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2024年08月

P4Pランク1位を奪還? 我こそは世界最強・最高/4階級制覇に挑むネブラスカの雄 - マドリモフ vs クロフォード プレビュー -

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■8月3日/BMOスタジアム,ロサンゼルス/WBA正規・WBO暫定世界級S・ウェルター級タイトルマッチ12回戦(WBO暫定:決定戦)
WBA王者 イスマイル・マドリモフ(ウズベキスタン) vs 前4団体統一/WBA・WBOウェルター級王者 テレンス・クロフォード(米)


※ファイナル・プレス・カンファレンス(フル映像)
https://www.youtube.com/watch?v=XDTrFTJqfzw

栄えあるリング誌P4Pランキング1位の座を、クルーザー級に次いでヘビー級でも4本のベルトをまとめたオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に追われただけでなく、またしても我らがモンスター,井上尚弥の後塵を拝してしまったクロフォードが、とうとう4つ目となるS・ウェルター級に進出。

今年3月、中東リヤドでロシアのタフ・ガイ,マゴメド・クルバノフを5回TKOに下して、空位のWBA王座に就いたばかりのマドリモフにアタックする。
※メインはA・ジョシュア vs F・ガヌー

さらに、ティム・ジュー(豪)を破って154ポンドのWBC・WBO統一王座に就いたセバスティアン・ファンドーラ(米)に対して、クロフォードとの指名戦履行を通告済みのWBOが、何故か暫定王座決定戦を承認。「逃がさないぞ」というダメ押しのつもりなのだろうが、そもそもクロフォードにその気があるのかどうか。


「世界最強・最高のボクサーはこの俺だ。ウシクでもなければ井上でもない。ボクシングの何たるかについて、まともに理解している記者が少な過ぎる。」

昨年7月末にエロール・スペンスを完膚無きまでに叩きのめし、男子ボクサー史上初の「2階級+4団体統一」に成功。一旦はP4Pのトップに立ったクロフォードだが、リング誌の仕打ち(?)に甚く(いたく)ご立腹の様子。しかし、序列を落とした最大の理由は、自身の試合枯れにある。


122ポンド最強&キャリア最大の難敵と目されたスティーブン・フルトンを丸呑みにして、S・バンタム級の初陣を望み得るベストの内容と結果で飾ったジャパニーズ・モンスターの衝撃を、いとも簡単に塗り替えてしまったクロフォードは、あれから丸々1年リングに上がっていない。

最重量の2階級で4団体を統一したウシク(男子ボクサー史上3人目の快挙)は、ムラっ気と不摂生が珠に瑕に瑕とは言いつつ、ヘビー級No.1の評価が定着したタイソン・フューリー(英)からダウンを奪って明白な判定勝ち。

ウシクのパフォーマンスについて疑問を呈する声もあるにはあったが、母国を見舞った戦禍の中で緑のベルトを巻いたことも、投票権を有する記者とライター,編集者たちの心を動かしたことは疑う余地が無い。

そしてフルトンからWBCとWBOの王座を奪取した我らがモンスターは、年末にマーロン・タパレス(比)を10ラウンドで粉砕してWBAとIBFも吸収。クロフォードに先を越されはしたが、男子史上2人目となる「2階級完全制覇」を達成した。

さらに今年5月、タイソン vs ダグラス戦以来となる東京ドーム興行を実現して4万人超を動員。日本ボクシング界の怨敵,ルイス・ネリー(メキシコ)を3度倒して6回にフィニッシュ。統一王座の初防衛にも成功。

初回に喫した生涯初のノックダウンには肝を冷やしたが、2ラウンド以降は完璧と称すべき攻防でネリーを圧倒。9月3日には、モンスターからスパーリング・パートナーとして重用され、一躍注目されたジャフェスリー・ラミド(米)を右の一撃で吹っ飛ばし、再評価されたアイルランドの豪腕T・J・ドヘニーの挑戦を受ける。


