引退撤回の

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■2月8日/ミケロブ・ウルトラ・アリーナ,ラスベガス/WBO世界J・ウェルター級タイトルマッチ12回戦
王者 テオフィモ・ロペス(米) vs WBO10位 ジャメイン・オルティズ(米)



唐突な引退を声明したかと思いきや、あっという間の撤回。ジョー・ルイスやモハメッド・アリの昔から、トップボクサーの引退宣言ほどアテにならないものはないとわかり切ってはいたし、26歳という年齢を考えれば、余程の怪我か重篤な疾病でもない限り、普通に考えて有り得ない。

早速ブリーチャー・レポートに「1億ドル超が約束されるなら翻意してもいい」との一報が出て、「やっぱり・・・」と頷く。


<1>TEOFIMO LOPEZ JR. SAYS HE’S RETIRING?AND NO ONE CLOSE TO HIM BELIEVES IT
2023年6月29日/リング誌
https://www.ringtv.com/655098-teofimo-lopez-jr-says-hes-retiring-and-no-one-close-to-him-believes-it/

<2>Teofimo Lopez Says He'd 'Only' Return to Boxing on $100M+ Contract After Retiring
2023年6月13日/Bleacher Report
https://bleacherreport.com/articles/10078979-teofimo-lopez-says-hed-only-return-to-boxing-on-100m-contract-after-retiring

<3><4>Teofimo Lopez Jr. claims to be 'retired' in aftermath of massive win over Josh Taylor
2023年6月11日/CBS Sports
https://www.cbssports.com/boxing/news/teofimo-lopez-jr-claims-to-be-retired-in-aftermath-of-massive-win-over-josh-taylor/

<4>Teofimo Lopez Not Retiring, Won't Vacate WBO Title Despite Previous Claims4202023年7月13日/Bleacher Report
https://bleacherreport.com/articles/10082558-teofimo-lopez-not-retiring-wont-vacate-wbo-title-despite-previous-claims


カネと政治力を併せ持つ有力プロモーターと渡り合う為に、支配下のボクサーが自らの引退を賭して場外戦を繰り広げること自体は、さほど珍しいことではない。

トップランクもご他聞に漏れず、キューバの軽量級を代表する両巨頭,ユリオルキス・ガンボア&ギジェルモ・リゴンドウとの派手な喧嘩別れは未だ記憶に新しく、契約満了まで辛抱することが出来ず、アラムが提示するマッチメイクを片っ端から断り続けたマイキー・ガルシアは、2年半に及ぶレイ・オフを甘んじて受け入れた。

最近では、ウェルター級に上げて以降、躍起になって追い続けたエロール・スペンスとの統一戦が一向に実現に向かわず、メディアを介してトラッシュトークを一度ならず繰り広げたテレンス・クロフォードも、ビッグマネー・ファイトへの渇望とともに、リゴンドウと同様「不当な低評価」への不満を訴えている。


2人が口にした「不当な低評価」は、マッチメイクとギャランティの決定権を握るトップランクとHBO,ESPNに対する抗議であるのと同時に、伸び悩むチケットセールスと視聴者数(ノンPPV)に象徴される、「ファンの見る眼の無さ」への逆批判も含む。

惨憺たる結果(5万件に届かなかったとされる)に終わったショーン・ポーター戦のPPVセールスと、さっぱりなゲートを槍玉に挙げられ、「彼は自身の市場価値をわかっていない。実態以上の評価と条件を我々は与えてきた」とアラムに突っ込まれたクロフォードは、最終的に民事訴訟を仕掛けて居直るしかなかった。

それでも、140ポンドでの4団体統一と3階級制覇のチャンスを得られた点は、ドネア戦とロマチェンコ戦を例外として、15~25万ドルの相場で我慢を強いられた軽量級のリゴンドウに比べれば、王国アメリカのマーケットを支える花形の中量級という大きな違いはあるにせよ、アラムの指摘が事実であることも認めざるを得ない。


トップランクとの契約切れを待つ間、マイキーのようにロマンを追ってケツをまくったりせず、丁々発止の駆け引きをやりつつ、試合のオファーには応じたリアリストのクロフォードは、アラムと別れて5年間待たされ続けたスペンス戦を遂に実現しただけでなく、ワンサイドの勝利をこれでもかと見せつけて、カネロに近いポジションを引き寄せ(?)ご満悦の体。

また、先月末から今月始めにかけて、唐突に引退を発表したシャクール・スティーブンソン(26歳)もアラムの有力な持ち駒だが、こちらは条件闘争ではなく、エドウィン・デ・ロス・サントス戦の塩っぷりを酷評され、感情的になっているだけとの見方が大勢を占めており、「テオフィモの”一時的な引退”以上に早い帰還」を確実視されている。


テオフィモに話を戻すと、ジョシュ・テーラー(英)を番狂わせの3-0判定に下して2階級制覇を達成した直後の表明だったこと、さらにベルトも返上していなかったことから、本気度を疑われたのも致し方がない。

「十中八九、トップランクに対する条件闘争。アラムがそれなりに譲歩して、すぐに翻すだろう。」

年季の入ったボクシング・ファンなら誰もがそう思っていた筈で、待遇が幾らかでも改善したのかどうかは定かではないが、現役の続行については大方の見立て通りになった。

◎ファイナル・プレス・カンファレンス


※ファイナル・プレッサー(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=4JAlIU3uxRA


直前の掛け率をチェックすると、結構な差が開いていた。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
テオフィモ:-650(約1.15倍)
J・オルティズ:+450(5.5倍)

<2>betway
テオフィモ:-599(約1.17倍)
J・オルティズ:+450(5.5倍)

<3>ウィリアム・ヒル
テオフィモ:1/7(約1.14倍)
J・オルティズ:9/2(5.5倍)
ドロー:18/1(19倍)

<4>Sky Sports
テオフィモ:1/6(約1.17倍)
J・オルティズ:6/1(7倍)
ドロー:22/1(23倍)


