警戒すべきは頭と肘,そして体当たり - 2025年はモンスターの快勝から -
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■1月24日/有明アリーナ/4団体統一世界S・バンタム級タイトルマッチ12回戦
統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs キム・イェジュン
統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs キム・イェジュン
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最も恐れていたことが起きた。グッドマンが再開したスパーリングで左瞼を再びカット。今度の傷は大きく深く、それ相応のブランクを覚悟しなければならない。中止も致し方なしと思ったら、アンダーカードに出場を予定していた韓国人の下位ランカーが名乗りを上げた。
大橋会長がリザーバーとして事前に準備していたとのことで、主要4団体の了解も得ていたらしい。グッドマンを非難する声がまたまた上がり、「スパーリングをやる必要があったのか」など無茶なことを言う人たちまで現れる始末。
やるのは世界戦で、延期された期間は1ヶ月。スパーリングはやるに決まっている。やらなきゃ駄目である。最初のカットから3週間ほど経過して、ドクターの許可も下りていた筈で、だからスパーリングを再開した。
注意不足の謗りは免れないにしても、本番までの丸々1ヶ月、スパーリング無しで世界戦のリングに立つ?。絶対に有り得ない。
高熱で倒れたフェルナンド・マルティネスにも言えることだが、ただの風邪なら、市販の解熱剤を飲んで1~2日寝てれば回復する。だがしかし、インフルエンザは無理だ。サラリーマンだって、「1週間は家で寝てろ」と言われる。
無闇に出歩かれたら、迷惑千万なことこの上ない。武漢ウィルスの感染症とダブルでチェックできる医療用の簡易検査キットも出回っていて、平熱まで下がって状態が安定したらまずは検査を行う。外出するのは、陰性を確認した後の話。
IBFとWBOは1位に据え置くとのことだから、可能性が完全に費えた訳ではなく、モンスターのフェザー級進出が来夏以降にズレ込んだ場合、今一度交渉が具体化しないとは言い切れない。グッドマンに運が残ってさえいれば・・・。
それにしても、2試合続けてリザーブ選手になるなんて、モンスターにもツキがない。グッドマンの戦線離脱がもたらした最大の不幸は、リング誌ファイター・オブ・ジ・イヤーの候補から、モンスターが除外されてしまったことである。
X'masイヴに合わせてグッドマンがちゃんと来日して、ポール・バトラーとドヘニーの二番煎じなどやらずに、普段通りのボクシングで力一杯応戦してくれていたら、久々にモンスターらしい前半のKO決着が見られていたのにと、せんない繰言がついつい口を突く。
予定通り一方的にグッドマンを圧殺していたら、ファイター・オブ・ジ・イヤーの2年連続受賞は無理でも、候補のリストには入っていたと確信する。
◎会見映像
代役を買って出たチャレンジャーは、2012年デビューの10年選手で、モンスターより1歳年長の32歳。ニューカマーと呼ぶにはトウが立ってしまっているが、対日本人7連勝(負けなし)が最大のアピールポイント。
最新の日本人対決は、2019年5月6日の小坂遼(真正)戦。ソウルから100キロほど離れたイェサン郡というところで、9ラウンド終了後の棄権TKO勝ち。保持していたWBAの地域王座を防衛した。
この後、武漢ウィルス禍の影響もあって、長期の試合枯れに追い込まれる。2022年10月のメキシコ遠征でようやく実戦に復帰したが、レイ・オフの間にオーストラリアのマイク・アルタムラというプロモーターと契約。
2023年4月に初渡米が叶い、ワシントン州のオーバーン(シアトル近郊)という街で行われたローカル興行に参戦。シアトルを拠点に戦う、ロブ・ディーゼルという2連敗中の黒人選手に8回0-2判定負け。デビュー2戦目で喫したプロ初黒星以来、10年ぶりとなる2度目の敗北を味わう。