やはり、チャンピオンは防衛してナンボ。戦ってこそのプロボクサー。ジャロン・エニス(米)との指名戦指示を無視してIBFからはく奪処分を受けると、154ポンド挑戦の意向を受けたWBCが、恒例と化した感さえある休養王者移行を発動。

「統一チャンプを、どうしてもっと大事にできないのか・・・。」

手前勝手な事情と都合で指名試合を義務付けして、ダメならあっさり王座を召し上げる認定団体の野暮に深い溜息をつきながらも、「長い競技人生の疲れもあるだろうし、明らかにしていないだけで、拳やどこかに古傷の1つや2つあってもおかしくはない。でも、1年は休み過ぎよなあ」と素直にそう思う。

大型(183センチ)のIBF王者バフラム・ムルタザリエフ(ロシア/22戦全勝16KO/31歳)、ジューからWBCとWBOの王座をもぎ取った超大型(193センチ)のセバスティアン・ファンドーラ(米/21勝13KO1敗1分け/26歳)を避けて、ほぼ同じサイズでプロキャリアが最も浅いマドリモフを選んだ。

この辺りの計算高さは、小さからぬマイナス要因にならざるを得ないけれど、スペンス戦並みのワンサイドで4冠達成となれば、P4P1位への返り咲きは現実味を帯びる。

◎公開練習

※フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=iQnqnEGE1wo

戦前のオッズは、かなりの差でクロフォードを指示。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
マドリモフ:+450(5.5倍)
クロフォード:-600(約1.17倍)

<2>betway
マドリモフ:+500(6倍)
クロフォード:-699(約1.14倍)

<3>ウィリアム・ヒル
マドリモフ:4/1(5倍)
クロフォード:1/6(約1.17倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
マドリモフ:6/1(7倍)
クロフォード:1/6(約1.17)
ドロー:25/1(26倍)

フィジカルの厚み&強度とパンチング・パワーは、7歳若い王者に分がある。しかし迫力がある分、ディフェンスの隙を含む攻防のキメに粗さが目立ち、スピード&シャープネスがイマイチのマドリモフ攻略は、抜群の安定感と磨き上げられた高い精度を誇るクロフォードにとって、それほどの難事とは思えない・・・とまあ、そんな感じだろうか。

◎試合映像:マドリモフ 5回TKO M・クルバノフ
2024年3月8日/キングダム・アリーナ(リヤド/サウジアラビア)
https://www.youtube.com/watch?v=GEF5MaGoxg8


クロフォードがこれまで通り万全な仕上がりで、どこにも怪我や病気の影響が無いとの前提にはなるが、7~8割方4冠達成は確実と見立てておく。

「スピードはパワーに優る」

ユーリ・アルバチャコフの卓越したボクシングを作り上げた名コーチ、アレクサンドル・ジミンが残した言葉である。

黒人特有のスピードと柔軟性に加えて、類まれなクィックネスと反応+特異なムーヴィング・センスを天から授かったパーネル・ウィテカーは、1984年のロス五輪でライト級の頂点を経てプロ入りすると、160センチ台半ば~後半のタッパ(公称168センチ/166センチ説も有り)をものともせず、ライト級から始まってJ・ウェルター(S・ライト),ウェルターと順に階級を上げて、問題なく3階級を制覇。

さらに1995年3月、154ポンドのWBA王座を連続10回守ったアルゼンチンの強豪フリオ・セサール・バスケス(179センチ/170センチ台半ば~後半と思われる)にアタック。バスケスの重厚な攻勢を捌いて、大差の判定勝ち(112-119,111-117,111-118)を収めた。

観戦した当時、オフィシャル・スコアは離れ過ぎとしか思えず、奮闘したバスケスを気の毒に思ったが、そうしたことより何に一番驚いたかと言えば、ウィテカーのフィジカルである。

