リヤドのリング初見参 /モンスターらしい豪快なKO決着に期待(P4P1位復帰へ) - Night of The Samurai プレビュー II -

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■12月26日/モハメド・アブドゥ・アリーナ,リヤド(サウジアラビア)/4団体統一世界S・バンタム級タイトルマッチ12回戦
4団体統一王者 井上尚弥(日/大橋) vs WBC1位 アラン・D・ピカソ(メキシコ)



※フル・プレス・カンファレンス(Lemino公式)
https://www.youtube.com/watch?v=QaeMjaIWDDA


「今後のキャリアをより加速させて行く一戦。この試合の内容がパウンド・フォー・パウンド1位への返り咲きを左右する。」

驚異的な集中力と節制でカネロを圧倒。3階級で4団体を統一したテレンス・クロフォードの引退表明を受けて、「P4PのNo.1は自分以外にいない」と明言(Leminoで公開されたドキュメンタリー)したモンスターにとって、「今度こそ下手は打てない」と言ったところだろう。

「どんな展開になるにしろ、最後はしっかりKO決着したい。」

「本番は来年なので・・・」

◎12月13日の公開練習時に行われた会見


※拓真とのライト・スパー



今月13日に行われた公開練習(話題となった拓真とのライト・スパー)時のインタビューでも、完璧と言っても過言ではないヒット&アウェイを貫徹したアフマダリエフ戦とは違い、本来の倒し切るスタイルで戦うと語っている。

「冷静にボクシングの美しさを見せながら、時に残酷さ・・すべてミックスして勝ちたい。」

◎密着ドキュメンタリー PRELUDE TO THE DREAM MATCH 井上尚弥 vs アラン・ピカソ ~夢舞台への前奏曲~(ハイライト短縮版)
2025年12月12日公開/Lemino公式



にしても、「サムライ・ナイト」とは良くぞ名付けたものだ。

毎年秋に開幕するリヤド・シーズンの2025年末尾を飾るボクシング・イベントに、井上尚弥を始めとする日本のトップ・ボクサー6名が終結。メキシコから総勢4名の選手(挑戦者3名)と王者1名を呼び、「日本 vs メキシコ」の国別対抗戦を仕掛けた。

◎The Night of Samurai 対戦カード
<1>4団体統一S・バンタム級王座戦
井上尚弥(大橋) vs アラン・デヴィッド・ピカソ(メキシコ)

<2>S・バンタム級12回戦
中谷潤人(M.T) vs セバスティアン・エルナンデス(メキシコ)

<3>IBF J・バンタム級王座戦
ウィリバルド・ガルシア(メキシコ) vs 寺地拳四朗(B.M.B.)

<4>WBA S・フェザー級暫定王座戦
ジェームズ・ディケンズ(英) vs 堤駿斗(志成)
※堤の負傷(眼窩底骨折の重症)により中止

<5>ライト級10回戦
今永虎雅(いまなが・たいが/大橋) vs アルマンド・マルティネス(キューバ)

<6>S・バンタム級8回戦
堤麗斗(志成) vs レオバルド・クィンタナ(メキシコ)


主役は間違いなくモンスターとビッグ・バンの両雄であり、来年5月の東京ドームを睨んだ前哨戦の位置づけ。トゥルキ長官の覚えも目出度い堤兄弟と、大橋会長が次期王者の最右翼と期待する今永の国際舞台へのデビューを兼ねる。

ファイナル・プレッサーに現れたピカソが、「(土曜は)サムライ・ナイトではなく、”アステカ・ナイト”になる」と言って、同胞と思われるファンから拍手を浴びていたが、一昔前なら「メキシコ vs プエルトリコ」の対抗戦になっていたに違いない。

「老害は黙っとけ」

若いファンの皆さんにお叱りを受けそうだが、プロにおいては王国アメリカに肩を並べるボクング大国メキシコも、トップクラスのレベルが落ちたなと言わざるを得ない。


マルコ・A・バレラ,エリック・モラレス,ダニエル・サラゴサ,ラファエル・マルケス,イスラエル・バスケス,オスカー・ラリオスらに比肩し得る存在は皆無で、才能の払底を本気で心配してしまう。

メキシコの東大(?)に当たる最高学府で脳科学を学び、二束のわらじを履く秀才は、ことボクシングに関する限り筋金が入り切ってはいない。ところが、いささかひ弱に見えるその秀才を、永らくメキシコシティに本部を置くWBCが、本来タレントがひしめいて仕方が無かった筈の、122ポンドの1位に据えて強力にバックアップする。

これもまた、一昔前なら有り得ない事態。

軽量級にしか世界で活躍する場が無い日本のボクサーが、まさかこんな形で脚光を浴びる日が来ようとは。昭和を生きたオールド・ファンは、唯々我が眼を疑い感慨に耽るばかり・・・。

◎Naoya Inoue & Junto Nakatani EXCLUSIVE JOINT SITDOWN INTERVIEW | Mr. Verzace Podcast | Ep. 5
2025年12月25日公開/リング誌公式



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「ノーベル賞と世界チャンピオン」

人生で成し遂げるべき目標について、25歳の若者アラン・デヴィッド・ピカソはそう述べている。

ピカソといえばパブロ。日本人の大多数が、おそらくそう答える筈。戦乱の悲劇と反戦を描いた大作「ゲルニカ」で知られるキュビスムの天才画家は、スペインのマラガに生を受けた。

絵画の大家と同じスペイン語を話し、実父アロンソの指導を受け、まずはボクサーとしての頂点を目指すピカソについて、我々日本のファンは詳しい来歴をほとんど知らない。

であるからこそ、7月に組まれた亀田京之介(MR)との10回戦は、その実像を知るのに打ってつけのテストマッチとなった。そしてその内容と結果は、日本だけでなく世界中のファンと関係者を大いに落胆させた。

デビュー戦でTKO負けを喫し、新人王戦(一応決勝まで進んだ)とユース王座戦も落とした京之介は、数々のジムを渡り歩きながら腕を磨き、中川麦茶(ミツキ)や元世界王者すりヤン・ソー・ルンヴィサイらを破って浮上。

今年2月にメキシコに渡り、ティファナでルイス・ネリーと対戦。ほぼワンサイドで打ちまくられ、いいところなく7回TKOに退いている。亀田3兄弟と血縁関係ににあり、悪餓鬼キャラで売り出したものの、実力がまったく追い付いて行かず、心あるファンからも見放されてしまった。

そんなを相手にチューンナップに臨んだピカソは、フェザー級を主戦場にする京之介との体格差に苦しみ、打っては打ち返される見栄えの悪い展開に終始。勝利自体に問題は無かったけれど、2-0のマジョリティ・ディシジョンで株を落とす。

調整試合の多くをフェザー級で行っているピカソだったが、リバウンドで大きくなった京之介とは一回りサイズが違い、コンビネーションとカウンターで効かせる場面もありながら、決定的なチャンスに結びつけることができなかった。

◎ピカソの試合映像
<1>亀田京之介戦:10回2-0判定勝ち
2025年7月19日/MGMグランド(ラスベガス)
フェザー級契約10回戦
オフィシャル・スコア:98-9,97-93,95-95
https://www.youtube.com/watch?v=WZTy54uld6A

<2>アザト・ホヴァニシアン戦:
2024年8月24日/アレナ・シウダード・メヒコ(メキシコシティ)
WBCシルバーS・バンタム級王座戦(V1)
オフィシャル・スコア:118-110×2,120-108
https://www.youtube.com/watch?v=g19sqbyQQtY

※ピカソもエルナンデスと同様、老雄ホヴァニシアンから上げた白星が出世試合


昨年モンスターへの挑戦が内定と報じられた際にも、「今やっても勝ち目はゼロ以下」「止めといた方がいい」と、同胞の元王者や著名なトレーナーらがこぞって諌める異常事態が発生。一転して陣営が撤退を表明すると、「賢明な決断」との見方が大勢を占めた。

もっともピカソ本人はSNSでやる気を訴え続け、「ダック(逃げて)してなんかいない」と自身の本意ではないことを強調。「知らないうちにキャンセルされていた。何時でも戦う」と、半ば怒りを交えながらの強弁を繰り広げる。

