”El Venado(イカれたヤツ)”に挑む”大和のサラリーマン” - L・A・ロペス vs 阿部麗也 プレビュー -

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■3月2日/ターニング・ストーン・リゾート&カジノ,N.Y.州ヴェローナ/IBF世界フェザー級タイトルマッチ12回戦
王者 ルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ) vs IBF1位 阿部麗也(日/KG大和)



昨年4月、37歳になったキコ・マルティネス(スペイン)を3-0の大差判定に下し、IBFの指名挑戦権をモノにした痩躯のサウスポーが、ようやくタイトルマッチの舞台に辿り着いた。

福島県出身の阿部は、県立会津工業高校でボクシングを始めたアマ経験者。ところが、戦績は15戦7勝8敗の負け越し。将来この競技で身を立てようと、素直に信じられる成績とは言いづらい。

ボクシングに憧れを抱いたのはずっと早く、「プロボクサーになりたい」と初めて思ったのは小学生の頃だったという。

磐梯山や猪苗代湖、五色沼などで知られる風光明媚な耶麻(まや)郡に生まれ育ち、自然環境は抜群だったが、ボクシングジムも無ければ指導してくれる経験者も皆無。漫画「スラムダンク」が大好きで、その影響で中学時代はバスケットボール部に入部。かなり打ち込んだらしい。

しかも、陸上部との掛け持ちで砲丸投げもやっていたというから、それだけの運動神経に恵まれ、顧問の先生や周囲からも認められていたのだろう。そうした阿部にとって、高校でのボクシング生活は、疑いようのない「青春の挫折」であった。


日々の練習は厳しく、インターハイや国体、高校選抜等の大会(予選)に備えた合宿について、「本気で逃げ出そうと思うくらい辛かった」と、数少ないインタビューの中で答えている。

「これだけ必死に練習しているのに、大会になると全然勝てない。」

あらためてお断りするまでもないが、阿部は今をときめく井上尚弥と同世代である。

尚弥&拓真、田中亮明&恒成、藤田和典&健児、堤駿斗(はやと)&麗斗(れいと)等々、幼い頃から父に鍛え込まれた「親子鷹」の数が格段に増えて、U15全国大会(プロ主催/2007年発足)と、それに続くUJ(アンダージュニア)全国大会の開催により、長らく途絶えていた小学~中学生を対象とした育成プログラムが、不十分な形であれ復活した。

目標とする大会の有無、しっかりしたステータスを有する競争と明確な結果がもたらす影響は大きい。例えば重岡優大&銀次郎兄弟のように、空手や他競技からの転向を幾ばくかでも促進したと思われる。それ以外にも、近隣にボクシングジムがある場合、中学入学を待って入門する子供たちも、多少なりとも増加したのではないか。


こうした経歴を持つ、いわば格闘技経験者である16~18歳と、高校に進んでから本格的な練習を始めた同年齢とでは、競技者としての能力に小さからぬ差が開いたとしても止むを得ない。

中学時代にバスケットと投擲をやっていた阿部も、基礎的な体力はともかく、ボクシングの錬度で敵わなかった。例えば中学で毎週1~2回でもジムに通っていた経験は、結構なアドバンテージになり得る。

ボクシング部を持つ高校の数は限られる。生家から通える地域に会津工高があったのは幸運には違いないけれど、指導者の数と質を含めた首都圏・大都市部と地方の格差も、野球やサッカー,陸上,柔道等の人気競技とは比較にならない。

こうして阿部は、卒業と同時に神奈川県大和市に移り、現在も勤務を続ける自動車部品メーカーに就職する訳だが、7勝8敗の負け越しにもかかわらず、大学からスカウトを受けたというから、キラリと光る潜在能力は発揮できていたようだ。


KG大和ジムの門を叩いたのは、社会に出て2年目。プロ志望ではなく、フィットネス会員だったが、2007年にジムを開いた片渕会長によると、「スパーリングをやらせたら、日本ランカーとまあまあやれてしまう。上を目指せるんじゃないかと感じた」とのこと。

片渕会長に薦められるまま、19歳の阿部は週1回のジム通いを週6回に増やし、1年かけてプロテストに合格。デビュー2戦目で早くも初黒星を味わうものの、翌2014年の新人王戦で見事全日本のトップに。

これで勢いに乗るかと思いきや、初の6回戦でまたもや判定負け。プロの船出は順風満帆とは行かなかったが、この後、11連勝をマーク。溜田剛士(ヨネクラ)と細野悟(大橋)を破った金星も含まれる。


そして2019年5月、6年目にして実現した日本タイトル初挑戦は、王者の源大輝(ワタナベ)を追い込むも、無念のスプリット・ドロー。再戦を望むも源は階級アップを表明して返上。

1位になった阿部と、2位佐川遼(三迫)の決定戦が承認され、同年9月に2度目のチャンスを得たが、0-3のユナニマウス・ディシジョンで敗北。僅少差のポイントとは裏腹に、ファンと関係者の評価は阿部の完敗だった。

念願のタイトルマッチを迎えたのに、2試合続けて勝ち切れなかった。ようやくスポンサーが付き、ボクシング1本に専念すべきとの話になる。サラリーマンとの二束の草鞋に限界を感じ、大手ジムへの移籍も考えたというが、「いい話が来たから飛びつくのか?。本当にそれでいいのか?」と、父の叱咤を受け翻意。


正式に申し出ていた退職の意向を撤回し、「サラリーマン・ボクサー」を売りにするようになった阿部は、武漢ウィルス禍の間も1年を超えるブランクを1回だけに抑え、プロ生活8年目にして円熟の時期を迎える。

3連勝で復調すると、2022年5月、3度目のチャンスがやって来た。TV番組でも採り上げられ、話題になった丸田陽七太(森岡)への挑戦が決定。日本タイトルだけでなく、WBOのアジア・パシフィック王座も懸けられ、阿部が不利の予想を覆して載冠。

◎丸田陽七太戦:12回3-0判定勝ち
2022年5月15日/墨田区総合体育館


前後左右に細かく足を刻み、相手の前進を捌きながら、長いワンツーを軸にしたコンビネーションでポイントメイクするスタイルに、安定感と力強さが加わり、国内フェザー級の顔と呼べる存在になった。


