を落としていた。ボディワーク(キャリア初期に誇った最大の武器)を捨てて、ブロック&カバーにシフトしたディフェンス。

国内史上初の統一戦で、飽くことのない八重樫東のインファイトを捌き切った若き井岡のボディワーク、瞬時に危機を察知して未然に防ぐレーダーの性能は、紛れも無く世界水準の一級品だった。

しかし増量の過程で直面した「階級の壁」が、ボクシングの質と在り方を変える。フィジカルの強度アップが再優先かつ最重要の課題となり、一級品のボディワークを二級品に落としてでも、身体全体のパワーアップを図るしかないとの結論に至った(と想像する)。


フライ級に上げて以降の井岡は、フィジカルの強度不足に悩まされ続けた。スーパー王者のロマ・ゴンを徹底的に避けた108ポンドに続いて、112ポンドでもスーパー王者ファン・F・エストラーダとの対戦に後ろ向きだったのは、パンチ力もさることながら、身体全体のパワー負けをカバーできるだけの技術的な裏づけを担保できなかった、確信を持ち切れなかったからだと思う。

S・フライ級に進出してからは、継続したフィジカル強化の効果のみならず、計量後のリバウンド利用が奏功して、フライ級の時ほど身体負けしなくなった。勿論スピードは落ちる。スタミナ配分の必要性から、できるだけ動きも抑制しなくてはならない。

結果として、相手のパンチを受ける時間が増えて、相対的に被弾の確率も増えて行く。国内ボクシング関係者の変わらぬ定評、すなわち「ディフェンスの名手・井岡」は過去の栄光と化す。八重樫東をコントロールしたボディワークと卓越した反応(高性能レーダーの感度)も今は昔。

思い切りバイアスをかけて良く言えば、無駄のない効率的なボクシング。しかし、押しの強いタフ&ラフを仕掛けられると、我慢比べを続ける以外に具体的な打開策は無し。ブロック&カバー=身体で相手のパンチを止めるしかない。

◎過去記事:井岡 vs F・マルティネス第1戦プレビュー
<1>2団体統一 or 引退 /相性は過去最悪(?) - 井岡 vs F・マルティネス プレビュー I -
2024年7月7日
https://keisbox.online/archives/26122438.html

<2>2団体統一 or 引退 /相性は過去最悪(?) - 井岡 vs F・マルティネス プレビュー II -
2024年7月7日
https://keisbox.online/archives/26122563.html


何だかんだいいながら、マルティネスの守りもまあまあ堅い。フィジカルの強さを頼りに、1発1発に力を込めて打つ迫力と勢いは、軽量級離れしていて凄いと思うけれど、ワールドクラスではワンパンチ・フィニッシャーとまでは呼べず、決め切れないのはお互い様。遅かれ早かれ、打ちつ打たれつの根比べになるざるを得ないだろう。

距離を潰されると、上を狙うカウンターを打ち切れないことも響く。マックウィリアムズ・アローヨを倒した右ストレート、無策で突っ込んでくる田中恒成の顔面を面白いように捉えた左フックのいずれもが、一定の距離を必要とする。

今現在の井岡のウィークネスは、事実上の黒星と言っていいフランシスコ・ロドリゲス戦と、ジョシュア・フランコ第1戦に集約されているが、マルティネスは井岡の弱点をより際立たせるのではないか。

◎試合映像
<1>井岡 12回判定(3-0) F・ロドリゲス
2021年9月1日/大田区総合体育館
オフィシャル・スコア:116-112×3
WBO J・バンタム級タイトルマッチ12回戦(V3)
ttps://www.youtube.com/watch?v=W-e00HdBCqk

<2>井岡 12回引分(0-1) J・フランコ(第1戦)
2022年12月31日/大田区総合体育館
オフィシャル・スコア:114-114×2,113-115(フ)



その一方で、井岡のメンタルが最後まで崩れず、リバウンドを利用したフィジカルがマルティネスの攻勢を耐え切れれば、中盤以降の逆襲に余地が残る。井岡の真の耐久力も試されるが、ラウンドが長引けば長引くほど、早く疲れるのはパワーで押すマルティネス。

