タンク vs キング /軽中量級の勢力図を左右する大一番が実現 - G・ディヴィス vs R・ガルシア ショートプレビュー -
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■4月22日/T-モバイルアリーナ,ラスベガス/S・ライト級(136ポンド)契約12回戦
WBAライト級正規王者 ジャーボンティ・ディヴィス(米) VS 元WBCライト級暫定王者 ライアン・ガルシア(米)
WBAライト級正規王者 ジャーボンティ・ディヴィス(米) VS 元WBCライト級暫定王者 ライアン・ガルシア(米)
Gervonta Davis vs. Ryan Garcia Press Conference Highlights
※フル映像:ファイナル・プレス・カンファレンスhttps://www.youtube.com/watch?v=Py32E_OqlBw
ライト級の今後を左右する対決が、いよいよ本番当日を迎えた。
契約ウェイトの136ポンド(135ポンドのリミット上限+1ポンド)について、既に140ポンドのS・ライト級で試運転を終えているガルシアに不利な条件を譲らなかったことについて、批判的な意見が聞こえて来るのは仕方がない。
3階級制覇の看板欲しさに、ディヴィスも1試合だけ140ポンドで戦っている。2年前の2021年6月、S・ライト級のWBAレギュラー王座を持っていたマリオ・バリオスに挑戦して、11回TKOに屠っている。
公称183センチのバリオスは、同じく178センチのガルシアよりさらに大きい。がしかし、フィジカル・パワーはともかく、バリオスにはガルシアに匹敵するスピードと1発の破壊力がなかった。
サイズに加えて、抜きん出たスピード&1発(左フック)を併せ持つガルシアと、140ポンドでやる選択肢はない。ウェイト・ハンディ無しでは戦えないと、ディヴィスは自ら公言したに等しい。
135ポンドの正規ウェイトでやるとなれば、ディヴィスが保持するWBAレギュラーのベルトが懸かる。135.1ポンド超の契約なら、負けても丸腰にならずに済む。20世紀のチャンピオンは、防衛戦の合間に数多くのノンタイトルを挟んで、チューンナップを兼ねて稼ぐのが当たり前だったが、それらは当然キャッチウェイトであり、実際に負ける場合も少なくなかった。
そこまでベルトに執着しているのか、ディヴィスの本音はよくわからないけれど、「そう見えてしまう」のはこちらもまた致し方がない。
そして、この条件を呑まなければ交渉がまとまらないことをガルシアも十分過ぎるほどわかっていたから、調整の難易度が増すのを承知の上で敢えてリスクを取った。大きなチャンスに大きなリスクは付きもの。「ビッグマネー+確固たるポジション:という大きなリターンを、ガルシアは逃したくなかった。
「(対等な立場だなんて)勘違いするなよ。試合をやるかやらないか、決定権を握っているのはオレ様だ。」
形の上では3階級制覇を達成して、ガンボアとサンタクルス、ホセ・ペドラサにイサック・クルス、そして直近のエクトル・ガルシア(今年1月/9回TKO勝ち)ら、倒した現役・元世界王者は十指に登る。
一方ガルシアの最も大きな戦果は、WBC暫定王座を獲得したルーク・キャンベル(ダウンを挽回して7回TKO勝ち)と、昨年7月に6回KOで蹴散らしたハビエル・フォルトナの2人。世界タイトルホルダーはフォルトナだけだ。
「契約書にサインをした以上グズグズ言うな。負けた時の言い訳には使えないぜ。」
上から目線でガルシアを見下ろすディヴィスが、どうしたってヒールの役回りになる。これは、両雄の外見(失礼)だけの問題ではない。
交渉の開始からアンダードッグの立場に甘んじ続けるしかなく、再戦条項に関わる無理難題(※)だけは譲ることなく、辛抱強く粘りに粘って条件を変更させたデラ・ホーヤが、ファイナル・プレス・カンファレンスで遂に憤懣を爆発させた。
※再戦条項を巡るバトル:「ディヴィス陣営だけが再戦の権利を持つ」との付帯条件に激怒したデラ・ホーヤが強硬に反発。