3ヶ月後の同年7月、アルタムラが主催するメルボルン郊外のローカルイベントに出場して、インドネシアから呼んだ2連敗中の無名選手に初回TKO勝ち(8回戦)。この後またブランクに入り、昨年5月9日タイの首都バンコクでラケーシュ・ロハチャブというインドの選手に5回TKO勝ち(10回戦)。WBOオリエンタル王座を獲得する。
これを機に二桁台の世界ランキング入り。認定団体直轄のベルトを得て、承認料とバーターでランクを得る常套手段で余り感心はしないが、これ以降試合を行っておらず、ご祝儀相場で11位になり、さらに感心できなくなった。
8歳でボクシングを始めて、アマチュアで一定の活躍をしたとの触れ込みだが、戦績とタイトル歴は不明。2020年以降、アルタムラの息がかかったジョン・バスタブルという、豪州人のコーチに指導を受けている。
日本人選手との対戦を含めて、ブランク(2019年)以前は右構えで戦っていたのに、最近の試合はサウスポーを基本にしているように見受けた。どうしたのかと思って調べてみると、2022年に右肩を故障して手術を受けたとのこと。
「左へのチェンジをアドバイスした」と、トレーナーのバスタブルが証言している。怪我の種類と程度は明らかにされていないが、構えを変えたということは、右の強打(ストレートとフック)を多用すると、再発の恐れがそれなりに高いからではないか。
とすると、腱板断裂の可能性が考えられる。もっとも左に完全に固定してしまった訳ではなく、試合の状況と相手の特徴に合わせて、左右をスイッチしながら戦うことも可能。こうした器用さは、生まれ持った素質もあるだろうが、アマチュアの経験が活きていると思われる。
スタイルは好戦的なボクサーファイター。興奮すると組み付いて揉み合うだけでは済まず、振り回したり、投げ飛ばすなどの反則も平気で使う。フィジカルの強さと気性の荒さは、コリアン・ファイターの伝統。サッカーや野球の日韓戦以上に、ボクシングの日韓対抗は彼らの血を沸き立たせずにおかない。
という次第で、正攻法のボクシングをまともにやったら、結果は火を見るよりも明らか。序盤の即決KOでモンスターの右手が挙がる。それぐらい、両者の実力と経験値には明白な開きがあって、ルールの範囲内で何とかなるような話ではない。
パンチング・パワーはもとより、手足のスピードにかなりの差があり、攻防のキメと精度の粗さは、モンスターとの比較を云々するレベルになく、考えたくはないけれど、頭突きと肘打ちで脅しをかけ、形振り構わず体当たり込みの突進をぶちかますぐらいしか、突破口を開く道筋が見えて来ないのである。
掛け率も正直だ。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井上:-5000(1.02倍)
キム:+1400(15倍)
<2>betway
井上:-5000(1.02倍)
キム:+1200(13倍)
<3>ウィリアム・ヒル
井上:1/66(約1.02倍)
キム:14/1(15倍)
ドロー:25/1(26倍)
<4>Sky Sports
井上:1/33(約1.03倍)
キム:22/1(23倍)
ドロー:33/1(34倍)
個人的な感想を申し上げるなら、スカイベットの「1対23」を支持する。
唯一にして最大の懸念は、コリアン・ファイターの免疫不足。
モンスターはプロ入り以降韓国人選手との対戦経験がなく、おそらくだが、アマ時代も含めてスパーリングしかやっていない筈。実戦では一度も手合わせしていないのでは。
コリアン・ファイターの手荒な振る舞いに対する経験値の不足が、悪い方に出ると怖い。ヘッドバットで瞼や額を大きく深く切るのもまずいが、低い姿勢で突っ込んで来る挑戦者の頭を強打して、右の拳を壊すのが最悪のシナリオ。
コーナーを率いるバスタブルが述べている通り、モンスターが真正面から向かって来てくれれば、何がしかの対応は取り得るけれど、素速いステップで縦横無尽に出入りしながら、正確無比なジャブで距離をキープされると、文字通り手も足も出なくなる。
