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2023年02月

カテゴリ:
■5 or 6月/日本国内(?)/WBC・WBO世界S・バンタム(122ポンド)級タイトルマッチ12回戦
2団体統一王者 スティーブン・フルトン(米) vs 前4団体統一バンタム級王者/WBO1位 井上尚弥(日/大橋)

リアル・モンスターが進出する122ポンドの現状について、簡単におさらいしてみよう。まずは最新の世界ランキングから。

主要4団体の世界ランキング(122ポンド/11位以下は割愛・省略)

主要4団体の世界ランキング(122ポンド)
  WBA
(2023年1月31日更新)
呼称:S・バンタム級
WBC
(2023年2月16日更新)
呼称:S・バンタム級
IBF
(2023年2月11日更新)
呼称:J・フェザー級
WBO
(2023年2月14日更新)
呼称:J・フェザー級
C ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
1位 空位 井上尚弥
(日/大橋)
マーロン・タパレス
(比)
井上尚弥
(日/大橋)
2位 亀田和毅
(日/TMK)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
空位 ライース・アリーム
(米)
3位 ケヴィン・ゴンサレス
(メキシコ)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
4位 シャバス・マスゥド
(Shabaz Masoud/英)
アラン・デヴィッド・ピカソ
(メキシコ)

ライース・アリーム
(米)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
5位 エフゲニー・パヴロフ
(カザフスタン)
ライース・アリーム
(米)
井上拓真
(日/大橋)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
6位 ヘクター・バルデス
(米)
チャイノイ・ウォラウット
(Chainoi Worawut/タイ)
カール・J・マルティン
(比)
サム・グッドマン
(豪)
7位 ラファエル・ペドロサ
(パナマ)
カルロス・カストロ
(米)
サム・グッドマン
(豪)
ムハンマド・シェホフ
(ウズベキスタン)
8位 マックス・オルネラス
(米)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
赤穂亮
(日/横浜光)
※引退を表明
9位 オーレ・ドゥフン
(Oleh Dovhun/ウクライナ)
リアム・デイヴィス
(英)
ルドゥモ・ラマティ
(南ア)
カール・J・マルティン
(比)
10位 イスラエル・ロドリゲス
(メキシコ)
武居由樹
(日/大橋)
亀田和毅
(日/TMK)
亀田和毅
(日/TMK)

主要専門サイトのランキング(122ポンド/承認は10位まで)

主要専門サイトのランキング(122ポンド)
  リング誌
(2023年2月18日更新)
呼称:J・フェザー級
TBRB
(2023年1月9日更新)
呼称:J・フェザー級
ESPN
(2023年2月21日更新)
呼称:J・フェザー級
Boxrec
(随時更新)
呼称:S・バンタム級
C 空位 空位
(※)

(※)
1位 スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
スティーブン・フルトン・Jr.
(米)
2位 ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
3位 ルイス・ネリー
(メキシコ)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
4位 ライース・アリーム
(米)
ライース・アリーム
(米)
ライース・アリーム
(米)
ムロジョン・アフマダリエフ
(ウズベキスタン)
5位 アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
井上拓真
(日/大橋)
アザト・ホヴァニシアン
(アルメニア)
マーロン・タパレス
(比)
6位 マーロン・タパレス
(比)
マーロン・タパレス
(比)
井上拓真
(日/大橋)
カルロス・カストロ
(米)
7位 ロニー・リオス
(米)
ルイス・ネリー
(メキシコ)
ゾラニ・テテ
(南ア)
ライース・アリーム
(米)
8位 ゾラニ・テテ
(南ア)
ゾラニ・テテ
(南ア)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
井上拓真
(日/大橋)
9位 マイク・プラニア
(比)
ジョンリエル・カシメロ
(比)
マーロン・タパレス
(比)
ロニー・リオス
(米)
10位 井上拓真
(日/大橋)
ケヴィン・ゴンサレス
(メキシコ)
ロニー・リオス
(米)
リアム・デイヴィス
(英)

主要専門サイトのランキングについて(補足)