井上尚弥、伊藤雅雪の2王者とのスパーリングで、自身の成長に手応えを感じていたとのことだが、昨年4月8日、有明アリーナで行われた拳四朗 vs オラスクアガ,井上拓真 vs リボリオ・ソリス戦のアンダーカードで、キコ・マルティネスと対戦。

愚直に真っ直ぐ前進して来る小柄なマルティネスに、阿部のアウトボクシングが面白いようにハマる。この試合に備えてさらなる磨きをかけた左ストレートだけでなく、ワンツーと左アッパーで変化を付けたコンビネーションも、歴戦の元王者を再三ヒット。

大阪城ホールで長谷川穂積を地獄に落としたのは、既に8年前の出来事で、直後にカール・フランプトンに敗れてベルトを失い、スコット・クィッグのWBA王座にアタックして2回TKO負け。


フェザー級に転じてレオ・サンタ・クルスにも5回TKO負けを喫し、完全に終わったものと思われていたが、ジョシュ・ウォーリントンと繰り広げた白熱の好勝負(判定負け)が評判となり、ゲイリー・ラッセル・Jr.のWBC王座に挑戦するも、左の瞼をカットしてストップ負け。

それでも諦めずに戦い続けたマルティネスは、2021年11月、フェザー級で3度目のチャンスを掴み、もはや第二のホームと呼んでもいい英国でキッド・ギャラハドに6回TKO勝ち。超特大の大番狂わせで2階級制覇に成功した。

この王座も初防衛戦で雪辱を期したウォーリントンに奪われたが、マッチルームが押すジョーダン・ジルを4回TKOに屠り、豪腕健在を示していた。


丸田に切り裂かれた右の瞼を再びカットするなど、阿部も少なからず傷を負うことになったが、歴戦の豪打者を多くのラウンドで空転させ、顔面を破壊しての完勝は、想像を超える戦果と表していい。

◎K・マルティネス戦:12回3-0判定勝ち
2023年4月8日/有明アリーナ
https://www.youtube.com/watch?v=IjcHIlaSoik

マルティネス戦から開いた1年近いブランクは、2試合連続のカットによる右瞼の古傷化を防ぐ為に必要な、長めの休養だったと捉えることもできる。

メイン・イベンターになって以降、現代のボクサーとしてはごく平均的な年間2試合ペースに落ち着いた阿部に、試合勘の鈍化や調整ミスといった懸念は不要と考えたい。


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受けて立つ王者ロペスは、アメリカと国境を接するバハ・カリフォルニア州第二の都市メヒカリ出身。年齢は阿部と同じ30歳で、プロデビューは阿部より2年遅い2015年の冬だが、修行時代の4年間は矢継ぎ早に試合をこなしている。

レコードに残る2度の敗戦は、10回戦に進んだ2018年と翌2019年に喫したもので、いずれもローカル・タイトルが懸かっていた。2敗目のルーベン・ビリャは、カリフォルニア出身のトップ・アマで、2020年10月にフェザー級時代のエマニュエル・ナバレッテに挑戦して中差の0-3判定負け。

ロペスは同年2月に続く2度目の米本土参戦だったが、善戦及ばずユナニマウス・ディシジョンを失い、地元のローカル・ファイトでやり直し。2020年7月、トップランクの主催興行に呼ばれて、カリフォルニアの中堅アンディ・ヴェンセスに2-1の10回判定で競り勝つ。

在米ファンの注目を集め出したのは、2021年の秋以降。まずは9月10日のガブリエル・フローレス戦。アリゾナ州ツーソンで行われたトップランクの主催興行で、18連勝(7KO)中のフローレスをフルマークの3-0判定に下すと、12月3日には渡英してイングランド期待のアイザック・ローウェ(対戦当時無敗)に7回TKO勝ち。


この連勝でトップランクとの複数年契約を手にしたロペスは、主戦場をアメリカに移してさらに連勝を重ね、2022年12月、キコ・マルティネスを追い落としたジョシュ・ウォーリントンとの白兵戦をしのぎ、敵地で僅少差の0-2判定勝ちを収め、IBF王座奪取に成功。

昨年5月の初防衛戦も、アイルランドへ飛んでマイケル・コンラン(ロンドン五輪フライ級銅メダル)の挑戦を5回TKOで退けている。

英国を代表する2大プロモーター,エディ・ハーンとフランク・ウォーレンの興行を立て続けに潜り抜けたロペスは、昨年9月にカリフォルニアの元プロスペクト,ジョエト・ゴンサレスに3-0判定勝ち。

ジョエトはシャクール・スティーブンソンとナバレッテに挑戦して敵わず、2022年7月にはアイザック・ドグボェにも敗れてしまい、新人時代の輝きは失われてしまったが、堅いガードでロペスの突破を再三阻み、フルラウンズを粘って世界ランクの地力を証明した。


セオリーに囚われない自由かつトリッキーなムーヴ、距離を取って離れようとする相手に、ジャンプしながら左右のパンチもろとも飛び込む様が、往年の悪魔王子を連想させることから、”メキシコの(ナジーム)ハメド”と呼ばれたりもする。

ロペスの特徴が最も良く発揮されているのは、以下にご紹介するジェイソン・バルデス戦ではないかと思う。

◎J・バルデス戦:2回KO勝ち
2022年8月20日/パチャンガ・アリーナ,サンディエゴ



ルーズガードのまま左右フックを強振する気の強さが災いして、ビッグショットを食ってダウン寸前に陥る隙の多さも含めての評価だが、個人的にはオーバー・レイテッドと言わざるを得ない。

公称163センチの小柄な体躯をものともせず、修行時代には130ポンド超の調整を複数回経験するなど、フィジカルの強度とパンチ力を武器に戦うロペスだが、ご本家最大の持ち味だった柔軟性と卓越した全身のバネは望むべくもなく、世界タイトルを懸けた3試合は、バルデス戦のように自由にやれなかった。

