チャレンジャーはリアル安牌? /通算12回目の大晦日で田中恒成戦以来のKO防衛を目論む - 井岡一翔 vs J・ペレス プレビュー -
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■12月31日/大田区総合体育館/WBA世界S・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 井岡一翔(志成) vs WBA6位 ホスベル・ペレス(ベネズエラ)
王者 井岡一翔(志成) vs WBA6位 ホスベル・ペレス(ベネズエラ)
6度守ったWBO王座を惜しげもなく捨てて、懐かしくも慣れ親しんだWBAに乗り換えた井岡が、新しいベルトの初防衛戦。
切望するファン・F・エストラーダ(WBC王者/115ポンド最強の評価を確立)との対戦交渉が暗礁に乗り上げてしまい、恒例となった大晦日興行(2018年から4年連続開催/5年目:通算12度目)もどうなるかと思われたが、上手いことピンチヒッターが見つかって一安心。
刺青を巡るJBCとの対立に続き、ドーピング違反(大麻を検出)に揺れた後、中谷潤人との指名戦回避に対する批判等々、ディフェンスを中心とした技術力への高い評価とは裏腹に、井岡の周辺は何かと騒がしく落ち着かなかった。
新たに用意されたチャレンジャーが無名ということもあり、掛け率は圧倒的な差で井岡支持。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
井岡:-2000(1.05倍)
J・ペレス:+800(9倍)
<2>betway
井岡:-2000(1.05倍)
J・ペレス:+900(10倍)
<3>ウィリアム・ヒル
井岡:1/20(1.05倍)
J・ペレス:8/1(9倍)
ドロー:20/1(21倍)
<4>Sky Sports
井岡:1/25(1.04倍)
J・ペレス:17/2(9.5倍)
ドロー:20/1(21倍)
今月21日の公開練習では、終了後のプレス対応でKO宣言も飛び出すなど、表情にはいつも以上の余裕が感じられる。
調整ミスに関する心配はまず無い。敢えて問題を探すとすれば、過去の試合映像も含めて、挑戦者の情報が少ないことぐらいだろうか。
つまびらかにはわからないが、ベネズエラのトップボクサーの多くがそうであるように、ペレスもまた豊富なアマチュア経験を有している。あくまで自己申告ベースではあるが、一応130戦を超えているとのこと。
限られた映像で確認できるリング上のペレスは、構えた姿も良く動きにもソツがない。しっかりガードを上げて肘を内に絞り、堅実に様子を見ていたかと思うと、前に出た左腕を下げて楽に構えつつ、挑発半ばの駆け引きを仕掛ける。
戦績だけを見ると、結構なパワーパンチャーを想像してしまいかねないけれど、1発の怖さは無い。悪くないスピードとタイミングを武器に、コツコツとジャブ&コンビネーションで削りながら、ポイントをまとめて行くボクシング。
アルテム・ダラキアン(ウクライナ)のWBAフライ級王座にアタックして、大差の0-3判定負けを喫した初挑戦(2020年2月)では、ノーガードのトリッキーなムーヴとクリンチワークも駆使する練達の王者を前にペースを手繰り寄せることが出来ず、中盤以降攻勢を強めながらも、ダラキアン独特のステップ&ボディムーヴとホールドに阻まれ、いい場面を作れないまま12ラウンズを終えた。
防衛疲れと言うより、パンデミックによるブランクに続く、母国を見舞った深刻な戦禍の影響と見るのが筋ではないかと思うが、調子を落とす前のダラキアンの試合運びに一日の長を認めざるを得ない。
帰国して全敗と負け越しのアンダードッグを2人続けて瞬殺したペレスは、11勝3敗の同国人を4回KOに屠り、およそ5年ぶりにナショナルタイトルを獲得(フライ級とS・フライ級の2階級制覇)。2016年デビューのプロ7年生に、ベテランの呼称は重過ぎて似合わないけれど、ボクシングは相応にこなれていてセンスもある。
ダラキアンに対して直線的に突っかける場面が多く、井岡が苦手にするフィジカルの強さとしつこさはさほどでもない。敢えて不安要素を求めるなら、ペレスがうるさく出入いりを繰り返し、来ると見せて来ず、押しては引いて、左右の揺さぶりをかけて来るパターン。
井岡の実直な正攻法は、ダラキアンに比べればわかり易く捉え易いと言えなくもない。S・フライに上げてからの井岡のディフェンスは、国内のファンが思うほどの鉄壁ではなく、カウンターを狙うが故に被弾は増えている。
ペレスの反応が案外しっかりしていることもあって、無策(失礼)の田中恒成ほど簡単ではないと見ることも可能・・・ではあるものの、マックウィリアムズ・アローヨを一瞬で切り倒した畢生の右ストレートよ今一度。
国内引退の最終手段に打って出て、実父と叔父の下を飛び出し、退路を完全に断って単身渡米。「SuperFlyシリーズ」への参戦を実力と覚悟で引き寄せたあの一戦こそ、ミニマム級時代の八重樫東戦を凌駕する、プロボクサー井岡一翔のベストバウトと信じて疑わない。
30代半ばに差し掛かり、勤続疲労も見え隠れする昨今の井岡に、5年前の切れ味と冴えを求めるのは酷かもしれないが、エストラーダとフェルナンド・マルティネス、あるいは、エストラーダ戦の話が持ち上がっているバム・ロドリゲス(やはり出戻り?)の誰とやっても、脳裏に浮かぶのは厳しい結果ばかり。
とりわけ”パワーハウスタイプ”のマルティネスとロドリゲスは、井岡にとって最も相性が悪くリスキー。井岡に負けず劣らず長年の疲労が顕在化しつつあり、インサイドワークの応酬を軸にした駆け引き合戦が望める万能型のエストラーダの方が、まだ噛み合うとの陣営の読みは当たらずとも遠からず。
ただそのエストラーダにしても、いざとなれば”マチズモ”を全開にして、迷うことなく強打を振るって襲い掛かってくる。
何にしても、フィジカル&メンタル両面のタフネスを誇るメキシカンは、井岡にとって最大の鬼門と承知するべし。
◎井岡(34歳)/前日計量:114.6ポンド(52キロ)
現WBA S・フライ級(V0),前WBO J・バンタム級(V6/返上),元WBAフライ級(V5),元WBA L・フライ級(V3).元WBA/WBC統一ミニマム級(V3)王者
戦績:33戦30勝(15KO)2敗1分け
世界戦通算:24戦21勝(10KO)2敗1分け
アマ通算:105戦95勝 (64RSC・KO) 10敗
興国高→東農大(中退)
2008年第78回,及び2007年第77回全日本選手権準優勝
2007年第62回(秋田),及び2008年第63回(大分)国体優勝
2005年第60回(岡山),及び2006年第61回(兵庫)国体優勝
2005年第59回,及び2006年第60回インターハイ優勝
2005年第16回,及び2006年第17回高校選抜優勝
※高校6冠/階級:L・フライ級
身長:164.6センチ,リーチ:166センチ
※ドニー・ニエテス第2戦の予備検診データ
右ボクサーファイター
◎ペレス(28歳)/前日計量:114.6ポンド(52キロ)
戦績:23戦20勝(18KO)3敗
アマ戦績:約130戦(勝敗詳細不明)
ベネズエラ国内選手権6回優勝
※階級及び年度不明
身長:165センチ
右ボクサーファイター
◎前日計量(ABEMA公式)
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■リング・オフィシャル
主審・副審:未発表
立会人(スーパーバイザー):ホセ・オリヴィエ・ゴメス(パナマ/WBAランキング委員)