◎Oscar De La Hoya comes out swinging in the final presser
「I look at Ryan and I know he's ready. I look at Ryan's team and they know he's ready.」
「I look at tank and he looks ready. but when I look at Tank's team's actions throughout the whole promotion, I am left to wonder do they really think this guy is ready.」
「Catch weights and rehydration clauses, late afternoon weigh-ins, all of these small petty requirement points to a team that looks to protect. 」
「Their fighter and why would they protect. Their fighter unless they don't think maybe he's not ready for this moment.」
「Ryan who was so hungry, so willing, so ready, for this stage that he simply said yes to every request no matter what it was.」
「That is a confident fighter.」
ちょっと長いけれど、まとめてみよう(意訳)。
「ライアンと彼のチームは準備万端だ。タンク(ディヴィス個人)も準備万端に見える。だが、タンクのチームはどうだ?」
「キャッチウェイトに始まり、水分補給条項に午後遅い時間帯の計量(前日計量は午後の早い時間帯に行うのが一般的)等々、細かいことをあれこれあげつらう。」
「要するに、タンクのチームは自信がないんだ。まともにやったら勝ち目はない、時期尚早(準備が間に合わない)だってね。じゃなきゃ、過剰なプロテクトの説明がつかない。」
「ライアンはハングリーで、待ち望んできた大きなステージが目の前にあり、準備は整っている。だから、どんな要求にも動じない。答えは1つ(イエス)。即答だった。」
「まさしく、自信に満ち溢れたファイターそのものだ。」
ゴールデン・ボーイの次に演壇に呼ばれたのは、メイウェザー・プロモーションズのCEO,レナード・エラーブ(エラービ:Leonard Ellerbe)。ほんの少しだけとは言え、内幕をバラされてカチンときたのは明らかで、「1000パーセント、タンクがKOで勝つ。1000パーセントだ。」と反論。
◎LEONARD ELLERBE GOES OFF ON OSCAR DE LA HOYA AND RIPS HIM SAVAGELY!
「オスカーには余裕がない。一杯一杯だな(何故そんなにいきり立つ?。自信がないのはお前らだろ?)。」
デラ・ホーヤの過去(女性の下着を着けた写真をバラまかれたスキャンダルと薬物依存の発覚,その後のリハビリ)と、右腕リチャード・シェーファーの造反に端を発した支配下選手の大量離脱(引き抜き)を暗に示唆しながら、「(GBP傘下の)ファイターたちとフロイド(とシェーファー)が逃げ出したのは、お前が眠り(遊び)呆けていたからだ!」とやり返す。
当のエラーブも含めて、触れられたくない過去が1つもない人間などいない筈だが、恥ずかしくも悔しい負い目をモロに突き返されてしまい、憮然とした表情も露のデラ・ホーヤは動揺を隠し切れず、予期せぬ舌戦は傷み分け。
再戦を主張する権利を除き、ディヴィス陣営が出してきた条件をほとんど丸呑みするしかなったゴールデン・ボーイ。どんな内容と結果になるにせよ、どちらが勝ってもリマッチは無いというのが、現時点での率直な印象ではある。