世界挑戦まで2試合のテストマッチを挟み、ダウンを奪われ2-1判定の辛勝を拾った(?)サンドロ・マルティン(スペイン)との転級第2戦は、仮想テーラー(自分より大きなサウスポー)として呼んだつもりが、打ち合い回避の逃げ足を徹底されたこともあって(事前に分かってはいた筈)、いい場面を作り切れずに終わったことが、本番のテーラー戦で福となった格好。

対するジャメインも、ロマチェンコの復帰戦に抜擢されて力及ばず敗れはしたものの、大いに奮闘して一躍注目を集めた後、1年近く休んで昨年9月にカムバック。138ポンド契約でのリング・リターンを無事に終えている。

世界を獲る前のデヴィン・ヘイニー、ホセ・ペドラサ(セミでキィショーン・ディヴィスと対戦予定)、アーノルト・バルボサ・Jr.らに敗れたメキシコの中堅,アントニオ・モランを大差の3-0判定に下しているが、階級アップのテストはこの1試合のみ。

3試合かけて140ポンドに頭と身体を慣らしたテオフィモに比べると、どうしても線の細さは否めない。5ポンドの差(ライト級のリミット上限:135ポンド)を埋めるのは、簡単なことではないと実感させられる。


勝つことを最優先させたテーラー戦では、「当て逃げ&クリンチ」が目に付いたテオフィモ。あらためて、スピード(素早い反応も含めた)こそが最大の持ち味だと強く認識した。妥当ロマチェンコをやってのけた戦術的ディシプリンを、ここぞという大一番で再び発揮したとも言えるが、それも生来の速さがあってこその2階級制覇。

テーラーの圧力に容易に押し負けないよう、フィジカル強化に努めたことも確かではあるものの、3本のベルトを矢継ぎ早に手放した英国の王者は、テオフィモのスピード&アジリティに対応し切れず、普段通りにプレスできなかったことが最大の敗因。


テオフィモが落ち着いてボクシングに撤した場合、中差以上のユナニマウス・ディシジョンで初防衛に成功すると見るのが、妥当な予想にはなる。

不安要素があるとすれば、テオフィモのムラっ気。開始ゴングと同時に、ジョージ・カンボソスを上から見下すように、後先考えずにブンブン振り回して前進。ディフェンスが完全にお留守になったところへ、絵に描いたような右カウンターを浴びてダウン。

挽回を焦ってさらに熱くなって打ち合い勝負から抜け出せなくなり、まんまと大番狂わせを献上した大失敗を、今回もまた繰り返す恐れがゼロではない。

負けて元々(?)のジャメインは、スタートから急襲を仕掛ける奇策も有り。上手くハマって、カンボソスのようにテオフィモを空転させられたら、”The Takeover(乗っ取り屋:テオフィモのあだ名)”が、強気の”テクニシャン(The Technician:ジャメインの愛称)に”Takeover”される展開が無きにしも非ず。

ジャメインもまた、狡猾な技術&神経戦を想起させる愛称とは裏腹な、年齢相応の好戦性も併せての売りだけに、退くに退けなくなって墓穴を掘る逆効果のリスクも小さくはないけれど、当たり前にやっていたら、冷静かつ戦術的ディシプリンに撤するテオフィモを攻略するのは難しい。どうにかして、頭に血を上らせたいところ・・・。


◎公開練習



◎テオフィモ(26歳)/前日計量:139.6ポンド
現WBO J・ウェルター級王者(V0)、元3団体統一ライト級王者(WBA:V0,IBF:V1,WBO:V0)
戦績:20戦19勝(13KO)1敗
アマ通算:150勝20敗
2016年リオ五輪ライト級出場(初戦敗退)
※ホンジュラス(両親の母国)代表
2016年リオ五輪米大陸予選準優勝
2015年リオ五輪米国最終予選優勝
2015年ナショナル・ゴールデン・グローブス優勝
2015年ユース全米選手権ベスト8
2014年ナショナル・ゴールデン・グローブス2回戦敗退
2014年ユース全米選手権3位
※階級:ライト級
身長:173センチ,リーチ:174センチ
右ボクサーファイター


◎オルティズ(27歳)/前日計量:139.6ポンド
現在のランキング:WBO10位/IBFライト級13位
戦績:19戦17勝(8KO)1敗1分け
アマ通算:100勝14敗
2016年リオ五輪代表候補(L・ウェルター級)
2015年五輪米国最終予選ベスト8
※予選:決勝でジャロン・エニス(25歳/29戦全勝27KO)にポイント負け
※本戦:準々決勝でエイブラハム・ノヴァ(28歳/21勝15KO1敗)にポイント負け
2015年ナショナル・ゴールデン・グローブス準優勝(ライト級)
※決勝でテオフィモ・ロペスにポイント負け
2015年全米選手権ベスト4(ライト級)
※準決勝でヘナロ・ガメス(27歳/10勝7KO1敗)にポイント負け
身長:173センチ,リーチ:175センチ
左右ボクサーファイター(スウィッチ・ヒッター)

◎前日計量


※前日計量(フル)
https://www.youtube.com/watch?v=RYSCJTE_3i4

負けん気というか、きかん気にかけては容易に引けを取らない両者だけに、トラッシュトークの応酬になってもおかしくないと考えていたが、プレス・カンファレンスに続いて計量も波風立たずに終了。

静かな分だけフェイス・オフの緊張感が増したようにも感じたけれど、海外ではぎゃあぎゃあ煩く騒ぎ立てる様子を食傷気味に眺める機会が多過ぎて、何もないと拍子抜けしてしまうから困ったものだ。


BLOOD SWEAT & TEARS: Teofimo vs Ortiz | FULL EPISODE



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■リング・オフィシャル:未発表


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■ミケロブ・ウルトラ・アリーナ

聞き慣れない名称を耳にして、「またラスベガスに、新しい屋内施設が出来たのか?」と思いきや、マンダレイ・ベイ・リゾート&カジノホテルに設置された12,000人収容のイベントセンターだった。

