”見えざる意思”は動いたのか / - P・タドゥラン vs 銀次郎 2 レビュー Part 3 -
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”見えざる意思”は動いたのか / - P・タドゥラン vs 銀次郎 2 レビュー Part 2 -

続いて、第1戦と第2戦を任された2人のレフェリー、スティーブ・ウィリスとチャーリー・フィッチにライセンスを許可したニューヨーク州アスレチック・コミッション(NYSAC)のルールも確認してみる。
ひょっとしたら、WBA・IBF・WBOと同じく、個別具体的な反則行為を列挙していないかもしれない・・・と思って見たら案の定、「相手を押さえつける」行為の記述はあるが、その状態からの加撃については明記されていなかった。
◎Law, Regulations, and Policies for Athletic Commission - Rules and Regulations
□19 NYCRR Parts 206 - 214
PART 206 - Commission Powers and Duties

「NYSACともあろうものが・・・・」
少々大袈裟になるが、言葉を失った。ニューヨークと言えば、今を去ること100余年前、「マフィアとギャングをボクシング興行の表舞台から一掃する」との大目標を掲げて、1920年にアスレチック・コミッション制度を発足させた州であり、合衆国政府とニューヨーク州の決意と覚悟を象徴する存在でもある。
殿堂と呼ばれるマディソン・スクウェア・ガーデン、旧ヤンキー・スタジアムとポログラウンドを舞台に、綺羅星のごとき大スターたちが頂点を目指して激しく争い、近代ボクシングの歴史そのものとも称すべき、名勝負の数々を繰り広げてきた。
そのNYSACが、この程度の反則しか規定していない。個別具体的な反則行為について、1発減点や失格に直結する「重大な反則(Major fouls)と、直ちに処罰の対象とはならない「軽微な反則(Minor fouls)」に分けて記載されてはいるものの、「軽微な反則(Minor fouls)」の先頭に、「相手を押さえつける」,「故意による執拗なクリンチ」を置いているのみ。
「これでいいのか」と率直にそう思う。せめてWBCと同じ水準であって欲しいと考えるのは、きっと拙ブログ管理人だけではないと信じる。