それだけに、京之介戦の出来に否が応でも注目が集まり、期待に反する拙戦が招いたファンの失望に対して、「理系の単位取得に追われて、充分な準備ができなかった」とエクスキューズ。


大学で医学を学び、優れた医師になることを夢見ながら、チャンピオンのまま交通事故で若い生命を散らしたサルバドル・サンチェスに例える者も少なくないが、プロボクサーとしての到達点には天地の開きがある。

直前のオッズはマージンがワイド過ぎて、もはや賭けとしての体を為さない。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
尚弥:-3000(1.03倍)
ピカソ:+1100(12倍)

<2>シーザース
尚弥:-3500(1.03倍)
ピカソ:+1300(14倍)

<3>ウィリアム・ヒル
尚弥:1/33(1.03倍)
ピカソ:10/1(11倍)
ドロー:25/1(26倍)

<4>Sky Sports
尚弥:1/20(1.05倍)
ピカソ:13/1(14倍)
ドロー:40/1(41倍)

◎公開練習


※フル・メディア・ワークアウト(Matchroom公式)
https://www.youtube.com/watch?v=9DdqZMibZXU

ピカソのボクシングは、積極果敢に攻勢をかけるメキシカン・スタイルを基調に、ブロック&カバーを主体に守る正攻法のボクサーファイト。中谷と対戦するエルナンデスと良く似ているけれど、比較すれば身体とパンチにキレもあるし、攻め込む際の力強さも感じさせてくれる。

攻防のまとまりも良く、良くも悪くもソツがない。がしかし、まとまりの良さとソツの無さが、試合運びの巧さやポイントメイクに直結しているとは言い難く、多くの同胞が思わず辛口の忠告に逸るのもむべなるかな・・・。

東京ドームのネリー戦、ラスベガスの大会場で行われたカルデナス戦のように、イレ込み過ぎることなく冷静さを保ち、立ち上がりを丁寧にまとめて攻め急ぎさえしなければ、遅くとも中盤6~7ラウンドまでには終わるべくして終わる。

気をつけるべきは、ピカソと陣営のモチベーションの高さあるのみ。キャリアハイの報酬に止まらず、モンスターのすべてを奪う為に、キャリアハイの準備と仕上がりで挑んで来るに違いない。


「(自分と戦う相手は)モチベーションが違う。映像で確認できる実力より、5~6割増しを想定して準備する。」

モンスター自らがそう述べている通り、くれぐれも油断は禁物。


◎井上(32歳)/前日計量:121.5ポンド(55.1キロ)
戦績:31戦全勝(27KO)
世界戦通算:27戦全勝(24KO)
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■4階級制覇・2階級+4団体統一
WBA(V2)・WBC(V3)・IBF(V2)・WBO(V3)4団体統一王者
前4団体=WBA(V7)・IBF(V6)・WBC(V1)・WBO(V0)統一バンタム級王者.元WBO J・バンタム級(V7),
(1)WBC L・フライ級:2014年4月6日~2014年11月6日(V1/返上)
(2)WBO J・フライ級:2014年12月30日~2018年3月6日(V7/返上)
(3)WBAバンタム級:2018年5月25日~2023年1月13日(V8/返上)
(3)IBFバンタム級:2019年5月18日~2023年1月13日(V6/返上)
(4)WBCバンタム級:2022年6月7日~2023年1月13日(V1/返上)
(4)WBOバンタム級:2022年12月13日~2023年1月13日(V0/返上)
(5)WBC・WBOバンタム級:2023年7月25日~在位中(V6)
(6)WBA・IBFバンタム級:2023年12月26日~在位中(V5)
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元OPBF(V0),元日本L・フライ級(V0)王者

アマ通算:81戦75勝(48KO・RSC) 6敗
2012年アジア選手権(アスタナ/ロンドン五輪予選)銀メダル
2011年全日本選手権優勝
2011年世界選手権(バクー)3回戦敗退
2011年インドネシア大統領杯金メダル
2010年全日本選手権準優勝
2010年世界ユース選手権(バクー)ベスト16
2010年アジアユース選手権(テヘラン)銅メダル
身長:164.5センチ,リーチ:171センチ
※ドネア第1戦の予備検診データ
右ボクサーパンチャー(スイッチヒッター)


◎ピカソ(25歳)/前日計量:121.1ポンド(54.9キロ)
戦績:33戦32勝(17KO)1分け
※アマ経験を含む詳しい来歴は不明
身長:173センチ,リーチ:178センチ
右ボクサーファイター

◎前日計量


※フル・ウェイイン
https://www.youtube.com/watch?v=E1tChZUx4Cs


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■リング・オフィシャル:未公表

”ビッグ・バン”のお披露目興行 /中谷潤人4階級制覇に向け初陣へ - Night of The Samurai プレビュー I -

カテゴリ:
■12月26日/モハメド・アブドゥ・アリーナ,リヤド(サウジアラビア)/S・バンタム級契約12回戦
WBA1位/3階級制覇王者 中谷潤人(日/M.T) vs WBA位



※フル・プレス・カンファレンス(Lemino公式)
https://www.youtube.com/watch?v=QaeMjaIWDDA

来年5月の東京ドームに向けて、”愛の戦士”あらため”ビッグ・バン”を名乗る中谷が、ラスベガスを超えるMMA&ボクシングのメッカを目指すリヤドで、S・バンタム級の初陣を迎える。

現地入りしてすぐに会見と公開練習をこなすハードな日程を縫って、モンスターと一緒にインタビューも行なわれた。ベルトこそ懸けられていないが、ダブルメインの扱いであることに間違いはない。

122ポンドに上げて生じた4ポンドの余裕は、削げ落ちた頬と土気色の表情に相応の生気を与えてくれた。やつれた感さえ否めなかったバンタム級の後半に比べれば、一息つけたのは確かにしても、本人が話すほど「楽になった(減量が)」のかどうかは・・・。

仕上がりそのものは順調な様子で、まずは一安心。

◎公開練習


※フル・メディア・ワークアウト(Matchroom公式)
https://www.youtube.com/watch?v=9DdqZMibZXU

◎Naoya Inoue & Junto Nakatani EXCLUSIVE JOINT SITDOWN INTERVIEW | Mr. Verzace Podcast | Ep. 5
2025年12月25日公開/リング誌公式



「P4PのNo.1」を目標に掲げて、モンスターとの大一番を控える3冠王のテストマッチに呼ばれたのは、20勝(18KO)のレコードを誇る25歳のメキシカン。175センチのタッパに恵まれた大型パンチャーの触れ込み。

エリックとディエゴのモラレス兄弟、トニー・マルガリート,ラウル・”ヒバロ”・ペレス,ファン・F・エストラーダ,ハイメ・ムンギア,ジャッキー・ナーヴァら、錚々たる面々を輩出したティファナの出身で、エリック・モラレスのコーナーでアシスタントを任されていたフェルナンド・フェルナンデスがチーフ・トレーナーを務めている。

2020年11月デビュー~2022年8月の10戦をバンタム級で戦い、2022年11月以降S・バンタム級に定住。2戦目(4回戦)で判定勝ちを収めた後、出世試合となった今年5月のアザト・ホヴァニシアン(アルメニア)戦(10回判定勝ち)まで、17試合連続KO勝ちを続けていた。

メキシコ国内では、大物プロモーター,フェルナンド・ベルトラン(最大手の興行会社プロモシオネス・サンフェル)の傘下で戦っており、初渡米が叶った2024年9月のヨンフレス・パレホ(ベネズエラ)戦をきっかけに、サンディエゴに活動拠点を設けてティファナとの往復を継続中。


40歳を目前にした大ベテランのパレホは、かつてバンタム級でWBAの暫定王座に就いたとは言え、会長職を実の父親から禅定されたメンドサ・ジュニアがとち狂い、ありとあらゆる批判にも臆せず(馬耳東風)、スーパー・正規・暫定の3人王者制にまい進・乱発していた10年以上も前のこと。

猛威を振るう武漢ウィルス禍により、2020年と2022年をそれぞれ丸々1年休み、2021年暮れにメキシコ国内で行われた亀田和毅戦(12回0-3判定負け)の後、2023年2月にも亡命キューバ人のアリエル・ペレスに8回0-3判定負け。