◎ロペスの世界戦3試合
<1>J・ゴンサレス戦:12回3-0判定勝ち
2023年9月15日/アメリカン・バンク・センター,テキサス州コーパスクリスティ
https://www.youtube.com/watch?v=3qkLZPFeLN8

<2>M・コンラン戦:5回TKO勝ち
2023年5月27日/SSE(オデッセイ)アリーナ, ベルファスト(英/アイルランド)
https://www.youtube.com/watch?v=2hUxcEsPAkg

<3>J・ウォーリントン戦:12回2-0判定勝ち
2022年12月10日/ファースト・ダイレクト・アリーナ, リーズ(英/イングランド)
https://www.youtube.com/watch?v=VYInWEwV9P0


王座に就いたウォーリントン戦は、第11ラウンドに食った強烈な左フックが効いて、クリンチ&ホールドも辞さない逃げ切りでKOを免れている。12ラウンド終了のゴングと同時に、ウォーリントンが素早く右手を突き上げ勝利を誇示していたが、地の利を考えれば防衛成功でもおかしくなかったと思う。

ロペスとのリマッチがスムーズに運ばず、ターゲットをリー・ウッド(WBA王者)に移したウォーリントンは、昨年10月シェフィールド・アリーナで今が盛りのウッドと激突。第4ラウンドに王者の右瞼をカットして奮戦するも、第7ラウンドにラビットパンチで減点され、ダウンを喫してKO負け。熱望していた「ロペス2」も胡散無償。


上体を立てたまま、強引に力任せの強打を振り回すロペスは、多くのファンと関係者が指摘する通りディフェンスに穴が多い。相手のスタンス(左右)にかかわらず、右から入って左を返す逆ワンツーをすかされ、左フックを浴びる場面も散見される。

阿部も当然カウンターを狙って行くだろうが、ロペス陣営はフィジカルの弱いコンランの再現を目論んでいるに違いない。

ルーズガードは阿部も同じで、キコ・マルティネスを翻弄したスムーズな3~4連打は、楽に構えたガード(脱力)の効果が大きく、ジョエトのように高い位置に両腕をキープしながら、肘を内側に絞ってガッチリ防御を固めると、不用意な被弾を防ぐことはできるが、手数が減って阿部の良さも消えかねない。

動き出し(立会い)に変化が無く、同じテンポとリズムで真っ直ぐ前に出てくるマルティネスと違って、予測しづらいポジションと角度から、おかしなテンポで飛び出してくるロペスを自由にさせないことが何よりも大事。

とりわけ立ち上がりの2~3ラウンズ、ガードの上からでも左の強打を叩き込み、ロペスを下がらせ、簡単に飛び込めない雰囲気を作ることができるかどうか。先にロペスの強振を貰うと、そのまま一気に終わる可能性も充分。

マルティネス戦の第2ラウンド、歴戦のスパニッシュが放つ左アッパーで顎を痛打され、腰を落としかけた場面を、ロペス陣営は「これだ!」と膝を打ちながら見つめていたのでは・・・。


前評判は大差でロペスを支持。勧進元のトップランクは、事実上のメインイベントになる同じ階級のWBA王座決定戦(オタベク・コルマトフ vs レイモンド・フォード)の勝者と、ロペスとの統一戦を計画中。

ビッグアップセットで阿部の手が挙がれば、統一戦はもとより、その先には井上尚弥との日本人対決も見えて・・・来る?。



◎ロペス(30歳)/前日計量:125.3ポンド
IBFフェザー級王者(V2)
戦績:31戦29勝(16KO)2敗
アマ戦績:6勝4敗
身長:163センチ,リーチ:169センチ
好戦的な右ボクサーファイター


◎阿部(30歳)/前日計量:125.8ポンド
前日本フェザー級(V1/返上),元WBOアジア・パシフィック同級(V1/返上)王者
2014年度全日本新人王(フェザー級)
戦績:29戦25勝(10KO)3敗1分けNC
アマ戦績:15戦7勝8敗
福島県立会津工業高
身長:172センチ,リーチ:175センチ
左ボクサー


◎前日計量



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「El Venado(エル・ヴェナード)」というロペスのニックネームだが、由来はサッカーなのだという。二十歳を過ぎてからボクシングを始めた遅咲きのチャンプは、幼い頃からサッカーが大好きで、プロを目指していたらしい。

ユースのチームに入ってそれなりに活躍したとのことだが、スピードに乗ったスプリント(ということはFWではなくSB?)が得意で、「まるで鹿(Venado)みたいだ!」と評判になり、ずっとそう呼ばれるようになった。

今でもアマチュアのチームでプレイするほどイレ込んでいて、「ボクシングはビジネス。プロとして成功する為に選んだ。でも、一番好きなスポーツはフットボールさ」と屈託のない笑顔を見せる。

でも、「鹿」はどうなのだろう。スペイン語に限らず、言葉は色々な意味を持つことが珍しくない。「Venado」も様々な使われ方をするようで、「アブナいヤツ」とか「イカレたヤツ」という意味もあるとのこと。

大変申し訳ないけれども、ルーズガードのまま顎を上げてガンガン前に出るロペスには、後者の方が似つかわしいと感じる。

ルイス・ネリーもリードジャブに対する反応はかなり雑で、わざと打たせてカウンターを取りに行ったりもするが、ロペスはジャブどころの騒ぎではなく、ハイリスクなタイミングでパワーショットやカウンターが飛んで来ても、委細構わず平気で距離を詰めて行く。

「オレのいいパンチが当たればOK。それで終わる。」

ざっくり言うとそういうことなのだろうが、やっぱりイカれてる。

両国3大決戦 プレビュー 3  - ”4団体統一を公言・中谷戦をも見据えた拓真の勝算は・・・ -

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■2月24日/両国国技館/WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 井上拓真(日/大橋) vs WBA位/前IBF J・バンタム級王者 ジェルウィン・アンカハス(比)




「兄(尚弥)が返上したバンタム級のベルトを、もう一度自分が集める。」

歴戦の雄,リボリオ・ソリスを3-0の判定に下してWBA王座に就いた拓真は、今後の目標についてはっきり言い切った。

半ば無理やりに自らを鼓舞しているようにも見えたし、本心からそれを望んでいるのかどうか、今1つ釈然としない印象も残ったけれど、他に自分自身を納得させ得るチャレンジが見当たらない。

