J・モロニー vs 天心 直前プレビュー - 有明バンタム級フェス Part2 -
- カテゴリ:
- Review
■2月24日/有明アリーナ/119ポンド契約10回戦
元WBOバンタム級王者/WBC・IBF5位 ジェイソン・モロニー(豪) vs WBA2位 那須川天心(帝拳)
元WBOバンタム級王者/WBC・IBF5位 ジェイソン・モロニー(豪) vs WBA2位 那須川天心(帝拳)

”日本キック史上最高の天才児”こと天心が、転向6戦目で早くも大きな勝負に出た。一時はどこやらの暫定王座戦になるとかならないとか、あらぬ風聞も出回ったが、発表されたのは119ポンド契約の10回戦。
お相手は、何とあのジェイソン・モロニー。昨年5月の東京ドーム興行に参戦して、武居由樹(大橋)に中差の0-3判定負け。プロ9年目にしてようやく掴んだWBOのベルトを手放すも、日本のファンにもすっかり打ち解けて、「いいヤツ」キャラが浸透定着してしまった。
キックで無敵を誇った者同士、近い将来の激突に注目が集まる武居を、これでもかと意識した分かり易いマッチメイク。武居の回復具合(右肩関節唇損傷)にもよるが、早ければ年末にも・・・?。
今現在の世界ランクは、何故か天心が上に行ってしまっているけど、実績と経験では明らかにモロニーが上回る。前王者が早速ジャブを放つ。”時期尚早”とのコメントにカチンときた天心が、上から目線を弾き返すべく応戦。
◎那須川天心、モロニーからの“挑戦早い”発言にアンサー「舐めてもらっちゃ困る」 『Prime Video Boxing 11』記者会見
2025/年2月22日/oricon
フィリピンのアシロに手を焼き、一度ならずヒヤっとする貰い方をした前戦について、経験不足を指摘されるのは致し方がない。アシロも想像以上にいい選手だったし、何より現代のボクサーがやらなくなって久しい、上体と頭を小刻みに柔らかく動かすウィービング=一昔前の定石=を使っていた。
これで天心は的を絞り切れなくなり、第9ラウンドのダウン(アシロはスリップを主張)も加味され、オフィシャル・スコアは大差(98-91×2,97-92)が付いてしまったが、実際の試合内容にそこまでの開きはない。
上半身のウィーブに、丁寧にリズムを刻む下半身のステップが連動すれば、オールド・スクール(20世紀)のセオリー完成となって言うことはないけれど、そこまで望むのは無いものねだりになる。
いずれにせよ、天心ほどのスピード&ムーヴィング・センスの持ち主にも、20世紀のセオリーが充分過ぎる有効性を示してくれたことだけで、拙ブログ管理人は十二分に満足した。
◎試合映像:天心 10回判定 アシロ
2024年10月14日/有明アリーナ
WBOアジア・パシフィックバンタム級王座決定戦
ttps://www.youtube.com/watch?v=rJaDXH2XZr0
一方、武居にかなりの点差を付けられて陥落した後、悔し涙にくれたモロニー。最終盤の猛攻が見る者の胸を打ち、「もう少し早くあれをやっていれば・・・」と惜しむ声も多かった。
以前からある「サウスポーは大の苦手」説を証明したとの伝聞が、ネット上を飛び交うことになる。真相は未だ藪の中ではあるが、得意にしていないだけで、たとえば小國以載のように、とにもかくにも不得手という程酷くはないというのが、拙ブログ管理人の現時点での見立て。
捲土重来を期して日本の地を踏む表情には、勝手を知る余裕が垣間見える。南半球のオーストラリアと季節が逆転する為、日本の寒さにはびっくりした様子も、「これまで培ってきた技術&経験値があれば大丈夫」との自信が、泰然自若とした佇まいに裏づけを与えているのは確かだろう。
その傍らには、長年マネージメントを任されてきたトニー・トルジが、巨体を揺らしながらぴったりと張り付く。