  1. 「TBRB(Transnational Boxing Rankings Board)」は、リング誌元編集長のナイジェル・コリンズ,クリフ・ロールド(Boxing Sceneの主任記者)らが中心となって、2012年に立ち上げランキング制定機関。
  2. オスカー・デラ・ホーヤ率いるゴールデン・ボーイ・プロモーションズ(が傘下に収める出版社)によるリング誌の買収を巡り、編集長を辞任(事実上の解任とされる)したコリンズが、ランキングの策定も含めた編集方針に対するプロモーターの圧力は不可避だとして、「真に中立的な立場を担保されたランキング」の必要性を訴えた。
  3. 最大の問題は、ランキングの更新が不定期なこと。月次のアップデートができていない。ランキングの透明性と信頼性を高めることを目的として、ボードを構成するメンバーが各国に多数いることも、定期更新を難しくしているのかもしれない。
  4. Boxrecは、登録されたボクサーのレコード(勝敗)を細かく分類し、自動的にポイントに変換・集計を行い、順位を付ける仕組みを作り上げた。
  5. 対戦時点での持ち点(リアルタイムでの総得点)を基準にして、独自の係数でポイントに反映させているらしい(持ち点の多寡により勝敗と連動する獲得ポイントが変動)。
  6. 世界戦を筆頭に、タイトルマッチの構成比が高いほどポイントも上がり易くなっている模様。
  7. 最大の問題点は、そもそもの基準となるポイント計算に、対戦相手の実力が正当に反映されていると言いづらいこと。世界タイトルの乱立に加えて、大量に発生した水増しランカー等の問題は一切考慮されない為、弱い相手を選んで数多く試合を組みKO勝ちを続け、認定団体が承認するいい加減な地域タイトルの獲得・返上を繰り返すことで、相応にポイントは上昇する。


Part 4 へ続く

フルトン VS 井上尚弥が合意へ Part 2 - 手ぐすねを引いて待つ(?)S・バンタム級トップ -

カテゴリ:
■5 or 6月/日本国内(?)/WBC・WBO世界S・バンタム(122ポンド)級タイトルマッチ12回戦
2団体統一王者 スティーブン・フルトン(米) VS 前4団体統一バンタム級王者/WBO1位 井上尚弥(日/大橋)

”ナオヤ・イノウエ争奪戦”。

118ポンドの覇者が雄々しく高らかに宣言した階級アップの一報を受け、年明け早々の122ポンドが色めき立つ。

「こっ酷く打たれるのだけはご勘弁・・・」

専守防衛に閉じこもるのが精一杯のポール・バトラーを11ラウンドで完全に粉砕し、4つ目となるWBOのベルトを巻いた井上を、WBOはスーパー王者に認定(昨年12月20日付け)しただけでなく、1月14日に公表した最新の月例ランキングで、J・フェザー級(IBFとWBOは旧来の呼称を継承)の1位に据えた。

「えっ?。また正規王者決定戦をやるの?」

暫定もレギュラーも休養もいない、正真正銘の完全制覇を果たしたばかりなのに、「この期に及んで、WBOはまたぞろ正規王者をデッチ上げるつもりなのか?。余計なことを・・・」とお嘆きになる方がおられるやもしれない。

だがご安心を。WBOのスーパーチャンピオンは名誉の称号であり、新たにレギュラーチャンピオンを作る愚は冒さない(今のところは)。乱造乱発で正規との並立が常態化していた暫定王座とともに、何かと悪名が高いWBAのそれとは違う。

ちなみに、WBOのみでM・フライ(ミニマム)~フライ級までの3階級を獲った田中恒成も、同じ栄誉に浴している。

Murodjon_Inoue1


そして「井上転級」の一報に素早く反応したのは、WBAとIBFの2冠を保持するもう1人の主役,ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)も同じ。

ご本人直接のコメントではなく、エディ・ハーン(プロモーター)の発言ではあるものの、リアル・モンスターの参戦に歓迎の意向を示しているとのこと。

◎エディ・ハーンの発言に関する記事
<1>Hearn: Akhmadaliev Would Have Absolutely No Problem Fighting Inoue For Undisputed
2023年2月8日

<2>Eddie Hearn Won’t Block Naoya Inoue Vs. Murodjon Akhmadaliev For Undisputed At 122 This Year
2023年1月29日/Boxing News24