兄尚弥との実績の差は、もはや埋めようがないほど乖離してしまった。アンカハス戦に向けた会見やインタビューの中で、「目標を見失いかけた」と本音を吐露することも・・・。

尚弥への評価と賞賛が高まる一方で、まばゆい光の傍らに追いやられた影のように、地味で目立たない存在へと追いやられてしまう。それこそが勝負の世界の常,容赦呵責のない現実とは言え、簡単に言葉で表し切れない相克があったに違いない。


桁外れの爆発力で当たるを幸い倒しまくる尚弥に対して、拓真最大のストロング・ポイントは、スピード&タイミング。

「相手に何もさせない。触らせないボクシング」こそ拓真の本領だと、父の真吾トレーナーはこれまで何度もそう繰り返してきたが、愚直なと言いたくなるほど不器用な打ち合いにのめり込み、負わずに済んだ筈の傷とダメージを負う。

WBC暫定王座を獲得した4年前のペッチ・CPフレッシュマート戦でも、打ち終わりに棒立ちになる悪い癖を面白いように突かれ、無用な被弾を続けて苦しんだ。

正規王者ナルディーヌ・ウバーリ(仏)とのWBC内統一戦では、「経験が違う。拓真は良いボクサーだが、私のような万能型とは初めての対戦になる」と、自信満々に語るウバーリの言葉通り、ダウンを奪われ一敗地に塗れている。


その後は、栗原慶太(一力)からOPBF王座を奪うと、122ポンドに上げて和氣慎吾(FLARE山上),古橋岳也(川崎新田)の2人を破るも、尚弥のS・バンタム進出に伴いバンタムに出戻り。

フィリピンの中堅選手を8回TKOに屠り、およそ6年半ぶりとなる手応えに思わず吼えた。そして、4本のベルトを巻いた尚弥が予定通り返上。ソリスとの王座決定戦出場のチャンスをモノにする。

ソリス戦の拓真は、ペッチ戦,ウバーリ戦とは違って、打ち終わりの処理をサボらず頭の位置を変え、ソリスの攻撃を足で外しながら、「打たせずに打つ」スタイルに撤していた。肝心要の「打つ」方は、精度に今一歩の課題を残しはしたものの、綺麗な顔のまま12ラウンズを戦い終えることができたのは大きな収穫と表していい。


直前のオッズは、何とも微妙な数字になった。本来ならば、昨年11月15日に開催される予定だったが、延期の原因となった拓真の負傷(肋骨骨折)も無関係ではないと思う。万全な状態に回復しているというが、アンカハスは当然そこを狙ってくる。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
拓真:-225(約1.44倍)
アンカハス:+200(3倍)

<2>betway
拓真:-225(約1.44倍)
アンカハス:+188(2.88倍)

<3>ウィリアム・ヒル
拓真:4/9(約1.44倍)
アンカハス:7/4(2.75倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
拓真:1/2(1.5倍)
アンカハス:9/4(3.25倍)
ドロー:22/1(23倍)


115ポンドで安定政権を築いたアンカハスは、フェルナンド・マルティネス(亜)に連敗して階級アップを決断。以前からフィジカルの強さを嫌う傾向が顕著で、力で押されることを苦手にする。

技術&神経戦に相性の良さを発揮するだけに、拓真を「持って来いの相手」と見立ている可能性が高く、会見で「勝算は100%」と語る大橋会長に対して、MPプロモーションズの代表を務めるショーン・ギボンズが「110%勝つ」と胸を張ったのは、前景気を煽るリップサービスでもなければ空元気でもない。


アンカハスをアウトボックスするのは、骨の折れる仕事になる。その為に最も重要なピースは、ジャブの精度&タイミング。これが向上していないと、アンカハスのプレスがかかり易くなり、見栄えの良くない時間帯が増えてしまう。

ソリス戦の展開も、見る人によっては「押し負けた」「地の利を得ての逃げ切り勝ち」と言われてしまいかねない。

サウスポー対策にも抜かりはないと信じるが、とにもかくにも足を止めないこと。そして正確かつコンパクトなジャブを絶やさないで。


◎【ダイジェスト版】2.24 LIVE BOXING 7 スペシャルコンテンツ | プライムビデオ
2024/02/10





◎拓真(27歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
現WBAバンタム級王者(V0),元WBCバンタム級暫定王者(V0),前日本S・バンタム級(V0),WBOアジア・パシフィック S・バンタム級(V1),OPBFバンタム級(V0), 元OPBF S・フライ級(V2)王者
戦績:18戦17勝(4KO)1敗
アマ通算:57戦52勝(14RSC)5敗/綾瀬西高校
キッズボクシング(小学高学年~中学)
戦績:15戦14勝1敗
2012年インターハイ準優勝(L・フライ級)
2011年ジュニア世界選手権ベスト16(L・フライ級/アスタナ,カザフスタン)
2011年高校選抜優勝(L・フライ級)/ジュニアオリンピックを兼ねる
2011年国体(山口県)準優勝(L・フライ級)
2011年インターハイ優勝(ピン級)
※中京高時代の田中恒成(現WBO J・フライ級王者/畑中)とは、5度対戦して2勝3敗。
”スーパー高校生”として大きな注目を集めたライバル同士。
身長:164.2センチ,リーチ:163センチ
※ウバーリ戦の予備検診データ
脈拍:51/分
血圧:142/84
体温:36.0℃
※計量後の検診
右ボクサーファイター


◎アンカハス(32歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
前IBF J・バンタム級王者(V9)
戦績:39戦34勝(23KO)3敗2分け
身長:168センチ,リーチ:169センチ
脈拍:98/min
血圧:100/71 Hgmm
体温:35.9℃
※計量後の検診
左ボクサーファイター

◎前日計量


◎「何もさせない」



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■オフィシャル

主審:マーク・ネルソン(米/ミネソタ州)

副審:
ルイージ・ボスカレッリ(伊)
アレックス・レヴィン(米/フロリダ州)
キム・ビュンム(韓)