ウィリスとフィッチが主に仕事をするニューヨーク州内では、タドゥランと銀次郎のケースが不問に処されても直接的に文句を言いづらい。2名のレフェリーは、ルール上間違っていないことになってしまう。
では、開催地の大阪を所管するJBCルールとの整合性はどうなるのか。試合が行われたのはニューヨークではなく大阪である。しかし前章で触れた通り、肝心要のJBCが日和見の及び腰だから、そもそも話し合いにすらない。
試合直前に行われるルール・ミーティングの席上、銀次郎を擁するワタナベジム側から、ホールディング状態での加撃について、ルールの再確認とチェックの要望が出ない限りにおいては。それがそのまま通るか否かは別問題にしても・・・。
WBA・IBF・WBOの3団体が、どうして反則行為を具体的に規定していないのか。それには一応の理屈がある。
試合中に発生し得る反則について、認定団体に取って第一に必要な規定は、その反則が故意(Intentional foul)か偶発(Accidental foul)を速やかに判別する為の分類定義であり、第二にそれらの反則に対して科すべき罰則の規定、減点と失格(反則負け)に関するペナルティを明確に決めておかなくてはならない。
そしてその次は、故意であれ偶発であれ、反則を受けた側の選手が怪我等で続行できなくなった場合、どのように決着させるのか。故意であるとレフェリーが判断すれば、当然反則負けになる。では、偶発的な反則だったとレフェリーが判断したらどうするのか。
これらをルール上明確にしておくことが先決で、具体的な反則行為についての規定は、大変に遺憾ではあるものの、これらの次かそのまた次,というのが実態。”遺憾砲”ではどうしようもないのは百も承知だが、こればかりは”如何”ともし難い。
認定団体はタイトルマッチを承認こそすれ、試合(興行)を直接管理運営する立場にはなく、試合が行われる中で生じ得る様々なトラブルやアクシデント(故意・偶発に関わらず)、不測の事態に即応・収拾する為、開催地を所管する地元コミッションのルールに委ねるケースも当たり前に発生する。
世界各国で開催される世界,及び地域のタイトルマッチに必ず派遣・臨席する立会人(スーパーバイザー)の役割は、それぞれの認定団体が定めるチャンピオンシップ・ルールが、正しく守られているか否かの確認が第一であり、レフェリーが判断に困るような事象が発生した場合、地元コミッションから派遣される責任者(一般的に世界戦の場合は事務局長)と相談しながら解決に当たらなくてはならない。
そして本番直前に行われるルール・ミーティングの席上、地元コミッション及び両陣営の代表者(事務局長及びインスペクター等)らとともに、認定団体とコミッションルールに関する疑問や質問に関する確認も行う。
個別具体的な反則行為の規定は、地元コミッション・ルールに帰属すべき項目だとの認識と見解を、WBA・IBF・WBOは示しているのではないかと推察できる。
※ Part 4 へ
◎タドゥラン(28歳)/前日計量:104.5ポンド(47.4キロ)
※当日計量:114.9ポンド(52.1キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
(4回目でパス/1回目:52.4キロ,30分後2回目:52.3キロ,+100分後3回目:52.25キロ)
元IBF M・フライ級王者(V2)
戦績:23戦18勝(13KO)4敗1分け
世界戦:7戦3勝(2KO)3敗1分け
アマ通算:約100戦(勝敗を含む詳細不明)
身長:163センチ,リーチ:164センチ
血圧:137/102
脈拍:56/分
体温:36.1℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター
◎銀次郎(25歳)/前日計量:104.9ポンド(47.6キロ)
※当日計量:114.2ポンド(51.8キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
現在の世界ランク:IBF4位/WBO10位
戦績:14戦11勝(9KO)2敗1NC
世界戦:6戦3勝(3KO)2敗1NC
アマ通算:57戦56勝(17RSC)1敗
2017年インターハイ優勝
2016年インターハイ優勝
2017年第71回国体優勝
2016年第27回高校選抜優勝
2015年第26回高校選抜優勝
※階級:ピン級
U15全国大会5年連続優勝(小学5年~中学3年)
熊本開新高校
身長:153センチ,リーチ:156センチ
血圧:125/70
脈拍:62/分
体温:36.6℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター
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■オフィシャル
主審:チャーリー・フィッチ(米/ニューヨーク州)
副審:2-1で王者タドゥランを支持
ジル・コー(比):115-113
デイヴ・ブラスロウ(米/メリーランド州):113-115
中村勝彦(日/JBC):118-110
立会人(スーパーバイザー):ジョージ・マルティネス(カナダ/チャンピオンシップ・コミッティ委員長)
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■5月24日/インテックス大阪5号館,大阪市住之江区/IBF世界M・フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 ペドロ・タドゥラン(比) 判定12R(2-1) 前王者/IBF4位 重岡銀次郎(日/ワタナベ)
王者 ペドロ・タドゥラン(比) 判定12R(2-1) 前王者/IBF4位 重岡銀次郎(日/ワタナベ)

続いて、第1戦と第2戦を任された2人のレフェリー、スティーブ・ウィリスとチャーリー・フィッチにライセンスを許可したニューヨーク州アスレチック・コミッション(NYSAC)のルールも確認してみる。
ひょっとしたら、WBA・IBF・WBOと同じく、個別具体的な反則行為を列挙していないかもしれない・・・と思って見たら案の定、「相手を押さえつける」行為の記述はあるが、その状態からの加撃については明記されていなかった。
◎Law, Regulations, and Policies for Athletic Commission - Rules and Regulations
□19 NYCRR Parts 206 - 214
PART 206 - Commission Powers and Duties

「NYSACともあろうものが・・・・」
少々大袈裟になるが、言葉を失った。ニューヨークと言えば、今を去ること100余年前、「マフィアとギャングをボクシング興行の表舞台から一掃する」との大目標を掲げて、1920年にアスレチック・コミッション制度を発足させた州であり、合衆国政府とニューヨーク州の決意と覚悟を象徴する存在でもある。
殿堂と呼ばれるマディソン・スクウェア・ガーデン、旧ヤンキー・スタジアムとポログラウンドを舞台に、綺羅星のごとき大スターたちが頂点を目指して激しく争い、近代ボクシングの歴史そのものとも称すべき、名勝負の数々を繰り広げてきた。
そのNYSACが、この程度の反則しか規定していない。個別具体的な反則行為について、1発減点や失格に直結する「重大な反則(Major fouls)と、直ちに処罰の対象とはならない「軽微な反則(Minor fouls)」に分けて記載されてはいるものの、「軽微な反則(Minor fouls)」の先頭に、「相手を押さえつける」,「故意による執拗なクリンチ」を置いているのみ。
「これでいいのか」と率直にそう思う。せめてWBCと同じ水準であって欲しいと考えるのは、きっと拙ブログ管理人だけではないと信じる。