<3>Hearn: “Inoue Against Akhmadaliev Is An Unbelievable Fight!”
Eddie Hearn Says Team Akhmadaliev Wants To Fight Naoya Inoue!
2023年1月19日/3KING BOXING WORLDWIDER
https://3kingsboxing.com/eddie-hearn-akhmadaliev-wants-inoue-fight/


2019年4月以来、同胞のシャフラム・ギヤソフ(リオ五輪ウェルター級銀メダル/プロ13連勝9KO)と一緒に”MJ”を獲得(ロシアの主要なファイターを傘下に置くプロモーター,アンドレイ・リャビンスキー,同じくロシアの若き敏腕マネージャー,ヴァディム・コルニリョフとの共同プロモート)したエディ・ハーンが、「2人のマッチアップに障害は無い。マーロン・タパレスとの指名戦(IBF/4~5月中の開催を予定)を終えれば、何時でも交渉をスタートできる。」と断言。

フルトンのケースと完全に共通するが、常に争点の中心となる放映権(ESPN VS DAZN)の問題は、「然るべき額での金銭譲渡で解決できる」との判断を示している。

「フルトンと井上の交渉が不調に終るようなら、我々はすぐに動くことが可能だ。タパレス戦の後にはなるが、そう遅くない時期にやれるだろう。」


また、S・バンタムに上げる前から井上との対戦に積極的だったルイス・ネリーが、性懲りも無く名乗りを挙げている。

「イノウエは過大評価され過ぎだ。実際はそこまでのボクサーじゃない。オレとやればわかる。あっという間にメッキが剥がれるからな。」

2017年~2019年にかけて、事あるごとに挑発的なコメントを振りまいていた。短期間だったがフレディ・ローチと組んだ時期(ネリーのウェイトオーバーで幻に終ったエマニュエル・ロドリゲス戦に備えた体制一新/2019年11月)もあり、ローチと一緒に「井上恐るるに足らず」とぶち上げる映像もあった筈だ。


ステロイド使用と確信犯の体重超過で我らが山中慎介のキャリア最終盤にとんでもない泥を塗り付け、JBCから事実上の追放処分(日本国内開催の興行からの締め出し)を受けた後、WBCバンタム級の指名挑戦権を懸けたマニー・ロドリゲス戦でも同じ真似を繰り返し、懲りた様子もほとんど感じられない。

日本側の顔を立てる為に一定期間ランキングから除外していたWBCも、ネリーがS・バンタムへの増量を正式に表明(2020年2月)すると、すぐに1位に復帰させてアーロン・アラメダ(メキシコ/対戦当時WBC6位)との王座決定戦を用意している。

この時期正規王者のレイ・バルガスは、前戦の挑戦者フランクリン・マンサニージャに負けず劣らず、バッティング上等の押し合い&揉み合いを仕掛け続ける亀田和毅に手を焼きながらも、誰の目にも明らかな3-0判定に下してV5を達成(2019年7月/和毅の暫定王座も吸収統一)。


長身故に付いて回る体重維持の困難を訴えて、フェザー級進出に色気を出し始めていたところへ、2試合連続のラフ&ダーティ(大の苦手にする乱戦)で負った傷の治療、同年11月に発覚したドーピング違反、長らく世話になったゴールデン・ボーイ・プロモーションズ(DAZN)からPBC(Showtime)への乗り換えに足の負傷がかさなり、WBCは休養王者への横滑りを決定した(2020年8月/直後に空位:はく奪 or 返上)。

126ポンドの指定席(S・バンタムを放棄した場合即座に1位に据える)を横目で睨みつつ、好条件での復帰戦を模索するバルガスは、パンデミックの追い討ちを受ける格好で戦線離脱が続き、結果的にブランクは2年4ヶ月に及ぶ。

いずれにしても、WBCは余裕でネリーに決定戦を融通できる状況にあったということ。そして1年2ヶ月ぶりの実戦復帰となったアラメダ戦(2020年9月)では、バンタム級時代に発揮していた圧巻のパワーは影を潜めてしまい、大苦戦の末にポイント差が大きく割れた3-0の判定勝ち(118-110,116-112,115-113)を拾う。