立会人(スーパーバイザー):ウォン・キム(韓)




両国3大決戦 プレビュー 2  - ”3階級制覇の先に見えるバンタム級統一路線・・・中谷 vs 拓真の行方やいかに -

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■2月24日/両国国技/WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
王者 アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ) vs WBC1位/2階級制覇王者 中谷潤人(日/M.T)




昨年9月のS・フライ級ラスト・マッチから5ヶ月。中谷のバンタム級初陣は、大番狂わせの3-0判定で黄昏のドネアを破り、緑のベルトを手中にしたサンティアゴへのアタック。

アルヒ・コルテス戦のプレビューで触れた減量苦は、118ポンドに上げても劇的な改善には至っていない様子だが、土気色でまるで精気が感じられなかった前回に比べれば、まだ人間らしい顔色をしている。

※過去記事:戦慄の左ストレートは火を噴くか? - 中谷潤人 vs A・コルテス 直前ショート・プレビュー -
2023年9月17日
https://keisbox.online/archives/22847676.html


心配していた通り、中谷の仕上がりは万全とは言えず、実力差が明らかなアルヒ・コルテスにかなり押し込まれていた。公称159センチのサンティアゴは、同じく163センチのコルテスよりさらに小さい。

それでも、老いたりとは言え160センチ台後半のドネアに力負けせず、最後までガス欠することもなく、12ラウンズを動き続けてユナニマウス・ディシジョンをもぎ取っている。

※過去記事:ドネアが3度目の載冠へ /小兵のメキシカンは叩き上げの兵(つわもの) - ドネア vs サンティアゴ ショートプレビュー -
2023年7月30日
https://keisbox.online/archives/22106755.html


そして、13センチに及ぶ身長差を武器に変える術を、サンティアゴはそれなりに身に付けており、低い態勢で懐に潜り込んでくるところを十八番のショートアッパーで迎え撃とうとガードが開いたところへ、下から打ち上げるストレートやフックで狙われると怖い。

中谷のことだから、積極的に自分から距離を潰して、アッパーを軸にしたコンビネーションで崩しにかかりそうだが、ロングの左を効かせてからで充分。

ミドル級に上げた途端、打たれ脆さが露になったトーマス・ハーンズのように、痩身のパンチャーが一旦崩れ出すと手の施しようがなくなる。むしろここは、打ち下ろしのストレートでしっかり捉えたいし、その為には、ロングジャブ&ステップで距離をキープする時間も重要。

密着しないと勝負にならないサンティアゴを突き放して焦らしつつ、長めのアッパーを真ん中から打ち抜くなど、メキシコ陣営の想定にない工夫が必要になるかもしれない。

例え僅かであったとしても、3ポンドがもたらす調整末期の余裕のお陰で、コルテス戦より上向くであろう仕上がり状態が、増量の影響+サンティアゴのしつこさを当たり前に超えていれば、ここまであれこれ考えることもないと思うが・・・。


直前のオッズは、概ね予想通りのマージンで着地。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
サンティアゴ:+500(6倍)
中谷:-700(約1.14倍)

<2>betway
サンティアゴ:+500(6倍)
中谷:-800(1.125倍)

<3>ウィリアム・ヒル
サンティアゴ:9/2(5.5倍)
中谷:1/6(約1.17倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
サンティアゴ:6/1(7倍)
中谷:1/6(約1.17倍)
ドロー:40/1(41倍)


◎【ダイジェスト版】2.24 LIVE BOXING 7 スペシャルコンテンツ | プライムビデオ
2024/02/10


◎「ターニングポイントになる試合」



開始間もない時間帯は、じっくり落ち着いて慎重に。サンティアゴの動きと当たりに気をつけながら、けっして打ち急がず、ジャブから入る基本&細かく丁寧なステップの励行を。


◎サンティアゴ(27歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
戦績:36戦28勝(14KO)3敗5分け
身長:159センチ,リーチ:166センチ
血圧:127/75
脈拍:118/分
体温:36.3℃
※計量時の測定
好戦的な右ボクサーファイター

◎中谷(25歳)/前日計量:117.5ポンド(53.3キロ)
前WBO J・バンタム級王者(V1/返上),前WBOフライ級(V2/返上),元日本フライ級(V0/返上),元日本フライ級ユース(V0/返上)王者
2016年度全日本新人王(フライ級/東日本新人王・MVP)
戦績:26戦全勝(19KO)
アマ戦績:14勝2敗
身長:172センチ,リーチ:170センチ
脈拍:81/分
血圧:106/70
体温:36.4℃
※計量時の測定
左ボクサーパンチャー

◎前日計量


◎Inoue, Nakatani, & the Japan Card Make Weight | FULL WEIGH-IN
Top Rank Boxing



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■オフィシャル

主審:ローレンス・コール(米/テキサス州)

副審:
アラン・クレブス(米/ワシントン州)
フェルナンド・バルボサ(米/フロリダ州)
ジョエル・スコービー(カナダ)

立会人(スーパーバイザー):ミゲル・パブロ(スペイン/WBC大使)



両国3大決戦 プレビュー 1  - ”マタドール恒成”に大いなる期待・・・をしても大丈夫? -

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■2月24日/両国国技館/WBO世界J・バンタム級王座決定12回戦
WBO1位 田中恒成(日/畑中) vs WBO2位 クリスティアン・バカセグア(メキシコ)




「マタドールみたいになるんじゃないですか。」

2月15日に帝拳ジムで練習を公開したバカセグアの印象と、今回の戦術について問われた畑中会長がそう答えた。

「一度打ち出すと止まらなくなる。手数が出ますね。」

対するバカセグアも負けてはいない。「私の角は鋭い。下からすくい上げる。彼は宙を舞うだろう」と必勝をアピール。


ご存知の通り、メキシコは中米随一ボクシングが盛んな国ではあるが、同時に闘牛の国でもある。畑中会長がそこまで意識したのかどうかは別にして、実にタイムリーな発言だったと感心するばかり。