ラフ&タフに巻き込まれず、しかも鮮やかな即決KOの理想に最も効果的な戦術は、ズバリ、ロマチェンコ・スタイル。ショートジャブをしっかり突いて大振りを慎み、細かいコンビネーションを間断なく放ち、同じ場所に留まらない。打っては離れ(動き)、離れ(動いて)は打つ。
スタートの2ラウンズ、それを集中的かつ徹底的にやれば、挑戦者の方から「カウンターをどうぞ」とばかりに、左右を振り回しながらルーズガードで飛び込んでくるに違いない。
韓国男子の主要4団体王者は、2004年~2006年にかけてWBCフェザー級王座を保持した池仁珍(チ・インジン)を最後に現れておらず、日本国内で行われた男子の世界戦日韓対決も、2006年1月29日の池 vs 越本隆志(FUKUOKA)戦(越本の判定勝ち)以来途絶えている。
女子はそれなりに選手がいて、今月21日のフェニックスバトル(後楽園ホール)に登場した黒木優子(真正)が、ソ・ヨギョンを僅差の2-1判定に下して、空位のWBAミニマム級王座に就いたばかり。
90年代末のアジア通貨危機をきっかけにして、スポンサーを失った韓国のプロボクシングは一気に活力を喪失。苦境を脱出するにはスターが必要。不正丸出しのスコアリングとレフェリングが横行し、一度ならず八百長が明るみとなって没落した。
肝心要の国内統括機関は内紛が絶えず、屋台骨を支えてきたKBC(Korean Boxing Commission:韓国ボクシング・コミッション)が2つに分裂。新たに出来たKBM(Korea Boxing Member's Commission)とKBCに、アマチュアのKBA(Korea Boxing Association)が三つ巴の権力闘争に明け暮れ、解決の糸口はようとして見えない。
アマチュアのKBAが敵対的な姿勢を鮮明にし続けていることもあり、オリンピックや世界選手権の代表選手は、地盤沈下したプロには見向きもせず、プロの男子は人材の枯渇に歯止めをかけることができないまま、状況は悪化の一途を辿ってきた。。
かつて大橋会長と2度拳を交えた連続15回防衛の張正九(WBC J・フライ級)と、WBAの同級王座を通算18回防衛した柳明佑が手を携え、選手ファーストの改革を訴えて組織したKBMは、殿堂入りした2人の名王者を介して大橋会長に支援を要請。
快諾した大橋会長は、2022年11月から「フェニックスバトル・ソウル」と題した興行をスタート。不定期ではあるが、今も協力を継続している。
張-大橋のコネクションが、どんな結果に結びつくのか。そこはかとない不安を感じないこともない。荒ぶるコリアン・ファイトは、堅実なディフェンスとスピードの違いで空転させるのがベスト。
とにもかくにも、怪我無く終えることを最優先にして欲しい。
◎井上(31歳)
戦績:28戦全勝(25KO)
WBA(V2)・WBC(V3)・IBF(V2)・WBO(V3)4団体統一王者
前4団体=WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
世界戦通算:23戦全勝(21KO)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)
◎キム(32歳)/前日計量:121.7ポンド(55.2キロ)
世界ランク:IBF・WBO1位/WBA・WBC6位
戦績:19戦21勝(13KO)2敗2分け
アマ戦績:不明
身長:163センチ
右ボクサーファイター(スイッチ可)
◎前日計量
遂にこの時が来たかとの印象。ゲッソリ頬が殺げて、少しやつれた面持ちになった。S・バンタムに上げて以降、減量に少しは余裕ができたと喜んでいたが、それももう終わりを迎えたようである。
今年度中のフェザー級進出が、いよいよ現時身を帯びてきた。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
□リング・オフィシャル
主審:マーク・ネルソン(米/ミネソタ州)
副審:
ティム・チーザム(米/ネバダ州)
ホセ・マンスール(メキシコ)
フェレンツ・ブダイ(ハンガリー)
立会人(スーパーバイザー):