近くは「GGG vs カネロ第1戦」が行われ、開場した1999年の秋には、全世界のボクシングファンが熱視線を寄せた「デラ・ホーヤ vs トリニダード戦」を開催した他、「デラ・ホーヤ vs F・バルガス(2002年)」、「マルコ・A・バレラ vs パッキャオ第2戦(2007年)」、「パッキャオ vs J・M・マルケス第2戦(2008年)」等々、20世紀末~21世紀の幕開けを飾るビッグファイトを手掛けた大会場の1つ。

「バドワイザー」で知られるビール・メーカー「アンハイザー・ブッシュ」が、自社の新しいブランド「ミケロプ・ウルトラ」のプロモーションの一貫として、2021年に命名権を取得した。



ネーミング・ライツは、箱物の運営にとってもはや不可欠と表すべきなのだろうが、例えばエディオン・アリーナを名乗る大阪府立体育会館のように、馴染み深い名前が変わることへの一抹の寂しさは残る。

命名権を獲得しつつ、地元の人たちとファンに親しまれた名前をそのまま継承する、太っ腹の経営者が1人くらい現れても良さそうなものだが、雇われ社長では到底叶わない無理難題ということか・・・。


倒せないキックの天才児 /狂っているのはどちらの感覚・・・? - L・ロブレス vs 天心 プレビュー -

カテゴリ:
■1月23日/エディオン・アリーナ大阪,大阪市浪速区/121ポンド(54.8キロ)契約8回戦
WBA・WBO14位 ルイス・ロブレス(メキシコ) vs 那須川天心(帝拳)



日本キック史上最高・最大の天才児が、ことボクシングでは倒せない。

「パンチが無い」「詰め切る気迫も連打も全然足りない」等々、物足りなさばかりが喧伝される中、二桁のそれも下の方ではあるものの、一応3戦目でバンタム級の世界ランカーを迎える。


与那覇勇気(真正)とのデビュー戦は、あくまでディフェンスがテーマだった。「いかに打たせ(れ)ず」一方的な展開を作り出すのか。チーフの大役を任された粟生隆寛(エリートアマから帝拳に入りWBCのフェザー級とS・フェザー級を獲った元2階級制覇王者)の狙いは、そこにしか無かったと断じる他ない。

戦前から明らかだったスピードの差を存分に活かし、前後左右に素早く動く見切りの速さと精度の高いジャブ,コンビネーションに唸らされた。

与那覇は勇敢な強打者で、基本的な攻防の技術もしっかりした選手だが、その与那覇に天心は何もさせずに8ラウンドを戦い切っている。ジャッジ1人が、1ポイントを与那覇に振ったことに、「1発も貰ってない。というか、触らせてもいない。フルマークでしょ。」と異を唱える。


そして2戦目は、メキシコから呼び直したアンダードッグ。2022年9月18日にセットされていたが、当初予定のメキシカン,ファン・フローレスが武漢ウィルスに感染してしまい、相手と日程を再調整。

代わりにやって来たルイス・グスマン・トーレスを、初回にいきなり左を決めてダウンさせると、ボディアタックで弱らせた上、第7ラウンドには連打を集めて2度目のダウン(一旦スリップ裁定→ノックダウンに訂正)。

ここでジ・エンドかと思いきや、集中打をまとめられずにまた判定勝ち。流石に今度はフルマークだったものの、「倒せない天才児」への不満をファンが口にし出す。


◎試合前の公開練習
<1>デビュー戦前の公開スパーリング
2023年4月5日/amazon prime公式


まずはディフェンス。守ることに主眼を置いたボクシングで、距離を詰めて来る福井勝也(26歳/4戦全勝3KO)が仕掛ける攻撃のほぼすべてに反応。福井は59勝16敗のアマキャリアを持つエリートで、天心は潜在能力の高さとセンスを存分に発揮した。.

<2>グスマン戦前
2023年9月8日/amazon prime公式


デビュー戦に比べれば、「打ち抜こうとする」意識だけは伺える。ただし、キック時代の思い切りの良さ、迷いの無さは望むべくもなし。とは言え、2戦目でここまでできれば何も言うことはない。素晴らしいの一言。

<3>ロブレス戦直前
2024年1月11日/amazon prime公式


一瞬たりとも止まらない。軽快なステップで動き続けるベーシックはそのままに、しかし打つ時は足を止めて体重を乗せて行く。これもまだ意識と身体のシームレスな連携には今数歩と見受けるが、「倒せない」ことへの批判について、一定の回答を出そうと様々模索はしている。

ただし、勇敢で獰猛なロブレス相手に、正面に位置を取ったまま足を止めて立つのはリスキー。焦ることなど何もないと思うが、期待値が高い分そうも言っていられないということか。

マッハの踏み込みに崩しのフェイントを混ぜ込み、タイミングを外して当て易くする工夫を求めるのは、まだまだ酷との印象も有り。天心ほどのスピードを持ってしても、真っ正直にワンツーもろとも飛び込んでも、それなりに経験を積んだボクサーなら、後方と両サイドへのステップで対応できてしまう。

自分から距離を詰めるにしても、もっと頭を振って全身でフェイントを入れておかないと、カウンターを浴びて慌てることにもなりかねない。ステップとタイミングの細かい変化は極めて重要。


どれだけ批判されても、今はまだ「一瞬も止まらず動き続けるポイントボクシング」に撤するべきなのでは。バンタム級への階級ダウンも込みにはなるけれど、遅かれ早かれちゃんと倒せるようになる。

私もそうだが、井上尚弥の破格過ぎるパワーを見続けているせいで、ファンの感覚が狂い出しているのも事実。天心の左ストレートに、キック時代の「貫く」感覚が蘇えるのもそう遠くは無い筈だと、ひとまずは言っておこう。

85歳になるナチョ・べりスタインの帯同は意外なサプライズだが、本番のリング上でサプライズは不要。無理をせずに、フルマークの判定で良いと思う。


ナチョには申し訳ないが、「まともに触れないままの判定負け」を覚悟していただく。


◎【ダイジェスト版】1.23 LIVE BOXING 6 スペシャルコンテンツ「TENSHIN NASUKAWA ~ボクシングへの挑戦#4~」| プライムビデオ
2024年1月10日