これは勿論、井岡一翔に完膚無きまでにやられた後、最優先で取り組むべきテーマに掲げ続けてきた「ディフェンスの改善」への期待、大きな意味合いも込められてのこと。

昨年5月に地元で行ったパブロ・カリージョ(コロンビア)との10回戦は、その成果がようやく形となって現れた快勝と評価したい。タフでハートの強いカリージョを的確なジャブで削り、右の強打もフルスウィングではなく、パワーよりも精度とタイミングを優先。

し止め切れずに大差判定かと思われたラスト・ラウンド、マックウィリアムズ・アローヨ倒したを井岡のストレート、あるいはハッサン・エンダム・ヌジカムとの第1戦、第4ラウンドに火を噴いた村田諒太畢生の一撃を彷彿とさせる、それはもう鮮やかな右のカウンターでダウンを奪い、そのままレフェリーストップを呼び込む。


単純な中央突破は影を潜め、カリージョの出足を良く読み、無駄打ちと無駄打たれ(?)の愚を冒さない。試合を終えた田中の顔は綺麗なままで、「もう少し足を使ってくれれば・・・」と欲の深いマニアの性がつい口を突いて出てしまうほど、田中のボクシングは変貌した。

以前の突貫スタイルを支持する人たちの眼には、「慎重過ぎる」「面白みが無くなった」と映る場面もあったと思うけれど、「打ちたい欲」を我慢して戦術的ディシプリンに撤する田中に、「それでいいんだ。間違っていない。」と心の声で声援を贈り続ける。

田中自身は、昨年12月の発表会見で述べた「KO奪取」への意気込みを、記事の最後でご紹介する計量後の囲み取材でも繰り返していた。

発表会見でも、村田大輔トレーナーと一緒に磨いてきた「新たなスタイル(打たせずに打つ)」への手応えとともに、「父親から教わった前に出続けるボクシング」へのこだわりにも触れている。


1歩も退くことなく、ムキになって打ち合いに雪崩れ込む悪癖が再現するのではないかと、要らぬ筈の老婆心が暗雲のように拡がり、不安をかき立ててしまう。田中の正確なバカセグア評が、お節介な懸念を大きくしてしまう。

「プロで20戦していますが、そのうち19戦を世界チャンピオンかランカーと戦ってきた。これまで対戦した選手たちと比べて、(バカセグアは)それほど難しい相手だとは思わない。」

仰る通り。スピード,パワー,テクニックのいずれを取っても、良く言ってローカルランクの上位といった水準で、バカセグアに世界2位の肩書きは重過ぎる。世界ランク入りの根拠は、2021年に獲得したWBOラティーノ王座。ただし、真に名のある相手との対戦は無し。


びっくりするのは、2015年7月のデビュー戦を129ポンドのS・フェザー級で戦っていること。2戦目から一気にS・バンタム級まで絞り、2017年から18年にかけてバンタム級を行き来しながらS・フライ級を試し、2019年にはフライ級リミットでモイセス・カジェロス(山中竜也とWBOの105ポンドを争いTKO負け)に10回判定負け。

これ以降、115ポンドに定住して戦績が安定。日本に比べればまだまだ選手層が厚く、侮れない中堅がひしめくメキシコの軽量級で、ここまでローカル・ファイトを生き残ってきたのは、打たれ強さを含めたフィジカル・タフネスの賜物だが、リアルなローカル王者クラスとやっていないからだとも言える。

井岡と同じく、計量後のリバウンドを最大限に活かし、ガードを固めて圧力をかけ続け、手数だけは出し続けて田中を白兵戦に引きずり込み、守りの意識が薄れるのを待って相打ちの左フックか右アッパー、もしくは右のオーバーハンド(ボラード)でイチかバチかの1発を狙う。


”メキシカン・ロッキー”に勝機があるとすれば、それぐらいしか思い浮かばない。油断さえしなければ、田中の4階級制覇は九分通り達成したも同然であり、それだけに余計な色気を抑えるのが大変。

KOを狙って真正面から攻め急ぐ、悪い虫が騒ぎ出すのがとにかく怖い。そこを耐えて冷静に戦術的規律を保つのは、カリージョ戦以上の困難を田中を強いることになるだろう。

掛け率が存外に接近しているのは、井岡戦の強烈な記憶が未だに尾を引きずっているからで、あれだけ一方的かつ無残なKO負けを払拭する為には、それ相応の相手に同等以上のインパクトを残して勝つ以外に道はない。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
田中:-500(1.2倍)
バカセグア:+400(5倍)

<2>betway
田中:-599(約1.17倍)
バカセグア:+400(5倍)

<3>ウィリアム・ヒル
田中:1/5(1.2倍)
バカセグア:7/2(4.5倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
田中:2/11(約1.18倍)
バカセグア:21/5(5.2倍)
ドロー:16/1(17倍)


井岡に敗れた直後、リマッチについて問われる度び、「負けた自分がもう一度と、そう簡単には言えない」と否定的な態度を変えなかった。

今一度世界のベルトを巻いて、とにもかくにも4階級制覇を成し遂げる。その上で2団体を統一すれば、井岡が負けない限り自ずと再戦への扉は開いて行く。田中自身の口から、井岡へのリベンジが聞かれるとすれば、おそらくその後になるのではないか。

「目標は4団体統一。S・フライ級の最強を証明する。」

中谷潤人との指名戦回避でまたもや男を下げた井岡は、追い続けるファン・F・エストラーダ戦一択あるのみ。それ以外の対戦相手は眼中に無し。田中とは、3年前の大晦日で決着済みといったところ。