WBA:ホセ ゴメス(パナマ/WBAランキング委員)
WBC:エドガルド・ロペス(プエルトリコ/WBOランキング委員長)
IBF:安河内剛(日/JBC事務局長)
WBO:レオン・パノンチーリョ(米/ハワイ州/WBO副会長/タイ在住)

最も恐れていたことが起きた。グッドマンが再開したスパーリングで左瞼を再びカット。今度の傷は大きく深く、それ相応のブランクを覚悟しなければならない。中止も致し方なしと思ったら、アンダーカードに出場を予定していた韓国人の下位ランカーが名乗りを上げた。
大橋会長がリザーバーとして事前に準備していたとのことで、主要4団体の了解も得ていたらしい。グッドマンを非難する声がまたまた上がり、「スパーリングをやる必要があったのか」など無茶なことを言う人たちまで現れる始末。
やるのは世界戦で、延期された期間は1ヶ月。スパーリングはやるに決まっている。やらなきゃ駄目である。最初のカットから3週間ほど経過して、ドクターの許可も下りていた筈で、だからスパーリングを再開した。
注意不足の謗りは免れないにしても、本番までの丸々1ヶ月、スパーリング無しで世界戦のリングに立つ?。絶対に有り得ない。
高熱で倒れたフェルナンド・マルティネスにも言えることだが、ただの風邪なら、市販の解熱剤を飲んで1~2日寝てれば回復する。だがしかし、インフルエンザは無理だ。サラリーマンだって、「1週間は家で寝てろ」と言われる。
無闇に出歩かれたら、迷惑千万なことこの上ない。武漢ウィルスの感染症とダブルでチェックできる医療用の簡易検査キットも出回っていて、平熱まで下がって状態が安定したらまずは検査を行う。外出するのは、陰性を確認した後の話。
IBFとWBOは1位に据え置くとのことだから、可能性が完全に費えた訳ではなく、モンスターのフェザー級進出が来夏以降にズレ込んだ場合、今一度交渉が具体化しないとは言い切れない。グッドマンに運が残ってさえいれば・・・。
それにしても、2試合続けてリザーブ選手になるなんて、モンスターにもツキがない。グッドマンの戦線離脱がもたらした最大の不幸は、リング誌ファイター・オブ・ジ・イヤーの候補から、モンスターが除外されてしまったことである。
X'masイヴに合わせてグッドマンがちゃんと来日して、ポール・バトラーとドヘニーの二番煎じなどやらずに、普段通りのボクシングで力一杯応戦してくれていたら、久々にモンスターらしい前半のKO決着が見られていたのにと、せんない繰言がついつい口を突く。
予定通り一方的にグッドマンを圧殺していたら、ファイター・オブ・ジ・イヤーの2年連続受賞は無理でも、候補のリストには入っていたと確信する。
◎会見映像
代役を買って出たチャレンジャーは、2012年デビューの10年選手で、モンスターより1歳年長の32歳。ニューカマーと呼ぶにはトウが立ってしまっているが、対日本人7連勝(負けなし)が最大のアピールポイント。
最新の日本人対決は、2019年5月6日の小坂遼(真正)戦。ソウルから100キロほど離れたイェサン郡というところで、9ラウンド終了後の棄権TKO勝ち。保持していたWBAの地域王座を防衛した。
この後、武漢ウィルス禍の影響もあって、長期の試合枯れに追い込まれる。2022年10月のメキシコ遠征でようやく実戦に復帰したが、レイ・オフの間にオーストラリアのマイク・アルタムラというプロモーターと契約。
2023年4月に初渡米が叶い、ワシントン州のオーバーン(シアトル近郊)という街で行われたローカル興行に参戦。シアトルを拠点に戦う、ロブ・ディーゼルという2連敗中の黒人選手に8回0-2判定負け。デビュー2戦目で喫したプロ初黒星以来、10年ぶりとなる2度目の敗北を味わう。
3ヶ月後の同年7月、アルタムラが主催するメルボルン郊外のローカルイベントに出場して、インドネシアから呼んだ2連敗中の無名選手に初回TKO勝ち(8回戦)。この後またブランクに入り、昨年5月9日タイの首都バンコクでラケーシュ・ロハチャブというインドの選手に5回TKO勝ち(10回戦)。WBOオリエンタル王座を獲得する。