◎フル映像:1.23 LIVE BOXING 6 スペシャルコンテンツ
2024年1月9日/amazon prime
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CJYVVQM8/ref=atv_dp_share_r_em_b7dbb132447b4



◎ロブレス(25歳)/前日軽量:119.5ポンド(54.2キロ)
戦績:18戦15勝(5KO)2敗1分け
身長:164センチ
右ボクサーファイター


◎那須川(25歳)/前日軽量:121ポンド(54.8キロ)
戦績:2戦2勝
キック通算:42戦全勝(28KO)
※各種のキック世界タイトルを総ナメ
身長:165センチ,リーチ:176センチ
左ボクサーファイター


◎前日軽量




阿久井の右に大きな期待 /岡山に錦を飾る夢は成るか? - A・ダラキアン vs ユーリ阿久井政吾 直前プレビュー -

カテゴリ:
■1月23日/エディオン・アリーナ大阪,大阪市浪速区/WBA世界フライ級タイトルマッチ12回戦
王者 アルテム・ダラキアン(ウクライナ) vs WBA1位 ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)



2018年2月の載冠(ブライアン・ビロリアに大差の3-0判定勝ち)以来、6連続防衛(3KO)を更新中のダラキアンが、いよいよ本邦初お目見え。

昨年12月14日に決まっていた井上拓真(大橋) vs ジェルウィン・アンカハス(比)戦が延期(拓真が肋骨を骨折)となり、同日開催予定だったダラキアン vs 阿久井も日程の再調整を迫られる。

拓真を見舞ったアクシデントが、減量が佳境を迎える前だったことがは不幸中の救いなれど、概ね1ヶ月のスパンが両者の調整にどう影響したのか、あるいはしなかったのか。


武漢ウィルス禍によるブランクに加えて、母国を襲った悲劇の影響もあり、パフォーマンスに精彩を欠く試合が続いたせいか、直前のオッズは拮抗。日本国内での実績しかなく。しかも地方ジム所属の阿久井だが、突出した右の決定力は海外でもそれなりに知られているらしい。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
ダラキアン:-110(約1.91倍)
阿久井:+100(2倍)

<2>betway
ダラキアン:-110(約1.91倍)
阿久井:-110(約1.91倍)

<3>ウィリアム・ヒル
ダラキアン:4/5(1.8倍)
阿久井:4/5(1.8倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
ダラキアン:1/1(2倍)
阿久井:4/5(1.8倍)
ドロー:16/1(17倍)


2020年2月のV4(ホスベル・ペレスに12回3-0判定勝ち)の後、パンデミックの為に1年9ヶ月のレイオフ。2021年11月の復帰戦では、大ベテランの元王者ルイス・コンセプシオン(パナマ/38歳=一応1位の指名挑戦)に9回TKO勝ち。

さらに、狂気の独裁者プーチンの野望が現実のものとなったウクライナへの武力侵攻により、2022年の1年間、試合どころの状況ではなくなった。

そして昨年1月28日、コスタリカのダビ・ヒメネスを3-0判定に下してV6に成功はしたものの、クリンチ&ホールドの多用が目に付き、後半のガス欠傾向も顕著。ブランクだけでなく年齢的な衰え(30代半ば過ぎ)を指摘する声もある。


2018年6月の初防衛戦で対峙したヨドモンコン(タイ/対戦時:暫定王者=8回TKO勝ち)戦以降、これはという実力者との対戦がなく、阿久井の右が爆発したらひとたまりもないとの見立て・・・?。

それでも、ボクシングの巧さには一日以上の長があり、左右のスイッチにロマチェンコを彷彿とさせるトリッキーなムーヴや速射連打、ノーガードの挑発もお手の物。スピード&シャープネスの低下と、反応の鈍化がどの程度回復しているのかにもよるが、マタドールよろしく阿久井の強打を空転させ続け、ワンサイドの判定をもぎ取っての帰国も想定の範囲内ではある。

阿久井の右はしっかり対策してくる筈で、ディフェンシブかつ慎重な立ち上がりで様子を伺うのでは?。阿久井の間合いとタイミングを掴んでも、単純に前に出たりせず、阿久井を引き込んでカウンターを狙う公算が大。


「日本国内に止まる」と書きはしたものの、矢吹と桑原拓(大橋)をストップした白星が光る。桑原を初回に倒した右は、打ち終わりに棒立ちになる一瞬を狙い済ました、それは見事な一撃。

回復した桑原も必死に奮戦し、最終10ラウンドまで進むも、再び右が炸裂して桑原は昏倒。そのままレフェリーストップとなった。

ここまでの2敗は、中谷潤人(M.T)との日本ユース王座決定戦(2017年8月)で、中谷6回TKOに退いた初黒星と、矢吹戦の直後に8回TKOで敗れたジェイセヴェー・アブシード(比)戦。

◎【ダイジェスト版】1.23 LIVE BOXING 6 スペシャルコンテンツ「BOXER RECORD#1 」
2024月1月10日/amazon prime公式


◎フル映像:無料公開中(amazon prime video)
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CJYVVQM8/ref=atv_dp_share_r_em_b7dbb132447b4


中谷とは頭を付けた密着戦が続き、長身にもかかわらず中谷が得意にする左右のアッパーをまとめられ、ワンツーの強打を効かされ、ロープを背に防戦一方になりかけたところでストップされている。

世界ランク入りを狙ったアプシード戦は、初回に生命線の右(肘)を傷めてしまい、満足に右を打てない状況の中、第6ラウンドに右の打ち終わりを左のカウンターで迎撃されダウン。さらにまた左ショートの好打を浴びてダウンを追加。

第7ラウンド、起死回生の1発を狙ってアッパーで攻め込むも、アプシードもさる者で、しっかり粘ってサバイバル。続く第8ラウンド、ロープに押し込まれて連打を見舞われたところでストップ負け。