こうしてWBA王者フィゲロアとの2団体統一戦が整い、周知の通りまったくいいところを見せることなく、テキサスのニューアイドルに押し捲られて7回TKO負け。サイズの不利も無関係ではなかったけれど、フィゲロアの左フックでレバーを抉られ悶絶するネリーの姿に、日本のファンは拍手喝采で大いに溜飲を下げた(2021年5月)。


昨年2月にセットされた再起戦は、アリゾナ期待の無敗のホープ,カルロス・カストロとのマッチアップ。170センチの長身痩躯を目一杯活かすボクサーに近いボクサーファイターだが、2021年8月の前戦では、ベテランのオスカル・エスカンドンを相手に頭をくっつけたプロのインファイトで応戦。不得手の白兵戦を敢えて選び、見事に勝ち残っている。

乱戦を嫌がる点はレイ・バルガスと良く似ていて、V字回復を目論むネリーには持って来いとも思われたが、エスカンドンを押し切ったフィジカルは想像以上に強く、そうは簡単に問屋は卸さないだろうと考えいたら案の定。

微妙なスプリット・ディシジョン(96-93,95-94,94-95)の後押しで、どうにかこうにかWBCシルバー王座を獲得したが、どうしようもないパフォーマンスの低下は明らか。


山中慎介の”ゴッドレフト”を潰す為にステロイドに手を出し、それが見つかると再戦では意図的な体重超過。118ポンドで見せた強さの源泉が、「PED+計量後の大幅なリバウンド」だったことを自ら証明してしまったに等しい。

流石にマズイと慌てた(?)チームは、昨年10月の再起第2戦で同胞のデヴィッド・カルモナを引っ張り出す。115ポンド時代の井上尚弥に有明で挑戦して、判定まで粘った勇敢なファイターを覚えておいでの方も多いだろう(2016年5月)。

モンスターとの奮戦を終えた後、カルロス・クァドラスにも善戦したが判定負け。その後階級をアップして、2017年以降バンタムとS・バンタムを行き来しながらキャリアを継続するが、ネリー戦を迎えた時点で7戦して2勝5敗。


負けた相手にはカル・ヤファイ(ロマ・ゴンに王座を追われた後バンタムへ上げた)も含まれるが、無名の中堅クラスに思うように勝てない。年齢は31歳で老け込むようなトシではないが、163センチ弱(162.3=井上戦の予備検診データ)のサイズも苦闘の要因。

自分より小さく最近は負けが込み、6年も前の話しにはなるが、モンスターの豪打に耐え抜いて12ラウンズをしのぎゴールテープを切っている。ノニト・ドネアとともに、16戦を数える世界タイトルマッチにおいて、モンスターがKOできなかった「たった2人の男」の1人。

かなり高い確率でKO勝ちが見込める上、首尾良くし止めることができれば井上戦のアピールにも何かと都合がいい。良く考えられたマッチメイクであり、陣営が望む通りの即決(3回)KOでネリーは試合を終わらせた。


今週末(明日)、アザト・ホヴァニシアン(アルメニア)とWBCの指名挑戦権を懸けて戦う予定のネリーが、リング誌のインタビューでまたぞろ何事かを喚き散らした(?)模様。

◎リング誌に掲載された記事
LUIS NERY WARNS AZAT HOVHANNISYAN: YOU WILL SEE THE FAST, AGGRESSIVE ‘PANTERA’ LOOKING FOR THE KO
2023年2月15日/Ring Magazine

「過大評価のされ過ぎは、ナオヤじゃなくてお前だろう?」

ついでに教えてやるが、S・フライ級時代のモンスターは試合の度に拳を傷めていた。減量苦による腰痛も抱えて、コンディショニングをやりくしながらの連続防衛だった。

カルモナ戦でも第2ラウンド早々に右の拳をやってしまい、まともに使えるのは左1本の状態で大差の判定勝ちを収めている。


アルメニアからカリフォルニアに移民してきたホヴァニシアンは、昨年9月モンスターがハリウッドのワイルドカードで行ったスパーリング合宿で手合わせ済み。ジャパニーズ・モンスターのパートナーに自ら名乗りを挙げたとのことで、モンスターを追い詰めたらしい(?)アダム・ロペスと並ぶ猛者たちの代表格。