ウェルター級のリミットより、7.5ポンド以上も重い153ポンド4/3で計量したにもかかわらず、ウィテカーの上半身に一切の弛緩は見られず、若干抑え目ではあったものの、アクロバティックなムーヴも健在。パワーに特化していないだけで、ウィテカーもある種のフィジカル・モンスターだったと確信する。


今になって録画映像を見返すと、ウェルターに上げた後のメイウェザーよりは遥かにオフェンシブで、リスクもちゃんと取っている。90年代の半ば~後半頃までは、完全決着を要求する伝統的な価値観がまだ残っていた。

ペレストロイカの波に乗って旧ソ連・東欧のステートアマが大量に流入するようになり、キューバも含めた旧共産圏からやって来る才能の最大の受け入れ先となったドイツと王国アメリカを中心に、アマチュアライクなタッチスタイルが流行り始めて、プロに求められるスタンダードも緩み出してはいたものの、現在とは単純に比較できない厳しい水準にあり、ディフェンシブな省エネ・スタイルはまだまだ軽蔑の対象だった。

◎試合映像:ウィテカー 判定12R(3-0) J・C・バスケス
1995年3月4日/コンヴェンション・センター(トランプ・プラザ/アトランティックシティ)
https://www.youtube.com/watch?v=s9t5h4qm9ag

ウィテカーの場合、相手を小馬鹿にする振る舞いと言動が災いして、ファンの支持をなかなか得られないことに始終イラついていたと記憶する。何の疑いも無く「自業自得」だと、随分長い間決め付けていたが、「省エネ・安全策」の定義も十年一日まったく同じではないのだと痛感させられる今日この頃・・・。

「巧過ぎるがゆえの不人気」

ひょっとしたら、クロフォードのボクシングにもそうした面があるのかもしれない。

加齢(試合の1ヶ月後には37歳)による影響(特に下半身の衰え)が顕在化する恐れも勿論想定の範囲内で、武漢ウィルス禍で止むを得なかった面もあるが、2020年以降年1試合ペースに落ち着いてしまっている点も不安要素にはなる。


◎マドリモフ(29歳)/前日計量:154ポンド
戦績:11戦10勝(7KO)1分け
アマ通算:350勝20敗
□シニア(エリート)
2017年世界選手権(ハンブルク/独):ミドル級ベスト8
2018年アジア大会(ジャカルタ/インドネシア):ミドル級金メダル
2017年アジア選手権(タシケント/ウズベキスタン):ミドル級金メダル
2014年アジア大会(仁川/韓国):ウェルター級銀メダル
2016年ウズベキスタン国内選手権:ミドル級優勝
2014年ウズベキスタン国内選手権:ウェルター級準優勝
□ユース・ジュニア
2011年ジュニア(U-17)世界選手権(アンタルヤ/トルコ):ライト級銀メダル
2013年アジアユース選手権(サンバレス州スービック/ルソン島・比国):ウェルター級銀メダル
2013年ウズベキスタン国内選手権:ウェルター級優勝
身長,リーチとも174センチ
右ボクサーファイター


◎クロフォード(36歳)/前日計量:153.4ポンド
戦績:40戦全勝(31KO)
アマ通算:58勝12敗
2007年全米選手権3位
2006年ナショナル・ゴールデン・グローブス準優勝
2006年全米選手権3位
2006年ナショナルPAL優勝
※階級:ライト級
身長:173センチ,リーチ:188センチ
左右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)

□世界戦通算:18戦全勝(15KO)
※2016年11月(J・ウェルター級時代)~11試合連続KO防衛中
<1>WBOライト級王座:V2/2014年3月~11月返上
<2>WBO J・ウェルター級王座:V6/2015年4月~2017年10月返上
<3>WBC S・ライト級王座:V3/2016年7月~2018年2月返上
※2団体統一
<4>WBA・IBF王座:V0/2017年8月~(WBA:2017年10月返上/IBF:2017年8月返上)
※4団体統一
<5>WBOウェルター級王座:V7/2018年6月~在位中
<6>WBA・WBC・IBFウェルター級王座:V0(WBC:2023年7月~2024年5月休養王者/IBF:2023年7月~11月はく奪)