公開された練習では、スパーリングまで披露した天心に比べると、型通りのシャドウで体裁を整えたモロニーにどうしても不満は残るが、これもまた駆け引きの1つだけに止むを得ない。
ただし、フルトンのように短時間であっという間に切り上げた訳ではなく、2ラウンド近くは動いてくれた。
◎公開練習
<1>那須川天心戦に臨むジェーソン・モロニー、丁寧なシャドーを披露!『Prime Video Boxing 11』公開練習
2025年2月18日/マイナビニュース
<2>『Prime Video Boxing 11』那須川天心公開練習|プライムビデオ
2025年2月12日/Prime Video JP - プライムビデオ
プロで味合わされた3度の黒星のうち、2度が日本人。達人の居合い切りで一刀両断されたかのごとく、右ショートのカウンターで沈んだラスベガスでのモンスター戦と、必死に食い下がりながらも反撃及ばす敗れた武居戦。そしてもう1人は、技も力も届かなかったIBF王者マニー・ロドリゲス(プエルトリコ)への初挑戦。負けた3試合はすべて世界戦で、それ以外にはすべて勝利を収めている。
安定した試合運びには定評があるけれど、日本のファンが忘れていけないのは、プロの裏技を容赦なく駆使する”マリーシア”を辞さないところ。記事の終わりに附記した、モンスター戦のプレビュー記事をご参照いただけると有難い。
正直に本音を言うと、今でも拙ブログ管理人はモロニーを信じる気にはなれず、好きか嫌いかと問われれば、「好きなタイプではない」との回答になる。以前は「嫌い」だったが、少しづつ「いいヤツ」キャラに毒されているようだ。
直前のオッズは天心を支持。判断の決め手になったのは、やはりスピードの違いだろうか。ロドリゲスを攻略してIBF王者となり、昨年末ようやく初防衛を終えた西田凌佑(六島)のスパーリング・パートナーを務めたアシロも、「技術は互角だと思うが、天心の方が速かった」と認めている。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>FanDuel
天心:-260(約1.38倍)
モロニー:+188(2.88倍)
<2>betway
天心:-250(1.4倍)
モロニー:+200(3倍)
<3>ウィリアム・ヒル
天心:2/5(1.4倍)
モロニー:19/10(2.9倍)
ドロー:16/1(17倍)
<4>Sky Sports
天心:4/9(約1.44倍)
モロニー:5/2(3.5倍)
ドロー:20/1(21倍)
個人的には、2人の地力はここまで離れていないというのが偽らざる実感で、武居との比較を気にし過ぎた天心が真正面から倒しにかかると、「サウスポーが大の苦手」な筈のモロニーにペースを握られてしまうのではないか。
毎回同じ繰言で恐縮だが、この際倒すことは全部忘れて、国際式デビュー戦の「かすらせないボクシング」に徹することが、勝利への最短距離という気がしてならず、誤解を恐れずに言い切ってしまうと、その思いは確信に近いとさえ言える。
豊富な運動量とフットワークを武器に戦うモロニーは、完璧にし止められたモンスター戦を含めて、「空転させられた」経験は無い筈で、3度の敗戦に限らず、そうした感覚を持っていない可能性が極めて高い。
だからこそ、モロニーに裏の顔(ラフ&ダーティ)を諦めさせる為にも、「マタドール天心」の全開を願っておく。散々苦しんだ挙句に、僅差の2-1判定勝ちだったとしても、今の天心に取っては快勝と評価すべき。
それぐらいモロニーは難敵だというのが、拙ブログ管理人が受ける強い印象であり、天心の判定負けも想定の範囲内。そうなったとしても、けっして驚くような結果ではないと、現時点では考えている。
もう1つのバンタム級フェス、堤聖也(角海老)と比嘉大吾(志成)のWBAタイトルマッチについては、誠に残念ながら記事を準備する時間的余裕がなく、断腸の思いで諦めるしかない。
◎モロニー(34歳)/前日計量:118.8ポンド(53.9キロ)
元WBOバンタム級王者(V1)
※現在の世界ランク:WBC・IBFバンタム級5位/WBO6位
戦績:30戦27勝(19KO)3敗
アマ通算:53勝19敗
2010年コモンウェルス・ゲームズ(デリー/インド)フライ級ベスト8
※マイケル・コンラン(2012年ロンドン五輪銅,2015年世界選手権金)に総合点(10-10)で僅差ポイント勝ち
身長:168センチ,リーチ:170センチ
※Boxrec記載の最新データ:身長,リーチとも165センチ
トレーナー:アンジェロ・ハイダー(Angelo Hyder)
マネージャー:トニー・トルジ(Tony Tolj)
プロモーター:リンデン・ホスキング(ホスキング・プロモーションズ/豪ビクトリア州)
右ボクサーファイター
◎那須川(26歳)/前日計量:118.8ポンド(53.9キロ)
現在の世界ランキング:WBA・WBC:3位/WBO11位
戦績:5戦全勝(2KO)
キック通算:42戦全勝(28KO)
※各種のキック世界タイトルを総ナメ
身長:165センチ,リーチ:176センチ
左ボクサーファイター

◎前日計量
契約ウェイトがバンタム級リミット+1ポンドであることに、何だかんだと言う声も聞こえてくるが、こうした契約はプロボクシングでは当たり前の日常茶飯。何も問題はない。
そして、無駄なく引き締まった天心のボディの見事なこと。すっかりプロボクサーの身体になった。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●
■オフィシャル
主審:中村勝彦(日/JBC)
副審:
染谷路朗(日/JBC)
メキン・スモン(タイ)
エドワルド・リガス(比)
ノンタイトルの10回戦だから、てっきり全員日本人かと思っていたが、タイとフィリピンから1人づつジャッジを呼んで、一応バランスに配慮した布陣。拮抗した僅差の判定勝負で天心の手が挙がった場合、オーストラリアから1人も呼ばれていない点が火種になる恐れはある。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●
◎モロニーと天心に関する過去記事
<1>モロニー
(1)リアル・モンスター,遂にラスベガスへ /J・マロニー戦プレビュー Pert 3 - 2度目の米本土上陸で狙う快心のKO防衛 -
2020年11月1日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/bbb1675c47ac556113d7f2493a1efe72
(2)リアル・モンスター,遂にラスベガスへ /J・マロニー戦プレビュー Pert 2 - 2度目の米本土上陸で狙う快心のKO防衛 -
2020年10月31日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/9420b7e0cf16a9ee42eca9ab830f75fe
(3)リアル・モンスター,遂にラスベガスへ /J・マロニー戦プレビュー Pert 1 - 2度目の米本土上陸で狙う快心のKO防衛 -
2020年10月3日
https://blog.goo.ne.jp/trazowolf2016/e/5bf388a97121f7230e6d99c8f2c779a6
<2>天心
(1)”宇宙系(?)”で初載冠へ /「世界タイトル7連戦+1」- 天心 vs アシロ プレビュー -
2024年10月14日
https://keisbox.online/archives/27014059.html
(2)倒せないキックの天才児 /狂っているのはどちらの感覚・・・? - L・ロブレス vs 天心 プレビュー -
2024年1月23日
https://keisbox.online/archives/24440151.html
(3)有明4大決戦+α プレビュー 3 /キックの神童は国際式でも花開くのか? - 那須川天心 vs 与那覇勇気 -
2023年4月8日
https://keisbox.online/archives/20017399.html