早い時間帯のバッティングとか、互いにヒートアップし過ぎて反則の応酬になった挙句のノーコンテストとか、アクシデントやトラブル絡みでもどうだろう。
良好なPPVセールス(85万件と伝えられている)に気を良くしたスティーブン・エスピノーザ(Showtimeのスポーツ・イベント部門を統括/GBPの元顧問弁護士)が、二匹目のドジョウを狙って両陣営をせっついたとしても・・・?。
ちなみに両選手のギャランティは以下の通り。
・ディヴィス:500万ドル+PPVインセンティブ
・ガルシア:250万ドル+PPVインセンティブ
※PPVインセンティブ:2人の取り分を50-50で折半
HBOのボクシング中継撤退に伴い、スペイン語の放送も行っているESPNではなく、2016年に設立された新興勢力DAZNと手を結んだデラ・ホーヤは、DAZNのバックアップを得て米国進出に打って出たエディ・ハーンと堅い握手を交わし、「PPVは死んだ(時代はサブスク)。」と言い放った。
そのデラ・ホーヤが、ディヴィスの大遅刻(およそ2時間)で幕を開けたキック・オフ・カンファレンス(3月日/N.Y.)の席上、「(ボクシング中継に)PPVの時代が再び戻って来るかもしれない」と述べている。
「いったいどの口で・・・」
舌の根も乾かずとは良く言ったものだが、ケーブルTVを基盤にしたPPVに対するデラ・ホーヤの思い入れは、実はひとかたならぬものがある。
モハメッド・アリ(サッカーの王様ペレとともに)が確立した「衛星中継+クローズド・サーキット」の新しいビジネス・モデルにより、スポーツ・イベントの経済基盤が根底から一変した70年代。
そして80年代初頭、中量級BIG4(レナード,ハーンズ,ハグラー,デュラン)の熾烈なライバル争いを軸に、PPVは本格的なスタートを切る。
ケーブル網の整備と拡充に成否のカギを握られ、まだまだ先行きが不透明だったPPVを、ヘビー級に出現したKOモンスター,マイク・タイソンが爆発的な成功へと導く。
タイソンが試合をやるというだけで、対戦相手に関係なく100万件超の申し込みが殺到。少しでも苦戦が予想されたり、ファンの耳目を集める強敵・難敵とのマッチアップになると、セールスは200万件に迫る勢いを見せた。
タイソンのギャランティは天文学的な数字にまで跳ね上がり、アリがそうだったように、オポーネントに支払われる報酬もウナギ上りにアップ。しかし、最大の後ろ盾だった高齢のカス・ダマトをプロ入りまもなく失ったタイソンは、気代の悪女(?)ロビン・キヴンズとの結婚(あっという間に離婚)に続き、ダマトが忌み嫌ったドン・キングの策略に絡め取られるや否や、あっという間に短い全盛を滑り落ちる。
そしてアイアン・マイクの後を引き継いだのが、バルセロナ五輪(1992年)のボクシング米国代表チームに唯一の金メダルをもたらし、ボブ・アラムのスカウトに応じて鳴り物入りで登場したデラ・ホーヤだった。
PPVの旨味と過酷(巨額のギャラと引き換えに実力者との連戦が続く)、光と影を存分に味わい尽くしたデラ・ホーヤは、フロイド・メイウェザー・Jr.とマニー・パッキャオの2人に敗れてその座を譲り、実戦のリングを去っている。
裏切り者(デラ・ホーヤから見れば)のシェーファーの手引きで、ウェルター級を中心とした大量のトップボクサーをGBPから引き抜いたアル・ヘイモンは、Showtimeの強力な支援を背にPBCを立ち上げた。
HBOがボクシングから手を引くからと言って、Showtimeに鞍替えすることはできない。その場合、ESPNが唯一と言っていい選択肢になるのだが、かつて蜜月の関係だったアラムが一足早く話をつけてしまう。
収益の多くをサッカー中継に依存していたネット配信のDAZNは、幸いなことにボクシングにも積極的で、大看板になり得るスターを探していた。ヘビー級のアンソニー・ジョシュアを保有するエディ・ハーンを引き込むと、メイウェザーからPPVセールス・キングの座を継承した中量級の雄,カネロ・アルバレスに目を付ける。