KO(TKO)を免れている点だけは、技術と経験の賜物と見るべきだろうが、試合枯れが続く中での連敗はそのままキャリアの終焉を如実に示しており、「勝って当然」のオールド・タイマー。危なげなく攻め続けて棄権に追い込んだが、トップランクを正式契約へと動かすには至らなかった模様。


アルメニアの勇敢なファイター,ホヴァニシアンもまた、37歳の高齢に加えて、ルイス・ネリー(2023年2月/11回KO負け)、ピカソ(2024年8月/12回0-3判定負け)と連敗中で試合間隔が空いていた。

フィジカル・タフネスとインファイトを売りにしてきた”クレイジーA(Crazy A)”も、激闘による疲労と加齢の影響は明らか。世界ランクからも外れて久しく、第9ラウンドにはホールディングで減点されるなど昔日の面影は無し。

正式な引退こそ表明していないけれど、階級を上げて来た元王者に続いて、メキシコのホープ2人の踏み台となり、その役割を終えた。


現在のランキング(WBC10位・IBF12位・WBO11位)が示す通り、米国内ではほとんど無名と言って良く、ベルトランの盟友ボブ・アラム率いるトップランクとの友好的な関係を保ちつつ、フレディ・ローチやロベルト・ガルシア、ジョエル・ディアス,アベル・サンチェス,ボブ・サントス等々,カリフォルニアで活動する著名なトレーナーに付いたという話も聞かない。

詳細なインタビューも当然行われておらず、アマ経験の有無も含めた詳しい来歴は不明。現時点での評価についてあえて申せば、「戦績だけはいいメキシコのローカル・トップ」といったところだろうか。


◎試合映像
<1>A・ホヴァニシアン戦:10回3-0判定勝ち
2025年5月10日/パチャンガ・アリーナ(カリフォルニア州サンディエゴ)
https://www.dailymotion.com/video/x9jaydw
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オフィシャル・スコア:98-91×3
主催:トップランク/配信:ESPN+
メイン:レイモンド・ムラタラ UD12R ザウル・アブドゥラエフ(IBF暫定ライト級王座戦)/エマニュエル・ナバレッテ NC8R チャーリー・スアレス(WBO J・ライト級王座戦]
※スアレスはリオ五輪代表(ライト級)からプロ入りしたフィリピン期待の中量級ホープ(29連勝10KO)。バッティングによるナバレッテの負傷判定勝ち→ノーコンテストに変更(カットは正当な打撃によるものと判明=WBOはリマッチを指示)

<2>Y・パレホ戦:4回終了TKO勝ち
2024年9月20日/デザート・ダイヤモンド・アリーナ(カリフォルニア州グレンデール)
https://www.dailymotion.com/video/x960f64
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オフィシャル・スコア(第4ラウンドまで):39-37×2,40-36
主催:トップランク/配信:ESPN+,ESPN Knock Out
メイン:ハイメ・ムンギア KO10R エリック・バジニアン
※チャーリー・スアレスの再起戦(3回TKO勝ち)も行われた、


ブロック&カバーで守りながら、厚みのある上半身と太い下半身に支えられたフィジカルを武器に、圧力をかけ続け前進を繰り返す真っ正直な正攻法。Boxrecの身体データには間違いも多く、165センチの記載が事実か否かは別にして、映像で見る限りリーチは短い。

身体的な特徴ゆえに、ロング・ジャブで突き放すアウトボックスは難しく、恵まれたサイズを最大限に活かすプレス・スタイルを採ったとの印象。

エマニュエル・ナバレッテが得意にする、カマのように大きな弧を描いて、アウトサイドから遅れ気味に着弾するメキシカン特有のフック%アッパーも無い。ジャブを突きながら、ショートのワンツーとフックを軸に、インサイドからのアッパーを混ぜたベーシックなコンビネーションで時間をかけて切り崩す。

極めて高いKO率に相応しい爆発力、1発でし止める圧倒的なパワーも感じられない。実直で派手さの無いボクシングだが、その分堅実とも言える。具体的な数値は不明ながら、リバウンドの幅はかなりありそう。

長身選手にありがちなギクシャクとした動き、腰高な不安定感が少ないのは、無闇に振り回さないスタンダードなボクシングのお陰で、余計な力みが無いことが一番の要因だとは思うけれど、リバウンドの効用も無視はできない。

◎RAW WORK | JUNTO NAKATANI SPARRING FOR NIGHT OF THE SAMURAI | BOXRAW



率直に申し上げて、「いい相手が見つかったな」と思う。中谷に見劣りしないサイズを持ち、ワンパンチ・フィニッシュの怖さは無く、柔らかい割りには変化にも乏しい。頑丈そうではあるし、守りもそれなりにしっかりしている為、そう簡単に倒れそうにないのも好ましい。

アップセットの要素は限りなくゼロに近く、オッズも大きく差が開いている。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetWay
中谷:-1587(1.06倍)
エルナンデス:+700(8倍)

<2>FanDuel
中谷:-1500(1.07倍)
エルナンデス:+1000(11倍)

<3>ウィリアム・ヒル
中谷:1/12(1.08倍)
エルナンデス:11/2(6.5倍)
ドロー:20/1(21倍)

<4>Sky Sports
中谷:1/12(1.08倍)
エルナンデス:4/1(5倍)
ドロー:25/1(26倍)


明白な力の差を見せるのは当然で、余り時間をかけず綺麗に倒し切りたいところではあるが、西田凌佑との統一戦で見せた一気呵成の攻勢ではなく、しっかり距離をキープしながら、出所のわかりにくいジャブで内・外を丁寧に打ち分けつつ、ガードの隙をスピードに注力した速い左で抜け目なく打ち抜く。

ノックアウトを無理に急がず、理詰めの崩しで静かに仕掛けた方が、却ってチャンスの到来を早めるのではと、そんな気がする。

とは言え身体はあるので、「まともにやっていたら勝てない」と覚悟を決め、ガードそっちのけでブンブン振り回してきたら、”まさかの一撃”がまったく無いと言い切ることはできない。

前後だけでなく両サイドを余すところなく使い、いつも以上に隙の無いボクシングを徹底して、窮鼠猫を噛む間も与えないぐらい圧倒して欲しいし、この相手なら十二分にできる筈。、


◎中谷(27歳)/前日計量:121.6ポンド(55.1キロ)
戦績:30戦全勝(23KO)
世界戦通算:10戦全勝(9KO)
※5連続KO更新中
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■3階級制覇
(1)WBOフライ級:2020年11月6日~2022年10月27日(V2/返上)
(2)WBO J・バンタム級:2023年5月20日~2023年12月14日(V1/返上)
(3)WBCバンタム級:2024年2月24日~2025年9月18日(V4/返上)
(4)IBFバンタム級:2025年6月8日~9月18日(V0/返上)
※2団体統一
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元日本フライ級(V0/返上),元日本フライ級ユース(V0/返上)王者
2016年度全日本新人王(フライ級/東日本新人王・MVP)
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アマ戦績:14勝2敗
身長:173センチ,リーチ:176センチ
左ボクサーパンチャー


◎エルナンデス(25歳)/前日計量:120.8ポンド(54.7キロ)
WBC10位・IBF12位・WBO11位(WBAランク外)
戦績:20戦全勝(18KO)
身長:175センチ,リーチ:165センチ
右ボクサーファイター

◎前日計量


※フル・ウェイイン
https://www.youtube.com/watch?v=E1tChZUx4Cs


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■リング・オフィシャル:未公表


43歳の閃光三度び日本のリングへ - 両国トリプル世界戦プレビュー 【堤 vs ドネア Part 2】 -

カテゴリ:
■12月17日/両国国技館/WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
正規王者 堤聖也(日/角海老宝石) vs 暫定王者 ノニト・ドネア(比)



「倒されたら立ち上がって倒し返せばいい」

「今のドネアに負けることは許されない」

「ずっとずっと準決勝にいる感じです」

発する言葉の端々に、この試合に懸ける堤の覚悟が滲み出る、自身に有利なオッズについて聞かれれば、「ドネアを低く見過ぎ」だと意に介さず、必殺の左フックに対する警戒とともに、「何が何でも突破しなければ(すべてが水泡に帰す)」との決意が溢れ出す。