この敗戦はダラキアンも当然チェックしていると思われ、「省エネ+カウンター」の戦術徹底が容易に想像される。クリンチ&ホールドで阿久井の前進を分断するだろうし、そこでカっとなれば王者の思うツボ。

一旦打ち始めるや否や、ガードそっちのけで強振する悪癖が抜け切らない。好感阿久井の右が決まれば、ダラキアンもただでは済まないだけに、ボクシングが正直な阿久井の崩しのバリエーション、引き出しの多寡が試される、

単純に距離を詰めて右を打ち続けても、歴戦のダラキアンの術中にみすみすハマるだけ。いずれにしろ、阿久井は右にすべてを託すしかない。互いに身体が温まり切らないスタート直後、奇襲を仕掛けるのも一策ではあるが・・・。


◎ダラキアン(36歳)/前日軽量:111.1ポンド(50.4キロ)
WBAフライ級王者(V6/4KO)
戦績:22戦全勝(15KO)
アマ戦績:不明
身長・リーチとも164センチ
※軽量後の検診データ
体温:36.4℃
脈拍:47/分
血圧:184/83
右ボクサーファイター(スイッチヒッター)


◎阿久井(28歳)/前日軽量:112ポンド(50.8キロ)
元日本フライ級王者(V3/返上)
2015年度L・フライ級全日本新人王
戦績:20戦17勝(11KO)2敗1分け
アマ戦績:27戦20勝7敗
倉敷翠松高校→環太平洋大学
身長:センチ/リーチ:センチ
※軽量後の検診データ
体温:36.5℃
脈拍:53/分
血圧:128/89
右ボクサーパンチャー


◎前日軽量



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■オフィシャル

主審ギジェルモ・ペレス・ピネダ:(パナマ)

副審:
ルイス・パボン(プエルトリコ)
ジェレミー・ヘイス(カナダ)
ラウル・カイズ(米/カリフォルニア州)

立会人(スーパーバイザー)::レンツォ・バグナリオル(ニカラグァ/WBA国際コーデイネーター,元審判)


最軽量ゾーンのエースに死角なし(?) - 拳四朗 vs カニサレス 直前プレビュー -

カテゴリ:
■1月23日/エディオンアリーナ,大阪市浪速区/WBA・WBC統一世界L・フライ級タイトルマッチ12回戦
統一王者 寺地拳四朗(B.M.B.) vs WBA1位/WBC2位 カルロス・カニサレス(ベネズエラ)





驚くべき即決KOでベルトの奪還に成功した矢吹正道(緑)との再戦を含めて、世界戦5連続KO勝ち(4連続KO防衛中)を続ける拳四朗が、現在の108ポンドを代表する実力者の1人,カニサレスの挑戦を受ける。

直前のオッズは大きく拳四朗を支持。

□主要ブックメイカーのオッズ
<1>BetMGM
拳四朗:-700(約1.14倍)
カニサレス:+500(6倍)

<2>betway
拳四朗:-752(約1.91倍)
カニサレス:+500(6倍)

<3>ウィリアム・ヒル
拳四朗:1/8(約1.08倍)
カニサレス:5/1(6倍)
ドロー:16/1(17倍)

<4>Sky Sports
拳四朗:1/12(約1.08倍)
カニサレス:5/1(6倍)
ドロー:20/1(21倍)


連続KO防衛のインパクトと言ってしまえばミもフタもないが、とりわけ強烈な印象を残したのが、京口紘人(ワタナベ)を左ジャブ1本で減速させ、決死の反撃を断ち切って倒し切った2団体統一戦(2022年11月)。

拳四朗のジャブをまともに食って効かされてしまう京口の姿を、半ば呆然と見つめるしかない。ボディワークが使えなくなってしまった現代日本のボクサーの中にあって、京口はそれでも上体の動きが多い方に入る。

がしかし、拳四朗のジャブにしっかり対応するまでには至らず、予想を超える威力に即応することができないままラウンドを重ねてしまう。

京口推しの私としては、ただただ残念と申し上げるしかないけれど、頭と肩を振り続けることの重要性、打ち始めと打ち終わりの処理が甘くなることの怖さを、あらためて思い知らされた。


そして、よもやのTKO負けでV9に失敗した矢吹との第1戦。偉大なる具志堅用高が、およそ40年前に達成した国内連続防衛記録(13回)更新の夢は破れたものの、真っ向勝負の打撃戦に応じて矢吹をKO寸前まで追い込み、自らのパンチング・パワーとフィジカル・タフネスに手応えも感じたに違いない。

リマッチでファイターに変身した拳四朗は、スタートから前に出てキツい圧力をかけ、フイを突かれた格好の矢吹に態勢を立て直す機を与えることなく、一方的に詰め切ってみせた。

第1戦でも感じたことだが、リマッチで際立っていたのが拳四朗の大きさ。計量後にどの程度リバウンドしているのか、正確な数値は不明ながらも、相当に戻していることが容易に想像できる。


身長で2センチ程度上回る矢吹も、リカバリーに成功してちゃんと大きくなっていたが、拳四朗の気迫とプレッシャーに押されて後退するしかない。第2ラウンドに矢吹のいい右が1発入って一瞬たじろいだが、直ちにガードを作り直して前進を継続。逆に綺麗なワンツーを決めて、矢吹の顔を跳ね上げ返す。

余裕と自信を消失した矢吹の表情がいよいよ強張り、第3ラウンド、一気に勢いを増した拳四朗が、ロープ伝いに逃げる矢吹を力強い左右のボディでスローダウンさせる。ジャブで態勢を崩され、顔面がガラ空きになるその瞬間を拳四朗は見逃さない。素晴らしい右ストレートで打ち抜くと、。

何とか立ち上がった矢吹だが、完全に効いていて足元が定まらず、主審の染谷がそのままストップ。ユーリ阿久井政悟に初回KO負けした際、「自分は打たれ強くない。と言うか、打たれ弱い」と正直に認めていたことを思い出す。