井岡のねちっこさとポーカーフェイスは、後半~終盤にかけて本領を発揮する。上手く駆け引きできれば、地の利込みで小差の判定をもぎ取る可能性が、一定の余力を残した井岡に多少なりともアップするのでは・・・。

とまあ、そんな具合に考えたのだが、マルティネスのスタミナとガッツは想定を若干超えていた。初回に効かせた井岡の左ボディもその後は対策されてしまい、決定機を創出するには程遠い。


井岡の敗北そのものは意外でも驚きでもなかったけれど、あそこまで差が開くとも思っていなかった。試合終了のゴングが鳴ると、中差以上のユナニマウス・ディシジョン(0-3)を覚悟した。

スタンリー・クリストドロー(南アフリカを代表する審判)の111-117、ベルギーから派遣されたジャン・ピエール・ヴァン・イムシュートの112-116は妥当なスコアリング。文句は言えない。

でも、カリフォルニアのエドワード・ヘルナンデスが付けたフルマーク(108-120)には、流石に「えっ?」と声を発しそうになった。「そう見えても仕方がないけど・・・」と、せんない繰言を呟く。

◎オフィシャルスコアカード
オフィシャル・スコアカード

◎オフィシャルスコアカード(清書)
オフィシャル・スコアカード(清書)

※管理人KEIのスコア:111-117 マルティネス
管理人KEIのスコア


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◎「負ける相手じゃなかった」・・・確固たる自信 or 強弁?

本来ならば、昨年の大晦日で決着していた筈のリマッチ。丸4ヶ月の猶予期間が、どちらにどう作用(プラス or マイナス)するのか。

ABEMAの公式チャンネルにアップされた映像で、「けっして負ける相手ではなかった」とリベンジへの自信を述べている。「とにかく攻防のキメが雑だった」と、自らの敗因を分析。「力に力で対抗しようと躍起になり過ぎて、細かく丁寧な駆け引きを忘れて前のめりになった」と語る。

世界戦の通算記録について、少し前まで比較されることが多かった井上尚弥を引き合いに出し、「派手に倒すところばかりがクローズアップされるが、その為に仕掛ける細かいお膳立てが凄い。地味で目立たない仕掛けを、彼ほどやっている選手はいない」と言葉を足した。

熱くなり過ぎることなく、努めて冷静かつ丁寧な組み立てを心がけつつ、自分本来のボクシングを貫く。それさえできれば、自ずと勝利が見えてくる。すなわち、特別何かを変える必要も無ければ、新しい武器や秘密兵器などそもそも不要。

その意気や良し。

◎【5.11井岡 執念の世界戦】「井上選手も地味に仕掛けている」大晦日ドタキャンから…秘策あり??|5.11WBA世界S・フライ級タイトル戦マルティネスvs井岡一翔 ABEMA無料生中継
2025年5月2日/ABEMA【公式】


絶対の信頼を寄せるチーフ,イスマエル・サラスとのマス・ボクシングを見せてくれた昨年7月の第1戦時とは違い、型通りの短いシャドウのみでメディア・ワークアウトを終えた井岡。本当に隠すべき秘策は無いのか。

実際にあってもなくても、「何かあるのでは?」と思わせることができれば、事前の情報戦としてはそれだけで上出来とも言える。


受けて立つマルティネスも、「(やるべきことをちゃんとやれば)ノックアウトできる。8回ぐらいかな?」と堂々のKO宣言。

◎【井上尚弥は僕のアイドル】世界王者マルティネスが井岡一翔を8ラウンドKO宣言!|5.11WBA世界S・フライ級タイトル戦マルティネスvs井岡一翔 ABEMA無料生中継
2025年5月8日/ABEMA【公式】



昨年と同様、公開練習でアップからミット打ちまでしっかり披露したマルティネスは、良く喋り良く笑い元気一杯。大好きな「ドラゴン・ボール」」のキャラクターのポーズをキメては、またまた笑顔をはちきれさす。