◎前日計量


◎フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=3mPHG20gf5w


流石はクロフォード。かつてのウィテカーに引けを取らない引き締まり方で、仕上がりに抜かりは無いようだ。上半身の厚みも、心配したほどの違いは無い。あくまで見た目の印象に過ぎず、具体的な数値はわからないが、マドリモフはこれから一気に体重を戻してさらに大きくなる(おそらく170ポンドを少し超える程度=L・ヘビー級)。

クロフォードはどのくらい増やすつもりなのだろう。


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■リング・オフィシャル:未発表


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■主なアンダーカード
S・ミドル級からL・ヘビー級に上げたデヴィッド・モレル(キューバ)が、セルビアのラディヴォジェ・カラジッチとWBA王座の決定戦に臨む。

ローリー・ロメロ(米)からWBA S・ライト級王座を奪ったイサック・クルス(メキシコ)は、25歳の中堅ホセ・バレンズエラ(米)との初防衛戦。163センチの小兵をものともしない突貫ファイトで、圧倒的なKO決着に期待が集まる。

引退発言で物議を醸したヘビー級のニューカマー,ジャレッド・アンダーソンに、コンゴのマーティン・バコール・イルンガ(元クルーザー級王者イルンガ・マカブの実弟)が挑むローカル王座戦をセミセミ格でセット。

2022年9月のルイス・オルティス戦以来、すっかり音沙汰のなかったアンディ・ルイスが、ようやっと重い腰を上げる。太り過ぎの似た者同士ながら、ロートル化が隠せなくなってきたジャレル・ミラーとの12回戦を予定。

ドーピング違反でアンソニー・ジョシュア戦をすっ飛ばしたミラーは、2年間のサスペンドに処されてしまう。2019年の暮れから2022年の初夏までのレイ・オフは、武漢ウィルス禍に重なり、ジムワークが困難な状況も相まって、完全に休む期間が長かったと想像する。

同じリングで、難病からの完全復帰を目指すヴァージル・オルティズ(米)と相まみえる筈だったティム・ジュー(豪/ロシア)が、王座を失った3月末のセバスティアン・ファンドーラ戦で負った負傷(頭部をカットして大量出血)が癒えずにキャンセル。

不運が続くリアル・ギフテッド(本物の天才)に、リアルなチャンスが一刻も早く巡って来ることを切に願う。などと取りとめの無いことを考えいていたが、WBCが今月10日に暫定王座戦を承認済み。

ジュー vs ファンドーラ戦と同じ3月30日の興行で、ブライアン・メンドーサ(米)を12回3-0判定に下して暫定王者に認定されたセルゲイ・ボハチュク(ウクライナ)に、ラスベガスのミケロブ・ウルトラ・アリーナ(旧名称:マンダレイ・ベイ・イベントセンター)で挑戦する。

また今回の興行は、「リヤド・シーズン」が手掛ける初の海外イベントと銘打たれている。エンターテイメント振興にかけるサウジアラビア当局の意気込みは本物で、勢いを増すばかり・・・。

◎HE TURKI ALALSHIKH ANNOUNCES RIYADH SEASON TO HOST FIRST OVERSEAS EVENT IN LA AS CRAWFORD FACES MADRIMOV FOR WORLD 154 TITLES
APRIL 24 2024/Matchroom
https://www.matchroomboxing.com/news/he-turki-alalshikh-announces-riyadh-season-to-host-first-overseas-event-in-los-angeles-as-crawford-takes-on-madrimov-for-world-super-welterweight-titles/