ウィリスとフィッチが主に仕事をするニューヨーク州内では、タドゥランと銀次郎のケースが不問に処されても直接的に文句を言いづらい。2名のレフェリーは、ルール上間違っていないことになってしまう。
では、開催地の大阪を所管するJBCルールとの整合性はどうなるのか。試合が行われたのはニューヨークではなく大阪である。しかし前章で触れた通り、肝心要のJBCが日和見の及び腰だから、そもそも話し合いにすらない。
試合直前に行われるルール・ミーティングの席上、銀次郎を擁するワタナベジム側から、ホールディング状態での加撃について、ルールの再確認とチェックの要望が出ない限りにおいては。それがそのまま通るか否かは別問題にしても・・・。
WBA・IBF・WBOの3団体が、どうして反則行為を具体的に規定していないのか。それには一応の理屈がある。
試合中に発生し得る反則について、認定団体に取って第一に必要な規定は、その反則が故意(Intentional foul)か偶発(Accidental foul)を速やかに判別する為の分類定義であり、第二にそれらの反則に対して科すべき罰則の規定、減点と失格(反則負け)に関するペナルティを明確に決めておかなくてはならない。
そしてその次は、故意であれ偶発であれ、反則を受けた側の選手が怪我等で続行できなくなった場合、どのように決着させるのか。故意であるとレフェリーが判断すれば、当然反則負けになる。では、偶発的な反則だったとレフェリーが判断したらどうするのか。
これらをルール上明確にしておくことが先決で、具体的な反則行為についての規定は、大変に遺憾ではあるものの、これらの次かそのまた次,というのが実態。”遺憾砲”ではどうしようもないのは百も承知だが、こればかりは”如何”ともし難い。
認定団体はタイトルマッチを承認こそすれ、試合(興行)を直接管理運営する立場にはなく、試合が行われる中で生じ得る様々なトラブルやアクシデント(故意・偶発に関わらず)、不測の事態に即応・収拾する為、開催地を所管する地元コミッションのルールに委ねるケースも当たり前に発生する。
世界各国で開催される世界,及び地域のタイトルマッチに必ず派遣・臨席する立会人(スーパーバイザー)の役割は、それぞれの認定団体が定めるチャンピオンシップ・ルールが、正しく守られているか否かの確認が第一であり、レフェリーが判断に困るような事象が発生した場合、地元コミッションから派遣される責任者(一般的に世界戦の場合は事務局長)と相談しながら解決に当たらなくてはならない。
そして本番直前に行われるルール・ミーティングの席上、地元コミッション及び両陣営の代表者(事務局長及びインスペクター等)らとともに、認定団体とコミッションルールに関する疑問や質問に関する確認も行う。
個別具体的な反則行為の規定は、地元コミッション・ルールに帰属すべき項目だとの認識と見解を、WBA・IBF・WBOは示しているのではないかと推察できる。
※ Part 4 へ
◎タドゥラン(28歳)/前日計量:104.5ポンド(47.4キロ)
※当日計量:114.9ポンド(52.1キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
(4回目でパス/1回目:52.4キロ,30分後2回目:52.3キロ,+100分後3回目:52.25キロ)
元IBF M・フライ級王者(V2)
戦績:23戦18勝(13KO)4敗1分け
世界戦:7戦3勝(2KO)3敗1分け
アマ通算:約100戦(勝敗を含む詳細不明)
身長:163センチ,リーチ:164センチ
血圧:137/102
脈拍:56/分
体温:36.1℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター
◎銀次郎(25歳)/前日計量:104.9ポンド(47.6キロ)
※当日計量:114.2ポンド(51.8キロ)/IBF独自ルール(リミット:105ポンド+10ポンドのリバウンド制限)
現在の世界ランク:IBF4位/WBO10位
戦績:14戦11勝(9KO)2敗1NC
世界戦:6戦3勝(3KO)2敗1NC
アマ通算:57戦56勝(17RSC)1敗
2017年インターハイ優勝
2016年インターハイ優勝
2017年第71回国体優勝
2016年第27回高校選抜優勝
2015年第26回高校選抜優勝
※階級:ピン級
U15全国大会5年連続優勝(小学5年~中学3年)
熊本開新高校
身長:153センチ,リーチ:156センチ
血圧:125/70
脈拍:62/分
体温:36.6℃
※計量時の検診データ
左ボクサーファイター
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■オフィシャル
主審:チャーリー・フィッチ(米/ニューヨーク州)
副審:2-1で王者タドゥランを支持
ジル・コー(比):115-113
デイヴ・ブラスロウ(米/メリーランド州):113-115
中村勝彦(日/JBC):118-110
立会人(スーパーバイザー):ジョージ・マルティネス(カナダ/チャンピオンシップ・コミッティ委員長)
※ Part 4 へ