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京口との統一戦でも、本番当日の体格差が目についた。京口に対しては、左右のステップを絶やさず押し退きしながらのボクシングだったが、無駄に下がったりはしない。リードジャブで着実に先手を取り、強めのパンチを交換しても常にパワー負けせず、ごく自然に圧力がかかって行く。

「まさかここまでとは・・・」

拳四朗のパワーは京口にとっても脅威だったようで、顔色を失った表情が矢吹のそれと瓜二つ。WBC王者に距離と間合いを握られたまま、正面での対応を続けるしかないWBA王者の顔面を遂にワンツーが捉える。

たまらず倒れ込む京口。第5ラウンド開始30秒過ぎだった。ジャブとボディが効き出していたとは言え、けっして打たれ弱くはない京口がこんな倒れ方をするとは・・・。


エイトカウントを待って再開されると、し止めにかかる拳四朗。しかし、京口も意地を見せる。クロスレンジでの打ち合いなら簡単には負けないとばかり、得意の左フックをきっかけに拳四朗をロープに押し込み、渾身の逆襲で見せ場を作った。

ラウンド終了のゴングと同時に、両通がもつれて京口が下になる状態で倒れてヒヤリとしたが、起き上がる時の表情がまるで違う。ダウンを奪いながら、逆に攻め込まれた拳四朗には充分な余裕があり、口が開いて呼吸が辛そうな京口は、ダメージの影響が否が応でも滲み出る。

続く第6ラウンド、一息置いて距離とペースを作り直す拳四朗。お陰で京口も回復の時間を得られたが、ジャブと左右のコンビネーションを浴びて腫れ出した顔が痛々しい。


フィニッシュの第7ラウンド、再び圧力をかける拳四朗のジャブと左右が効き、京口の足と動きが止まる。完全に鈍った京口は、拳四朗の動き出しに反応できない。「まずいな・・・」と思いつつ、画面に集中し直す。

ガードを完全に解いた拳四朗が、左の拳をグルっと回すパフォーマンスでけん制しながらし止めにかかる。ほぼノーガードで勝負に出ている拳四朗に、京口のジャブと右ストレートが当たり、密着すると左ボディからの上下も当たって場内が沸く。

しかし、京口のパンチに拳四朗を脅かす力は残っておらず、何度目かの交錯の後、またもや拳四朗の右が決まってグラリと揺れる京口。そのまま、たたらを踏むように後退しながら態勢を崩すところへ、文字通り止めの追撃(右)。

ロープ際のキャンバスに背中から倒れると、矢吹第2戦に続いて主審の重責を任された染谷は、左腕で京口を抱きかかえながら大きく右手を振り、カウントを数えることなく試合終了を宣告。

統一王者となった拳四朗は、前評判の高い天才児トニー・オラスクアガ(米)を9回TKOに退けると、南アの元アイドル,へッキー・バドラーのかき回し戦術に手を焼きながらも、同じく9回TKOで締め括り、力の違いを見せ付ける。

◎ファイナル・プレッサー(抜粋)
2024年1月21日/Top Rank公式


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勇猛果敢なインファイトでド突き合うかと思えば、健脚を活かした出入りで安全確実にラウンドをまとめにかかる。柔軟に硬軟を使い分けるカニサレスは、今回が3度目の来日。

2016年の大晦日に、田口良一(ワタナベ)が保持していたWBA王座に挑戦して、三者三様のスプリットドローで涙を呑んだ初来日。奪取こそ成らなかったが、驚異的な打たれ強さを発揮する田口に対して、退くべきところは退くクレバネスが奏功していた。

翌2017年は母国で3戦を消化。2018年3月に再来日を果たし、小西伶弥(真正)とのWBA正規王座決定戦に出場。2017年の大晦日に、田口がミラン・メリンド(比)を3-0判定に破りIBF王座を吸収。WBAスーパー王者に昇格した為、正規王座を空位にして行われたお馴染みの措置。


第3ラウンドに右でダウンを奪ったカニサレスは、その後も優位に試合を進めるも、しぶとく食い下がる小西のボディアタックで後半失速気味となり、苦しみながらの3-0判定勝ち。

中国で木村翔(青木→花形)を大差の判定に下した試合を含めて、このベルトを2度防衛して田口との再戦のチャンスを待つも、メキシコに遠征したV3戦でエステバン・ベルムデスに6回TKO負け。虎の子の王座を失う(2021年5月)。

「高地対策が充分ではなかった。もう一度やれば勝てる」と語ったが、再戦のチャンスは無く、WBAスーパー王座は田口→ヘッキー・バドラー→京口と推移し、京口がベルムデスとのWBA統一戦を制している。


2021年~2022年は、ガニガン・ロペス戦(4回KO勝ち)を含めメキシコで3連勝(2KO)。昨年6月、アルゼンチンに飛んでダニエル・メテロンを8回負傷判定で破り、WBAの指名挑戦権を獲得。

スピードに欠けるベルムデスとの打ち合いを選択して、攻防のキメがどんどん粗くなり、自滅半ばに敗れた時もそうだが、小西に粘り負けしそうになるなど、上手いのか下手なのかわからないところがある。

計量後のリバウンドを遠慮なく利用するのも特徴で、安定政権を築きつつあった田口良一と引き分けた初挑戦)時も、長身(167.5センチ)の田口に対して、158センチの小兵とは思えない強打を振るっていた。


鍛え込まれた上半身は、田口と戦った頃よりも厚みを増している。パンチへの自信が裏目に出たベルムデス戦を教訓にするのか、ファイター化した拳四朗に合わせて真正面からシバキ合うのか。

積極的に倒しにかかる拳四朗は、当然のことながら被弾の確率が増している。試合運びの安定感に関して言えば、矢吹戦以前の「フットワーク&ジャブ」の方が良い。スタイルを変えたことについて、「これが自分のボクシング。多少打たれても前に出る方がいい」と、田口や田中恒成と同じ方向性を志向する。