<1>BetMGM
堤:-275(1.36倍)
ドネア:+230(3.3倍)

<2>シーザース
堤:-380(1.26倍)
ドネア:+260(3.6倍)

<3>ウィリアム・ヒル
堤:2/7(1.29倍)
ドネア:11/4(3.75倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
堤:4/11(1.36倍)
ドネア:3/1(4倍)
ドロー:18/1(19倍)


本来ならば、7月にやる予定だった暫定王者アントニオ・バルガス(米)とのWBA内統一戦を、2年前から不調を訴えていた左眼の手術を理由に延期。堤は休養王者への横滑りを余儀なくされ、バルガスが正規へと昇格。

手術は左右両眼に行われ、無事な回復が伝えられると、ペンディングになっていたバルガス戦が12月17日開催でフィックスされるも、今度はバルガスが私的理由(母親の逝去による精神的なショック)で戦線離脱。

何とか日本開催に持ち込み、承認料の荒稼ぎを狙うお手盛りとは言え、6月にアルゼンチンで暫定王座を獲得したドネアとの対戦をWBAが義務付け。キャリア最大のライバルでもあり、戦友でもある比嘉大吾(白井具志堅→志成)に引導を渡した格好のバルガスの撤退は、堤のモチベーションに少なからぬ影響を与えたに違いない。

なおかつ代わりに浮上したドネアは、どこからどう見てもキャリアの終幕を迎えており、最短での殿堂入りを確実視されているとは言え、半ば「勝って当たり前」と表すべき状況。戦友比嘉の敵討ちという、年末に打ってつけのストーリーも含めて、色々な意味でバルガスの方がやり易かった。


バルガス戦を飛ばす原因となった眼疾は、懸念材料の筆頭。ファンなら誰もが気がかりで心配をしている筈。左眼の角膜に傷ができてしまい、痛みと濁りで酷い時はまともに目を開けていられなかったというから、そんな状態でキャリアを左右する大勝負をよく続けていたものだと驚くばかり。

症状を放置して治療が遅れれば、角膜の上皮が欠損するなどして、より深い層にまで病巣が浸透。角膜潰瘍を発症する恐れもあるという。角膜を傷つける原因のトップは、コンタクトレンズ装着時のアクシンデントとのことだが、堤の場合、やはり激闘の代償で負った戦傷ではないかと疑ってしまう。

今後も戦い続けていく以上、傷病名や状態をつまびらかに出来ない事情は理解するけれど、そうであるがゆえに心配も尽きない。手術が両眼に及んだという点も、詳細を知ることができないファンの不安を増幅する。「もう問題ない。万全です」と語る堤の言葉を、今はただただ信じるしかない。


◎公開練習
2025年12月3日/oricon


オープン・ワークアウトの堤は、パンチにも動きにもキレがあって好調そのもの。石原トレーナーとのミットワークでも、鋭いジャブから小気味のいいショートのコンビネーションを叩き込み、これだけ見ていれば頼もしい限り。

前日計量にはゲッソリ殺げた頬で登場。大胆にウェイトを上げ下げしてきたドネア以上に、減量は過酷さを増している様子。止むを得ないことではあるが、ここからのリカバリー,回復が何よりも重要になる。

◎計量後の囲み取材
2025年12月16日/oricon



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◎参考にすべきサンティアゴの戦い方

公称159センチのアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)は、あえて遠目の中間距離をベースにして、左フックのカウンターを徹底して警戒しながら、鋭く素早い踏み込みで大きなドネアとの距離を潰すことに成功した。

同じ位置に留まらないよう、頭の位置にも気をつけつつ、踏み込む時にはさらにクラウチングを深くして、西岡利晃を沈めた(右)アッパー対策も兼ねるなど、至るところに工夫の跡が伺える。

もともとドネアのディフェンスには穴が多く、特にジャブを貰う確率が高い。あれだけの攻撃力と決定力があれば、オフェンスに偏重しがちになるのは当然で、左リードを無造作に出しては、引き手の戻りがおざなりになるところへオーバーハンドの右を狙い打たれる場面も増えた。


”フィリピノ・フラッシュ”の語源となったスピード&シャープネスを最大限に活かし、先に右(オーソドックス)を打たせておいて、一瞬遅らせてクロスで放つ電光石火の左フックは、”後の先”とも言うべき芸術の域に達していた。

加齢と勤続蓄積により、ダルチニアン,シドレンコ,モンティエルを血祭りに上げた当時の絶妙なタイミングは失われたが、破壊力は健在と見るのが妥当で無難。ドネアに容易に肉薄されない為にも、立ち上がりの早い時間帯に、当たらなくてもいいから(左右どちらでも)強打を見舞っておきたいところではある。

ただし、ドネアが元気な前半戦(3~4ラウンズ)の間は、正面突破の突進はしない方がいい。賢明なサンティアゴがやったように、どちらかと言えばロング・ディスタンスに身を置き、ドネアの打ち終わりに合わせて飛び込み、そのままサイドへ脱出するか、いっそくっついてブレイクを待つ。

右のオーバーハンドも常に狙いたいが、打ち込み際は頭と左肩を左サイドへ傾け、上体を沈めながら振り抜く。きめ細かい前後のステップを踏み、ドネアが疲れて集中の維持が難しくなるまで大振りは慎む。


せわしなく丁寧な出はいりとフェイントを繰り返し、前後左右に揺さぶりをかけ続けて、ドネアの頭脳を自由にさせないことが肝心。堤の眼に不安が無ければ、マージンはともかく順当に3-0の判定をモノにできる。

その為にも、とにかく拙攻・攻め急ぎは厳禁。豊富なアマ経験を今こそ総動員して、サンティアゴと同程度に攻防をまとめることさえ出来れば、後半から終盤にかけてストップを呼び込み、現役にこだわるドネアの執念を断つことも可能。

前半3~4ラウンズ、できれば6ラウンドを過ぎるまでは、攻防が単調かつ粗く雑にならないよう集中を切らさず、ドネアの左リードがルーズになる瞬間を逃さず、右を決め切って欲しい。

左ボディと十八番にする上下のコンビネーションは、その為の囮,陽動と考えるくらいで丁度いいのでは。


◎堤(29歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
WBAバンタム級王者(V1),元日本バンタム級王者(V2/返上)
戦績:15戦12勝(8KO)3分け
世界戦:2戦1勝1分け
アマ通算:101戦84勝(40RSC・KO)17敗
九州学院高校→平成国際大学
2013年(平成25年度)高校選抜L・フライ級優勝
※高校選抜:JOCジュニアオリンピックを兼ねる
身長:166センチ,リーチ:164センチ
血圧:157/91
脈拍:46/
体温:36.7℃
※計量時の検診
好戦的な右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)


◎ドネア(43歳)/前日計量:117.7ポンド(53.4キロ)
現WBAバンタム級暫定王者(V0)
戦績:51戦43勝(28KO)8敗
---------------------------
世界戦通算:27戦20勝(12KO)7敗
■5階級制覇
(1)IBFフライ級:2007年7月~2009年7月(V3/返上)
(2)WBA S・フライ級暫定:2009年8月~2010年10月(V1/返上)
(3)WBC・WBO統一バンタム級:2011年2月~2012年2月(V1/返上)
(4)WBO J・フェザー級:2012年2月~2013年4月(V2)
(5)IBF J・フェザー級:2012年7月~10月(V0/返上)
(6)WBAフェザー級スーパー:2014年5月~10月(V0)
(7)WBO J・フェザー級:2015年12月~2016年11月(V1)
(8)WBAバンタム級:2018年11月~2019年11月(V1)
(9)WBCバンタム級:2021年5月~2022年6月(V1)
(10)WBAバンタム級暫定:2025年6月~(V0/在位中)
---------------------------
アマ通算:68勝8敗(2000年シドニー五輪代表候補)
2000年全米選手権優勝
1999年インターナショナル・ジュニア・オリンピック(メキシコシティ)金メダル
1999年ナショナル・ゴールデン・グローブス ベスト8
※階級:L・フライ級
身長:170.2センチ,リーチ:174センチ
※井上尚弥第1戦の予備検診データ
血圧:121/88
脈拍:130/
体温:35.5℃
※計量時の検診
右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)


