倒せないキックの天才児 /狂っているのはどちらの感覚・・・? - L・ロブレス vs 天心 プレビュー -
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■1月23日/エディオン・アリーナ大阪,大阪市浪速区/121ポンド(54.8キロ)契約8回戦
WBA・WBO14位 ルイス・ロブレス(メキシコ) vs 那須川天心(帝拳)
WBA・WBO14位 ルイス・ロブレス(メキシコ) vs 那須川天心(帝拳)
日本キック史上最高・最大の天才児が、ことボクシングでは倒せない。
「パンチが無い」「詰め切る気迫も連打も全然足りない」等々、物足りなさばかりが喧伝される中、二桁のそれも下の方ではあるものの、一応3戦目でバンタム級の世界ランカーを迎える。
与那覇勇気(真正)とのデビュー戦は、あくまでディフェンスがテーマだった。「いかに打たせ(れ)ず」一方的な展開を作り出すのか。チーフの大役を任された粟生隆寛(エリートアマから帝拳に入りWBCのフェザー級とS・フェザー級を獲った元2階級制覇王者)の狙いは、そこにしか無かったと断じる他ない。
戦前から明らかだったスピードの差を存分に活かし、前後左右に素早く動く見切りの速さと精度の高いジャブ,コンビネーションに唸らされた。
与那覇は勇敢な強打者で、基本的な攻防の技術もしっかりした選手だが、その与那覇に天心は何もさせずに8ラウンドを戦い切っている。ジャッジ1人が、1ポイントを与那覇に振ったことに、「1発も貰ってない。というか、触らせてもいない。フルマークでしょ。」と異を唱える。
そして2戦目は、メキシコから呼び直したアンダードッグ。2022年9月18日にセットされていたが、当初予定のメキシカン,ファン・フローレスが武漢ウィルスに感染してしまい、相手と日程を再調整。
代わりにやって来たルイス・グスマン・トーレスを、初回にいきなり左を決めてダウンさせると、ボディアタックで弱らせた上、第7ラウンドには連打を集めて2度目のダウン(一旦スリップ裁定→ノックダウンに訂正)。
ここでジ・エンドかと思いきや、集中打をまとめられずにまた判定勝ち。流石に今度はフルマークだったものの、「倒せない天才児」への不満をファンが口にし出す。
◎試合前の公開練習
<1>デビュー戦前の公開スパーリング
2023年4月5日/amazon prime公式
まずはディフェンス。守ることに主眼を置いたボクシングで、距離を詰めて来る福井勝也(26歳/4戦全勝3KO)が仕掛ける攻撃のほぼすべてに反応。福井は59勝16敗のアマキャリアを持つエリートで、天心は潜在能力の高さとセンスを存分に発揮した。.
<2>グスマン戦前
2023年9月8日/amazon prime公式
デビュー戦に比べれば、「打ち抜こうとする」意識だけは伺える。ただし、キック時代の思い切りの良さ、迷いの無さは望むべくもなし。とは言え、2戦目でここまでできれば何も言うことはない。素晴らしいの一言。
<3>ロブレス戦直前
2024年1月11日/amazon prime公式
一瞬たりとも止まらない。軽快なステップで動き続けるベーシックはそのままに、しかし打つ時は足を止めて体重を乗せて行く。これもまだ意識と身体のシームレスな連携には今数歩と見受けるが、「倒せない」ことへの批判について、一定の回答を出そうと様々模索はしている。
ただし、勇敢で獰猛なロブレス相手に、正面に位置を取ったまま足を止めて立つのはリスキー。焦ることなど何もないと思うが、期待値が高い分そうも言っていられないということか。
マッハの踏み込みに崩しのフェイントを混ぜ込み、タイミングを外して当て易くする工夫を求めるのは、まだまだ酷との印象も有り。天心ほどのスピードを持ってしても、真っ正直にワンツーもろとも飛び込んでも、それなりに経験を積んだボクサーなら、後方と両サイドへのステップで対応できてしまう。
自分から距離を詰めるにしても、もっと頭を振って全身でフェイントを入れておかないと、カウンターを浴びて慌てることにもなりかねない。ステップとタイミングの細かい変化は極めて重要。
どれだけ批判されても、今はまだ「一瞬も止まらず動き続けるポイントボクシング」に撤するべきなのでは。バンタム級への階級ダウンも込みにはなるけれど、遅かれ早かれちゃんと倒せるようになる。
私もそうだが、井上尚弥の破格過ぎるパワーを見続けているせいで、ファンの感覚が狂い出しているのも事実。天心の左ストレートに、キック時代の「貫く」感覚が蘇えるのもそう遠くは無い筈だと、ひとまずは言っておこう。
85歳になるナチョ・べりスタインの帯同は意外なサプライズだが、本番のリング上でサプライズは不要。無理をせずに、フルマークの判定で良いと思う。
ナチョには申し訳ないが、「まともに触れないままの判定負け」を覚悟していただく。
◎【ダイジェスト版】1.23 LIVE BOXING 6 スペシャルコンテンツ「TENSHIN NASUKAWA ~ボクシングへの挑戦#4~」| プライムビデオ
2024年1月10日
◎フル映像:1.23 LIVE BOXING 6 スペシャルコンテンツ
2024年1月9日/amazon prime
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CJYVVQM8/ref=atv_dp_share_r_em_b7dbb132447b4
◎ロブレス(25歳)/前日軽量:119.5ポンド(54.2キロ)
戦績:18戦15勝(5KO)2敗1分け
身長:164センチ
右ボクサーファイター
◎那須川(25歳)/前日軽量:121ポンド(54.8キロ)
戦績:2戦2勝
キック通算:42戦全勝(28KO)
※各種のキック世界タイトルを総ナメ
身長:165センチ,リーチ:176センチ
左ボクサーファイター
◎前日軽量