無駄に打たれ(せ)ていいことは何も無い、堅実に距離をキープする拳四朗を、今一度見てみたい気もするけれど・・・。


◎拳四朗(32歳)/前日計量:107.4ポンド(48.7キロ)
現WBC(通算V11/連続V8)・WBA(V2)統一L・フライ級王者
元日本L・フライ級(V2/返上),OPBF L・フライ級(V1/返上),元WBCユースL・フライ級(V0/返上)王者
戦績:23戦22勝(14KO)1敗
世界戦通算:14戦13勝(9KO)1敗
アマ通算:74戦58勝(20KO)16敗
2013年東京国体L・フライ級優勝
2013年全日本選手権L・フライ級準優勝
奈良朱雀高→関西大学
身長:164.5センチ,リーチ:163センチ
※矢吹正道第2戦の予備検診データ
※計量後の検診データ
体温:36.1℃
脈拍:44/分
血圧:136/86
右ボクサーファイター


◎カニサレス(30歳)/前日計量:107.6ポンド(48.8キロ)
元WBAレギュラー王者(V2)
戦績:28戦26勝(19KO)1敗1分け
身長:159.5センチ,リーチ:164センチ
※小西伶弥戦(WBAレギュラー王座決定戦)の予備検診データ
※計量後の検診データ
体温:36.1℃
脈拍:40/分
血圧:124/84
右ボクサーファイター


◎前日計量



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■オフィシャル

主審:ルイス・パボン(プエルトリコ)

副審:
ジェレミー・ヘイス(カナダ)
オマール・ミンタン(メキシコ)
リム・ジュンバェ(韓)

立会人(スーパーバイザー):
WBA:レンツォ・バグナリオル(ニカラグァ/WBA国際コーデイネーター,元審判)
WBC:タナポン・バクディブミ(タイ/ABC=WBCアジアボクシング評議会役員・WBCムエタイ会長)

Naoya The Great - Chapter 1 夢のまた夢・・・リング誌ファイター・オブ・ジ・イヤーに選出 Part 4 -1 -

カテゴリ:

Ring Magazine Fighter of the year - Multiple Time Winner

”ザ・グレーテスト” と ”ブラウン・ボンバー” は別格

■最多受賞:6回「モハメッド・アリ」
1970-10-09-5thstreetdym-Miami
世界ヘビー級王者(1960年ローマ五輪L・ヘビー級金メダル)
生涯戦績:61戦56勝(37KO)5敗
通算19回防衛
第1期:連続9回/在位:3年3ヶ月(1964年2月~1967年5月・はく奪)
第2期:連続10回/在位:3年4ヶ月(1974年10月~1978年2月)
第3期:防衛無し/在位:1年(1978年9月~1979年9月・返上)
◎受賞年:1963年・1966年(※)・1972年・1974年・1975年・1978年
※1974~75年:2年連続受賞
※1990年国際ボクシング殿堂入り
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<1>1963年:世界ランカー3名を三連破(出生名のカシアス・クレイ時代/21歳)
欧州最強のH・クーパー(英国遠征)と次期王者候補の1人ダグ・ジョーンズを含む
(1)D・ジョーンズ戦(米):ファイト・オブ・ジ・イヤーW受賞
3月13日MSG。N.Y./10回3-0判定勝ち/ヘビー級10回戦


初回にいきなり右を効かされてグラつくアリ。懸命の連打で反撃するも、タフで勇敢なジョーンズは1歩も退かずに応戦。一進一退の打ち合いは後半に入っても変わらず、スタミナが切れかかりながらも渾身の攻勢でアリが僅かに押し切った。
※オフィシャル・スコア:5-4-1×2名(副審),8-1-1×1名(主審)/採点:ラウンドの数を振り分ける方式(N.Y.州を筆頭に多くの州で採用されていた)

(2)H・クーパー第1戦:5回TKO勝ち
6月18日ウェンブリー・スタジアム,ロンドン(英)/ヘビー級10回戦


第4ラウンドに喫したノックダウンは、デビュー時から指摘され続けた左フックとの相性の悪さを露呈したもので、”スモーキン”・ジョー・フレイジャーとの激闘を予感させる。かなり効いていたが、驚異的な心身のタフネスで回復(後に諸刃の剣となって深刻な健康被害をもたらす)。キレまくる左ジャブで挽回すると、あっという間にクーパーの瞼を切り裂き、大流血に追い込んでの逆転TKO勝ち。

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<2>1966年:年間5度の防衛成功(4KO)
<当時は該当者無し=逝去した2016年にあらためて表彰>
※Ali retroactively named Fighter of the Year for 1966
2016年12月8日/リング誌公式
https://www.ringtv.com/476547-ali-retroactively-named-fighter-year-1966/

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(1)ジョージ・シュバロ(WBA6位)第1戦:15回3-0判定勝ち
3月29日/メープルリーフ・ガーデン/トロント(カナダ)
WBC(+NYSAC)世界ヘビー級タイトルマッチ15回戦(※)/V3
1)フル映像(モノクロ)
https://www.youtube.com/watch?v=tyWDrmViwAk

2)2003年5月に公開されたシュバロ第1戦のドキュメンタリー映画
製作:カナダ国立映画制作庁(National Film Board of Canada)
(2004年8月30日にカナダの公共放送CBCが全国放送)
The LAST ROUND - CHUVALO vs ALI
https://www.youtube.com/watch?v=9O_9ANas7NQ

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(2)H・クーパー(WBA9位)第2戦:6回TKO勝ち
5月21日/アーセナル・スタジアム/ハイベリー(英/ロンドン)
WBC(+NYSAC)世界ヘビー級タイトルマッチ15回戦(※)/V4
1)フル映像(モノクロ)


2)カラー化:約50分(試合前の公開練習・インタビューを含む)
https://www.youtube.com/watch?v=Y1-n9pwcJ_s

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(3)ブライアン・ロンドン戦:3回KO勝ち
8月6日/アールズ・コート・アリーナ,ケンジントン(英/ロンドン)
WBC(+NYSAC)世界ヘビー級タイトルマッチ15回戦(※)/V5
1)フル映像(モノクロ)
https://www.youtube.com/watch?v=zxBHfuzZaHw