◎前日計量


◎前日計量:U-NEXT公式
https://www.youtube.com/watch?v=YSMvH0Olk7s


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■オフィシャル

主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)

副審:
レシェック・ヤンコヴィアク(ポーランド)
ピニット・プラヤッサブ(タイ)
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)

立会人(スーパーバイザー):安河内剛(日/JBC)


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■高見に残る懸念と不安

レネ・サンティアゴ(プエルトリコ)との統一戦に臨む高見享介(帝拳)は、パンチの決定力(重さと硬さ)だけを採れば、具志堅用高から始まった108ポンドの歴代日本人チャンプの中でも突出している。

持ち前の強打で一気に押し潰してしまうのがベストには違いないが、同門の岩田翔吉がやられたように、距離を縮める前に動かれすかされ、誤魔化し戦術に絡め取られて、空転を繰り返す恐れは十二分。

とにかく上体が突っ立てしまわないよう、ある程度ガードを楽に構えて、長めの距離をキープしながら間断なくジャブを突き、テンポ良くリズムを刻んで圧力をかけつつ、サンティアゴを呼び込む工夫も必要になる。


オラスクアガに挑む桑原は、遅かれ早かれのるかそるかの勝負に出るしかない。まともにボクシングをやっていたら、オラスクアガにプレスされて万事窮す。タイミングの余り良くない挑戦だが、チャンスはすべからくこうしたもの。

8~9割方の確率で、オラスクアガのKO防衛との見立てにならざるを得ない。

43歳の閃光三度び日本のリングへ - 両国トリプル世界戦プレビュー 【堤 vs ドネア Part 1】 -

カテゴリ:
■12月17日/両国国技館/WBA世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
正規王者 堤聖也(日/角海老宝石) vs 暫定王者 ノニト・ドネア(比)




数多あるプロスポーツの世界には、そのジャンルやレベルを問わず、老いを知らない(拒否し続ける?)トップスターが時折出現する。

選手生命を左右する大きな故障の有無や、予期せぬ病魔との闘い等々はひとまず置くとして、トップシーンでの活躍が期待できる年齢の限界も、概ね30代前半~半ばが明確な分岐点となり、長くても30代後半というのが概ね共通する理解だろう。

80年代に始まった年間にこなす試合数の激減に加えて、旧ソ連・東欧のステート・アマの流入が本格化したは90年代以降、選手の高齢化が急速に拡大浸透したプロボクシングは、現役選手の寿命延長だけでは済まず、70~80年代にピークを迎えて引退したかつてのビッグネームたちまでが実戦のリングに舞い戻り、重量級を中心に”シニア・リーグ”の様相を呈した。

L・ヘビー,クルーザー,ヘビーの最重量3階級は、王国アメリカ(黒人),ロシア(旧ソ連邦),キューバのアマ3強でさえ図抜けた才能が現れなくなり、深刻化する一方の人材不足・枯渇に喘ぎ、高齢選手に頼らざるを得ない状況が尾を引き続けている。


そうした最重量ゾーンでも、40歳を超えて第一線に留まることは容易ではなく、2006年春から2015年の冬まで、9年余りもの長きに渡ってヘビー級を支配し、WBCを除く3団体をまとめたウラディーミル・クリチコは、39歳8ヶ月でタイソン・フューリー(当時27歳)の軍門に下り、節目となる連続V20を阻止された。

1年半の休息を経て41歳で復帰したが、アンソニー・ジョシュアに終盤11回TKO負け。20年に及ぶキャリアに幕を引く。

右膝の重症(前十字靭帯断裂)を理由に、34歳4ヶ月(2005年11月)で王者のまま引退を表明した実兄ヴィタリも、2008年10月、37歳の誕生日を目前にカムバック。復帰戦でいきなりWBC王座を獲得すると、2012年9月まで9度の防衛に成功。

弟ウラディーミルとともに4年間ヘビー級を支配すると、41歳2ヶ月で再び王者のまま引退。本格的な政界進出に乗り出す。


秀逸なパワーとスピード&シャープネスの共存が要求される最激戦区の中量級と、スピード&クィックネスに依存せざるを得ないフェザー以下の軽量級は、豊富な運動量と手数が必須とされるがゆえに、30代半ばを超える超高齢選手の活躍はほとんど不可能と考えられてきた。

21世紀の潮流とも言うべき抱きつき合戦(露骨なクリンチ&ホールドによる安直なインファイト潰し)の蔓延に加えて、バーナード・ホプキンスとフロイド・メイウェザーが流行らせた「省エネ・安全策」の影響等により、20世紀のスタンダードだった本物のファイターとフットワーカーが払底してしまい、昨今は軽量級でも運動量と手数の減少傾向が顕著と言わざるを得ない。

超高齢ボクサーの存在を可能にする条件が相応に整っている(?)とも言えるけれど、40歳を超えて世界に挑み続けた最軽量ゾーンの老雄となると、かつての4冠王レオ・ガメス(ベネズエラ/105~115ポンド,全てWBA)、若きモンスター井上尚弥に介錯された通算V27の2冠王オマール・ナルバエス(亜/WBO112~115ポンド)、ドネアに続いて4冠(105~115ポンド:WBO/フライ級のみIBF)を達成したフィリピンの老練ドニー・ニエテスの3人ぐらいしか思い浮かばない。


153センチのガメスを筆頭に、ナルバエス(159センチ),ニエテス(160センチ)と皆小柄で、階級を3つ4つと上げて戦い、ガメスとナルバエスはバンタム級の奪取に失敗している。

激闘の代償と言ってしまえばそれまでだが、ここ2~3年で急激に衰えた元P4Pランカーのファン・F・エストラーダ(メキシコ/公称163センチ/フライ級とS・フライ級を制覇)が現在35歳。

エストラーダとのライバル争いに惜敗したロマ・ゴン(160センチ/ミニマム~S・フライまでの4冠制覇)は、112ポンドのフライ級で軽量級史上初のP4P1位となったが、29歳で進出した4つ目の115ポンドでフィジカルの限界を露呈し一気に失速墜落した。

エストラーダとのラバーマッチに敗れた後、1年半余りのブランクを経て再起したが、バンタム級への進出は諦めたらしく(?)、昨年と一昨年にS・フライ級を少し超えた調整で1試合づつこなしはしたものの、本格的な実践復帰と評価できる状況にはない。

彼らのようにタフな試合巧者を持ってしても、115ポンドで体格面での限界に達しただけでなく、キャリアメイクにおいて年齢的な限界が露になったと言える。


ロマチェンコと同様、五輪連覇(2008年北京・2012年ロンドン)の栄光を手土産に、33歳でプロに転じた中華の英雄ゾウ・シミンは、試合中のバッティングで負った眼疾が回復せず、左眼の視力をほとんど失い、36歳でリングからの撤退を余儀なくされた。

やはり五輪を連覇したキューバの天才リゴンドウとともに、”タッチゲームの申し子”とも言うべき存在だったゾウは、トップランクと契約してフレディ・ローチの指導を受け、積極果敢に打ち合って攻め崩すファイター化の路線を採ったが、パッシヴ過ぎてHBOから嫌われ、トップランクから契約を打ち切られて試合枯れしたリゴンドウの失敗を反面教師にしたのか、”プロ向きのスタイル”を意識し過ぎたことが災いとなった格好。

ただし、アマ時代の”タッチ&ラン”をそのまま継承して、スタイル・チェンジしていなかったとしても、三十代の半ばを超えてもなお、12ラウンズの長丁場をせわしない先行逃げ切りでやり切れたのかどうかは疑問の余地が残る。


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◎人間誰しも歳を取る-老いには勝てない

階級の問題も含めてにはなるけれど、最軽量ゾーンにおける超高齢ボクサーの成功は事程左様に難しい。

そうした諸事情を鑑みれば、モンスターとアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)に連敗を喫した後、「試合の有無に関わらず、常に練習は欠かさない(ドネア自身の弁)」にしても、半ば引退同然の状態で2年近くを過ごした42歳のレジェンドの暫定王座復帰について、無自覚に肯定しづらいと感じるのは私だけではないだろう。