中心選手を根こそぎもって行かれたデラ・ホーヤだが、米本土におけるカネロのプロモート権は手放していなかった(現在は離反)。ESPNも喉から手が出るほどカネロを欲しがったと思うが、世界中を驚嘆させた超努級の大型契約を提示したDAZNで決着。
「夢よもう一度・・・」
デイヴィス vs ガルシアの着地(経済的な成否)次第になるけれど、あわゆくばShowtimeとの元サヤも有りか。デラ・ホーヤの気持ちがグラグラ揺れ動いたとしても、単順性急な批判は憚られる。
◎ALL ACCESS: Gervonta Davis vs. Ryan Garcia Ep 1
という訳で、この対戦を本気で模索し始めた両陣営は、「2023年最大のイベント,メガ・ファイト」だと喧伝してきた。
ファイナル・プレッサーの冒頭、PBCを代表するプロモーター,トム・ブラウンは、この試合をかつての「ハグラー vs ハーンズ」になぞらえた上で、「我々はハグラー(ディヴィス)を持っている」と胸を張った。
幾ら何でもこれは言い過ぎ。大注目のカードではあるが、ハグラーとハーンズに肩を並べるのはおこがましい。
網膜はく離を理由に引退したレナードが、3年に及ぶブランクにもかかわらず、ハグラーへの挑戦(未経験のミドル級への増量)を決める際、使用グローブからリングのサイズに至るまで、徹底的な条件闘争に明け暮れる。
とりわけこだわったのがラウンド数。スタミナに不安を抱えるレナードは、当時WBCだけが独断専行していた12ラウンド制にこだわった。
「王様か独裁者にでもなったつもりか?。何から何まで自分の思い通りにならなきゃ、オレとは戦えないってわけだ。ボクシングは男と男の勝負だとオレは思ってきたし、今もそれは変わっていない。だが、ヤツはそうじゃなかったってことさ。ヤツのいいようにすりゃあいいさ。オレは試合さえできればそれでいい。何でも言ってくれ。全部OKだ。」
半ば呆れ顔でハグラーはそう語っていた。
生涯の宿敵ファン・M・マルケスに衝撃的なKO負けを喫するパッキャオを目撃して、ようやく対決に舵を切ったメイウェザーの条件闘争も酷かったが、ディヴィスも確実に男を下げた。トム・ブラウンは根本的に間違っている。
ハーンズを3ラウンドで破滅させたハグラーのように、ガルシアを圧倒して欲しいという願望はわかるが、あれこれ条件を付けた側のディヴィスが、徹頭徹尾のアウェイに追いやられたハグラーであっていい訳がない。
今回のディヴィスは、てんこ盛りのホーム・アドバンテージに浴したハグラー戦におけるレナードであり、パッキャオ戦を承諾したメイウェザーの立場になる。優位なポジションと影響力をこれでもかと総動員して、負けない為の環境を徹底して作り上げる。
ラスベガス(メイウェザー一家の総本山)での開催は、環境作りの最も重要な根幹。メイウェザーさながらの安全運転に徹するディヴィスを見る可能性は、絶対にないと断言し切れない。
スポーツブックのオッズは、キック・オフ当初から一貫してディヴィス。直近の数字をご紹介しておく。
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
デイヴィス:-200(1.5倍)
R・ガルシア:+175(2.75倍)
<2>betway
デイヴィス:-211(約1.47倍)
R・ガルシア:+195(2.95倍)
<3>Bet365
デイヴィス:-230(約1.43倍)
R・ガルシア:+135(2.35倍)
<4>ウィリアム・ヒル
デイヴィス:2/5(1.4倍)
R・ガルシア:19/10(2.9倍)
ドロー:16/1(17倍)
<5>Sky Sports
デイヴィス:2/5(1.4倍)
R・ガルシア:2/1(3倍)
ドロー:20/1(21倍)
◎ALL ACCESS: Gervonta Davis vs. Ryan Garcia Ep 2
肝心の試合展開だが、ディヴィスはバリオス戦と同じやり方を採る公算が大。長身のオーソドックスが打ち下ろすワンツーを待ち、引き手の戻りに合わせて鋭く飛び込み、下から左右のストレートを刺し込み、独特かつ強烈なアッパーをカチ上げる。
◎試合映像:マリオ・バリオス戦ハイライト