王座を統一した後、IBFから迫られた指名戦の履行を拒否。井岡とのダイレクトリマッチを迷わず選び、あっさり赤いベルトを放棄した。何の躊躇もなく再来日に踏み切った最大の理由は、それだけのリスクに見合う条件が提示されたからに他ならない。

「ギャランティで念願の家を建てられる」と嬉しそうに公言する。日本のファンから贈られた「孫悟空」のフィギュアを会見場に持ち込み、自慢げに見せてまた笑顔。何処まで行っても屈託がない。まるで十代の少年のようだ。

◎公開練習
<1>井岡一翔【ボクシング】F・マルティネスとの再戦へ公開練習
2025年4月28日/デイリースポーツ【公式】
https://www.youtube.com/watch?v=qiv9NTBaIJc

<2>フェルナンド・マルティネス【5・11井岡戦】素早い連打、縄跳び、サービス精神を披露
2025年5月7日/デイリースポーツ【公式】
https://www.youtube.com/watch?v=Q-_Ip3_HnKw


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◎主要ブックメイカーのオッズ
<1>FanDuel
マルティネス:-380(約1.14倍)
井岡:+270(5.5倍)

<2>betway
マルティネス:-400(1.25倍)
井岡:+300(4倍)

<3>ウィリアム・ヒル
マルティネス:3/10(1.3倍)
井岡:5/2(3.5倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
マルティネス:1/3(約1.33倍)
井岡:3/1(4倍)
ドロー:18/1(19倍)


◎前回のオッズ
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井岡:-140(約1.71倍)
マルティネス:+125(2.25倍)

<2>betway
井岡:-163(約1.61倍)
マルティネス:+183(2.83倍)

<3>ウィリアム・ヒル
井岡:4/6(約167倍)
マルティネス:6/5(2.2倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
井岡:8/11(約1.73倍)
マルティネス:11/8(2.375倍)
ドロー:16/1(17倍)

前回と今回のオッズを見比べても、井岡の不利は如何ともし難い。「左ボディがベストのタイミングで決まれば・・・」との見立ては当然の流れではあるけれど、マルティネスもそこは織り込み済み。となれば、そこにこそ「仕掛けの有無」が重要になる。

力尽くの打ち合いではなく、まずはパンチの数と命中精度で上回ることが必須。マルティネスの勢いに呑まれる心配は無いにしても、フィジカル・パワーの現実が前回と同じ展開に追い込まれる可能性がゼロとも言い切れない。

全キャリアを通じて、世界戦のリマッチを3回経験済みの井岡。いずれも1戦目で付いたアヤを快勝で解消しており、「再戦に強い」との定評も売り。ただし、手も足も出なかったタイの老練アムナット・ルエンロン(フライ級王座初挑戦でプロ初黒星/アマ時代にも敗れている)とは再戦していない。

昭和のセオリーに従うならば、フランシスコ・ロドリゲスとのリマッチも避けられないところだが、3-0判定のおかげで無視できた。「3度あることは4度ある」と太鼓判を押すに押せないのが、拙ブログ管理人の偽らざる本音である。


◎井岡のリマッチ戦績
<1>ファン・C・レヴェコ(亜)
(1)2015年4月22日/ボディメーカー・コロシアム(大阪府立)
井岡 12回2-0判定 レヴェコ
オフィシャル・スコア:116-113,115-113,114-114
WBAフライ(レギュラー)級タイトルマッチ12回戦/王座獲得
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(2)2015年12月31日/エディオン・アリーナ大阪(大阪府立)
井岡 11回TKO レヴェコ
オフィシャル・スコア(11回まで:2-1):97-93,96-94,94-96
WBAフライ(レギュラー)級タイトルマッチ12回戦(V2)