ストップの難しさ? /狂った読みと計算 - 重岡銀次郎 vs P・タドゥラン レビュー 2 -

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■7月28日/滋賀ダイハツアリーナ,滋賀県大津市/IBF世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
IBF1位/元王者 ペドロ・タドゥラン(比) 9回TKO 王者 重岡銀次郎(日/ワタナベ)

emergency
※銀次郎を抱きかかえる小口忠寬トレーナー(左)/右側は山元浩嗣マネージャーと思われる(以前と髪型が違う+写真の角度で断定しづらい)

「(タドゥランは)KO負けのない、好戦的で頑丈な強い選手。でも倒して勝ちます。」

「(初めての)メインに相応しい、会場のお客さんとABEMAで視聴してくれるすべてのファンに、喜んで貰える面白い試合をする。」

試合前の会見やインタビューで、余裕綽々でKO防衛への自信を述べていた銀次郎。ボクシング関係者とファンの大多数が、銀次郎の勝利を毛ほども疑っていなかった筈である。直前のオッズも、概ね10倍程度の開きがあった。

挑戦者タドゥランの勝利は、紛れも無い特大のアップアセットと表していい。では、いったい陣営の読みと計算は、どこでどう違ってしまったのか。歯車はどこで狂い始めていたのだろう。


かく言う私も銀次郎の勝ちに組みしていたのは同様で、ある程度は押し込まれるて被弾もするだろうが、負けを心配することは無いとタカを括っていたクチなので、偉そうなことは言えないけれども、銀次郎圧勝の前評判にはそれなりに説得力を持つ理由がる。

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【共通する対戦相手とその結果】
両者には、4名の共通する対戦相手が存在する。プロ13戦の銀次郎と22戦のタドゥラン(プロボクサーの試合数が激減した現在においても多いとは言えない)にとって、世界戦絡みで4人は多いと思うが、これは取りも直さず、ミニマム級の人材不足,ランキングの空洞化を端的に物語っている。

対戦した時期と結果は以下の通り。

陣営の判断に最も影響したと思われるのは、直近のジェイク・アンパロ戦。12ラウンズをフルに粘られ判定決着(IBFのエリミネーター)になったタドゥランに対して、銀次郎は右から返す左ボディを刺し込み、僅か2ラウンドでフィニッシュ。

本来挑戦する筈だったアルアル・アンダレス(比)が減量を失敗してドクターストップ(過度な低血糖)となり、本番1週間前の緊急召集に応じて急遽来日。リミットを作ってくれただけでOKの状況を考慮する必要はあるが、見事なKOでV2に成功している。

他の3名中、レネ・M・クアルト(2度)とジョエル・リノの2名にタドゥランは負けていて、頭突きを十八番にするバラダレスとは敵地メキシコで戦い、当たりにいったバラダレスが出血してノー・コンテスト。


タドゥランに勝ったクアルトをメキシコに呼び、僅少差の2-1地元判定で王者となったバラダレスに初挑戦したのが銀次郎。タドゥランと同様、バッティング絡みの意味不明なトラブル(ぶつけに行ったバラダレスが戦闘不能を主張/カットはしていない)でノーコンテストとなった後、再戦で5回KO勝ちを収めて完全決着。

暫定王座決定戦を争った実力者のクアルトには、初回にダウンを喫して不覚を取るも、6回と7回に強烈なボディで倒し返し、9回にもボディショットで2度のダウンを追加してストップ勝ち。終わってみれば、銀次郎の完勝だった。

対戦が決まった時点での世界タイトルマッチの戦績は、銀次郎が4戦3勝(3KO)1NC。タドゥランは1勝(1KO)3敗1分けの負け越しで、バラダレスとクアルトの2名が共通する対戦相手となっている。


<1>ジェイク・アンパロ(比/26歳)/15勝(3KO)6敗1分け/元WBOアジア・パシフィック王者
■銀次郎:2回KO勝ち
2024年3月31日/名古屋国際会議場/IBF王座V2
https://www.youtube.com/watch?v=8qERzc0J798