115ポンドのNo.1と目されるエストラーダに明白な差を付けて打ち破れば、すべての批判を吹き飛ばせるだけでなく、P4Pトップ10圏内への定着も夢ではなくなる。


ワンサイドのKO勝ちが喉から出るほど欲しい。そうであればある程、カリージョ戦と同じ辛抱が必須。そう肝に銘じて、「無駄打ち+無駄打たれ」の抑制に撤して欲しい。





◎田中(28歳)/前日計量:114.6ポンド(52キロ)
元WBOフライ級(V3/返上),元WBO J・フライ級(V2/返上),元WBO M・フライ級(V1/返上)王者
※現在の世界ランク:WBA4位・WBC4位・IBF3位
戦績:20戦19勝(11KO)1敗
世界戦通算10戦9勝(5KO)1敗
アマ通算:51戦46勝(18RSC・KO)5敗
中京高(岐阜県)出身
2013年アジアユース選手権(スービック・ベイ/比国)準優勝
2012年ユース世界選手権(イェレバン/アルメニア)ベスト8
2012年岐阜国体,インターハイ,高校選抜優勝(ジュニア)
2011年山口国体優勝(ジュニア)
※階級:L・フライ級
身長:164.6センチ,リーチ:167センチ
※井岡一翔戦の予備検診データ
脈拍;73/分
血圧:112/82
体温;36.3℃
※計量時の測定
右ボクサーファイター


◎バカセグア(26歳)/前日計量:114.6ポンド(52キロ)
戦績:28戦22勝(9KO)4敗2分け
身長:163センチ
脈拍;46/分
血圧:121/78
体温;36.2℃
※計量時の測定
右ボクサーファイター

◎前日計量


◎計量時のインタビューでKO宣言



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■オフィシャル

主審:ベンス・コヴァチ(ハンガリー)

副審:
ドン・トレッラ(米/コネチカット州)
パット・ラッセル(米/カリフォルニア州)
スラット・ソイカラチャン(タイ)

立会人(スーパーバイザー):レオン・パノンチーリョ(米/ハワイ州/WBO副会長)


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■主流派(大橋+帝拳)へようこそ

色々な見方や意見はあるだろうが、三十路を目前にした田中が、中京のローカル・スターから脱却する転機を迎えた。

カリージョ戦の中継は、中京地区の民放5局が共同運営する「Locipo(ロキポ)」というWEB配信サービスで行われている。試合内容が良かっただけに、本当に勿体なく残念に思えてならない。

今回は、ESPN+(トップランク経由)で米本土にも配信される。月額11ドル弱のサブスクは、熱心な在米ボクシング・ファンにとって大きな負担にはならない筈で、尚弥の弟とアンカハス、ドネアに勝ったサンティアゴにノックアウト・オブ・ジ・イヤーの中谷が絡むカードは、一定の訴求力が期待できる。

田中の試合は、世界戦とは言っても相手が相手だけに、完全なセミ扱いにならざるを得ないけれど、視聴者数は少なくても、在米マニアの眼に触れることが第一。

※Takuma Inoue vs. Jerwin Ancajas (Main Card)
ESPN+ ? Top Rank Boxing
https://www.espn.com/espnplus/player/_/id/64de4119-f90b-4f38-af8f-f705b4a9136f/country/us/redirected/true

我が青春の小澤征爾 - 2024年2月・訃報に接して -

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■序


ozawa-around1970s

来るべき刻(とき)がやって来た。

2年前(2022年)の暮れ、「ONE EARTH MISSION」と題されたJAXAとの共同プロジェクトで、国際宇宙ステーションに滞在中の若田光一船長(日本人初)に向けて、サイトウ・キネン・オーケストラとともに「エグモント序曲」の生演奏を届ける御年86歳のマエストロは、うずくまるように車椅子に深く沈み込んでいた。

癌との闘いによる疲弊が衰えに拍車をかけ、すっかり小さくなってしまった身体が痛々しく、正視するのが辛くてたまらない。

かすかに持ち上げて拍子を取る両腕はか細く弱々しかったが、しかしだからこそ、「我らがマエストロに恥をかかせてなるものか」との決意がメンバー全員にみなぎり、遅めのテンポと燃えるような奏者たちの熱気ゆえに、後半からコーダにかけてテンポとアインザッツが乱れる場面が散見はされたものの、演奏は実に立派なものだった。

そしてこの配信より4ヶ月前、8月26日に行われた松本のフェスティバルにも、まったく同じいでたちで車椅子を押されながらステージに登場している。この時はマスクで顔を覆ったまま、客演のシャルル・デュトワと旧交を温め、客席に向かって手を振るだけで退場したのだが、ご覧になった多くの方々も、永の別れを予感したのではないか。


キャリアの中心となったボストン交響楽団は、2月9日の定期演奏会(現地時間/シンフォニー・ホール)で、若かりし日の小澤を捉えた素晴らしい遺影を掲げ、2021年にCEOに就任したチャド・スミスが丁重な弔辞を述べた後、バッハのアリアを演奏してかつてのシェフを偲んだ(指揮:カリーナ・カネラキス)。

◎Boston Symphony Orchestra Remembers Seiji Ozawa with Remarks and Bach's Air on the G String
2024年2月10日公開/ボストン響公式チャンネル


◎BSO公式サイト・トップ(現在は通常モードに復帰)
BSO_top
◎追悼ページ:A Tribute to Seiji Ozawa
https://www.bso.org/stories/a-tribute-to-seiji-ozawa


また、ヨーロッパにおける活動拠点とも言うべきベルリン・フィルとウィーン・フィルは、それぞれの公式トップページに小澤の写真を掲載し、丁寧な文章とともに哀悼の意を表している。

◎BPO公式サイト・トップ(現在は通常モードに復帰)
BPO_top_
◎追悼ページ:Trauer um Seiji Ozawa
https://www.berliner-philharmoniker.de/stories/trauer-um-seiji-ozawa/

◎VPO公式サイト・トップ
VPO_top
◎追悼ページ:Die Wiener Philharmoniker trauern um Seiji Ozawa
https://www.wienerphilharmoniker.at/de/magazin/die-wiener-philharmoniker-trauern-um-seiji-ozawa/6210

想像以上に深刻だった健康不安の為、期待された結果を残せないまま離任することになったウィーン国立歌劇場も、弔辞を掲載してくれていた。

◎DIE WIENER STAATSOPER TRAUERT UM SEIJI OZAWA
2024年2月9日/ウィーン国立歌劇場公式サイト
https://www.wiener-staatsoper.at/die-staatsoper/medien/detail/news/die-wiener-staatsoper-trauert-um-seiji-ozawa/