何となれば、ドネアは30代の半ばを過ぎてからウェイトを落としている。フェザー級に上げてWBAのスーパー王座に就いて5階級を獲ったまでは良かったものの、初防衛戦でニコラス・ウォルタース(ジャマイカ)に壮絶なノックアウト負け(2014年夏/31歳)。

126ポンドを一旦諦め、122ポンドのS・バンタム級に戻して4連勝(3KO)をマーク。リゴンドウがはく奪されたWBO王座に復帰したのも束の間、ジェシー・マグダレーノ(米)に0-3判定で完敗。2018年4月には、フェザーでの夢よもう一度とアウェイのベルファストに乗り込んだが、カール・フランプトン(英/アイルランド)に0-3判定負け。

この時点でドネアは35歳を過ぎており、冴えないパフォーマンスが引き鉄となって引退を取り沙汰されたが、118ポンドのバンタム級で開催されるWBSS(orld Boxing Super Series)への参戦を表明する。


36歳の誕生日を目前に控えた11月3日、の初戦に臨み、我らがモンスターを押さえて優勝候補の筆頭だったライアン・バーネット(英)に奇跡とも言うべき4回TKO勝ち。バーネットが突然腰を押さえて動けなくなり、戦闘不能に陥った。後に重度の腰椎すべり症に苦しんでいたことが判明。バーネットはトップランクと契約して2019年5月に再起したが、期待したほどに回復できず27歳で引退を表明。

圧倒的不利の予想を靴がしてWBAのベルトを奪取。しかし、翌2019年4月にセットされた2回戦の相手は、時のWBO王者ゾラニ・テテ(ガーナ)。それ自体が反則と表してもいい、175センチのタッパに恵まれた痩身の黒人パンチャー。前評判は当然テテ推し。

ところが本番の4日前になって、テテが肩の不調を訴え欠場。代役の黒人中堅選手に必殺の左フックを決めて6回KO勝ち。もはや神風としか思えない僥倖に後押しされ、ファン・C・パジャーノ(ドミニカ),マニー・ロドリゲス(プエルトリコ)を圧巻の即決KOに沈めて、世界中を騒然とさせたモンスターとの決勝を引き当てた。


そして、さいたまスーパーアリーナで実現した印象深い第1戦(2019年11月7日)。11日後の11月18日に37歳を迎えるドネアは、望み得る選択肢の中でも最高最良のスタートを切ったモンスターを第2ラウンドに捉えて、起死回生の左フックを一閃。

モンスターの右眼を破壊し、唯一無二の苦闘を強いることに成功。ポイントでリードされながらも、第9ラウンドには見事な右ストレートを叩き込み、モンスターをダウン寸前まで追い込む。

評価をV字回復させたドネアだが、武漢ウィルス禍により急停止。1年半の休止を余儀なくされ、加齢+ブランクの影響が懸念される中、いきなり世界挑戦を発表。弟拓真に初黒星を与えたナルディーヌ・ウバーリ(仏)を、僅か4ラウンドで撃破してまたもや世界を驚かせる(2021年5月/38歳)。

およそ9年ぶりにWBC王座に返り咲くと、39歳になった年末12月には、同胞の駿馬レイマート・ガバーリョも同じ4回KOに屠り、バンタム級で4団体の完全制覇を目指すモンスターとのリマッチを実力で引き寄せた。


2022年6月、3年前の初戦と同じさいたまスーパーアリーナで、再びモンスターと相まみえたドネアは凄絶な2回KOに散る。ウォルタース戦をも凌駕する完敗。文字通りの蹂躙。惨敗と言い換えても差し支えがないけれど、ドネアに対して「惨」という表現を用いるのは流石に憚られる。

誰もが引退を納得せざるを得い、決定的かつ致命的な敗北だったにも関わらず、ドネアはリングからの撤退を拒絶。1年近い休息を得て準備を整える間、WBOを吸収して4団体をまとめたモンスターがS・バンタムへと去り、4本のベルトが空席になると、WBCが決定戦を承認(2023年7月/40歳)。

大抜擢された4位のメキシカン,アレハンドロ・サンティアゴが、国際的な認知を持たないというだけでなく、公称159センチの小兵だったことから、試合前の予想はドネア有利に傾くも、サンティアゴのスピーディな出はいりと連打の回転に対応し切れず、大差ではないが明白な0-3の判定(112-116×2,113-115)を失いキャリア初の連敗となった。


体格差を活かそうとしたのか、モンスターとの2試合やウバーリ戦に比べても、この日のドネアはリバウンドのヴォリュームが大きかったように思う。動きと反応が鈍く見えたのは、サンティアゴのスピード&キレ(手足及び身体全体)が想像を超えて良かった為でもあるが、加齢の影響と言うよりは、リバウンドの計算を読み間違えた可能性が高いとの印象が強い。

ドネアの間合いと距離を見切ったサンティアゴは、さほどの時間を要さず勝利への自信と確信を掴み、歴戦の雄に対して臆することなく堂々と渡り合い、文句無しの下克上を成し遂げ、中谷潤人との防衛戦に駒を進めた。


◎公開練習


◎敵情視察に訪れた石原雄太トレーナー(ワタナベ→角海老)のインタビュー(囲み)を含む映像
2025年12月12日/マイナビニュース
https://www.youtube.com/watch?v=-Wbchg105D8

◎ドネアに試合直前独占インタビュー
2025年12月14日/A-SIGN.BOXING.COM
※良好円満かつ深い縁を結んだ石井会長(横浜光ジム)の単独スクープ(?)


サンティアゴにいいところなく敗れたドネアは、2023年の後半に続いて2024年を丸々1年休み、本年6月14日にブエノスアアイレスで開催されたWBAのKOドラッグ興行に参戦。WBA8位にランクされるチリの元フライ級コンテンダー,アンドレス・カンポスに対峙。

2023年6月に渡英し、ウェンブリー・アリーナでサニー・エドワーズ(英)のIBFフライ級王座に挑み、大差の0-3判定に退いたカンポス(公称161センチ)は、同年9月の再起戦をフライ級で調整。フィリピンから招聘した中堅クラスを8回でKOしたが、2024年5月の再起2戦目でコロンビアの中堅選手と10ラウンズを引分け。

10月にはメキシコのカンクンまで遠征。リオ五輪代表からプロ入りしたホセリート・ベラスケス(32歳/19勝1敗1分け)に6回TKO負け。今年4月の復帰戦も115ポンドのS・フライ級で仕上げると、ベネズエラの無名選手に3回TKO勝ち。

118ポンドでの実績は皆無。加えて小柄なカンポスをバンタム級の8位に押し込み、オールドタイマーと化した(?)ドネアの生贄に差し出した。中南米限定で長く肝いりのイベントを盛り上げ、ドネアの顔と名前でもう一稼ぎ(割のいい承認料をゲット)したい・・・口さがなく明け透けに申し上げればそういう構図。


サンティアゴ戦の失敗を教訓(?)に、ドネアはリバウンドを抑えて軽めに仕上げていたが、反応の遅れと鈍さに改善は見られず、これまでには余り感じなかった膝と足首(下肢)の硬さが気になった。

ボクサーの老朽化を示す典型的な兆候であり、不惑を超えるまで顕著な衰えを顕在化させなかった鍛錬と節制は率直に凄いと思うし頭も下がるが、久々にサウスポーでスタートする奇策(頭が衝突してすぐに右構えに戻した)も、どちらかと言えば余裕の無さと映ったのはこちらの考え過ぎか。

良く言えば一進一退。悪し様に言えば、リスクテイクを避ける駆け引きの応酬。遥か格下の小さなカンポスが、大怪我せずにリングを降りたいと願うのは当然。しかし調子の上がらないドネアにも、いつもの積極果敢な切り崩しが見られない。

無難なやり取りに終始する見せ場の少ない8ラウンズを終えると、第9ラウンドにまた頭がぶつかり、ドネアが右の繭尻から出血。深さはともかく、横に長いカットでストップも止む無しとは思うけれど、中断しようとしない主審にドクターチェックを自らアピールしたドネアに、継続の意思はほとんど感じられなかった。