ごく短く編集された映像ではあったが、NHKが4冠達成直後に放送したドキュメンタリーにその様子が収められていた。

Luis Nery_Azat Hovhannisyan
※後方の中央はお馴染みのオスカー・デラ・ホーヤ(興行を主催するプロモーター)


”クレイジーA”の異名を持つアルメニアのファイターは、レイ・バルガスに挑戦(2018年5月)して大差の0-3判定に退いてはいるものの、逃げ足の速い長身痩躯のクリンチワークに絡め取られて攻め手を塞がれ、ペースポイントを献上する現代のファイターたちが頭を悩ます典型的な負けパターン。真正面から打ち合ったら滅法強い。

この際だからホヴァニシアンにネリーを潰して貰い、煩いだけの口を塞いで欲しい。後半~終盤にかけてのストップでアルメニア移民の勝ちと読むが、実は崖っぷちのネリーが、PEDの助けを借りていないことを願うのみ。


◎ネリー VS ホヴァニシアン戦関連記事
<1>Luis Nery vs. Azat Hovhannisyan Finalized For February 18
2023年1月25日/Boxing Scene
https://www.boxingscene.com/luis-nery-vs-azat-hovhannisyan-finalized-february-18--172046

Azat Hovhannisyan: Luis Nery has my respect, but he’s in for a war
Azat Hovhannisyan is gearing up for a war against Luis Nery on Feb. 18.
2023年2月10日/Bad Left Hook



Part 3 へ続く

フルトン VS 井上尚弥が合意へ Part 1 - 転級初戦がいきなり最終ステージ? -

カテゴリ:
■5 or 6月/日本国内(?)/WBC・WBO世界S・バンタム(122ポンド)級タイトルマッチ12回戦
2団体統一王者 スティーブン・フルトン(米) VS 前4団体統一バンタム級王者/WBO1位 井上尚弥(日/大橋)

Fulton_Inoue 1

シャクール VS 吉野戦内定の速報に続いて、ESPNがまたまた特大のリーク。バトラー戦からちょうど1ヶ月を経た先月13日、4本のベルト返上とS・バンタム級への進出を正式に表明した井上尚弥が、その初陣でいきなりフルトンに挑戦・・・?。

来たる2月25日、122ポンドのベルトを保持したまま、126ポンドのWBC暫定王座を懸けたブランドン・フィゲロアとの再戦が内定(前戦に続くミネアポリス開催)と報じられていただけに、急転直下の感が否めないのも確か。

□Naoya Inoue, Stephen Fulton agree to 122-pound title bout
2023年1月19日/ESPN


リング誌が先月12日に掲載した記事では、フルトン VS ダニー・ローマン戦が行われたアーモリー(ミネアポリスにある8,400人収容の屋内競技場)が用意され、フルトン VS フィゲロア2を筆頭に、以下の2試合を含めた”トリプル・ヘッダー”と報じられている。

□STEPHEN FULTON-BRANDON FIGUEROA REMATCH LIKELY FOR FEBRUARY 25 ON SHOWTIME
2023年1月12日/Ring Magazine

◎IBF J・ウェルター級王座決定戦
IBF1位 ヘレミアス・ポンセ(亜) VS IBF2位 スベリアル・マティアス(プエルトリコ)

◎S・ライト級10回戦
エルヴィス・ロドリゲス(ドミニカ) VS ジョセフ・アドルノ(米)
※アンダーカード:未定

30連勝(20KO)のパーフェクト・レコードを更新中のポンセ(26歳)は、テレンス・クロフォードに続いて140ポンドの4団体を制圧したジョシュ・テーラー(英/スコットランド)への指名挑戦権を得ていたが、147ポンドへの階級アップを公表済みの統一王者は、2-1の判定を巡って紛糾したジャック・カテラル(英/イングランド)とのリマッチしか眼中にない。