2015年に我らがマエストロに名誉賞を授与したケネディ・センターもまた、動画をアップしてその功績にスポットを当てている。

◎A Kennedy Center Tribute to Seiji Ozawa (1935-2024)
2024年2月10日/ケネディ・センター公式チャンネル


◎ケネディ・センター名誉賞(錚々たる顔ぶれが揃う受賞者)
<1>公式サイト(授賞式)
https://www.kennedy-center.org/whats-on/honors/

<2>公式サイト(デジタル・ステージ)
https://www.kennedy-center.org/digitalstage/kennedy-center-honors/

<3>Wiki
https://en.wikipedia.org/wiki/Kennedy_Center_Honors


NHKを相手に盛大な大喧嘩をやらかし、意を決して再渡米した28歳の小澤を、毎夏のフェスティバルの指揮者に大抜擢(ラヴィニア音楽祭/1964年~68年)。最初の大きなチャンスを与えてくれたシカゴ交響楽団と、さらなる蛮勇を振るって(?)音楽監督に迎えてくれたトロント交響楽団(1965年~1969年)もまた、哀悼の意を表する記事をアップしたのも嬉しい限り。

シカゴの記事を書いたフランク・ヴィレッラは、シカゴ響の合唱団(Chicago Symphony Chorus)で20年以上歌った声楽家で、オーケストラ(1891年創立)の歴史的文献や写真,音源などの貴重な資料をまとめたローゼンタール・アーカイヴス(Rosenthal Archives)の館長を努める人物。

◎Remembering Seiji Ozawa
2024年2月9日/CSO公式サイトExperience CSO
フランク・ヴィレッラ [ 30 min read ]
https://cso.org/experience/article/17180/remembering-seiji-ozawa

トロント響公式サイトトップ
Tronro_SO_top
◎Seiji Ozawa 1935-2024
https://www.tso.ca/home/seiji-ozawa/


1970年から7年間音楽監督の重責を担い、ヨーゼフ・クリップスとの初来日以来、7年ぶりとなる日本公演(1975年6月)を実現したサンフランシスコ交響楽団は、公式インタグラムに記事をアップしただけに止まった。

就任3年目の1973年からボストン響との兼務になり、着任早々東海岸へと足場を移した格好になったことが楽団と地元音楽ファンの感情を多少なりとも害し、好ましからざる印象を残したことは否めない。

オケにとって、桂冠の名誉を贈呈したブロムシュテット(1985年~95年)、マイケル・ティルソン・トーマス(1995年~2020年)ほどの存在ではないとの評価は止むを得ないが、せめて公式サイト上で弔意を示してくれてもよかったのでは。

The SF Symphony is deeply saddened by the news of Seiji Ozawa’s passing earlier this week at the age of 88.
2024年2月10日/サンフランシスコ響公式インスタグラム
https://www.instagram.com/p/C3I9SWKvHVE/?img_index=1

そして、弦楽四重奏を基盤にした室内楽を教えることを目的に、スイスのジュネーヴに作った「スイス国際音楽アカデミー(Seiji Ozawa International Academy Switzerland)」は、2月9日付けで小澤の死を悼むプレスリリースを出し、同時に今夏に予定する第20回の開催中(7月1日~12日)、7月9日に追悼演奏会を行うと発表。

◎Seiji Ozawa 1935 - 2024
2024年2月9日/Seiji Ozawa International Academy Switzerland
https://mailchi.mp/da413d7dfa7e/communiqu-de-presse-9-fvrier-2024-press-release-feb-9-2024?e=0fe5c057df


日本国内では、後半~終盤のキャリアを決定付けた松本のフェスティバル、こだわり続けたオペラの伝承を託す音楽塾、大師匠の斎藤秀雄と並ぶ恩師,吉田秀和から2代目館長を引き継いだ水戸芸術館が哀悼を捧げるページを公開した他、設立に直截携わった新日本フィルは、ボストン響と同様、2月10日に三重文化会館で行われた演奏会の冒頭、バッハのアリアを演奏(指揮:藤岡幸夫)。

◎J.S.バッハの管弦楽組曲第3番より第2曲アリア(小澤征爾氏への献奏として)
2024年2月10日公開/新日フィル公式チャンネル


◎新日フィル公式サイト・トップ
NJP_top
◎【訃報】小澤征爾氏(桂冠名誉指揮者)ご逝去について
2024年2月9日/新日本フィル公式サイト:重要なお知らせ
https://www.njp.or.jp/news/8062/

◎【訃報】小澤征爾(総監督)逝去について
2024年02月10日/セイジ・オザワ 松本フェスティバル公式サイト
https://www.ozawa-festival.com/news/2024/02/10/190000.html

◎【訃報】小澤征爾(音楽塾塾長、音楽監督)逝去について
2024年2月10日/小澤征爾音楽塾公式サイト
https://ozawa-musicacademy.com/news/2136

◎小澤征爾水戸芸術館館長ご逝去のお知らせ
2024年02月10日/水戸芸術館公式サイト
https://www.arttowermito.or.jp/topics/article_41364.html


ベルリンとウィーン、トロントの各オーケストラが示してくれた敬意には、思わず涙が出そうになった。

そして、記事のタイトルに倣って恥ずかしげも無く申し上げれば、私の脳裏と心の中に生き続ける小澤の姿は、冒頭に掲載した写真のままである。

私の中の小澤征爾について、少しづつ章をあらためながら、演奏会の記憶も掘り起こして書き連ねて行こうと思う。

序章の末尾に、「エグモント序曲」と舞台挨拶の映像を。忍びなく辛いけれど、老いの現実もしっかり見つめねばならない。

◎ONE EARTH MISSION - Unite with Music - Full recorded LIVE Performance
2022年12月1日/小澤征爾 Seiji Ozawa 公式チャンネル


◎世界へ配信!One Earth Mission~小澤征爾氏指揮/サイトウ・キネン・オーケストラのハーモニーと和の心を
2022年12月1日/JAXA公式サイト
https://humans-in-space.jaxa.jp/news/detail/002677.html

◎小澤征爾さん登場で会場総立ち 音楽の祭典OMFでサプライズ 3年ぶりにステージ上に
2022年8月27日/NBS長野放送ニュース

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