オッズも正直だ。ここ一番のドネアは怖い。老いと衰えは隠しようもないが、13歳年少の荒ぶる日本人ファイターを沈める”序盤の一撃”は充分に有り得る。そんな目論見は、当たらずとも遠からじ。なかなかに良い見立てだと感心させられる。

<1>BetMGM
堤:-275(1.36倍)
ドネア:+230(3.3倍)

<2>シーザース
堤:-380(1.26倍)
ドネア:+260(3.6倍)

<3>ウィリアム・ヒル
堤:2/7(1.29倍)
ドネア:11/4(3.75倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
堤:4/11(1.36倍)
ドネア:3/1(4倍)
ドロー:18/1(19倍)

公開練習で披露したドネアの肉体はしっかりシェイプされており、前日計量時も過度にやつれた印象は無く、ウェイト・コントロールもまずまず順調に行ったのではないかと思われる。

試合直前のオープン・ワークアウトだけに、持てる力を全開という訳にはいかず、動きと迫力は割り引いて見なければいけないと承知はしつつ、モンスターとのリマッチに向けて公開された3年前の映像(アップを兼ねたシャドウとヘビーバッグ)に比べて、下半身を中心にした柔軟性の後退を実感せざるを得ない。

◎Nonito Donaire Nag Super Saiyan! Boxing Training for Inoue
2022年06月4日/Powcast Sports
https://www.youtube.com/watch?v=3tgnYn9y8XQ

そしてさらに遡ること6年前。WBSSのファイナルを争う第1戦当時のワークアウトを見ると、近い将来の殿堂入りを控えた”フィリピンの閃光”にも、ロートル化の波が容赦なく押し寄せている現実を再認識させられる。

ここまで仕上げて来ただけでも、本当に大したものなのだが・・・。

◎EXPLOSIVE PADS FROM NONITO DONAIRE, A WEEK BEFORE FACING NAOYA INOUE
2019年11月1日/UncleTboxing TV
https://www.youtube.com/watch?v=UkApv5EJyWM


※Part 2 へ


◎堤(29歳)/前日計量:ポンド(キロ)
WBAバンタム級王者(V1),元日本バンタム級王者(V2/返上)
戦績:15戦12勝(8KO)3分け
世界戦:2戦1勝1分け
アマ通算:101戦84勝(40RSC・KO)17敗
九州学院高校→平成国際大学
2013年(平成25年度)高校選抜L・フライ級優勝
※高校選抜:JOCジュニアオリンピックを兼ねる
身長:166センチ,リーチ:164センチ
好戦的な右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)


◎ドネア(43歳)/前日計量:ポンド(キロ)
現WBAバンタム級暫定王者(V0)
戦績:51戦43勝(28KO)8敗
---------------------------
世界戦通算:27戦20勝(12KO)7敗
■5階級制覇
(1)IBFフライ級:2007年7月~2009年7月(V3/返上)
(2)WBA S・フライ級暫定:2009年8月~2010年10月(V1/返上)
(3)WBC・WBO統一バンタム級:2011年2月~2012年2月(V1/返上)
(4)WBO J・フェザー級:2012年2月~2013年4月(V2)
(5)IBF J・フェザー級:2012年7月~10月(V0/返上)
(6)WBAフェザー級スーパー:2014年5月~10月(V0)
(7)WBO J・フェザー級:2015年12月~2016年11月(V1)
(8)WBAバンタム級:2018年11月~2019年11月(V1)
(9)WBCバンタム級:2021年5月~2022年6月(V1)
(10)WBAバンタム級暫定:2025年6月~(V0/在位中)
---------------------------
アマ通算:68勝8敗(2000年シドニー五輪代表候補)
2000年全米選手権優勝
1999年インターナショナル・ジュニア・オリンピック(メキシコシティ)金メダル
1999年ナショナル・ゴールデン・グローブス ベスト8
※階級:L・フライ級
身長:170.2センチ,リーチ:174センチ
※井上尚弥第1戦の予備検診データ
右ボクサーファイター(スイッチ・ヒッター)

◎前日計量


◎前日計量:U-NEXT公式
https://www.youtube.com/watch?v=YSMvH0Olk7s


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主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)

副審:
レシェック・ヤンコヴィアク(ポーランド)
ピニット・プラヤッサブ(タイ)
ロバート・ホイル(米/ネバダ州)

立会人(スーパーバイザー):安河内剛(日/JBC)

失格のフルトンにライト級暫定王座? - O・フォスター vs S・フルトン プレビュー -

カテゴリ:
■12月6日/フロスト・バンク・センター(旧称AT&Tセンター),テキサス州サンアントニオ/WBC世界S・フェザー級タイトルマッチ12回戦
王者 オシャキー・フォスター(米) vs WBCフェザー級王者 スティーブン・フルトン(米)



「ふーん・・・」

S・バンタム級時代に繰り広げた接戦で因縁を結んだ(?)フィゲロアにけじめを着け、ベルトの統一に向けて急ぎ足で動き出すのかと思いきや、130ポンドに上げて3階級制覇に挑む。

東京で一敗地に塗れた我らがモンスターの参戦を待たずして、このまま126ポンドを後にしてしまうのか、それとも結果次第で王座を保持したまま出戻るつもりなのか。いずれにせよ、フルトンの3冠挑戦が報じられた時、さしたる感慨にふけることもなく、思いの外(ほか)恬淡としている己に気づく。


「イノウエがやるべきことをやったら、もう一度戦う。そして私自身の実力をあらためて証明したい。」

帰国後に受けたインタビューのどれかで、あるいはフィゲロアへの挑戦(再戦)が決まった直後だったかもしれないが、リベンジへの思いを口にしていたと記憶する。しかし、それはそれ、これはこれ。

サイズ(階級&体格)の違いは、明白な実力差を埋めて余りあるアドバンテージを大きな選手に与える。その事実を踏まえる前提で、両雄のリマッチ(126ポンド)を想像してみるが、どう考えを張り巡らせようとも、我らがモンスターの優位は動きそうにない。

再戦があればあったで良し。無ければ無いでそんなものかと・・・。


それより何より問題なのは、ちっともワクワクしない期待感の無さ。130ポンドと126ポンドのWBC現役王者対決。しかもチャレンジャーのフェザー級王者には、3階級制覇が懸かっている。90年代以前(20世紀)のプロボクシングなら、世界中のファンと関係者が注視せずにはいられない「事件」だった。

WBAとWBC老舗2団体が我先にと争いながら、猛然と突っ走り続けた乱脈なチャンピオンシップ運営が招いた当然の帰結。ミもフタも無い言い方で恐縮だが、チャンピオンとランカーの粗製乱造による権威の失墜と喪失は、止まるところを知らない。

リスク回避を第一に、ポイントメイクを主眼にして揺るがない王者フォスターのスタイルが、興味と関心の低下にさらなる拍車をかける。上手いと前向きに評価することもやぶさかではないものの、それ以外に評価のしようがないボクシング。

そしてムーヴィング・センス&クィックネスを含む完成度は、例えばシャクール・スティーブンソンの域には達しておらず、手足と身体全体のスピード&シャープネスにおいても、世界最高水準の太鼓判を押すことは難しい。


ウェルター級に転じたフロイド・メイウェザーが、露骨極まりないラスベガス・ディシジョンのバックアップを背景に確立した”タッチ&アウェイ”は、王国アメリカで戦う黒人選手たちを中心にして、世界的規模で瞬く間に拡散浸透。数多くのクローン(亜流)を生むこととなったが、フォスターもその列に並ぶ1人。

どうしようもない”出来損ないのコピー(失礼)”が引きも切らず、玉石混交の渦の中でフォスターは十二分に上等の部類と評せはするけれど、「何を置いても観なければ」と、筋金の入ったファンのモチベーションを掻き立ててはくれない。

共産主義体制の崩壊により、90年代に始まった旧ソ連・東欧出身のエリート・アマ流入は、王国アメリカの屋台骨を揺るがす深刻な人材の枯渇(特に中~重量級の黒人選手のレベル低下)、年間にこなす試合数の激減と相まって、プロボクサーの高齢化を一気に加速拡大した。