2)B・ロンドン戦/フィニッシュシーン(70万回超再生)


挑戦者ロンドンをコーナーに詰めてし止める凄まじい連打が、海外のファンを中心に、リアルタイムでアリを見ていない世代のファンの間で話題になり、若く充実したアリが発揮した驚嘆すべきスピードとキレ,高い精度について、再認識されるきっかけとなった。

対戦時のロンドンはノーランク(10位外)でなおかつ無冠ではあったが、英国(BBBofC)と英連邦(Commonwealth Boxing Council)のタイトルを保持していた他、フロイド・パターソンへの挑戦経験(1959年5月/11回TKO負け)を持つ。上記2つと欧州(EBU)王座の3つを独占するH・クーパーに善戦(15回判定負け)するなど、英国ヘビー級を代表する実力者の1人として認知され、アリの王座を承認していたWBCとNYSC(※)が挑戦を容認。

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(4)カール・ミルデンバーガー(WBA3位/欧州王者)戦
9月10日/ヴァルトシュタディオン,フランクフルト(独)
WBC(+NYSAC)世界ヘビー級タイトルマッチ15回戦(※)/V6
1)フル映像(モノクロ)
https://www.youtube.com/watch?v=-lhLfLIOk3g

2)フル映像(カラー)
https://www.youtube.com/watch?v=u0bbw5J4fjU

※ヴァルトシュタディオンは、サッカー・スタジアムを中心に多目的施設を複合したスポーツ・コンプレックスのはしりの1つで、この試合は施設内にある自転車競技場にリングを特設して行われた。

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(5)11月14日:C・ウィリアムズ(WBA4位)戦:3回TKO勝ち
アストロドーム,テキサス州ヒューストン
WBC(+NYSAC)世界ヘビー級タイトルマッチ15回戦(※)/V7
1)フル映像(モノクロ)
https://www.youtube.com/watch?v=v3ZL9cK-JWo

2)ハイライト(カラー)


開催地のヒューストンをホームタウンにしていたクリーヴランド・ウィリアムズは、ソニー・リストンやゾラ・フォーリーと並ぶ強打者で、2メートル超の長いリーチに恵まれていた。アリは左ジャブとともに代名詞となっていた秀麗なフットワークでウィリアムズを翻弄し、芸術的な右カウンター(必殺のファントム・パンチ)を炸裂させ3回TKO勝ち。現在ではおよそ考えられない、年間5度の防衛を成し遂げた。


1970年代以前のチャンピオンは、怪我や病気,リング内外のアクシデントなどが無ければ、年間3回程度の防衛戦は当たり前で、その合間にノンタイトルをこなすことも珍しいことではなく、ランカーや修行中の前座でさえ年間2~3試合の今日とはまるで様子が異なる。

正統8階級しか認められていなかった1937年から1938年にかけて、8つあるうちの3階級を同時に制覇するという、まさに空前絶後の離れ業をやってのけたヘンリー・アームストロングは、約10ヶ月の間にフェザー,ウェルター,ライトの順番にベルトを奪取した。

160センチ代半ば~後半の小兵をカバーする為、素早く相手の内懐に潜り込んで、自分の頭を胸から顎の付近に密着したまま、上下の連打をひたすら叩きまくる。とにかく相手が根負けして嫌になるまで、無尽蔵のスタミナを武器に白兵戦を仕掛けるファイタースタイルで、14年近く(1931年7月/18歳~1945年2月/32歳)戦い続けた。

Henry Armstrong


181戦151勝(101KO)21敗9分け(国際ボクシング殿堂)という、とてつもない生涯戦績を残しており、キャリア晩年はミドル級のトップレベルとも拳を交えているが、ボクサー特有の言語障害や運動機能障害とは無縁。引退後発症した眼疾(網膜はく離と白内障)に、激闘の影響を感じさせるのみ。
Cyber Boxing Zone:179戦149勝(100KO)21敗9分け/Boxrec:180戦149勝(99KO)21敗10分け

フェザー級を返上した後、135ポンド前後のライト級のまま、6ヶ月(1938年11月~1939年5月)の短期間にウェルター級の王座を7連続防衛。その間にもノンタイトルやエキジビションを消化して稼ぎまくっていた。

ボクシング人気は今とは比較にならないほど盛況で、TVが無かったが故に、人気選手にはエキジビションマッチとノンタイトルの需要が高かったとは言え、常軌を逸した心身のタフネスだけで休み無くリングに上がり続けることはできない。ディフェンスの能力にも長けていたことは明らかで、疑いを差し挟む余地無し。


アームストロングの半年に7回の防衛(年14回/1938年11月~1939年12月)は凄過ぎるけれど、TVやラジオが存在しなかった神代の時代も含めて、動く金額の桁が違うヘビー級は、防衛戦の間隔をやや長めに取る場合があり、ノンタイトルを挟んで休み無くリングに上がり続ける王者はそれなりにいたが、やはり1年に5回の防衛戦は超過密なハードスケジュールには違いない。

今のように駆け引きの応酬のみでフルラウンズを終えるなど有り得ず、プロの一流は決着が着くまで戦い切ることを容赦なく求められた。しかも当日計量で、世界戦は15ラウンズ。カットや拳の怪我が無いことは勿論、ダメージも最小限度に抑えないと、1~2ヶ月のスパンで戦い続けることなど不可能。

どう考えてみても、昔のボクサーの方が基礎体力に優れ、攻防の基本的な技術水準(特にディフェンス)も高いとしか思えない。そう考えないと辻褄が合わない。

プロボクシングの人気が下火になって久しく、長く続く低迷からの脱出が不可能となった今日とは、そもそもファンの数も需要もまるで違う為、単純に比較をしてもせんないことではあるが・・・。


◎Part 4 -2 へ




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