<2>ドニー・ニエテス(比)
(1)2018年12月31日/ウィン・パレス,マカオ(香港)
ニエテス 12回2-1判定 井岡
オフィシャル・スコア:110-118(ニ),112-116(ニ),116-112(井)
WBO J・バンタム級王座決定12回戦
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(2)2022年7月13日/大田区総合体育館
井岡 12回3-0判定 ニエテス
オフィシャル・スコア:120-108,118-110,117-111
WBO J・バンタム級タイトルマッチ12回戦(V5)

<3>ジョシュア・フランコ(米)
(1)2022年12月31日/大田区総合体育館
フランコ 12回0-1引分 井岡
オフィシャル・スコア:114-114×2,113-115(フ)
WBO・WBA J・バンタム級王座統一12回戦
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(2)2023年1月24日/大田区総合体育館
井岡 12回3-0判定 フランコ
オフィシャル・スコア:116-112×2,115-113
WBA S・フライ級タイトルマッチ12回戦/王座獲得
※保持していたWBO王座:2023年2月17日返上(中谷潤人との指名戦を回避/再戦を優先)


そしてまた、今度も悲観的な予想を立てざるを得ない。前回は「5.5 vs 4.5」だったが、「6.5 vs 3.5」に拡大。マルティネスの前進を捌くのは難しく、我慢比べの末に中差0-3判定負けと読むのが妥当。

序盤のうちに左ボディだけでなく、上を狙った右ストレートと左フックのカウンターを合わせて、マルティネスのプレスにある程度の歯止めをかけられないと相当に厳しい。そのままペースを持って行かれて後半戦に突入した場合、玉砕覚悟の前進に打って出ざるを得なくなり、マルティネスの予告KOが現実になる最悪のシナリオも有り。

「地味で目立たない仕掛け」、すなわち間断の無いリードジャブと、引き手のスピード(パンチのつなぎの速さ)に注力したコンビネーションを軸に、そこそこ復活させたボディワークを交えて肉弾戦の比率を減らすことができれば、真逆のパターンも不可能ではない筈なのだが・・・。


◎マルティネス(33歳)/前日計量:114.4ポンド(51.9キロ)
現WBA S・フライ級(V0),前IBF J・バンタム級王者(V3/返上)
戦績:17戦全勝(9KO)
世界戦通算:4戦全勝(1KO)
アマ通算:148勝2敗
2016年リオ五輪フライ級代表(1回戦:R32敗退)
2010年サウス・アメリカン・ゲームズ(南米大会/メデジン/コロンビア)銅メダル
※階級:フライ級
身長:157センチ,リーチ:163センチ
※以下計量時の計測
血圧:110/80
脈拍:101/分
体温:36.1℃
好戦的な右ボクサーファイター(スイッチもこなす)


◎井岡(36歳)/前日計量:114.4ポンド(51.9キロ)
前WBA S・フライ級(V1),前WBO J・バンタム級(V6/返上),元WBAフライ級(V5),元WBA L・フライ級(V3).元WBA/WBC統一ミニマム級(V3)王者
戦績:35戦31勝(16KO)3敗1分け
世界戦通算:26戦22勝(11KO)3敗1分け
アマ通算:105戦95勝 (64RSC・KO) 10敗
興国高→東農大(中退)
2008年第78回,及び2007年第77回全日本選手権準優勝
2007年第62回(秋田),及び2008年第63回(大分)国体優勝
2005年第60回(岡山),及び2006年第61回(兵庫)国体優勝
2005年第59回,及び2006年第60回インターハイ優勝
2005年第16回,及び2006年第17回高校選抜優勝
※高校6冠/階級:L・フライ級
身長:164.6センチ,リーチ:166センチ
※以下計量時の計測
血圧:105/79
脈拍:118/分
体温:35.9℃
※ドニー・ニエテス第2戦の予備検診データ
右ボクサーファイター


◎前日計量


◎前日計量(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=yP8BOZISUxE

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■オフィシャル

主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)

副審:
ラウル・カイズ・Sr.(米/カリフォルニア州)
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)
ベンツェ・コヴァチ(ハンガリー)

立会人(スーパーバイザー):ホセ・ゴメス(パナマ/WBAランキング委員)

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