執拗なクリンチ&ホールドの横行を、むしろ積極的な容認支援すら惜しまない王国アメリカのレフェリングの堕落が、見るも無残な抱きつき合戦と、それによる安易なインファイト潰しを常態化させてしまう。

ご本尊のメイウェザー様が第一線を退き、落ちるところまで落ちたレフェリング&スコアリングにようやく揺り戻しの兆しが見られ、今やプロボクシングの頂点に君臨しようかという(?)トゥルキ長官の「トムとジェリー(必死に逃げ回るベイビー・フェイスのネズミを悪漢のネコが必死に追いかけ回す)は真っ平御免」発言に勇気付けられつつ、プロボクシングに巣食い根付いた”タッチ&アウェイ”からの脱却はほとんど不可能だろう。

何となれば、当のフルトンも立派な”メイウェザー・クローン”の流れに属する典型的な現代版ボクサータイプであり、何を血迷ったのか、フェザー級の初陣でタフなカルロス・カストロを相手にスタートから猛然と打ち合いに雪崩れ込み、したたかに効かされノックダウンを喫した挙句、薄氷の2-1判定に救われる大失態を経て、乾坤一擲のフィゲロア戦では原点回帰を選択。首尾良く2階級制覇に辿り着いた。



駆け引きとディフェンスに重きを置く(せざるを得ない)という点では、似た者同士と言えなくもない。しかしよりアクティブかつ、時と場合によってはインファイトにも応じるフルトンを、私個人は好ましいと思うし支持もしたい。

ただし、130ポンドから上のクラスになると、S・バンタムでストロング・ポイントになっていたサイズのアドバンテージがその機能を失う。

遠めの中間距離をベースにしつつ、間断のない出はいりを繰り返すフォスターは公称174センチ。130~140ポンドでは十分な長身と言える。リーチも183センチだから、正確な数値だと仮定すればメイウェザー(H:173センチ/R:183センチ)とほとんど同じ。

対するフルトンのタッパは公称169センチ(リーチ:179センチ)。ワールドクラスのトップで覇を競うレベルになると、10センチ前後までのサイズの不利をものともせず、傍目には容易く克服してのけるトップボクサーが大勢を占める。

しかしそうした場合、小さな選手に不可欠となるのがフィジカルの強さ。一定程度以上のパンチ力も、当然あるにこしたことはない。


フルトンが126ポンドで披露した2試合のみを持って、130ポンド以上では通用しないと結論付けるのは拙速の謗りを免れず、流石に憚られる。曲がりなりにも世界の第一線で鎬を削る技術と経験があり、より大きくてリスクテイクを嫌うフォスターを相手に、フルトンがいかなる戦術で打開を図るのか。

モンスターとは違い、フォスターが強打を振るって倒しにかかることはまず考えらない。KOされる心配はゼロに等しいけれど、右のカウンターを決め切るチャンスは自ずと限られる。

試合の内容と展開、そして結末は全然異なるにしても、我らがモンスターとの大勝負に臨んだ際、生命線のリードジャブで遅れを取り、強打の応酬だけでなく、分があると思われていたタッチ合戦でも優位に立てず、文字通りの完敗した悪夢がデジャヴのように蘇って仕方がない。

痺れを切らしたフルトンが前に出ざるを得なくなり、攻防のキメが粗くなったところをコツンと狙い打たれて、窮鼠猫を噛むインファイトもクリンチ&ホールドで阻まれる。目立ったクリーンヒットも無いまま、両者ともに綺麗な顔のまま終了。無念の小差0-3判定負けでフルトンが怒りの会見・・・そんな光景が当たり前に浮かんでしまう。

互いに安全圏から出ようとせず、フェイントとインサイドワークの掛け合いで12ラウンズを終えるのが想定し得る最悪のシナリオ。そうした微妙な塩梅を象徴するかのように、掛け率も拮抗。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
フォスター:-120(1.83倍)
フルトン:+110(2.1倍)

<2>シーザース
フォスター:-135(1.74倍)
フルトン:+105(2.05倍)

<3>ウィリアム・ヒル
フォスター:10/11(1.91倍)
フルトン:10/11(1.91倍)
ドロー:14/1(15倍)

<4>Sky Sports
フォスター:19/20(195倍)
フルトン:15/13(2.15倍)
ドロー:16/1(17倍)


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◎フルトンがよもやのウェイト・オーバー

そんなこんなを書き連ねていたら、「フルトンが2ポンドオーバーで失格」との一報が舞い込み言葉を失った。しかもあろうことか、WBCがライト級(135ポンド)の暫定王座決定戦を認めるという。

馬鹿馬鹿し過ぎて真面目に論じる気にすらなれない。天心 vs 拓真戦に立会人として臨んだマウリシオ・スレイマン会長が、満面の笑みとともに持参した「サムライ・ベルト」にも呆れたが、タガの外れっぷりに関する限り、またぞろ正規・暫定・スーパーの並立をやり出したWBA以上ではないのか。

承認料の未払いを理由に、WBCからS・ウェルター級のベルトをはく奪されたテレンス・クロフォードが、自身のSNSで痛烈極まりない正論をぶちまけて話題になっている。「良くぞ要ってくれた」と喝采を浴びる一方で、払うものを払わずシカトを決め込むクロフォードを全面的に擁護する気にもなれない。


その昔、WBAバンタム級王者時代のルイシト・エスピノサに、J・バンタム級のトップランカーだったタノムサク・シスボーベー(タイ)が挑むことになり、関係者の1人として臨席していたジョーさん(ルイシトの個人マネージャーになるのは後の話)が、下から上げてきたタノムサクが最後の最後まで減量に苦しんでいたことを明かしていた。

「1階級上げるから楽だろうとみんな思う。でも違う。余裕があるからとキャンプでの体重調整が贈れ気味となり、直前になって慌てるケースは珍しくない。」

ジョーさんはそんな具合に述べていたと記憶するが、タノムサクは計量の時刻までに何とか118ポンドのリミットを間に合わせた。


バンテージへの言いがかりの一件では、王国アメリカの本当に嫌な一面を見せられたが、ことコンディショニングについて、フルトン自身は真面目にやりくりする選手だと感じていただけに、2ポンドもオーバーしておいて下げる努力を放棄する居直りには、もはや付ける薬が無い。

130ポンドのNo.1と目されているのは、心身ともに万全ではなかったけれど、とにもかくにもジャーボンティ・ディヴィスと互角以上に渡り合ったラモント・ローチで間違いなく、私生活でトラブルの耐えないディヴィスが戦力外となった為か、同じリングでイサック・クルスとS・ライト級のWBC暫定王座を争う。

フルトンもローチも、勝敗の結果如何によらず、現在保持しているベルトはそのまま承認される気配が濃厚。明らかにWBCも末期状態・・・。


◎フォスター(31歳)/前日計量:130ポンド
WBC S・フェザー級王者(第2期:V0/第1期:V2)
戦績:26戦23勝(12KO)3敗
世界戦:5戦4勝(1KO)1敗
アマ通算;100戦超(詳細不明)
2012年ロンドン五輪バンタム級代表候補
オリンピック・トライアル:アントニオ・ニエヴェス(井上尚弥の初渡米の相手)と、代表権を得たジョセフ・ディアスに勝ったものの、トラメイン・ウィリアムズに2戦2敗。補欠として代表チームに残る。
2010年ナショナルPAL優勝(バンタム級)
リングサイド全国トーナメント優勝×5回
ナショナル・ジュニア・ゴールデン・グローブス優勝×2回
※いずれも年度と階級不明
身長:174センチ,リーチ:183センチ
右ボクサーファイター


◎フルトン(31歳)/前日計量:132ポンド
※2ポンドの超過で失格
前WBC・WBO統一S・バンタム級王者(WBO:V2/WBC:V1)
戦績:24戦23勝(8KO)1敗
世界戦:5戦4勝1敗
アマ通算:75勝15敗
2014年ナショナル・ゴールデン・グローブス準優勝
2013年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
2013年全米選手権準優勝
※階級:フライ級
ジュニア:リングサイド・トーナメント優勝
ジュニア・ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
※年度及び階級等詳細不明
身長:169センチ,リーチ:179センチ
右ボクサーファイター


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■リング・オフィシャル:未公表

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