S・フェザー時代のパワープレス一辺倒ではなく、出はいりのボクシングを基本にして、前後左右に良く動きながらガルシアの左(フック,ジャブ=生命線)をかわしつつ、全盛のパックマンよろしく迷いなく一気に踏み込んで強打を打ち込む。
煩い出はいりとクリンチ&ホールドによる時間潰しを繰り返し、ガルシアをイラつかせて攻防が粗雑になるのを待ち、カウンターのタイミングとチャンスを拡げて行く。KOするにこしたことはないが、僅差判定でも全然OK。
内容がどうであれ勝てばいい。後は勝ち逃げを決め込むだけ。接近した展開のまま12ラウンズを終えて、ファンと関係者から判定に文句が付いて、ガルシアとデラ・ホーヤが何をどう言おうが知ったこっちゃない。
そしてアンダードッグのガルシア。こちらは、直近のフォルトナ戦が格好のケース・スタディ。
速くて強い左リードを数突いて、小柄なサウスポーの接近を簡単に許さない。単発ではなく、ダブル・トリプルでガードの内・外を打ち分ける中、瞬時に必殺の左フック(自慢のサンデーパンチ)に切り替える。
2018年10月から合流したチーム・カネロとの関係を清算し、アメリカを代表するベテラン・トレーナーの1人,ジョー・グーセン(今年度の殿堂入り/2014年に64歳で早逝したプロモーターのダン・グーセンは実兄:ダンも2020年に殿堂入り)を新たなチーフに招いたガルシアは、左腕を下げるヒットマン・スタイルを修正。
しっかりガードを保持する時間を増やし、制空権を維持する為に、ディフェンスの軸に据えてきた小さ目のスウェイ(単なる癖?)だけでなく足で外す手間も惜しまない。
ステップアウトする際に両腕を長く伸ばす癖があり、同時にそれがワイドに広がってしまい、相手に反撃を許すきっかけになっていた。ルーク・キャンベルに喫したダウンも、このウィークネスを抜け目なく狙われている。
◎試合映像:ルーク・キャンベル戦ハイライト
大柄なキャンベルにはサイズのアドバンテージが普段通りに機能せず、距離を見誤った(平均的な135~140パウンダーならパンチが届き切らない/同じディスタンスでもキャンベルは届く)感もあるが、ガードを保持したままステップバックするか、真っ直ぐ下がらずに左右どちらかに回り込んでいれば、左ストレートを顎に貰わずに済んでいた。
グーセンはこの点も見逃すことなく、ちゃんと手をつけている。伸ばすにしても左腕1本だけにして、右の拳を顔(頬)の前でしっかりキープするようになった。
ただし、上半身の力だけで右ストレートを強振する悪癖は、フォルトナとやった時点(昨年7月)では手付かず。
しっかり下半身から踏み込んで打つなら問題はないけれど、足の位置をそのままにして、右のパンチをブンと振ってしまう。身長差があるお陰で、並みのローカル・ランカーならヒットして倒すこともできるが、一定の経験と攻防の基本が身に付いた相手にはかわされる場面も目立つ。
上体だけで振っているから、身体が硬直して顎が上がり、打ち終わりにそのまま右の拳が流れて、引き手も戻らない上に軸がブレてオフ・バランスになり易い。ディヴィス相手にこれを頻発すると、左ストレートか左右のアッパーで間違いなくやられる。
ガードをコンパクトに保って、ジャブをしっかり突けている間は、そう簡単にディヴィスも入っていけない。タンクは右フックも強いけれど、シャープネスに注力したジャブを続けていれば、まともに食う恐れはないだろう。
勿論、ディヴィスのディフェンスにも不安はある。強靭なフィジカル&パンチング・パワーだけでなく、スピード&アジリティにも優れたディヴィスは、最高水準ではないものの、黒人特有の柔軟性も兼ね備えており、「眼と勘」が守りの基本。
ハイリスクなクロスレンジに留まる時も、カバーリングに使うのはほとんど左腕のみ。昔に比べてレフティが増えたと言っても、主流はあくまで右構えだから、オーソドックスの右強打を対策する為に用いる。
堅実なブロック&カバーではなく、眼と勘(反応)の良さが必須となるローリング&スリッピング、上体のボディワーク(深いダックとスウェイ込み)で相手の攻撃をを外しながら、隙あらばリターンとカウンターを見舞うオールド・スクールのボクシング。
