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■3月4日/トヨタ・アリーナ,カリフォルニア州オンタリオ/WBC世界フェザー級暫定王座決定12回戦
元WBA・WBC S・バンタム級王者/WBC1位 ブランドン・フィゲロア(米) VS 前王者/WBC2位 マーク・マグサヨ(比)





日本のファンに取っても注目度の高いマッチアップが、いよいよ本番当日を迎える。

開催地はオンタリオ?・・・と言っても、良く知られたカナダではなくカリフォルニア。ロサンゼルスとサンバナディーノの丁度中間辺りに位置する人口16~17万人の都市で、19世紀末にカナダ人の兄弟がこの土地を切り拓き、新しい街に生まれ故郷の名前をそのまま付けたのが呼称の由来。

会場のトヨタ・アリーナは1万人規模の収容が可能な多目的屋内施設で、フランチャイズにするプロスポーツチームはまだないらしいが、コンサートを始めとする大きなイベントはもとより、バスケ,アイスホッケーとともに、屋内競技の代表格としてボクシング興行も行われている。


昨年7月、アラモ・ドーム(テキサス州サンアントニオ)で当時ベルトを保持していたマグサヨから、なんとも微妙な2-1判定で王座を奪った正規王者レイ・バルガスが、3階級制覇を公言。チャンピオンのままS・フェザー級への進出を目論む。

同じく階級アップ(ライト級転出)を決めたシャクール・スティーブンソンが放棄した130ポンドのWBC王座決定戦に挑むことになり、1位のフィゲロアと前の王者で2位のマグサヨに暫定王座決定戦を承認した。

載冠を確実視されていたバルガスが、本番(先月11日)直前に126ポンドの返上を決めたとの一報があり、正規王座決定戦への格上げも取り沙汰されたが、伏兵オシャキー・フォスターによもやの大差0-3判定負けを喫してしまい(非常に好ましい結果)、2月16日に更新された最新の月例ランキングを見る限り、バルガスはフェザー級の王座に居座っている。
※WBCランキング(フェザー級)
https://wbcboxing.com/en/featherweight/


175センチの長身に恵まれたフィゲロアは、テキサス出身のメキシコ系米国人。大いに大成を期待された兄オマールとともに、実父オマール・シニアに幼い頃から仕込まれ鍛え上げられた。

無敗のままWBA S・バンタム級の暫定王座に就き、そのまま正規に昇格されると、日本人の怨敵ルイス・ネリーを荒ぶるインファイトで押し捲り、ボディの一撃で悶絶させWBC王座を獲得。

山中慎介に対する不埒極まる狼藉に加えて、我らが”リアル・モンスター”井上尚弥にも、あのカシメロに引けを取らない挑発を繰り返していた大口を塞いでくれたフィゲロアに、日本のファンは拍手喝采。不肖私めも心の底から歓喜し、とにもかくにも溜飲を下げまくった。


ネリー戦が特にそうだったと言う訳ではなく、甘いマスク&スマートな痩身を誇る(?)テキサスのニューヒーローは、繊細で脆そうな外見とは裏腹な徹底したインファイトを持ち味にする。

一気呵成に距離を詰めると、長いリーチをいささか窮屈そうに折り曲げ、密着したまま離れずに上下を叩きまくり、少々打たれたぐらいでは容易に音を上げない。

ディフェンスの穴はけっして小さいものではなく、スピードと瞬発力にも欠ける。口さがない物言いをご容赦いただけるなら、「被弾覚悟の肉弾戦」に活路を見い出す。

昨今のプロボクシングでは絶滅危惧種と表して間違いのない、典型的なラッシング・ファイターだ。スピード%シャープネスに才を発揮するディフェンシブな黒人のボクサータイプ(フルトンやシャクール,ヘイニー等々)とは、どうしようもないくらい決定的に相性が悪い。


ネリーのように打ち合ってくれる相手でないと良さを発揮できない上に、1発でし止め切れるだけの豪打者ではなく、一定水準以上のボクサーとやれば必ずラウンドが長引き、軽からぬダメージを負う。

フルトンとの2団体統一戦(スーパー王者アフマダリエフのいるWBAは統一戦を未承認=返上)は、相性を考えれば上出来も上出来。敗れたとはいえ、本当に良く頑張ったと賞賛されて然るべき。

世界のトップ戦線でどこまで身体と精神力が持つのか、引退後の健康にも不安が過ぎるリスキーな戦い方だが、それを自らの生き方にする以上止むを得ない。


そして、長身痩躯のボクサータイプ(バルガス)に僅差の割れた判定を失い、ゲイリー・ラッセル・Jr.から番狂わせで奪った王座を防衛できなかったマグサヨは、この試合がプロ初黒星からの復帰戦。2試合続けて長身とやるのは、却って都合がいいとの見方もあるようだ。

チャンピオンになって以来、あられもないクリンチ&ホールドで接近戦を回避し、露骨に乱戦を嫌う弱腰がファンの失望を買ったバルガスだが、126ポンドで調整したマグサヨ戦では、修行時代に見せてくれた強打が復活。

簡単に引き下がらずにパワーで応戦する姿を見て、「ステロイド使用はもっての外。でも、減量が負担になっていたのは事実」なのだと実感した。

本調子を取り戻したバルガスに臆せず立ち向かい、右のオーバーハンドで繰り返しヒットを奪ったマグサヨも天晴れ。


直近のオッズは、いずれもフィゲロア押し。

Brandon Figueroa vs Mark Magsayo
□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
フィゲロア:-375(約1.27倍)
マグサヨ:+225(3.25倍)

<2>5dimes
フィゲロア:-265(約1.38倍)
マグサヨ:+225(3.25倍)

<3>betway
フィゲロア:-225(約1.44倍)
マグサヨ:+180(2.8倍)

<4>ウィリアム・ヒル
フィゲロア:4/9(約1.44倍)
マグサヨ:15/8(2.875倍)
ドロー:14/1(15倍)

<5>Sky Sports
フィゲロア:4/11(約1.36倍)
マグサヨ:9/4(3.25倍)
ドロー:16/1(17倍)





カリフォルニアはメキシカンとメキシコ系のボクサーのホームであり、競った展開のまま終了ゴングが鳴った場合、マグサヨの勝ちはまずない。

明確に勝ち切る為には、テン・カウントのノックアウトか、どこからも文句の出ないレフェリーストップが望まれる。バルガス以上に正面から打ち合ってくれる分、マグサヨにも決定機のチャンスは増す。

だからと言って、タフなフィゲロアを倒すのはやはり難しい。確率的には10パーセントもないだろう。


マグニフィコの本領が如何なく発揮されることを、切に切に願う。


◎フィゲロア(22歳)/前日計量:125.8ポンド
前WBA S・バンタム級正規(V1),元WBC同級(V0)王者
戦績:20戦23勝(18KO)1敗1分け
アマ戦績:不明
身長:175センチ,リーチ:183センチ
左ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)


◎マグサヨ(27歳)/前日計量:126ポンド
※1回目の計量で0.8ポンド(約360グラム)オーバー(126.8ポンド)/*数分後に再計量を行いリミットをクリア
前WBCフェザー級王者(V0)
戦績:25戦24勝(16KO)1敗
アマ戦績:不明
※ジュニア時代にフィリピン国内の全国トーナメントで複数回の優勝経験有り
身長:168センチ,リーチ:173センチ
右ボクサーファイター