カテラルとの決着戦が140ポンドのラスト・ファイトという訳で、指名戦の履行を求めるWBA(昨年5月),WBC(同7月),IBF(同8月)のベルトを相次いで返上。決定戦が行われたWBAとWBCは、以下の通り昨年中に新チャンピオンを承認済み。

※WBA:アルベルト・プエリョ(プエジョ/ドミニカ)
昨年8月20日,フロリダ州ハリウッドで2位のバティル・アフメドフ(ウクライナ)に12回2-1判定勝ち

※WBC:レジス・プログレイス(米)
昨年11月26日,カリフォルニア州カーソンで1位ホセ・セペダ(米)を11回KOで撃破。およそ3年ぶりとなる王座奪還に成功した。


残ったIBFの決定戦でポンセに挑むマティアス(30歳/18勝全KO1敗)は、プエルトリコ期待の140パウンダー。

やはり同じ階級の次期王者候補の1人と目されるドミニカのプロスペクト,エルヴィス・ロドリゲス(27歳/13勝12KO1敗)に相対するアドルノ(23歳/17勝14KO1敗2分け)も、ロドリゲスに引けを取らない好レコードの持ち主で、フルトンと同じフィラデルフィアの出身。

ライト級の熱気と群雄割拠には今1歩及ばないながらも、途切れることなく新たなタレントが顔を出す(テオフィモ・ロペスも参入)。激戦区の激戦区たる所以だろう。


忙しさに取り紛れて記事をアップできないでいるうちに、御大ボブ・アラム(井上の共同プロモーター)もコメントを出したようだ。

◎Naoya Inoue Vs. Stephen Fulton Possible For April Says Bob Arum
2023年1月30日/Boxingnews24
https://www.boxingnews24.com/2023/01/naoya-inoue-vs-stephen-fulton-possible-for-april-says-bob-arum/

◎JAKE PAUL VS TOMMY FURY WILL DO VERY GOOD BUSINESS ' Bob Arum Fury-Usyk update
2023年1月29日



リング誌に記事が出た1月上旬の時点では、Boxrecのスケジュールにも掲載されていなかったが、本番まで約1ヶ月というタイミングでようやくアップされた。半ば当然の事ながら、井上戦が具体化したフルトンの名前は無い。

また、開催地ミネアポリスの出身で、ロンドン五輪の代表候補からプロ入りした遅咲きのウェルター級,ジャマル・ジェームズ(34歳/27勝12KO2敗/アマ150戦超)が、一昨年10月に喫したプロ2敗目(ラジャブ・ブタエフのWBAレギュラー王座に挑戦して9回TKO負け)からの復帰戦が追加されている。

※Boxrec Fight Schedule
Saturday 25, February 2023
Armory, Minneapolis, Minnesota, USA

同じくフィゲロアも未記載だが、フルトン撤退の穴を埋めるべく、ランク3位の前王者マーク・マグサヨ(比)のスクランブル発進に関する記事が既に出ていた。

※Magsayo eyes return to throne
2023年1月7日/PhilBoxing.com


マグサヨから正規王座を奪取したレイ・バルガスに、フェザー級のベルトを持ったままS・フェザー級の決定戦を承認したことでも分かる通り、WBCはメキシカン(とメキシコ系米国人)の人気選手のプロテクトについて一切躊躇しない。

ドーピング違反が発覚したカネロとバルガス、PED使用+確信犯の体重超過をセットでやからかしたルイス・ネリー&デヴィッド・ベナビデスに対する過剰なまでのバックアップはもとより、かつてのエリック・モラレスやリカルド・ロペス,トラヴィエソ・アルセらへの厚遇を引き合いに出すまでもないと思う。

人気者のフィゲロアに何としても126ポンドの暫定を獲らせて、今週末アラモドーム(テキサス州サンアントニオ)で首尾良くバルガスが勝利したあかつきには、正規王座をバルガスからフィゲロアへと禅譲(バルガスが返上→暫定から繰り上げ)させる腹づもり。

相手が始めからマグサヨだったなら、フィゲロアの暫定王座戦もアラモドームの興行に組み込んでいたに違いない(人気者のフィゲロアはテキサス出身)。

Brandon Figueroa

集客と視聴者数の都合だけを考えれば、「フルトン VS フィゲロア2」もテキサスかカリフォルニアでやった方がいいに決まっている。素人でもわかる理屈で、議論の余地はない。