これを機に二桁台の世界ランキング入り。認定団体直轄のベルトを得て、承認料とバーターでランクを得る常套手段で余り感心はしないが、これ以降試合を行っておらず、ご祝儀相場で11位になり、さらに感心できなくなった。
8歳でボクシングを始めて、アマチュアで一定の活躍をしたとの触れ込みだが、戦績とタイトル歴は不明。2020年以降、アルタムラの息がかかったジョン・バスタブルという、豪州人のコーチに指導を受けている。
日本人選手との対戦を含めて、ブランク(2019年)以前は右構えで戦っていたのに、最近の試合はサウスポーを基本にしているように見受けた。どうしたのかと思って調べてみると、2022年に右肩を故障して手術を受けたとのこと。
「左へのチェンジをアドバイスした」と、トレーナーのバスタブルが証言している。怪我の種類と程度は明らかにされていないが、構えを変えたということは、右の強打(ストレートとフック)を多用すると、再発の恐れがそれなりに高いからではないか。
とすると、腱板断裂の可能性が考えられる。もっとも左に完全に固定してしまった訳ではなく、試合の状況と相手の特徴に合わせて、左右をスイッチしながら戦うことも可能。こうした器用さは、生まれ持った素質もあるだろうが、アマチュアの経験が活きていると思われる。
スタイルは好戦的なボクサーファイター。興奮すると組み付いて揉み合うだけでは済まず、振り回したり、投げ飛ばすなどの反則も平気で使う。フィジカルの強さと気性の荒さは、コリアン・ファイターの伝統。サッカーや野球の日韓戦以上に、ボクシングの日韓対抗は彼らの血を沸き立たせずにおかない。
という次第で、正攻法のボクシングをまともにやったら、結果は火を見るよりも明らか。序盤の即決KOでモンスターの右手が挙がる。それぐらい、両者の実力と経験値には明白な開きがあって、ルールの範囲内で何とかなるような話ではない。
パンチング・パワーはもとより、手足のスピードにかなりの差があり、攻防のキメと精度の粗さは、モンスターとの比較を云々するレベルになく、考えたくはないけれど、頭突きと肘打ちで脅しをかけ、形振り構わず体当たり込みの突進をぶちかますぐらいしか、突破口を開く道筋が見えて来ないのである。
掛け率も正直だ。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井上:-5000(1.02倍)
キム:+1400(15倍)
<2>betway
井上:-5000(1.02倍)
キム:+1200(13倍)
<3>ウィリアム・ヒル
井上:1/66(約1.02倍)
キム:14/1(15倍)
ドロー:25/1(26倍)
<4>Sky Sports
井上:1/33(約1.03倍)
キム:22/1(23倍)
ドロー:33/1(34倍)
個人的な感想を申し上げるなら、スカイベットの「1対23」を支持する。
唯一にして最大の懸念は、コリアン・ファイターの免疫不足。
モンスターはプロ入り以降韓国人選手との対戦経験がなく、おそらくだが、アマ時代も含めてスパーリングしかやっていない筈。実戦では一度も手合わせしていないのでは。
コリアン・ファイターの手荒な振る舞いに対する経験値の不足が、悪い方に出ると怖い。ヘッドバットで瞼や額を大きく深く切るのもまずいが、低い姿勢で突っ込んで来る挑戦者の頭を強打して、右の拳を壊すのが最悪のシナリオ。
コーナーを率いるバスタブルが述べている通り、モンスターが真正面から向かって来てくれれば、何がしかの対応は取り得るけれど、素速いステップで縦横無尽に出入りしながら、正確無比なジャブで距離をキープされると、文字通り手も足も出なくなる。
ラフ&タフに巻き込まれず、しかも鮮やかな即決KOの理想に最も効果的な戦術は、ズバリ、ロマチェンコ・スタイル。ショートジャブをしっかり突いて大振りを慎み、細かいコンビネーションを間断なく放ち、同じ場所に留まらない。打っては離れ(動き)、離れ(動いて)は打つ。
スタートの2ラウンズ、それを集中的かつ徹底的にやれば、挑戦者の方から「カウンターをどうぞ」とばかりに、左右を振り回しながらルーズガードで飛び込んでくるに違いない。