■タドゥラン:12回判定勝ち(3-0)
2023年12月28日/タグビララン・シティ(ボホール島/比)
※オフィシャル・スコア:119-109,118-110,116-112
IBF M・フライ級挑戦者決定12回戦


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<2>ダニエル・バラダレス(メキシコ/30歳)/29勝(17KO)4敗1分け1NC/元IBF王者(V1)
■銀次郎:2戦1勝(1KO)1NC
1)第2戦:5回TKO勝ち
2023年10月7日/大田区総合体育館/IBF王座V1(IBF内統一:正規・暫定)
https://www.youtube.com/watch?v=PNLLjrTyRSs

2)第1戦:3回NC
2023年1月6日/エディオン・アリーナ大阪/IBF王座挑戦
https://www.youtube.com/watch?v=_uIunMcwXx4

■タドゥラン:4回負傷マジョリティ・ドロー(0-1)
2020年2月1日/エクスポ・サルディン・セルヴェッサ.グァダルーペ(メキシコ)/IBF王座V1
※オフィシャル・スコア:38-38×2,37-39×1
https://www.youtube.com/watch?v=cyrdptVBvXY

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<3>レネ・マーク・クアルト(比/27歳)/22勝(17KO)6敗2分け/元IBF王者(V1)
■銀次郎:9回KO勝ち
2023年4月16日/国立代々木第2体育館/IBF暫定王座決定戦・獲得


■タドゥラン:2戦2敗
1)第2戦:7回負傷判定(0-2)
2022年2月6日/ディゴス・シティ(ミンダナオ島/比)/IBF王座挑戦(ダイレクト・リマッチ)
※オフィシャル・スコア:65-64,66-64,65-65


2)第1戦:12回判定負け(0-3)
2020年2月1日/ブラ・ジム,ジェネラル・サントス(ミンダナオ島/比)/IBF王座陥落
※オフィシャル・スコア:三者とも113-115
https://www.youtube.com/watch?v=Sve3MeAS2L0

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<4>ジョエル・リノ(比/33歳)/12勝(5KO)5敗1分け/元比国(GABP)王者
■銀次郎:8回判定勝ち(3-0)
2019年4月14日/合志市総合体育館(熊本県)/プロ3戦目(ミニマム級8回戦)
※オフィシャル・スコア:79-75,80-73,78-75

■タドゥラン:6回判定負け(1-2)
2016年4月1日/M'lang Municipal Gymnasium, M'lang/プロ7戦目(ミニマム級6回戦)
※オフィシャル・スコア:56-57,57-56,55-58


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【想定を遥かに凌駕したタドゥランのフィジカル&パンチング・パワー】
共通する相手と対戦結果が、陣営の判断ミスを誘発した可能性を最初に挙げておいて恐縮だが、直接勝敗を左右したのは、圧倒的だったタドゥランの攻撃力,突進力に尽きる。試合を見た誰もが感じたに違いなく、異論を差し挟む余地のないところ。

元来打ち出すと止まらない攻撃的なタイプではあるが、5度の世界戦とアンパロとのエリミネーターの映像で確認できるのは、必要に応じてボクシングも交えながら、下がるべきところは下がる冷静さも失わない、好戦的なボクサーファイタースタイル。

しかし、銀次郎には徹底したファイタースタイルを貫いた。際立つフィジカルの強さに加えて、見るからに硬くて重い上にキレまくるパンチが凄かった。ただパワフルなだけではなく、スピード&シャープネスを伴っていて厄介なことこの上ない。

さらに特筆すべきなのが、スタミナと集中力。スタートからあれだけ強振を続けたら、4回か5回辺りで一度息切れする。中盤の2~3ラウンズ、手数を抑えて動きながらも休んで回復を図り、後半~終盤に備えることになるが、ガス欠と同時に猛反撃を受け、最悪の場合そのまま撃沈の憂き目に遭うのは、プロボクシングの定石,日常茶飯でもある。