しかし、米本土で最もメキシコ系移民の人口構成比が高い西海岸のカリフォルニアと第2位テキサスでの開催について、判定決着ありきのフルトン陣営が嫌がり避けるのも当たり前。どちらとも取れる微妙なラウンドを、全部フィゲロアに持って行かれたらそれこそ一大事。

競った展開を覚悟しなければならないフィゲロアと彼の陣営もまた、フィラデルフィア(フルトンのホームタウン)やニューヨーク,アトランティックシティといった東海岸の要所へは行きたくない筈。

S・ミドル級のニュー・センセーション(?),デヴィッド・モレル(キューバ)が、亡命後の生活と活動の拠点を何故かフロリダ(150万人規模に及ぶ亡命キューバ人の大きなコミュニティがある)ではなくミネアポリスに置いていた為、WBAレギュラー王座の防衛戦もすべてアーモリーで行われていた。

大き過ぎず小さ過ぎない小屋のキャパシティ(8千人超)も、モレルだけでなくフルトンの現在地(バリュー=商品価値)には程良いサイズだとの判断なのかもしれない。


2014年秋にデビューしたフルトンは、8年間のプロ生活で21戦をこなしているが、地元のペンシルベニア州内で行われたのは9試合(半数以下)。そのうちホームタウンのフィラデルフィアでは3試合しかやっておらず、なおかつ修行時代(キャリアの前半=2017年まで)に集中している。

場所もカジノが併設された多目的商業施設にリングを設営したり、1,300人しか収容できない2300アリーナ(ウズベクの雄クァドラティロ・アブドゥカハロフと小原佳太のエリミネーターが行われた会場)が使われていて、念願の世界チャンピオンになって以降も、1万人規模のリアコウラス・センター(アルトゥール・ベテルビエフとオレクサンドル・ゴズディクのL・ヘビー級統一戦を開催)には未登場。

後で述べるけれど、フルトンの人気と集客力(視聴者数)は、アル・ヘイモン=PBC(Premier Boxing Champions)の興行を取り仕切る主要プロモーター、そしてPBCの主要な興行を中継するShowtimeの厚く堅い信頼を勝ち得るまでに至っていない。


一昨年11月にラスベガスで行われた第1戦で、判定(0-2のマジョリティ・ディシジョン)に納得できないフィゲロアが、お馴染みのジム・グレイによる勝利者インタビューに割って入り、「ちょっと待て!。勝ったのはオレだ!。観てくれたファンが証人だ!」と詰め寄った。

Fulton_Figueroa 1

「スポーツマンシップに欠ける。悔しいのはわかるが恥ずべき行為だ。」

フィゲロアに対する批判は半ば当然で、致し方のないところではある。但し、どこにもぶつけようのない怒りを抑えることができず、やらずもがなの抗議に及んだフィゲロアの無念にも同情の余地が無い訳ではない。


リング上で火花を散らしたこのやり取りのお陰で、リマッチへの流れは完全に出来上がったと誰もが確信した筈だが、フィゲロアの増量で一旦は胡散無償したかに思われた。

現代のテキサスを代表するアイドルとの再戦は無くなったものの、前WBA・IBF統一王者の強敵ダニー・ローマンとの防衛戦が決定。接(苦)戦は必至との予想を大きく覆し、ほぼフルマークの大差判定で終わらせると、フェザー級でのフィゲロアとの再戦が一気に具体化(失意のローマンはそのまま引退)。

長身のフィゲロアだけでなく、フルトン自身も厳しさを増すウェイト・コントロールについて繰り返し言及していた経緯があり、現状想定し得る対戦相手の中では最も稼ぎのいいフィゲロアを選ぶしかないという見方が大勢を占める。

「126ポンドに完全に移動するのかって?。そりゃあ条件次第だ。」

フルトンにしても、122ポンドのベルトを持ったままでのフェザー級挑戦。フィゲロア戦以上のリターンが見込める井上戦の可能性を残し、126と122の両面待ちを決め込む。


Part 2 へ続く

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