韓国男子の主要4団体王者は、2004年~2006年にかけてWBCフェザー級王座を保持した池仁珍(チ・インジン)を最後に現れておらず、日本国内で行われた男子の世界戦日韓対決も、2006年1月29日の池 vs 越本隆志(FUKUOKA)戦(越本の判定勝ち)以来途絶えている。
女子はそれなりに選手がいて、今月21日のフェニックスバトル(後楽園ホール)に登場した黒木優子(真正)が、ソ・ヨギョンを僅差の2-1判定に下して、空位のWBAミニマム級王座に就いたばかり。
90年代末のアジア通貨危機をきっかけにして、スポンサーを失った韓国のプロボクシングは一気に活力を喪失。苦境を脱出するにはスターが必要。不正丸出しのスコアリングとレフェリングが横行し、一度ならず八百長が明るみとなって没落した。
肝心要の国内統括機関は内紛が絶えず、屋台骨を支えてきたKBC(Korean Boxing Commission:韓国ボクシング・コミッション)が2つに分裂。新たに出来たKBM(Korea Boxing Member's Commission)とKBCに、アマチュアのKBA(Korea Boxing Association)が三つ巴の権力闘争に明け暮れ、解決の糸口はようとして見えない。
アマチュアのKBAが敵対的な姿勢を鮮明にし続けていることもあり、オリンピックや世界選手権の代表選手は、地盤沈下したプロには見向きもせず、プロの男子は人材の枯渇に歯止めをかけることができないまま、状況は悪化の一途を辿ってきた。。
かつて大橋会長と2度拳を交えた連続15回防衛の張正九(WBC J・フライ級)と、WBAの同級王座を通算18回防衛した柳明佑が手を携え、選手ファーストの改革を訴えて組織したKBMは、殿堂入りした2人の名王者を介して大橋会長に支援を要請。
快諾した大橋会長は、2022年11月から「フェニックスバトル・ソウル」と題した興行をスタート。不定期ではあるが、今も協力を継続している。
張-大橋のコネクションが、どんな結果に結びつくのか。そこはかとない不安を感じないこともない。荒ぶるコリアン・ファイトは、堅実なディフェンスとスピードの違いで空転させるのがベスト。
とにもかくにも、怪我無く終えることを最優先にして欲しい。
◎井上(31歳)
戦績:28戦全勝(25KO)
WBA(V2)・WBC(V3)・IBF(V2)・WBO(V3)4団体統一王者
前4団体=WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),元WBC L・フライ級(V1)王者
元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者
世界戦通算:23戦全勝(21KO)
アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)
◎キム(32歳)/前日計量:121.7ポンド(55.2キロ)
世界ランク:IBF・WBO1位/WBA・WBC6位
戦績:19戦21勝(13KO)2敗2分け
アマ戦績:不明
身長:163センチ
右ボクサーファイター(スイッチ可)
◎前日計量
遂にこの時が来たかとの印象。ゲッソリ頬が殺げて、少しやつれた面持ちになった。S・バンタムに上げて以降、減量に少しは余裕ができたと喜んでいたが、それももう終わりを迎えたようである。
今年度中のフェザー級進出が、いよいよ現時身を帯びてきた。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
□リング・オフィシャル
主審:マーク・ネルソン(米/ミネソタ州)
副審:
ティム・チーザム(米/ネバダ州)
ホセ・マンスール(メキシコ)
フェレンツ・ブダイ(ハンガリー)
立会人(スーパーバイザー):
WBA:ホセ ゴメス(パナマ/WBAランキング委員)
WBC:エドガルド・ロペス(プエルトリコ/WBOランキング委員長)
IBF:安河内剛(日/JBC事務局長)
WBO:レオン・パノンチーリョ(米/ハワイ州/WBO副会長/タイ在住)