前の記事でタドゥランを”壊し屋”ビクトル・ラバナレスに例えたが、距離を潰すまでのラバナレスは脱力した上体を柔らかく保ち、必要な駆け引きにジャブと捨てパンチも使いながら、しっかり強弱と緩急も付けて攻撃を組み立てていた。

オフェンスの軸にしているのは、遠心力を利用した遅れ気味に到達するメキシカン・スタイルのフックとアッパー。ただし精度にも注意を払い、闇雲に力尽くの乱打を仕掛けたりはしない。はっきりアウトボクサーを好み、その育成に定評のある名匠ナチョ・ベリスタインがコーナーを守っているだけあって、適時イマズマ型に足を運ぶメキシコ伝統後退のステップも踏み、ペース配分を忘れずに前進と波状攻撃を繰り返して行く。

ところがこの日のタドゥランは、開始と同時に一気に突っかけるのと同時に、全開の強打を振るって上下を打ち分けながら、強引な正面突破を休まず続けた。体格差をフルに活かして、最軽量の105ポンドでも小さな銀次郎(153センチ)を防戦に追い込み、自由にさせない作戦だったと思われるが、心身のスタミナに裏付けがないと継続できない。

ハナから勝ち目の無い戦いと悟り、行くところまで行ってそれでダメなら・・・と割り切る捨て身の奇襲もあるが、タドゥランと彼の陣営は入念に銀次郎を研究して、負担の大きさを折込済みの戦術を準備しそれに懸けた。


Part 3 へ


◎銀次郎(24歳)/前日計量:104.7ポンド(47.5キロ)
※当日計量:113.3ポンド(51.4キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
戦績:13戦11勝(9KO)1敗1NC
世界戦:5戦3勝(3KO)1敗1NC
アマ通算:57戦56勝(17RSC)1敗
2017年インターハイ優勝
2016年インターハイ優勝
2017年第71回国体優勝
2016年第27回高校選抜優勝
2015年第26回高校選抜優勝
※階級:ピン級
U15全国大会5年連続優勝(小学5年~中学3年)
熊本開新高校
身長:153センチ,リーチ:156センチ
脈拍:58/分
血圧:136/83
体温:36.5℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター


◎タドゥラン(27歳)/前日計量:104ポンド(47.2キロ)
※当日計量:114.5ポンド(52.0キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
元IBF M・フライ級王者(V1)
戦績:22戦17勝(KO)4敗1分け
世界戦通算:6戦2勝(2KO)3敗1分け
アマ通算:約100戦(勝敗を含む詳細不明)
身長:163センチ,リーチ:164センチ
脈拍:48/分
血圧:146/82
体温:36.3℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター

weighin

105ポンドのリミット上限を1ポンドアンダーして、当日朝の再計量(IBFのみ)でも、リミット+10ポンドのリバウンド制限をしっかり守ったタドゥラン。

セカンド・ウェイ・インが終わった後、たっぷり食事を採って水分補給もしっかり行い、リングに上がった上半身はさらに大きくなっていたが、前日計量の時点で両雄の骨格の違いが目に付く。

105ポンドの調整は、加齢とともに加速度的に過酷さを増している筈で、コンディションを考慮した階級アップは意外に早いかもしれない。


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■オフィシャル

主審:スティーブ・ウィリス(米/ニューヨーク州)

副審:第8ラウンドまでのスコア:0-3でタドゥラン
アダム・ハイト((豪):74-78
ジェローム・ラデス(仏):75-77
マッテオ・モンテッラ(伊):74-78

立会人(スーパーバイザー):ベン・ケイティ(豪/IBF Asia担当役員)


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■試合映像
<1>ABEMA公式:第1ラウンドのみ
https://www.youtube.com/watch?v=2qlC-XFO_EA

<2>ファンによる撮影
ttps://www.youtube.com/watch?v=7_YAb6Rl4aE


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