そしてさらに、いいパンチを貰うと打ち返さずにはいられない。本当に強いボクサーは例外なく気も強いが、強引に行ってもいい状況なのかどうか、一旦立ち止まって俯瞰し直す冷静さが極めて重要になる。
階級を上げるに従い、イケイケの荒ぶるディヴィスにも、経験値に相応しい慎重さが見られるようになった。それでも倒し続けている点は、もっと評価されて然るべき。
スリリングな打ち合い・倒し合いは、それこそプロボクシングが表現し得る最高の醍醐味ではあるけれど、安全策(見境のないクリンチ&ホールドではなく)との切り替えができるボクサーは、必要に応じて躊躇なく使い分けした方がいい。
無駄に打たれ(せ)ていい事は1つもないし、ダメージも残さない方がいいに決まっているからだ。何でもバランスが大事という話しになるが、動いている間のボディ・バランスにおいても、黒人だけに許された身体能力の高さが強味になる。
ただし、下から飛び込まなければならないディヴィスは、打ち込む際にどうしても顎が上がりがちになる上、ブロック&カバーに頼らない守りは大きな穴になり易い。
細身のエクトル・ガルシアだけでなく、背格好の変わらないイサック・クルスにも、一度ならずその穴をこじ開けられそうになり、コーナーとファンの肝を冷やした。ガルシアに同じことをやったら、命取りになる確率が格段に増す。
拙ブログの予想は、大きな大きな期待値を込みでキング・ライ。どうにかして僅少差の判定勝負に持ち込みたいが、それだと十中八九タンクに凱歌が挙がる。ガルシアが判定で勝つ為には、明白過ぎるぐらいのリードが必要。
そうなると、必然的に複数回のノックダウンが不可欠になり、ならばいっそKO(TKO)でとなってしまう。一進一退のシーソーゲームから徐々にガルシアが抜け出し、名だたる黒人ファイターたちのお株を奪う、アッパーとフックの中間軌道を通る左を放ち、決定的な場面を作って欲しい。
◎デイヴィス(28歳)/前日計量:135.1ポンド
現WBAライト級正規(V4),元WBA S・ライト級(V0/返上).元WBA S・フェザー級スーパー(第1期:V2/第2期:V0:返上),元IBF J・ライト級(V1/はく奪:体重超過)王者
戦績:28戦全勝(26KO)
アマ通算:206勝15敗
2012年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
ナショナルPAL優勝2回
ナショナル・シルバー・グローブス3連覇(ジュニア)
ジュニアオリンピック優勝2回
※アマ時代(シニア)のウェイト:バンタム級
身長:166(168)cm/リーチ:171(175)cm
※Boxrecの身体データが修正されている/()内はM・バリオス戦当時の数値
好戦的な左ボクサーファイター
◎ガルシア(24歳)/前日計量:135.5ポンド
元WBCライト級暫定(V0),元WBCライト級シルバー(V1)王者
戦績:23戦全勝(19KO)
アマ通算:215勝15敗
2016年ユース(U19)全米選手権優勝(ライト級)
2015年ユース(U19)全米選手権ベスト8(ライト級)
2014年ジュニア(U17)全米選手権準優勝(フェザー級)
身長:センチ,リーチ:センチ
右ボクサーファイター
■前日計量
■前日計量:フル映像
https://www.youtube.com/watch?v=ECw2Ax8lToo
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■リング・オフィシャル:未発表
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■キック・オフ・プレス・カンファレンス
<1>3月8日/ニューヨーク
https://www.youtube.com/watch?v=wVtznbT4904
<2>3月9日/ロサンゼルス
https://www.youtube.com/watch?v=I-9mu65I4sE